昨今のスバルの売れ筋車種は、1位が「フォレスター」で、2位が「XV」、3位が「レヴォーグ」だ。「XV」と「レヴォーグ」の売れ行きは、ほぼ互角となっている。日本自動車販売協会連合会では、「XV」を「インプレッサ」に含めて公表しているために少々わかりづらいのだが、「XV」と「インプレッサ」の販売台数を別々に算出すると、「XV」の登録台数のほうが多い。「XV」は、スバル車の中でも人気車種と言える。
2023年春に日本で発売予定の、スバル 新型「クロストレック」。発売を前に正式発表された価格を元に、推奨グレードなどの解説のほか、ライバル車のトヨタ「カローラクロス」とも比較してみた
その「XV」が、海外と同じ「クロストレック」へと車名が変更されるとともに、フルモデルチェンジされる。発売日は、日本では2023年春が予定されている。「クロストレック」の車両詳細については、2022年10月18日に掲載済みのプロトタイプ試乗記「スバル 新型「クロストレック」を先代の「XV」と比較試乗。予想価格は!?」にてすでにレビューしているのだが、2022年12月1日に正式な販売価格が公表されたので、今回は「クロストレック」のグレードやオプション価格なども含めた購入ガイドをお届けしたい。
まず、今回発表された「クロストレック」のグレードごとの価格については、以下のとおりだ。
■スバル 新型「クロストレック」のグレードと価格
※価格はすべて税込
ツーリング:2,662,000円[2WD]/2,882,000円[4WD]
リミテッド:3,069,000円[2WD]/3,289,000円[4WD]
以前のXVのパワートレインは、1.6L水平対向4気筒エンジンとマイルドハイブリッドのe-BOXERを備える2L水平対向4気筒エンジンの2種類が用意されていた。駆動方式は、AWDのみであった。
「クロストレック」2WDモデルの走行イメージ
だが、「クロストレック」では1.6L水平対向4気筒エンジンは廃止され、2L水平対向4気筒エンジンのe-BOXER搭載車のみがラインアップされている。その代わり、「XV」には設定されなかった駆動方式、2WD(FF)が新たに加わっているのが同車の大きな特徴のひとつだ。グレードは、ツーリングと上級のリミテッドの2種類で、それぞれに2WDと4WDが用意されている。
公表された価格は、ベーシックなツーリングは予想よりも高かった。プロトタイプ試乗記では、ツーリングは2WDで2,470,000円前後、4WDで2,700,000円前後と予想していたのだが、実際には2,662,000円と2,882,000円であった。予想よりも18〜19万円高くなった理由は、昨今の製造コストや輸送費の高騰を大きく反映させたからのようだ。「クロストレック」の価格を、従来のXV(4WD)と単純に比べると、約23万円値上げされている。いっぽう、上級のリミテッドはツーリングよりも予想に近い価格であった。
また、2グレードの価格差は407,000円になる。明らかになったオプション価格から判断すると、上級のリミテッドはツーリングに比べて48万円相当の装備が加わっている。前述のとおり、価格差は407,000円に収まるので、リミテッドのほうが割安と考えられる。以上を踏まえたうえで、「クロストレック」のグレード選びを考えてみよう。
「クロストレック」の4WDモデルには、路面状況に応じてモードを選択すると、前進時・後退時ともに4輪の駆動力やブレーキなどを適切にコントロールしてくれる「X-MODE」が採用されている
まず、2WDか4WDかは、雪道や悪路を走る機会に応じて決めればいいのだが、割安感に違いがある。4WDの価格は、2WDよりも20万円高いが、4WDには悪路走破性を高めるXモードや、ポップアップ式ヘッドランプウォッシャー、リヤフォグランプなどが加わる。リヤフォグランプは、セットオプション価格から算出すると5,500円で、ほかの装備も加えると2万円に相当する。つまり、4WDの正味価格は価格差の20万円から2万円を差し引いた18万円だ。「クロストレック」は、2WDが新しく加わったことが魅力のひとつとなってはいるものの、4WDも割安と判断できる。
「クロストレック」の上級グレード「リミテッド」には、ステアリング連動LEDヘッドランプが標準装備されている
「クロストレック」のリミテッドに標準装備されている、11.6インチセンターインフォメーションディスプレイ
グレードは、前述のとおりツーリングと上級のリミテッドが用意されており、後者は装備を充実させている。ステアリング操作に連動して照射範囲が変わるフルLEDヘッドランプ、運転席と助手席の電動調節機能、11.6インチ大型センターインフォメーションディスプレイ&インフォテインメントシステム、デジタルマルチビューモニター、自動防眩ルームミラー、アルミパッド付きスポーツペダルなどが加わる。これらの装備を価格に換算して合計すると約48万円に達するが、リミテッドとツーリングの価格差は407,000円に収まる。したがって、前述した上級装備がほしいのなら、リミテッドを選ぶといいだろう。
だが、判断が難しいのはリミテッドに加わる装備の内、限られた品目だけに魅力を感じる場合だ。たとえば、ツーリングにフルLEDヘッドランプと電動フロントシートのセットオプション(159,500円/2WD)だけを装着したいという時には、リミテッドにグレードアップせず、ツーリングを選んでセットオプションを加えたほうがいいだろう。また、11.6インチセンターインフォメーションディスプレイ&インフォテインメントシステムと、デジタルマルチビューモニターのセットオプション(242,000円)のみを加えたい時も同様に、ツーリングを選んでオプションで装着したほうがいいだろう。だが、その両方がほしい時には、リミテッドを選ぶほうが割安になる。つまり、セットオプションが1種類なら、ツーリングにオプションを加える方法を推奨するが、複数になった時はグレードをリミテッドに上級化させたほうが得になる。
なお、「クロストレック」にサイズと価格が最も近いライバル車は、トヨタ「カローラクロス」だ。全長は、「クロストレック」が4,480mm、「カローラクロス」も4,490mmとほぼ等しい。「クロストレック」のツーリング(2,662,000円/2WD)に近いグレードは、「カローラクロス」では1.8Lノーマルエンジンを搭載するZ(2,640,000円/2WD)になる。価格は同程度だが、装備はカローラクロスZのほうが充実している。「クロストレック」のツーリングに備わらない本革+ファブリックのシート生地、運転席の電動調節機能、ハンズフリーパワーバックドアなどが標準装備されているからだ。
爽快な走りやインテリアの質感の高さなどが、ライバル車にはない「クロストレック」の大きな魅力となっている
その代わり、「クロストレック」には2Lエンジンが搭載され、動力性能は1.8Lエンジンのカローラクロスを上まわる。e-BOXERも備わり、2WDのWLTCモード燃費は16.4km/Lなので、カローラクロスの14.4km/Lよりも燃費性能はすぐれている。「クロストレック」は、走行性能や燃費、内装の上質感などが魅力で、「カローラクロス」は高い天井による広い室内や価格の割に充実した装備が魅力的だ。このような、ライバル車の違いなども比較すると、「クロストレック」を選ぶ際の理由が明確になってくるはずだろう。
「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も大切と考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心掛けるモータージャーナリスト