1989年に発売された不朽の名車、「ユーノス・ロードスター」。販売元であるマツダが、各部を全面的、かつ徹底的にリフレッシュした広報車を用意していたので、借り出して山道を走ってみました。
日本でも大ヒットしましたが、欧米では日本以上の人気を博した理由のひとつが色褪せないデザインのよさ
ライトウェイトスポーツカーの本場英国でも大人気を博した傑作ボディ
パワーは限られますが排気音は勇ましく、スポーツドライブ時の高揚効果は高いものがあります
SPECIFICATION
■サイズ
全長:3,970mm
全幅:1,675mm
全高:1,235mm
車重:940kg
■エンジン
種類:1.6L直列4気筒DOHC
最高出力:120PS/6,500rpm
最大トルク:14.0kg・m/5,500rpm
■トランスミッション
5MT
■駆動方式
後輪駆動
■発売当時の車両価格
約1,700,000円
※地域差あり
まずは乗り出した瞬間から、30年前の日本車とは思えない走りの質感の高さに驚愕させられます。旧世代のクルマに乗るとだいたいどんなモデルでも、現代のクルマが失った軽量コンパクトさが新鮮に思えて楽しく感じるものですが、ロードスターはそれとは次元が違います。もちろん、軽量コンパクトであることも大きな魅力ながら、車体の重量バランスのよさ、車体前後の慣性モーメントの小ささに感激できるのです。クルマの物理的な素性のよさというものは、何十年経っても色あせることはない。その事実を再認識させてくれるのでした。
静粛性は低いものの、高速域での直進安定性にも不満はなし
サスペンションは、昔のイメージ以上にしなやかなで驚きました、コーナリングでは意外なほど大きめのロールを許すのですが、その動きは曲線的で実に穏やかであり、ドライバーの意に反した余計な動きや応答遅れがないので、質の高いスポーツ性が満喫できます。これぞまさに「人馬一体」というやつでしょう。
ボディ剛性は、数値的には現代のクルマとは比べものにならないはずなのに、剛性が足りなくてダメだとはまったく思わないところもまた衝撃的です。細くて小さなタイヤをめいっぱい使い切る感覚、タイヤを路面にジンワリと押し付ける感覚が濃厚なので、限界の低さがまったく気になりません。むしろ剛性感と限界性能はこの程度で十分以上だと思え、ボディ剛性をひたすら上げ続けてきた自動車の歴史は何だったのだろうと、考えさせられるほどでした。
軽量ボディに十分なパワー。メリハリに飛んだ回転フィールや勇ましいサウンドは、今のクルマからは得られなくなりました
いまだにお手本のような着座環境のよさ
シフト操作フィールのよさは今のクルマにも負けないレベル。剛性感も驚異的なまでに高く、手応えは秀逸の極みです
クルマの運転の楽しさを得るには、パワーや剛性感は必ずしも必要ではなく、最終的にタイヤを使い切れるかどうかにある。そんなことを教えてくれるスポーツカーが、30年以上も前の日本にすでに生まれていたということにも驚愕させられます。
高速域で幌を開けると風の巻き込みは盛大ながら、バイク感覚が味わえてむしろ新鮮
これから先のクルマがどう変化しても、「運転の楽しさ」を得るためのコツはすべて「ユーノス・
ロードスター」から学べる。マツダが今になってこのクルマを広報車として設定してくれて、本当によかったと思います。
この試乗の模様は動画でもご覧いただけます。
1973年大阪生まれの自動車ライター。免許取得後に偶然買ったスバル車によりクルマの楽しさに目覚め、新車セールスマンや輸入車ディーラーでの車両回送員、自動車工場での期間工、自動車雑誌の編集部員などを経てフリーライターに。3台の愛車はいずれもスバルのMT車。