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走りのフィールが魅力の2台、トヨタ「クラウンクロスオーバー」とマツダ「CX-60」を比較試乗!

今、注目の新型車の1台が、2022年9月に発売されたトヨタの「クラウンクロスオーバー」だ。

「クラウン」は、初代モデルが1955年に発売された伝統ある車種で、日本国内向けの高級セダンとして進化してきた。だが、新型「クラウン」はグローバルモデルとして、海外での本格的な販売を視野に入れているため、セダンとSUVを融合させたクロスオーバーとしてフルモデルチェンジされたのだ。ちなみに、新型「クラウン」は「クラウンクロスオーバー」を皮切りとして、今後はSUV、セダン、スポーツの計4種類のボディタイプが発売予定となっている

そして、今回試乗する「クラウンクロスオーバー」は、一般的なSUV寄りのクロスオーバー車ではなく、後部に独立したトランクスペースが備えられたセダンスタイルが採用されていることが、大きな特徴のひとつとなっている。また、ボディ剛性の向上によって走行安定性や乗り心地が向上しており、全グレードが4WDで後輪操舵の「DRS」が採用されていることなどにも注目したい。

注目の新型車である、トヨタ「クラウンクロスオーバー」(右)とマツダ「CX-60」(左)の2台。今回、筆者(渡辺陽一郎)と深山幸代さんの2人でこの2台を比較試乗して、走りや乗り心地、使い勝手などさまざまな魅力について探ってみた

注目の新型車である、トヨタ「クラウンクロスオーバー」(右)とマツダ「CX-60」(左)の2台。今回、筆者(渡辺陽一郎)と深山幸代さんの2人でこの2台を比較試乗して、走りや乗り心地、使い勝手などさまざまな魅力について探ってみた

そして、「クラウンクロスオーバー」のライバル車だが、同じボディタイプの国産車を探すとライバル不在なので、同価格帯かつ4WDをメインとした国産の上級SUVで探すと、同じく2022年9月に発売されたマツダ「CX-60」が比較的近い車種になる。「CX-60」は、新たにFR(後輪駆動)を基本としたプラットフォームが採用されており、4WDモデルをメインとしてグレード展開されているからだ。

今回は、この「クラウンクロスオーバー」と「CX-60」の2車種を比較してみたい。試乗車のグレードは、「クラウンクロスオーバー」は2.5L直列4気筒ハイブリッドを搭載する「Gアドバンスト」(5,100,000円)で、「CX-60」は3.3L直列6気筒クリーンディーゼルターボにマイルドハイブリッドを組み合わせた「XDハイブリッド プレミアムモダン」(5,472,500円)だ(どちらも4WDモデル)。

なお、今回の比較試乗については、以下の動画でも詳しく紹介しているので、ぜひご覧いただければ幸いだ。

エクステリア、ボディサイズ、視界を比較

まず、外観は「クラウンクロスオーバー」は4ドアクーペ風で、スポーティーに仕上げられている。対する「CX-60」の外観は典型的なSUVデザインだ。

ボディサイズは、「クラウンクロスオーバー」は全長が4,930mm、全幅が1,840mm、全高が1,540mm。全長と全幅は大きいが、全高は1,550mm以下なので立体駐車場を利用しやすい。

「クラウンクロスオーバー」のフロントエクステリアとリアエクステリア。クーペライクなシルエットとリフトアップスタイルが融合した新たなデザインが採用されている

「クラウンクロスオーバー」のフロントエクステリアとリアエクステリア。クーペライクなシルエットとリフトアップスタイルが融合した新たなデザインが採用されている

クラウン クロスオーバーの製品画像
トヨタ
3.52
(レビュー34人・クチコミ1065件)
新車価格:435〜640万円 (中古車:496〜900万円

「CX-60」は、同4,740mm、1,890mm、1,685mm。全長は「クラウンクロスオーバー」より短いものの、全幅はワイドで全高も上まわっている。最小回転半径は、両車ともに5.4mと等しい。

「CX-60」のフロントエクステリアとリアエクステリア。ロングノーズ、ショートデッキなスタイルが特徴的な、SUVらしさあふれる力強い外観だ

「CX-60」のフロントエクステリアとリアエクステリア。ロングノーズ、ショートデッキなスタイルが特徴的な、SUVらしさあふれる力強い外観だ

CX-60の製品画像
マツダ
3.77
(レビュー102人・クチコミ3766件)
新車価格:299〜626万円 (中古車:299〜609万円

運転席に座ると、「クラウンクロスオーバー」は視線の位置が少し低く感じる。さらに、全長は「クラウンクロスオーバー」のほうが長いものの、全幅が抑えられているので、「CX-60」よりも「クラウンクロスオーバー」のほうが運転しやすい印象を受ける。

深山さん
深山さん

クラウンクロスオーバーは、外から見たときには天井に傾斜があるので圧迫感があるかなと思ったのですが、実際に乗ってみるとそんなことはなく、視界もよくて運転しやすいですね。CX-60は、背が高くて視界がいいので、外から見た大きさよりは運転しやすく思えたのですが、クラウンクロスオーバーよりも5センチ広い車幅が思ったよりも幅広に感じられて、左右に気を使う場面が多くありました

内装デザイン、質感、操作性を比較

内装は、「クラウンクロスオーバー」のほうはメッキパーツなどの使用が抑えられていることもあって、少しシンプルな印象を受ける。車両価格が510万円に達するので、ユーザーによってはインパネなどの見栄えに対して少々不満を感じるかもしれない。

「クラウンクロスオーバー」のインテリアは、ディスプレイや操作スイッチを水平方向に集約したことによって、直感的に操作できる機能的なレイアウトが採用されている。また、飾り立てることなく温かみが感じられる金属加飾の「WARM STEEL」や、握り心地のいいシフトノブなどが採用されている

「クラウンクロスオーバー」のインテリアは、ディスプレイや操作スイッチを水平方向に集約したことによって、直感的に操作できる機能的なレイアウトが採用されている。また、飾り立てることなく温かみが感じられる金属加飾の「WARM STEEL」や、握り心地のいいシフトノブなどが採用されている

対する「CX-60」の内装は、試乗車のXDハイブリッドプレミアムモダンは上級グレードということもあって内装は上質だ。インパネには明るい色彩の織物が使われ、ステッチ(縫い目)には、掛け縫いと呼ばれる手法が用いられているなど、繊細に仕上げられている。ただし、「CX-60」はグレードによって内装の質感が大きく異なる。Sパッケージ以下は、内装の質感が下がるので注意したい。

「CX-60」のインテリア。試乗車の「XDハイブリッド プレミアムモダン」は、日本の美意識が感じられる織物や本杢の加飾が用いられるなど、上質な内装へと仕上げられている

「CX-60」のインテリア。試乗車の「XDハイブリッド プレミアムモダン」は、日本の美意識が感じられる織物や本杢の加飾が用いられるなど、上質な内装へと仕上げられている

「CX-60」でひとつ注意したいのは、セレクト(AT)レバーの操作方法についてだ。P(パーキング)レンジからD(ドライブ)レンジに切り替える際、左側へ寄せてから手前にスライドさせるタイプのレバーが採用されている。Pレンジの左側がR(リバース/後退)レンジなので、慣れないと操作する時に少々気を使うことになる。

「CX-60」には、「MX-30」と同様の独特な操作方法のセレクトレバーが採用されている

「CX-60」には、「MX-30」と同様の独特な操作方法のセレクトレバーが採用されている

内装については、上級グレードであれば「CX-60」のほうが質感は高く、満足できるだろう。

前後席の居住性を比較

フロントシートは、「クラウンクロスオーバー」の座り心地は先代までのセダンからの継承が感じられるものだ。腰が当たる背もたれの下部は硬めで長距離移動時などに快適だが、大腿部が触れる部分などは適度にやわらかく、従来の「クラウン」の着座感覚が思い起こされる。

「クラウンクロスオーバー」のフロントシートは、従来の「クラウン」を思い起こさせるような座り心地のよさだ

「クラウンクロスオーバー」のフロントシートは、従来の「クラウン」を思い起こさせるような座り心地のよさだ

いっぽう、「CX-60」のフロントシートはボリューム感があって、座り心地は欧州車のように硬めだ。乗員の体をしっかりとサポートしてくれるので、ワインディングなどを走っても着座姿勢は乱れにくい。「クラウンクロスオーバー」の座り心地はリラックスできる感覚で、「CX-60」はスポーティーな感覚が強められている。

深山さん
深山さん

個人的に、CX-60のフロントシートの着座姿勢はとても好みですね。姿勢を意識しなくても背筋がしっかりと伸びますし、変なところに力が入らずに姿勢よく運転できる感じです

「CX-60」のフロントシートは、輸入車のようなしっかりとした硬めの座り心地だ

「CX-60」のフロントシートは、輸入車のようなしっかりとした硬めの座り心地だ

後席については、互角と言えそうだ。「クラウンクロスオーバー」に身長170cmの大人4名が乗車した際、後席に座る乗員の膝先には握りコブシ2つ半ほどの余裕がある。足元空間は十分に広いが、全高が低めでルーフを後方に向けて下降させているので、着座位置が下がる。そのため、「クラウンクロスオーバー」の後席に座ると、腰が落ち込んで膝が持ち上がる格好になる。

「クラウンクロスオーバー」の後席は、膝先空間は広いが少し腰が落ち込む座り方になる

「クラウンクロスオーバー」の後席は、膝先空間は広いが少し腰が落ち込む座り方になる

「CX-60」の後席は、前席と同様に座り心地は硬めだ。後席の膝先空間は、「クラウンクロスオーバー」と同じ測り方で握りコブシ2つ分になる。「CX-60」の膝先空間は「クラウンクロスオーバー」よりも若干狭いのだが、着座姿勢については「クラウンクロスオーバー」よりも自然な印象だ。

「CX-60」は、膝先空間は広いものの座り心地はフロントシートと同様に少し硬めだ

「CX-60」は、膝先空間は広いものの座り心地はフロントシートと同様に少し硬めだ

ラゲッジルーム比較

「クラウンクロスオーバー」は、セダンとして見れば広い荷室を備えているが、大きなリアゲートを備える「CX-60」に比べると積載性は下がる。SUVとしての実用性の高さについては、これから登場する「クラウンエステート」が本命になるだろう。SUVならではの積載性を希望するユーザーには「CX-60」を推奨する。

「クラウンクロスオーバー」のラゲッジ容量は450L。9.5インチのゴルフバッグを3個まで積むことができる

「クラウンクロスオーバー」のラゲッジ容量は450L。9.5インチのゴルフバッグを3個まで積むことができる

「CX-60」のラゲッジ容量は、リアシートを立てた状態で570L。荷室の高さが開口部と同じなので、荷物をスムーズに出し入れできる

「CX-60」のラゲッジ容量は、リアシートを立てた状態で570L。荷室の高さが開口部と同じなので、荷物をスムーズに出し入れできる

動力性能、走行フィールを比較

「クラウンクロスオーバー」が搭載する2.5L直列4気筒ハイブリッドの動力性能は、2.8LのNAエンジンに相当する。加速は滑らかで、アクセル操作によっては少し粗いエンジンノイズが聞こえるものの、基本的には静かなので幅広いユーザーに推奨できるものだ。

深山さん
深山さん

クラウンクロスオーバーは走り出しがスムーズでとても乗りやすくて、高速道路の合流などでアクセルを踏めばしっかりと加速してくれるので、安心して運転できますね。エンジンはとても静かで、気にしなければエンジンがかかっているのかどうかも、ほとんどわかりません

「クラウンクロスオーバー」の走行イメージ

「クラウンクロスオーバー」の走行イメージ

いっぽう、「CX-60」は3.3L直列6気筒クリーンディーゼルターボとマイルドハイブリッドの組み合わせで、低回転域からパワフルで高い駆動力を発揮する。最大トルクは550N・m(56.1kgf・m)[1,500〜2,400rpm]なので、ガソリンエンジンに当てはめると5Lに相当する。

「CX-60」の走行イメージ

「CX-60」の走行イメージ

「CX-60」は動力性能に余裕があり、吹け上がりも活発でディーゼルなのに4,500rpm付近まで滑らかに回る。その代わり、2,000rpm以下ではディーゼルのノイズが耳障りに感じることもある。速度が高まると、タイヤが回転する時に発する騒音なども大きくなって目立たないが、速度が下がるとディーゼルだとわかる音だ。

走行安定性比較

「クラウンクロスオーバー」は、全高が1,540mmに抑えられているので重心が低く、セダンボディによって剛性も高められている。さらに、後輪操舵の「DRS」が全グレードに標準装備されているので、時速60km以上になると後輪を前輪と同じ方向に操舵して接地性を高める。そのため、走行安定性にすぐれており、かつ適度によく曲がってくれる。

「クラウンクロスオーバー」の走行イメージ

「クラウンクロスオーバー」の走行イメージ

「CX-60」は、後輪駆動の採用もあって、操舵角に応じて確実に曲がるスポーティーな感覚が強められている。ただし、「クラウンクロスオーバー」に比べて全高は145mm高く、XDハイブリッドプレミアムモダンの車重は1,900kgを超える。そのため、たとえば危険を避けるためにステアリングを素早く動かす時などには、後輪の接地性が少し不足していると感じられた。「クラウンクロスオーバー」は走りのバランスがよく、「CX-60」は走りの楽しさを追求していると言えそうだ。

深山さん
深山さん

CX-60は、視界が高いので見やすくて運転しやすいですね。高速道路などで車線変更をしても、ふらつくような感じがまったくなくて、とても素直に動いてくれます

「CX-60」の走行イメージ

「CX-60」の走行イメージ

乗り心地比較

「クラウンクロスオーバー」は、時速50km以下では乗り心地が硬めに感じる。それでも、粗さや突き上げ感は抑えられている。時速50kmを超えると、快適性が向上する。

深山さん
深山さん

クラウンクロスオーバーはホントに乗り心地がよくて、安心して乗っていられるクルマだと思います。ただ、乗っていて気持ちがいいので、ついついスピードを出しすぎてしまいそうになることに注意ですね(笑)

市街地では、「CX-60」よりも「クラウンクロスオーバー」のほうが乗り心地は快適だ

市街地では、「CX-60」よりも「クラウンクロスオーバー」のほうが乗り心地は快適だ

「CX-60」は、やはり硬さが目立つ。市街地では、上下に揺すられる感覚がともない、段差では少し突き上げ感が生じる。「CX-60」は、前述のとおりシートの座り心地も少々硬めなので、乗り心地の硬さがさらに強調された面もある。比較すると、乗り心地は「クラウンクロスオーバー」のほうが快適だ。

深山さん
深山さん

CX-60の乗り心地は、少し引き締まっていてちょっと硬めかなという感じです。大きな繋ぎ目とかでは、少し振動を感じますね

燃費性能比較

今回の取材では、高速道路をおよそ70%、市街地をおよそ30%という比率で走行した。この時の実走燃費の数値は、「クラウンクロスオーバー」が25.6km/L、「CX-60」は24.7km/Lであった。

WLTCモード燃費は、「クラウンクロスオーバー」が22.4km/L、「CX-60」は21km/Lなので、高速道路を中心に走ったこともあって、両車とも実走燃費がWLTCモードよりも上回っている。

「CX-60」は、燃費のよさに加えて使用燃料が軽油のため、トータルの燃料代が安く済むメリットがある

「CX-60」は、燃費のよさに加えて使用燃料が軽油のため、トータルの燃料代が安く済むメリットがある

燃費値は「クラウンクロスオーバー」が上まわっているが、「CX-60」はディーゼルエンジンなので使用燃料は軽油になる。軽油の価格は、レギュラーガソリンに比べて1リッターあたり20円ほど安いため、燃料代は「CX-60」が安くなる場合もあるだろう。「CX-60」は、動力性能も高く、燃費と動力性能のバランスにすぐれている。

おすすめユーザー

両車ともに、長距離を移動する機会の多いユーザーには適している。そのうえで、「クラウンクロスオーバー」は静かで快適な走りを楽しみたいユーザーにピッタリだ。立体駐車場を使う用途にも向いている。

そして、「CX-60」は運転の楽しさを味わいたいユーザーに向けて推奨したい。クルマ作りの基本的な考え方は、スポーツカーのマツダ「ロードスター」などと変わらないからだ。さらに、「CX-60」はSUVデザインなので、荷室が広くて使いやすく、実用性を重視するユーザーにも適している。機能と価格のバランスにおいても、「CX-60」のほうが割安と言えそうだ。

渡辺陽一郎

渡辺陽一郎

「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も大切と考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心掛けるモータージャーナリスト

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クラウン クロスオーバーの製品画像
トヨタ
3.52
(レビュー34人・クチコミ1065件)
新車価格:435〜640万円 (中古車:496〜900万円
CX-60の製品画像
マツダ
3.77
(レビュー102人・クチコミ3766件)
新車価格:299〜626万円 (中古車:299〜609万円
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