国内外で人気のクロスオーバーSUVだが、その中心に位置する売れ筋のモデルは、全長が4,600mm前後に設定されているミドルクラスだ。
2022年7月に登場した日産 新型「エクストレイル」と、かつてからのライバル車であるスバル「フォレスター」。今回は、2車の内外装の質感やシート、使い勝手などの詳細について比較してみた
国産で人気のミドルクラスSUVといえば、スタイリッシュで悪路走破性の高い日産「エクストレイル」と、スバル「フォレスター」の2台があげられる。「エクストレイル」は、2022年7月にフルモデルチェンジされているので、現行モデルは車体の設計が新しい。パワーユニットは、ハイブリッドの「e-POWER」のみのラインアップで、圧縮比を変化させる機構が組み込まれた、1.5L直列3気筒可変圧縮比エンジンの「VCターボ」が搭載されているのが特徴的だ。
いっぽうの「フォレスター」には、2L 水平対向4気筒エンジンへマイルドタイプに近いハイブリッドが組み込まれた「e-BOXER」と、「レヴォーグ」などに積まれているものと同じ1.8L 水平対向4気筒 直噴ターボエンジンの2種類のパワートレインがラインアップされている。現行モデルは、2018年にフルモデルチェンジされているので少々時間が経っているものの、2020年の改良によって前述の1.8L 直噴ターボエンジンが追加され、2021年にはさらなる大幅改良によって、フロントフェイスやアイサイトの刷新、変速や4WD制御の改良が図られるなどの進化を遂げている。
そこで、今回は「エクストレイル」と「フォレスター」の内外装やラゲッジの使い勝手などを、筆者(渡辺陽一郎)と深山幸代さんの2人で比較チェックしてみたい。今回、比較のために用意したグレードは、「エクストレイル」は「G e-4ORCE」グレード、「フォレスター」は e-BOXERが搭載された「Advance」グレードで、どちらも駆動方式は4WDになる。
なお、今回の比較については、以下の動画でも詳しく紹介しているので、ぜひご覧いただければ幸いだ。
まず、「エクストレイル」の外観デザインからだが、 “タフギア”と呼ばれる初代からの開発コンセプトが受け継がれており、新型ではその堅牢さとともに、都会が似合うスタイリッシュさを両立させたデザインが採用されている。
「エクストレイル」のフロントエクステリアとリアエクステリア。フロントのVモーショングリルは先代から受け継がれているものの、フロントフェイスは2段のヘッドライトを中心に大きく変更されている
また、特徴としては2段になっている個性的なデザインのヘッドライトだ。上段にはポジションランプとターンランプ、下段にはロービームとハイビームが備えられており、G、G e-4ORCEグレードであればターンランプは光が流れるシーケンシャルタイプになる。
いっぽう、「フォレスター」はスバルのデザインフィロソフィーである「ダイナミックソリッド」が採用されており、SUVのたくましさや機能的な使いやすさが感じられる外観デザインが表現されている。また、スバルは視界のよさを優先させたクルマ作りが行われているため、外観もそれに沿った王道のスタイルになる。
「フォレスター」のフロントエクステリアとリアエクステリア。画像はAdvanceグレードのため、前後バンパーの下部にアンダーガードが装着されている
ボディサイズ(全長×全幅×全高)は、「エクストレイル」が4,660×1,840×1,720mmで、「フォレスター」(Advance)が4,640×1,815×1,715mm。比較すると、2車はほぼ同サイズで、最小回転半径も5.4mと同じだ。視界については、側方や後方まで含めると「フォレスター」のほうがすぐれている。
実際に2車の外観を見比べてみると、エクストレイルは先進性のある都会的なイメージで、フォレスターのほうは男性的で力強いイメージかなと感じました。同じようなボディサイズのクロスオーバーSUVなのですが、フロントフェイスだけを見てもかなり印象が異なりますね
内装の質感は、設計が新しいこともあって「エクストレイル」のほうが上質感を覚えるものだ。
「エクストレイル」のインテリア。インパネには、シルバーの装飾や木目調のフィニッシャーが用いられるなど、高級感が漂うインテリアとなっている
「エクストレイル」のインパネは、左右に広がりが感じられるデザインとなっており、メーターには2種類の表示モードが選択できる12.3インチの「アドバンスドドライブアシストディスプレイ」を採用。さらに、センターディスプレイにも12.3インチの「Nissan Connectナビゲーションシステム」など先進的な装備が採用されている。
エクストレイルは、フロントセンタートレイやドアトリム、シフトなどがアンビエントライト(※)で光るようになっているところが、とてもオシャレだなと感じました
(※ アンビエントライトは、G、G e-4ORCEグレードにのみ標準装備)
「フォレスター」は、フルモデルチェンジが2018年と少し前ではあるものの、インパネのデザインなどに古さは感じさせず、試乗車がAdvanceという上級グレードなこともあって高級感のある内装となっている。
「フォレスター」のインテリア。試乗車両には、オプションのブラウン本革シートが採用されていることもあって、上質な雰囲気となっている。オーソドックスだが、SUVらしい力強さを感じさせるインテリアだ
フォレスターは、一つひとつのボタン配置などが見やすく、使いやすいように配慮して開発されているんだなというのが、実際に座ってみるとよくわかりますね
インストルメントパネルとコンソールを連続させることで、SUVらしい力強さと開放感が表現されており、ドアトリムはステッチや立体感のあるツインキルト加工を施すことで、上質な雰囲気を感じさせる。また、「フォレスター」のATレバーはオーソドックスなタイプなので、電制シフトレバーの「エクストレイル」よりも操作感覚はなじみやすいだろう。
「フォレスター」のATレバー(上)と、「エクストレイル」のシフトレバー(下)。フォレスターは、従来と同じタイプのレバーなので操作しやすい
フロントシートの座り心地は、2車を比較すると「エクストレイル」のほうがしなやかだ。逆に、リアシートは「フォレスター」のほうが、ボリューム感があって快適だ。
「エクストレイル」のフロントシート(上)とリアシート(下)
また、頭上や足元の空間の広さは、2車ともに同程度になる。身長170cmの大人4名が乗車して、後席に座る乗員の膝先には握りコブシ2つ半の余裕があり、どちらもファミリーカーとして使いやすい、快適な広さを持ち合わせている。
「フォレスター」のフロントシート(上)とリアシート(下)
前後席ともに、床の高さは「フォレスター」のほうが低めだ。そのため、「エクストレイル」よりも「フォレスター」のほうが乗り降りしやすい。
さらに、最低地上高は「エクストレイル」の2WDで200mm、4WDで185mmだが、「フォレスター」は220mmに達する。「フォレスター」は乗降性が良好なうえに、悪路走破性も高い。
荷室長(荷室の奥行寸法)は、両車ともに同程度だ。どちらもリヤゲートの角度が立てられており、十分な積載容量が確保されている。
「エクストレイル」のラゲッジルーム
「フォレスター」のラゲッジルーム
シートアレンジは、「エクストレイル」は後席に前後のスライド機能が採用されているので、積載する荷物の大きさや量に合わせて荷室容量を変化させることができる。対する「フォレスター」は、前述のように座り心地が快適な代わりに、スライド機能は採用されていない。
「エクストレイル」のリアシートは前後スライドが可能なため、後席空間を広げてゆったりと座ったり、前方へスライドさせることで荷室を広げたりすることができる
エクストレイルは、グレードによってはオートバックドアにハンズフリー機能が標準装備されている(※2)ので、荷物を持っているときなど両手がふさがっているときにも、リアバンパーの下に足を入れるだけで開閉できるので、とても便利ですね。また、フォレスターは荷室に付いているレバーを引くだけでリアシートをワンタッチで倒せるのが、便利に感じました
(※2 G、G e-4ORCEに標準装備。X、X e-4ORCEはメーカーオプションで設定可能)
「エクストレイル」のG、G e-4ORCEには、リアバンパーの下に足元を入れて引くと、バックドアが自動で開閉するハンズフリー機能付のリモコンオートバックドアが標準装備されている
「フォレスター」は、荷室からリアシートを倒すレバーが備えられていて便利だ
そのほか、「エクストレイル」の荷室には、100VのAC電源(1500W)が、GとG e-4ORCEグレードに標準装備されているので、使い勝手が高く便利だ。ちなみに、AC電源はほかの2列シート車のグレードにもオプションで装着できるのも、親切な配慮と言えるだろう(3列シート車のみ、設定不可)。
ボディサイズがほぼ同じ2台ではあるが、内外装のデザイン以外にも、フロントシートやリアシートの座り心地、荷室の使い勝手や装備など、それぞれに違いが見られた。両車を比較すると、「エクストレイル」のほうが内装の質感はやや高く、リアシートの前後スライドが可能で、荷室にAC電源が備えられているなど、使い勝手が高いように感じられる。次回は、両車の走りの違いや燃費、価格の割安感などについてお伝えしたい。
「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も大切と考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心掛けるモータージャーナリスト