レビュー

マツダ「CX-60」の豊富なパワートレイン&グレード選び。ベストチョイスはこれ!

近年はSUVが売れ筋だが、人気車は納期の長さがネックとなっている。トヨタの販売店によると、「ハリアーハイブリッドの納期は約10か月で、一部のグレードは受注を停止した」と言う。また、ホンダは「ZR-Vとヴェゼルのノーマルエンジン車が約9か月、e:HEV(ハイブリッド)は1年に達する」とのことだ。

だが、マツダの新型SUV「CX-60」は、他銘柄に比べると納期は短めだ。販売店では、「どのグレードでも、3か月半から4か月で納車できる」と言う(記事掲載時点)。設計が新しく、SUVが早くほしいユーザーにとって「CX-60」は狙い目だろう。

4種類のパワートレインと16タイプのグレードをラインアップする、マツダの新型SUV「CX-60」。今回は、どのパワートレインとグレードがおすすめなのかを、試乗した経験も踏まえてお伝えしたい

4種類のパワートレインと16タイプのグレードをラインアップする、マツダの新型SUV「CX-60」。今回は、どのパワートレインとグレードがおすすめなのかを、試乗した経験も踏まえてお伝えしたい

CX-60の製品画像
マツダ
3.77
(レビュー102人・クチコミ3762件)
新車価格:299〜626万円 (中古車:299〜609万円

「CX-60」を購入するに当たって、気になるのはパワートレインとグレードの多さだろう。パワートレインは、2.5L直4ガソリンエンジンの「SKYACTIV-G 2.5」、3.3L直6ディーゼルターボエンジンの「SKYACTIV-D 3.3」、3.3L直6ディーゼルターボエンジンにモーターが組み合わされたマイルドハイブリッドの「e-SKYACTIV D」、2.5L直4ガソリンエンジンにモーターが組み合わされたプラグインハイブリッドの「e-SKYACTIV PHEV」の4種類が用意されている。さらに、グレードは以下のように16タイプもラインアップされている。

そこで、今回は豊富すぎるがゆえに選びにくい「CX-60」でおすすめのパワートレインとグレードを、試乗した経験も交えてお伝えしたい。

■マツダ「CX-60」のグレードラインアップと価格
※価格はすべて税込
-SKYACTIV-G 2.5(2.5L直4ガソリンエンジン)-
25S Exclusive Mode:4,070,000円(4WD)/3,844,500円(2WD)
25S L Package:3,641,000円(4WD)/3,415,500円(2WD)
25S S Package:3,217,500円(4WD)/2,992,000円(2WD)
-SKYACTIV-D 3.3(3.3L直6ディーゼルターボエンジン)-
XD Exclusive Mode:4,658,500円(4WD)/4,433,000円(2WD)
XD L Package:4,229,500円(4WD)/4,004,000円(2WD)
XD S Package:3,806,000円(4WD)/3,580,500円(2WD)
XD:3,465,000円(4WD)/3,239,500円(2WD)
-e-SKYACTIV D(3.3L直6ディーゼルターボエンジン+モーター)-
XD-HYBRID Premium Modern:5,472,500円(4WD)
XD-HYBRID Premium Sports:5,472,500円(4WD)
XD-HYBRID Exclusive Modern:5,054,500円(4WD)
XD-HYBRID Exclusive Sports:5,054,500円(4WD)
-e-SKYACTIV PHEV(2.5L直4ガソリンエンジン+モーター)-
PHEV Premium Modern:6,264,500円(4WD)
PHEV Premium Sports:6,264,500円(4WD)
PHEV Exclusive Modern:5,846,500円(4WD)
PHEV Exclusive Sports: 5,846,500円(4WD)
PHEV S Package:5,390,000円(4WD)

まず、最初に結論からだが、最も買い得で推奨度が高いパワートレインは、SKYACTIV-D 3.3だろう。さらに、その中での推奨グレードは、XD L Package(価格は2WDが4,004,000円)になる。

SKYACTIV-D 3.3は、直列6気筒ディーゼルエンジンならではの図太く豪快な加速感が魅力的だ

SKYACTIV-D 3.3は、直列6気筒ディーゼルエンジンならではの図太く豪快な加速感が魅力的だ

SKYACTIV-D 3.3は、実用回転域における駆動力が高い。1,400rpm付近から湧き上がるように駆動力が立ち上がり、ディーゼルエンジンながら高回転まで吹け上がる。フル加速時には、4,800rpm付近でシフトアップするなど、ガソリンエンジンのようによく回る印象だ。最高出力は231PS、最大トルクは51kg・mと、動力性能も十分に高い。

SKYACTIV-D 3.3は、(他グレードに比べると)車重が比較的軽いため、足まわりもe-SKYACTIV Dやe-SKYACTIV PHEVなどに装着されているものとは異なっている。SKYACTIV-D 3.3は、走りのバランスを整えるために後輪側のスタビライザー(ボディの傾き方を制御するパーツ)が敢えて装着されていない。そのため、SKYACTIV-D 3.3搭載グレードは、LサイズSUVにもかかわらず運転感覚が軽快だ。まるで、ミドルサイズのようによく曲がり、ステアリング操作に対する反応が軽快なので、運転する楽しさが感じられる。

SKYACTIV-D 3.3搭載モデルは後輪側のスタビライザーを敢えて採用せず、コーナーをグイグイと曲がっていくマツダならではの走りの楽しさが味わえる

SKYACTIV-D 3.3搭載モデルは後輪側のスタビライザーを敢えて採用せず、コーナーをグイグイと曲がっていくマツダならではの走りの楽しさが味わえる

また、直進安定性が高いのはe-SKYACTIV Dやe-SKYACTIV PHEVなのだが、SKYACTIV-D 3.3は前述のとおり後輪側にスタビライザーが装着されていない代わりに足まわりが柔軟で、車両のコントロール領域が広い。たとえば、コーナーリング中にアクセルペダルを敢えて戻して、車両の進行方向を内側へ意図的に向けるといったことも可能だ。このような運転感覚は、マツダ「ロードスター」にも少し似ている。また、SKYACTIV-D 3.3は(e-SKYACTIV Dなどに比べて)乗り心地も快適だ。ドライバーに限らず、同乗者にもやさしい乗り味になっている。

いっぽう、プラグインハイブリッドのe-SKYACTIV PHEVは、駆動用電池が十分に充電された状態ではエンジンを停止させて、電気自動車と同じ様にモーターだけで走行する。この時はモーター駆動なのでノイズは小さく、加速は力強く滑らかだ。アクセルペダルをさらに深く踏むとエンジンが始動するが、この時もノイズが急に拡大するようなことはない。どちらかと言うと、タイヤノイズのほうが聞こえてきて、エンジン音はあまり目立たないほどだった。

e-SKYACTIV PHEVに搭載される2.5L直4ガソリンエンジンの最高出力は188PS、最大トルクは25.5kg-mだが、モーターの駆動力を含めたシステム最高出力は、324PS、51kg-mにも達する。そのため、フル加速時の動力性能も高い。e-SKYACTIV PHEVは、回転数の上昇に伴って動力性能が高まるエンジン特性と、高出力を瞬時に発揮できるモーター特性が組み合わされて、気持ちのいい加速感を味わえる。エンジンとモーターのいいところをうまく掛け合わせているe-SKYACTIV PHEVは、吸気音のチューニングも行われており、ハイブリッド車というよりも、排気量の大きなガソリンエンジン車を運転しているかのような気分を味わえる。

e-SKYACTIV PHEVは、ガソリンエンジンとモーター出力の組み合わせのバランスがよく、車重の重さを感じさせない静かで軽やかな加速感が魅力的だ

e-SKYACTIV PHEVは、ガソリンエンジンとモーター出力の組み合わせのバランスがよく、車重の重さを感じさせない静かで軽やかな加速感が魅力的だ

ちなみに、e-SKYACTIV PHEVがエンジンを作動させず、充電された電気だけで走行できる距離は、WLTCモードで74km。したがって、短距離の外出ならエンジンを始動させずに済む。この特徴を備えた上で、5L前後のガソリンエンジンにも相当する、パワフルな走りを満喫できるのがe-SKYACTIV PHEVだ。

■マツダ「CX-60」のグレードラインアップと価格
※価格はすべて税込
-SKYACTIV-G 2.5(2.5L直4ガソリンエンジン)-
25S Exclusive Mode:4,070,000円(4WD)/3,844,500円(2WD)
25S L Package:3,641,000円(4WD)/3,415,500円(2WD)
25S S Package:3,217,500円(4WD)/2,992,000円(2WD)
-SKYACTIV-D 3.3(3.3L直6ディーゼルターボエンジン)-
XD Exclusive Mode:4,658,500円(4WD)/4,433,000円(2WD)
XD L Package:4,229,500円(4WD)/4,004,000円(2WD)
XD S Package:3,806,000円(4WD)/3,580,500円(2WD)
XD:3,465,000円(4WD)/3,239,500円(2WD)
-e-SKYACTIV D(3.3L直6ディーゼルターボエンジン+モーター)-
XD-HYBRID Premium Modern:5,472,500円(4WD)
XD-HYBRID Premium Sports:5,472,500円(4WD)
XD-HYBRID Exclusive Modern:5,054,500円(4WD)
XD-HYBRID Exclusive Sports:5,054,500円(4WD)
-e-SKYACTIV PHEV(2.5L直4ガソリンエンジン+モーター)-
PHEV Premium Modern:6,264,500円(4WD)
PHEV Premium Sports:6,264,500円(4WD)
PHEV Exclusive Modern:5,846,500円(4WD)
PHEV Exclusive Sports: 5,846,500円(4WD)
PHEV S Package:5,390,000円(4WD)

だが、e-SKYACTIV PHEVは車両価格が高いのがネックになる。前述の、実際に試乗したPHEV Exclusive Modern(4WD)の価格は5,846,500円にも達する。「SKYACTIV-G 2.5」を積む25S Exclusive Mode(4WD)に比べると1,776,500円高く、e-SKYACTIV PHEVに装着される100V・1500Wの電源コンセントなどの装備を差し引いても、約170万円もの価格差がある。その代わり、e-SKYACTIV PHEVは、申請すると補助金の交付を受けられる場合もある。2022年度の実績を見ると、「CX-60」e-SKYACTIV PHEVの補助金交付額は548,000円だ。この場合の最終的な実質価格差は、前述の170万円から補助金交付額を差し引いた115万円になる。

だが、走行性能や前述のPHEVの補助金などを含めても、いちばん買い得なグレードはSKYACTIV-D 3.3を搭載するXD L Packageだ。価格は2WDが4,004,000円で、ライバルとなる「ハリアーハイブリッド」G(2WD)の4,119,000円、また4WDではあるが「レガシィアウトバック」X-BREAK EXの4,147,000円をも下まわる。

なお、注意したいのは、同じSKYACTIV-D 3.3を搭載するXD S Packageについてだ。同グレードは、実用装備を充実させて価格は3,580,500円(2WD)に抑えられているが、インパネなどの内装の質感が大幅に下がる。そのため、「CX-60」を購入して相応の満足感を得たいならSKYACTIV-D 3.3に限らず、どのパワーユニットにおいてもL Package以上のグレードを検討したいところだ。

画像は、XD L Packageのインテリア。センターコンソールやインパネ表皮など、上質な内装へと仕上げられている

画像は、XD L Packageのインテリア。センターコンソールやインパネ表皮など、上質な内装へと仕上げられている

また、マイルドハイブリッドのe-SKYACTIV Dは、e-SKYACTIV PHEVと同じく駆動方式が4WDのみで上級グレード専用モデルなので、車両価格はすべてのグレードで500万円を超える。XD-HYBRID Exclusive Sports/Modernは5,054,500円で、マイルドハイブリッドではないSKYACTIV-D 3.3のXD Exclusive Mode(4WD)に比べると396,000円高い。たとえば、トヨタなどはNAエンジン搭載車とフルハイブリッド車の価格差は35万円程度に抑えられている車種が多いので、マイルドハイブリッド車で価格差が396,000円に達するのは少々割高に感じられる。

以上から、「CX-60」における買い得なベストグレードは「XD L Package」になる。2WDか4WDかは、用途に応じて検討しよう。

渡辺陽一郎

渡辺陽一郎

「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も大切と考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心掛けるモータージャーナリスト

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3.77
(レビュー102人・クチコミ3762件)
新車価格:299〜626万円 (中古車:299〜609万円
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