「BMWのシルキーシックスをMTで味わう」ことに憧れる自動車ライター、マリオ高野です。
このほど、BMWの新型「X1」「iX1」の発表会を取材してきました。BMWの「X」シリーズは、一般的にはSUV(多目的スポーツ車)と呼ばれるジャンルにあたりますが、BMWは1999年に発売した初代「X5」の頃からSUVではなく、「SAV(Sports Activity Vehicle/スポーツ・アクティビティ・ビークル)」と呼んでおり、独自性を発揮しています。
新型「X1」「iX1」の商品概要を説明する、BMWブランドマネジメントディビジョンプロダクトマネージャー ケビン・プリュボさん。安全性、運動性、デザイン、デジタルの機能に妥協はないと語ります
BMWが「SAV」と呼ぶ車高の高いクロスオーバー車「X」シリーズは、泥や土汚れが似合うSUVとは一線を画す新しいカテゴリーとして世界中で大人気を博し、車種展開を拡大し続け、今では「X1」「X2」「X3」「X4」「X5」「X6」「X7」の7種類を設定。数字の大きさと車格がおおむね一致するかたちで、世界的人気のクロスオーバー車がフルラインアップされています。
今回の新型で3世代目にあたる「X1」は、BMWのSAVのなかではエントリーモデルに位置付けられますが、より幅広い層に訴求するべく先進性やラグジュアリー性を高めたとアピールします。
東京ミッドタウンにて実施された発表会では、有名人気モデルや俳優をゲストに招いてトークショーを展開するなど、若くてセンスのよい、比較的裕福な層の琴線に触れそうな、時代の最先端をゆくニューモデルらしい演出がなされました。
今回発表されたのは、ガソリンエンジン車が2グレード(「X1 xDrive20i xLine」「X1 xDrive20i M Sport」いずれも556万円)、フル電動車版の「iX1」が2グレード(「iX1 xDrive30 xLine」「iX1 xDrive30 M Sport」いずれも668万円)の4種類ですが、会場に展示されたのはフル電動車版の「iX1 xDrive30」系のみ。これより、BMWは日本でも“電気自動車推し”であることがわかります。
アダプティブLEDヘッドライトが印象的なフロントマスク。ボディサイズは全長4,500mm、全幅1,835mm、全高1,620mmで、日本の都会でも持て余さない感覚で乗れます
ボディカラーは12色を設定。今回の発表会では「ユタ・オレンジ・メタリック」とホワイトが展示されました。ホワイトは、メタリック系の「ミネラル・ホワイト」と、ソリッド系の「アルピン・ホワイト」の2種類を用意
BMWデザインのアイデンティティーであるキドニーグリルが印象的。エンジンを搭載しないフル電動車では本来必要のない機能ですが、視覚的には欠かせないものとなっています
フル電動車の「iX1 xDrive30」が搭載するリチウム・イオンバッテリー容量は116.0Ah/66.5kWh、1充電の走行距離は465km。車重は、ガソリン車の「X1 xDrive20i」が1,640kg、フル電動車の「iX1 xDrive30」が2,030kg
リヤのライトは立体的なLED式を採用。対応するスマホやスマートウォッチがあるだけでロック解除が可能なうえ、テールゲートの自動開閉機能も備えています
「BMW デジタル・キー・プラス」の採用により、ドアの施錠や解錠、パワートレーンの始動などはスマートフォンを持っているだけで行え、エアコンON/OFFの遠隔操作も可能。スマホ5台までバーチャルキーとして登録できます
発表会では「よりアクティブに、よりドラマチックに彩られる日々の中に、かけがえのない人の笑顔の中に、あなたの求めていた歓びがきっと見つかります」とのメッセージを込めた「#Discover your JOY」という言葉でテーマ性を表現。最先端技術が満載のラグジュアリーな小型SAVが華々しく発表されたわけですが、昔ながらのクルマ好きや、マニアックな目線でBMWを好ましく見てきた層にとっても、心惹かれるポイントが少なくないのが印象的でした。
その理由のひとつが、BMWが長年にわたり掲げてきた「駆けぬける歓び」というスローガンをいつもに増して強調していたこと。「駆けぬける歓び」は、かつては「Freude am Fahren」というドイツ語のフレーズでも親しまれてきましたが、このフレーズが書かれたステッカーがBMW車のリヤウィンドウに貼られることがなくなって久しく、昔ながらのクルマ好きは、少し寂しい思いをしてきました。
しかし、今回の新型「X1」では「人生を駆け抜ける喜び」とも表現するなど、伝統のスローガンをバージョンアップ。BMWは今もなお、クルマを運転することで得られる快感を大事にしている姿勢や、やや古い価値観のクルマ好きを切り捨てたりするわけでは決してないことが伝わったのです。
BMWジャパンのブランドマネジメント本部長、遠藤克之輔さんも「クルマを運転しているときの喜び、『駆け抜ける喜び』をコンパクトプレミアムSAVでも感じていただくために、新型『X1』『iX1』を仕上げた」と語られました。時代の最先端をいく、お洒落でラグジュアリーなSAVに仕立てながら、昔ながらの伝統も決して忘れず大事にし続けている。発表会上では、そんなBMW新型「X1」「iX1」の本質が見られたことも特筆ポイントとして紹介したいと思います。
BMWらしく“コックピット感”の強い運転席周り。高性能カメラ&レーダー、および高性能プロセッサーによる高い解析能力を誇る最先端の運転支援システムを装備。BMW最新モデルの運転支援システムの作動精度の高さは定評があります
印象的な1枚パネルのカーブド・ディスプレイ。主要装備の操作のほとんどはタッチパネルで行います
全車ともインテリジェント四輪駆動システム「xDrive」を採用。路面状況に応じて瞬時に前後アクスルへ駆動力を可変配分します
ドイツのSUVらしくフラットで張り出しの少ない荷室空間。リヤシートは4対2対4の可倒式で、すべて倒せば1,545Lの容積を確保します。フル電動車の荷室は最大で1,495L
新型「X1」「iX1」は、横置きのパワートレーンを搭載する基本レイアウトを持ち、2リッター4気筒のガソリンエンジン仕様の「X1」と、前後の車輪それぞれに電気モーターを搭載する「iX1」の2系統。各々が2グレードずつで構成されます。
ガソリンエンジンの「X1」は、最高出力150kW/5000回転、最大トルク300Nm/1450〜4500回転を発揮する2リッター4気筒ターボユニットを搭載。7速DCT(ダブルクラッチ式トランスミッション)を介して四輪を駆動します。燃費はWLTCモードで12.9km/L。
225/55R18サイズでは、コンチネンタルの「エココンタクト6Q」を装着
オプションの19インチ アロイ・ホイールは245/45R19サイズでは ミシュランの「eプライマシー」を装着。「M Sport」、および「iX1 xDrive30 xLineにはアダプティブMサスペンションを標準装備し、標準車に対して車高は20mm低くなります
フル電動車(BEV)の「iX1」は、トータルでの最高出力200kW、最大トルク494Nmを発揮。0-100km/h加速タイムは5.6秒で、BEV最速クラスではありませんが、かなり強力な加速が味わえるでしょう。バッテリー容量は66.5kwhで、1充電での航続距離は465kmとされています。
自宅などで使われる「BMWウォールボックス(200V/32A)」では約6時間半で、充電開始時10%から80%まで充電可能。急速充電(CHAdeMO)においては、現在主流の90kWの充電器だと約50分で充電開始時10%から80%まで充電可能とされています。約30分だと、充電開始時10%から55%まで充電可能で、200kmほどの距離を走ることができるとのこと。
急速充電だと小1時間(47〜50分)で80%まで充電可能。充電インフラの整備が遅れた日本でも、充電スポットは徐々に増えてきています
輸入車で初めて、充電費用も含まれたパッケージが設定されました。充電が無制限で利用できるなど、自宅で充電できない人にオススメのパッケージです
比較的コンパクトなサイズながら大人3人がしっかり座れるリヤシートや、最大1,600Lまで達する荷室を備えるなど、高い実用性も兼ね備えたラグジュアリーSAVとして、かなりの人気モデルになることが予想できる総合力の高さを感じました。
今回の発表会にゲスト出演した俳優、井浦新さんはクルマ好きとしても知られます。とにかく運転することが好きで、東京から鹿児島までのロングドライブもこなすようですが、熱く語られた試乗の印象から、BMW車に痛快なエンジンやハンドリングなどの走りの気持ちよさを求める層も高い満足感が得られそうであり、試乗する機会が楽しみになりました。
井浦新さん(中央)は、発表会に先立って試乗した印象をクルマ好き目線で詳細に語っていました
1973年大阪生まれの自動車ライター。免許取得後に偶然買ったスバル車によりクルマの楽しさに目覚め、新車セールスマンや輸入車ディーラーでの車両回送員、自動車工場での期間工、自動車雑誌の編集部員などを経てフリーライターに。3台の愛車はいずれもスバルのMT車。