スバルの主力車種である、ミドルサイズのハッチバック「インプレッサ」がフルモデルチェンジされる。2022年11月に北米仕様の外観などが世界初公開され、2023年1月のオートサロンでは日本仕様の概要も伝えられた。
2023年春に6代目へとフルモデルチェンジされる、スバル 新型「インプレッサ」。今回、メーカー未公表の価格が独自調査によって判明したので、グレードごとの価格のほかに装備や推奨グレードなども併せてお伝えしたい
そして、2023年3月2日に販売店では新型「インプレッサ」の価格を明らかにして先行予約を開始した。販売店によると、価格などの正式なメーカー発表日は2023年4月20日ごろで、発売日は同年の5月下旬〜6月ごろになるという。販売店で明らかになった新型「インプレッサ」のグレードごとの価格は以下のとおりだ。
■スバル 新型「インプレッサ」のグレードラインアップと価格
-NAエンジン搭載車-
ST:2,299,000円[FF]/2,519,000円[4WD]
-e-BOXER(マイルドハイブリッド)搭載車-
ST-G:2,783,000円[FF]/3,003,000円[4WD]
ST-H:2,992,000円[FF]/3,212,000円[4WD]
パワーユニットは、2L水平対向4気筒のNAエンジンが搭載されているタイプと、同エンジンにマイルドハイブリッドのe-BOXERが組み合わせられているタイプの2種類になる。これまでは、1.6L水平対向4気筒エンジンも用意されていたのだが、新型では2Lのみになる。また、セダンの「G4」も廃止されるので、ボディタイプは5ドアハッチバックの1種類だ。
水平対向エンジンに電動技術を組み合わせたパワーユニット「e-BOXER」は、エンジンの素性のよさを生かしながら、モーターのアシストによって大排気量車に乗っているかのような運転感覚を得られるのも特徴のひとつだ
NAエンジンを搭載するグレードはSTで、e-BOXERを搭載するグレードはST-Gと上級に位置するST-Hの2種類になる。駆動方式は、すべてのグレードに前輪駆動の2WDと4WDが用意される。4WDの価格は2WDよりも22万円高いが、4WDシステムと併せて「ヘッドランプウォッシャー」や「LEDリヤフォグランプ」などが標準装備される。これらの装備はおよそ3万円に価格換算できるので、4WDの正味価格は19万円だ。4WDがこの価格であれば、買い得と判断できるだろう。
次に、3種類のグレードにおける買い得感について考えたい。各グレードの装備内容は、以下のとおりだ。
■新型「インプレッサ」のグレード別装備内容
-S-
アイサイト/サイド&カーテンエアバッグ/歩行者保護エアバッグ/LEDヘッドランプ/17インチアルミホイール/パドルシフトなど
-ST-G-
(STの機能や装備に加えて)e-BOXER/運転支援テクノロジー/ドライバー異常時対応システム/リヤビューカメラ/コネクティッドサービス/LEDフロントフォグランプ/キーレスアクセス&プッシュスタート/11.6インチセンターインフォメーションディスプレイ&インフォテインメントシステム/サイドシルスポイラーなど
-ST-H-
(ST-Gの機能や装備に加えて)デジタルマルチビューモニター/自動防眩ルームミラー/フルLEDヘッドランプ/LEDリヤゲートランプ/運転席と助手席の電動調節機能/アルミパッド付きスポーツペダルなど
新型「インプレッサ」のフロントエクステリアとリアエクステリア
ベーシックなSTでも、衝突被害軽減ブレーキや運転支援機能をあわせ持つアイサイト、サイド&カーテンエアバッグ、歩行者保護エアバッグ、17インチアルミホイール、エアコンのフルオート機能など、実用的に不満のない装備が採用されている。
新型「インプレッサ」には、広角単眼カメラの追加によって認識範囲や性能を大幅に向上させた新世代「アイサイト」が搭載されている
ST-Gには、マイルドハイブリッドのe-BOXERが搭載されるだけでなく、装備もさらに充実している。STの内容に加えて、後方の並走車両を検知する機能などを備えた運転支援テクノロジー、運転支援機能の作動中にドライバーに異常が生じた時、自動的に減速、停止などを行うドライバー異常時対応システム、キーレスアクセス&プッシュスタートスイッチ、11.6インチセンターインフォメーションディスプレイなどが備わる。ST-Gに加わるこれらの装備を価格に換算すると、約42万円に相当する。そして、ST-Gの価格はSTに比べて484,000円高いので、e-BOXERの価格換算額は残りの64,000円だ。マイルドハイブリッドの価格差としては、妥当なものだ。
ナビや車両管理などさまざまな情報を集約し、11.6インチの大型ディスプレイを採用したセンターインフォメーションディスプレイ
そして、最上級のST-Hにはデジタルマルチビューモニター、自動防眩ルームミラー、運転席と助手席の電動調節機能、アルミパッド付きスポーツペダルなどが加わる。さらに、サンルーフをオプション装着することも可能だ。
ST-GとST-Hの装備を比べると、後者には約200,000円相当の装備が加わり、価格の上乗せも209,000円になる。ST-GとST-Hの価格差も、バランスが取れている。以上のように、新型「インプレッサ」における各グレードの機能や装備と価格は、おおむね妥当なものだ。特定のグレードが割安、もしくは割高にはなっていない。
そうなると、最も推奨度の高いグレードはベーシックなSTになる。十分な装備が採用され、キーレスアクセス&プッシュスタート、11.6インチセンターインフォメーションディスプレイといった上級グレードに標準装着される実用装備も、STにオプション装着できる。e-BOXERはマイルドハイブリッドで、燃費性能が大幅に向上することはないため(2023年3月上旬時点でインプレッサのWLTCモード燃費は未発表ではあるが、これまでの燃費値を考慮すると)、STに必要な装備をオプションで加える選び方が最も買い得になるだろう。だが、ほしい装備がST-GやST-Hに多く備わり、STに装着するメーカーオプションが3種類以上に増える場合などであれば、これらを標準装備するST-GやST-Hを検討したい。
ちなみに、新型「インプレッサ」の基本的なデザインや機能については、2022年末に登場した兄弟車の「クロストレック」の記事を参照していただきたい。
ここからは、新型「インプレッサ」と「クロストレック」の違いについて解説したい。新型「インプレッサ」は、「クロストレック」からSUV風のエクステリアの装備などを取り去ったベース車になる。
新型「インプレッサ」のフロントエクステリア
比較として、新型「クロストレック」のフロントエクステリア
インパネの基本デザインや前後席の居住性、乗降性、荷室の広さやシートアレンジなどは、基本的に「クロストレック」と共通化されている。そのため、新型「インプレッサ」も前後席の頭上や足元空間は十分な広さがあり、大人4名が快適に乗車できて荷室容量も十分に確保されている。内装も上質なので、所有する満足度は高いだろう。
新型「インプレッサ」のインテリア。大型の11.6インチセンターインフォメーションディスプレイが中央に配置されるなど、最新のスバル車共通のインテリアデザインが採用されている
新型「インプレッサ」には、大きな荷物なども積み降ろししやすい、広々とした荷室が採用されている
新型「インプレッサ」のボディサイズは、「クロストレック」とは若干異なり、全長は4,475mm、全幅は1,780mm、全高は1,515mmになる。「クロストレック」に比べると、5mm短く、20mm狭く、60mm低い。ホイールベースは2,670mmで等しいが、最低地上高は「インプレッサ」のSTが130mmなので、「クロストレック」よりも70mm低い。最小回転半径は、「インプレッサ」が5.3mで、「クロストレック」の5.4mに比べると小回りの利きが少しすぐれている。全高が低い「インプレッサ」は重心も下がり、走行安定性が向上しているだろう。
「インプレッサ」の最上級グレードであるST-Hと、「クロストレック」の最上級グレードのリミテッドは、装備内容が似ている。両車の価格を比べると、「インプレッサ」のST-Hのほうが「クロストレック」のリミテッドに比べて77,000円安い。ただし、「クロストレック」は前述の通り外観がSUV風にアレンジされており、ルーフレールも備わり、最低地上高は200mmに拡大されているので悪路の凹凸なども乗り越えやすい。これらの機能や装備の違いなども考えると、「クロストレック」が77,000円の上乗せなら、むしろ「インプレッサ」よりも割安と受け取ることもできる。
新型「インプレッサ」は、「クロストレック」には用意されていないガソリンエンジン搭載車がラインアップされているのも、大きな特徴のひとつだ
ただし、「クロストレック」は全グレードがe-BOXERを搭載したマイルドハイブリッドのみだが、「インプレッサ」にはガソリンエンジン搭載車がラインアップされているという魅力もある。もし、「インプレッサ」と「クロストレック」のどちらを選ぶかということであれば、前述したような外観や最低地上高、パワートレインの違いなどを考慮に入れながら検討するといいだろう。
「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も大切と考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心掛けるモータージャーナリスト