2023年に発売された新型車の中で、特に注目されているのがトヨタ 新型「プリウス」だ。「プリウス」は、伝統あるハイブリッド専用車で、新型モデルは外観がスタイリッシュに仕上げられているのが大きな特徴になる。その新型「プリウス」のライバル車といえば、ホンダ「シビック e:HEV」があげられる。ガソリン車の「シビック」は、2021年に現行型へとフルモデルチェンジされており、2022年にハイブリッド車の「e:HEV」が追加された。
2023年にフルモデルチェンジされたトヨタ 新型「プリウス」(左)と、2022年にホンダ「シビック」へ追加されたハイブリッドモデル「シビック e:HEV」(右)。今回は、この2台のライバル車を、筆者(渡辺陽一郎)と深山幸代さんの2人で比較してみた
新型「プリウス」と「シビック e:HEV」は、どちらもボディサイズが近い、ハッチバックのハイブリッド車だ。そこで、今回はこの2台の内外装を中心に比較してみよう。ちなみに、新型「プリウス」が搭載するエンジンは、1.8Lと2Lの2種類が用意されているが、今回は主力グレードである2Lエンジンを搭載するZグレードを用意した。いっぽう、「シビック e:HEV」は2Lエンジンを搭載する1グレードのみになる。
なお、今回の比較試乗については、以下の動画でも詳しく紹介しているので、ぜひご覧いただければ幸いだ。
まず、ボディサイズからだが、新型「プリウス」(2Lエンジン搭載車)は全長が4,600mm、全幅が1,780mmで、全高は1,430mmになる。そして「シビック e:HEV」は、同4,550mm、1,800mm、1,415mmと、新型「プリウス」とほぼ同じ大きさになる。
新型「プリウス」は、先代型に比べて全高が40mm下げられているが、「シビック e:HEV」のほうがさらに15mm低い。それでも、新型「プリウス」のエクステリアを見ると背の低さが強調されているように感じられるのは、前後ピラー(A、Cピラー)やフロントウィンドウを寝かせているためだ。ちなみに、新型「プリウス」はサイドウィンドウの下端が高く、ウィンドウ面積が不足している。そのため、新型「プリウス」は側方や後方視界がよくないというデメリットもある。
トヨタ 新型「プリウス」のエクステリア。従来の「モノフォルムシルエット」を引き継ぎながら、低重心でスタイリッシュな外観へと生まれ変わっている
いっぽう、「シビック e:HEV」は視界が良好とまでは言えないのだが、新型「プリウス」よりも側方や後方については見やすい。ただし、ななめ前方の視界については新型「プリウス」のほうが少しすぐれている。また、最小回転半径は、プリウス(Zグレード)が5.4m、「シビック e:HEV」は5.7mと、新型「プリウス」のほうが小回りはきく。
プリウスは、全体的に見た目がすごくスタイリッシュになって、カッコよくなりましたね!デザインが大きく変わったので、若い人たちにも受け入れられやすくなったのかなと思います
ホンダ「シビック e:HEV」のエクステリア。フロントボンネットからリアにかけて、水平基調のラインを繋げることで、低重心で伸びやかなクーペのような外観デザインへと仕上げられている
プリウスは未来的で無機質なイメージがありますが、シビックはまるで生き物のような、愛着心が湧く外観デザインに仕上げられている感じがしますね!
内装は両車ともに上質だが、新型「プリウス」はインパネの周辺が少し繁雑な印象を受ける。対する「シビック e:HEV」のインパネ周辺は、シンプルだが操作性がなじみやすく、使い勝手がよい。また、新型「プリウス」のメーターは高く奥まった位置に装着されており、視線移動は少なくて済むのだが、着座位置が低いドライバーなどの場合、メーターがステアリングホイールの陰に隠れて見にくくなることがありそうだ。「シビック e:HEV」は、インパネはオーソドックスだが、視認性などを含めた実用性は高いだろう。
新型「プリウス」のインテリア。スリムベゼルのフードレスメーターが採用されており、7インチディスプレイによってグラフィックなメーターやLEDインジケーターなどが表示できる
プリウスは、ハンドルが持ちやすくて小さいので、運転席周りのスイッチなどのじゃまにもならなくて使い勝手がいいですね
「シビック e:HEV」のインテリア。不要なデザイン要素は取り除かれ、スイッチ類は直感的に操作しやすく触感にこだわって開発されている
前席の座り心地は、両車ともに良好だ。どちらのフロントシートも、体重が加わっても腰の近くをしっかりと支えてくれる。新型「プリウス」は、床と座面の間隔が少し狭いが、手足を伸ばし気味に座るユーザーであれば気にならないだろう。
新型「プリウス」のフロントシート
「シビック e:HEV」のフロントシート
シビック e:HEVは、運転席からの前方視界がとてもよくて、死角が少ないので運転しやすそうです。また、シートがスエード調なので肌触りがいいですし、フロントシートがしっかりと体を支えてくれるので、きれいな姿勢で運転できそうです
また、後席については、新型「プリウス」は着座位置が低く、「シビック e:HEV」は頭上空間が狭いというデメリットがある。大人4人が乗車した際、身長が170cmの乗員が後席に座った際の膝先空間は、新型「プリウス」が握りこぶし2つ分で、「シビック e:HEV」は2つ半になる。つまり、「シビック e:HEV」は頭上が狭い代わりに、足元空間が少し広いと言える。
新型「プリウス」のリアシート
「シビック e:HEV」のリアシート
新型「プリウス」の乗降性は、前後席ともにあまりよくない。前後のピラーが寝かされているため、ドアの開口部も上端部分が下がっている。そのため、乗り降りする際には頭をかがめる必要がある。「シビック e:HEV」も天井が低めなので乗降性は良好とは言えないが、前側のピラーの角度が立てられているので、新型「プリウス」よりは乗り降りがしやすい。
次回は、2台を実際に試乗してみた際の乗り心地や、実燃費などについて比較レビューしてみたい。
「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も大切と考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心掛けるモータージャーナリスト