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中国発のEVセダンBYD「SEAL」! “海”がコンセプトの内外装は一見の価値あり

中国の深センに本社を構える自動車メーカーBYDは、日本で販売中のSUV「ATTO3」と、2023年末頃に発売予定の4ドアセダン「SEAL」の2台のEVをヘリテージカー(旧車)イベント「オートモビルカウンシル2023」に出展した。

EVの4ドアセダン「SEAL」は、海をモチーフとして内外装がデザインされているのが特徴的だ。今回は、2023年末頃に発売予定の同モデルについて、メーカー関係者へ詳細をインタビューした

EVの4ドアセダン「SEAL」は、海をモチーフとして内外装がデザインされているのが特徴的だ。今回は、2023年末頃に発売予定の同モデルについて、メーカー関係者へ詳細をインタビューした

「ATTO3」については、試乗レビュー記事をすでに掲載しているので(以下の関連記事を参照)、今回はもう1台の「SEAL」について、メーカー関係者へ詳しく話を聞いたのでお伝えしよう。

日本で滑り出し好調の「ATTO3」

「SEAL」の話の前に、2023年1月31日から受注を開始した「ATTO3」の現状についてお伝えしたい。「ATTO3」の受注開始日と同日に、正規ディーラー1号店となるビーワイディーオート東名横浜が、翌月の2月23日には2号店のビーワイディーオート堺がオープンしている。

そして、その2店舗をメインに「ATTO3」をおよそ2か月販売した結果、現在(記事掲載時点)の累計受注数は265台に上っている。「少ない店舗数を考えると、販売台数は比較的順調な滑り出しではないでしょうか」と、ビーワイディーオートジャパン 代表取締役社長の東福寺厚樹氏は高く評価する。

クロスオーバーSUVタイプのEV「ATTO3」は、EV専用のプラットフォームを採用することで、高い安全性とともに485kmの航続距離を実現。また、フラットな床面によって広い車内空間や440Lの荷室容量を確保しているのも特徴的だ

クロスオーバーSUVタイプのEV「ATTO3」は、EV専用のプラットフォームを採用することで、高い安全性とともに485kmの航続距離を実現。また、フラットな床面によって広い車内空間や440Lの荷室容量を確保しているのも特徴的だ

ATTO 3の製品画像
BYD
4.43
(レビュー7人・クチコミ150件)
新車価格:440万円 (中古車:440.0万円

海をコンセプトにデザインされた「SEAL」

では、「SEAL」へと話を移そう。まず、「SEAL」とは英語で“アザラシ”の意。BYDには、海にちなんだ車名を持つ「海洋シリーズ」と、中国歴代王朝の名を冠する「王朝シリーズ」という2つのシリーズが存在しているのだが、「SEAL」は「海洋シリーズ」にラインアップされており、内外装は同シリーズや車名に準じたデザインとなっている。

「SEAL」のフロント&リアエクステリア。ほかの「海洋シリーズ」と同様、海をコンセプトにデザインされており、スポーティーでエレガントなデザインが特徴だ。また、空力性能にもすぐれており、cd値は0.21と同クラス最高レベルの数値を獲得している

「SEAL」のフロント&リアエクステリア。ほかの「海洋シリーズ」と同様、海をコンセプトにデザインされており、スポーティーでエレガントなデザインが特徴だ。また、空力性能にもすぐれており、cd値は0.21と同クラス最高レベルの数値を獲得している

「SEAL」のボディサイズ(全長×全幅×全高)は4,800× 1,875×1,460mmで、ホイールベースは2,920mmと、ボディサイズに比べてホイールベースは比較的長く、それだけ室内空間が広く取られていることがわかる。比較のための参考として、先代(15代目)のトヨタ「クラウン」のボディサイズは4,910×1,800×1,455mmで、ホイールベースは「SEAL」と同じ2,920mmである。

「SEAL」のエクステリアデザインは、「(ロングホイールベースの印象から)エレガントでスリーク。アザラシが、水中で魚をキャッチするときに急転回するような、アジャイルな雰囲気が感じられるような外観デザインとなっています」と東福寺氏。さらに、細部には水滴をイメージさせるようなモチーフも用いられており、たとえば「Cピラーやテールライトの中などに散りばめられています」とビーワイディージャパン 広報部 マネージャーの長井紀幸氏は言う。

「SEAL」のCピラーに用いられた水滴のデザイン

「SEAL」のCピラーに用いられた水滴のデザイン

インテリアも、「のびやかな曲線と、躍動感のあるデザインを採用し、高級感あふれるなかにエネルギッシュな雰囲気を醸し出しています」と東福寺氏。また、長井氏は「センターディスプレイは、『ATTO3』よりも大きな15.6インチが採用されており、ナビの操作性や見やすさのほか、さまざまなエンターテインメントを楽しめます」と言う。

「SEAL」のインテリア。スポーティーな内装デザインが採用されており、中央には大きな15.6インチディスプレイを備える

「SEAL」のインテリア。スポーティーな内装デザインが採用されており、中央には大きな15.6インチディスプレイを備える

日本で販売される「SEAL」の駆動方式は、シングルモーターの後輪駆動車と、ツインモーターを搭載したハイパフォーマンスモデルの四輪駆動車の2種類がラインアップされる予定だ。また、最高出力は後輪駆動車が230kW、四輪駆動車はフロントが同160kW、リアは230kWで、欧州WLTP値による航続距離は555kmが確保される。

カラーラインアップは、中国では8色が展開されているものの、日本への導入カラーはまだ検討中とのこと。今回のオートモビルカウンシルなどで、一般ユーザーに見てもらうことで、どういった色みが訴求できるかをヒアリングしているようだ。同時に、実車を見てもらった評価についてもリサーチしているという。

中国の顧客は若い男性が約半数

日本において、セダン市場は縮小傾向にある。そこへ、あえて新規参入メーカーであるBYDがセダンを投入するのはなぜだろうか。長井氏は、「日本で販売される『ATTO3』『SEAL』『ドルフィン』の3車種は、BYDの最新の技術が搭載されている『e-Platform3.0』を採用しています。そして、異なるボディタイプを揃えることで、『EVが欲しいけれど希望するボディタイプがない』といったことを防ぎたいと考えたからです」と説明する。さらに、「たしかに、日本国内のセダン市場は厳しい状況ではありますが、“eモビリティをみんなのものに”という思いから、この3車種を展開することにしたのです」とコメントする。

「SEAL」は、中国市場においてはプレミアムセダンとして位置付けられている。中国でのターゲットユーザーは、「クルマの性能や運転、走りにこだわりがある若い男性です」と長井氏。そして、購入ユーザーも「2022年2月に発表してから、これまで約7万2,000台を受注しました。そして、そのうちの半分が25〜35歳くらいの若い男性です」と言う。

しかし、日本市場においては「30〜 40代の男性には、ミドルサイズのSUVが人気かもしれません。それでも、日本の多くの若い男性に『SEAL』を受け入れていただきたいですし、実際に見ていただければ気に入る方が必ずいらっしゃると思っておりますので、準備ができ次第、ディーラーにデモカーを配車していく予定です」とのことだ。

日本での反響を中国本社へ常にフィードバック

現在、ディーラー網を着実に広げているBYD。2025年末までには、全国で200を超える店舗をオープンする予定だという。店舗では、今販売中の「ATTO3」だけでなく、今後発売予定の「SEAL」や「ドルフィン」に関しての問い合わせも多いという。

イルカをモチーフとして、海洋美学をコンセプトにデザインされているBYDのコンパクトEV「DOLPHIN」。2023年中頃に、日本で発売予定となっている

イルカをモチーフとして、海洋美学をコンセプトにデザインされているBYDのコンパクトEV「DOLPHIN」。2023年中頃に、日本で発売予定となっている

長井氏によると、「『ATTO3』の反響や、オーナー様の声は、本社へ随時フィードバックしています。たとえば、BEVは静かですので近接音を疑似的に出していますが、30km/h以下になるとそれが大きくなります。その音量が少々大きいという声も聞かれるのです。そのようなことも、実際にどのくらいであれば音が周りにきちんと伝わりながら、オーナーにも満足いただけるか。我々自身も、実際に試しながら改善に向けて常に取り組んでいます」とのこと。このようなフィードバックは、「SEAL」や「ドルフィン」にも反映されていくことだろうし、日本市場で強いニーズを持つ安全運転支援システムなどは、「ATT3」同様にフルスペックで導入されるはずだ。

これから、着々とラインアップが増えていくBYD。「ATTO3」の試乗記でも述べたが、その仕上がりは欧州や日本のメーカーに負けないクオリティの高さだ。ユーザーにとってEVの選択肢が増えていくのは、購入を考えるうえで大きなメリットになる。EVを考えている方は、ぜひ一度ご自身の目でBYDの実車を確認してほしいと思う。その品質の高さは、みなさんの想定以上だと断言できるからだ。

<Photo:内田千鶴子>

内田俊一

内田俊一

日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かし試乗記のほか、デザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。

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4.43
(レビュー7人・クチコミ150件)
新車価格:440万円 (中古車:440.0万円
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