2023年後半に、ダイハツの軽自動車「ムーヴ」がフルモデルチェンジされる。2014年に現行「ムーヴ」が登場してから、およそ9年が経過している。現行モデルは設計が古いこともあって、新型モデルではさまざまな機能が刷新される予定だ。
新型「ムーヴ」の発売スケジュールを販売店に尋ねると、以下のような返答であった。「本来であれば、『ムーヴ』のフルモデルチェンジは2023年6月に実施され、同年の7月から納車が開始される予定だった。だが、2023年4月に側面衝突試験の認証申請に関する不正行為が発覚したために、新型『ムーヴ』の正式発表も延期されている。2023年5月中旬には予約受注を開始していたのだが、これも現在では停止している」。
新型「ムーヴ」の最大の特徴は同車初の「スライドドア」が装着されることだ(後述)。画像は現行モデル
新型「ムーヴ」の受注は、2023年7月中旬の時点では停止しているとのことで、今後のスケジュールについても未定だ。だが、諸々の問題が決着すれば新型「ムーヴ」の受注は再開され、納車も始まるだろう。9年ぶりのフルモデルチェンジになるので、ダイハツの軽自動車を望むユーザーを中心に高い関心が寄せているはずだ。そこで、今回は正式発表前の新型「ムーヴ」について、独自に入手した価格やスペックなどのデータを基に先取りで解説したい。
ダイハツ 新型「ムーヴ」のグレードラインアップと価格
-標準ボディ(NAエンジン搭載車)-
L:129万2,500円[2WD]/141万9,000円[4WD]
X:141万9,000円[2WD]/154万5,500円[4WD]
-エアロ仕様(NAエンジン搭載車)-
G:163万3,500円[2WD]/176万円[4WD]
-エアロ仕様(ターボエンジン搭載車)-
RS:180万9,500円[2WD]/193万6000円[4WD]
※ハイブリッド車は約20万円の価格アップで追加設定される見込み
ダイハツ 新型「ムーヴ」の主なスペック(販売店調べ)
全長×全幅×全高:3,395×1,475×1,655mm
ホイールベース:2,460mm
室内高:1,270mm
最小回転半径:4.4m(14インチタイヤ装着車)
スライドドアの開口寸法:幅 595mm/高さ 1,216mm
前後席に座る乗員同士のヒップポイント間隔:1,055mm
最高出力(NAエンジン):52PS(6,900rpm)
最大トルク(NAエンジン):6.1kg-m(3,600rpm)
最高出力(ターボエンジン):64PS(6,400rpm)
最大トルク(ターボエンジン):10.2kg-m(3,600rpm)
まず、新型「ムーヴ」で最も注目したいのが、後席の横開きドアがスライドドアへと変更されたことだ。スライドドアを装備するダイハツの軽乗用車としては、全高が1,755mm(2WD)に達する「タント」や、1,655mm(2WD)の「ムーヴキャンバス」がラインアップされている。そして、新型「ムーヴ」の全高は1,655mmと、「ムーヴキャンバス」と同じだ。
さらに、新型「ムーヴ」のホイールベース(2,460mm)やスライドドアの開口幅(595mm)なども「ムーヴキャンバス」とほぼ同じ数値になる。したがって、新型「ムーヴ」は「ムーヴキャンバス」の内外装をアレンジした軽自動車になったと考えればいいだろう。
新型「ムーヴ」のベースモデルと思われる「ムーヴキャンバス」。両側スライドドアが装着されており、柔和な雰囲気が人気の「ムーヴキャンバス」だが、新型「ム−ヴ」は棲み分けのために内外装のデザインに差別化が図られている
「ムーヴキャンバス」はフロントマスクに丸みのある柔和なデザインで、リヤゲートにも少し傾斜を持たせているが、新型「ムーヴ」は直線基調のデザインになる。フロントマスクは鋭角的で、フロントウィンドウやフロントピラーの角度は「ムーヴキャンバス」に比べて少し寝かされるなど、「ムーヴキャンバス」よりも外観がシャープな印象に仕上げられている。
また、この2車種はインパネのデザインも少々異なる。ATレバーやエアコン吹き出し口の位置関係は「ムーヴキャンバス」に近いが、新型「ムーヴ」は立体的に作り込まれている。丸みのある柔和な「ムーヴキャンバス」に比べると、新型「ムーヴ」は内装の形状も力強いものになっている。
画像は「ムーヴキャンバス」のインテリア。新型「ムーヴ」のデザインとは異なるものの、ATレバーやエアコン吹き出し口などの位置は近い
以上のように、新型「ムーヴ」はクルマの性格を現行モデルと大きく変えずに、後席ドアをスライドドアに変更したうえで、「ムーヴキャンバス」との差別化が図られた。
新型「ムーヴ」がスライドドアを採用した理由は、横開きドアに比べて圧倒的に人気が高いからだろう。今は、新車で販売される軽乗用車の半数以上が、「タント」やホンダ「N-BOX」のような全高が1,700mmを超えるスライドドアを備えたスーパーハイトワゴンになる。全高が少し低い1,600〜1,700mmの軽自動車でも、スライドドアを備えた「ムーヴキャンバス」やスズキ「ワゴンRスマイル」などの人気が高い。こうなると、軽自動車を好調に販売するには(スズキ「ジムニー」など一部の車種を除けば)スライドドアの装備はもはや必須条件だからだ。
ちなみに、ダイハツ「タフト」の全高は「ムーヴ」と同程度だが、後席側のドアは横開き式だ。
そして、「ムーヴ」の販売はというと、少々伸び悩んでいるのが事実。2023年1〜6月の1か月平均届け出台数は約4,700台で、「タント」比35%であった。「タフト」はSUVのテイストを盛り込み、装備も充実させて魅力を大きくアップさせてもこの販売台数なので、新型「ムーヴ」にはスライドドアが必要と判断されたのかもしれない。
新型「ムーヴ」のエンジンについては、「ムーヴキャンバス」と同様にNAエンジンとターボエンジンがラインアップされている。
NAエンジンを搭載する標準ボディには、価格を130万円以下に抑えたベーシックな「L」(129万2,500円/2WD)と、「キーフリーシステム」などの実用装備を標準装着した買い得グレード「X」(141万9,000円/2WD)がある。
そして上級グレードとして、エアロパーツやハイビーム時でも対向車を眩惑させない「アダプティブドライビングビーム」などが標準で装備される、NAエンジンの「G」(163万3,500円/2WD)と、ターボエンジンを搭載する「RS」(180万9,500円)が用意された。「RS」には運転支援機能の「アダプティブクルーズコントロール」が備わるなど、動力性能だけでなく装備も上級化されている。
新型「ムーヴ」と「ムーヴキャンバス」の2車種で機能や価格のバランスを比較すると、標準ボディについては「ムーヴ」のほうが若干安い。新型「ムーヴ」X(141万9,000円/2WD)の装備は「ムーヴキャンバス」X(146万3,000円/2WD)に近いが、価格は少々下回る。
いっぽう、新型「ムーヴ」G(163万3,500円/2WD)は、エアロパーツなどを装着するため、価格も「ムーヴキャンバス」G(163万9,000円/2WD)とほぼ同じだ。新型「ムーヴ」を選ぶのなら、実用性重視であれば標準ボディのXを推奨したい。もし、カッコいい外観などが欲しいのなら、「G」やターボの「RS」を検討しよう。
ダイハツ 新型「ムーヴ」のグレードラインアップと価格
-標準ボディ(NAエンジン搭載車)-
L:129万2,500円[2WD]/141万9,000円[4WD]
X:141万9,000円[2WD]/154万5,500円[4WD]
-エアロ仕様(NAエンジン搭載車)-
G:163万3,500円[2WD]/176万円[4WD]
-エアロ仕様(ターボエンジン搭載車)-
RS:180万9,500円[2WD]/193万6000円[4WD]
※ハイブリッド車は約20万円の価格アップで追加設定される見込み
ダイハツ 新型「ムーヴ」の主なスペック(販売店調べ)
全長×全幅×全高:3,395×1,475×1,655mm
ホイールベース:2,460mm
室内高:1,270mm
最小回転半径:4.4m(14インチタイヤ装着車)
スライドドアの開口寸法:幅 595mm/高さ 1,216mm
前後席に座る乗員同士のヒップポイント間隔:1,055mm
最高出力(NAエンジン):52PS(6,900rpm)
最大トルク(NAエンジン):6.1kg-m(3,600rpm)
最高出力(ターボエンジン):64PS(6,400rpm)
最大トルク(ターボエンジン):10.2kg-m(3,600rpm)
さらに、正式な発売からしばらくすると「ロッキー」と同様の「eスマートハイブリッド」搭載車が追加される可能性が高い。NAエンジンのWLTCモード燃費は23km/L(2WD)前後だが、「eスマートハイブリッド」は30km/L近くに達し、軽自動車のなかでは最良の燃費性能になりそうである。エンジンは発電を行い、駆動はモーターが担当するので加速も滑らかだ。
「eスマートハイブリッド」搭載車の価格は、新型「ムーヴ」Xをベースにしたグレードは約162万円、上級の「G」をベースにしたグレードは183万円くらいになるだろう。
新型「ムーヴ」は、ターボエンジンのRSに近い価格で買える「eスマートハイブリッド」搭載車が人気を集めそうだ。
「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も大切と考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心掛けるモータージャーナリスト