人気のSUVであるトヨタ「ハリアー」と、同じプラットフォームを採用しているレクサス「NX」の2台。前回は、両車の内外装について比較したのだが、今回は動力性能や乗り心地などを、実際に試乗して比較してみた。
試乗車はどちらもハイブリッドで、グレードはトヨタ「ハリアー」(FF)が「ハイブリッド Z Leather Package」、レクサス「NX」(4WD)が「350h Version L」だ。ハイブリッドシステムは、両車ともに基本的に共通だが、動力性能が異なる。エンジンとモーターを組み合わせたシステム最高出力は、「ハリアーハイブリッド Z」は2WDが218PS、4WDが222PSだが、「NX350h」は2WDが243PSで、4WDではさらに54PSのリアモーターが搭載される。
試乗した「ハリアーハイブリッド Z」(FF)の動力スペックは、エンジンの最高出力が178PSで最大トルクは22.5kgf・m、フロントモーターの最高出力が120PSで最大トルクは20.6kgf・mだ
そのため、やはり動力性能の高い「NX350h」のほうが、走りに余裕が感じられる。たとえば、登り坂などに差し掛かってアクセルペダルを踏み増したときのパワー感などは、「ハリアーハイブリッド Z」よりも「NX350h」のほうに余裕がある。「ハリアーハイブリッド Z」の動力性能も、NAエンジンで言えば3Lに相当するのだが、今回試乗した「NX350h」の4WDモデルは4L並みの加速力を誇る。
「NX350h」(4WD)の動力スペックは、エンジンの最高出力が190PSで最大トルクは24.8kgf・m、フロントモーターの最高出力が182PSで最大トルクは27.5kgf・m、リアモーターの最高出力が54PSで最大トルクは12.3kgf・mだ
走行安定性は、両車ともに良好だ。後輪の接地性を優先させているので、高速道路で危険を避けたり、下り坂のカーブを曲がったりするときにも挙動が安定している。
そのうえで比較すると、「NX350h」は「ハリアーハイブリッド Z」に比べて、ステアリング操作に対する反応が正確だ。ステアリングホイールを回し始めたときから、車両の進行方向が正確に変わる。さらに、「NX350h」は運転フィールが上質で、プレミアムブランドらしい走りを感じさせてくれる。
レクサス車は、ドライバーの意図に忠実でリニアに応答する走りを目指して開発されており、「NX350h」にもそれが継承されている
『NX350h』は、アクセルを踏めば思ったとおりに加速してくれて、操舵感も重厚でしっかりとしていますので、運転していてとても安心感がありますね
低速域の乗り心地に関しては、両車ともにそれほど大きな違いは見られないが、「ハリアーハイブリッド Z」のほうが少しやわらかく、やさしい印象を受ける。差が生じるのは中〜高速域で大きめの段差を乗り越えたときなどで、「NX350h」は「ハリアーハイブリッド Z」に比べて突き上げ感が抑えられている。
「ハリアーハイブリッド Z」も、速度の上昇に伴って乗り心地は快適になるのだが、「NX350h」はその傾向が特に強く感じられる。「NX350h」は、「ハリアーハイブリッド Z」よりもさらに高い速度域で走行するユーザーをターゲットとして設定されていることがわかる。
「ハリアー」は、日本を中心として販売されているため、特に低速域における乗り心地や取り回しのしやすさなどに配慮して開発されている
『ハリアーハイブリッド』は静粛性が高くて、高速道路を走ると風切り音は抑えられていますし、高速道路のつなぎ目などを静かに乗り越えてくれるなどとても好印象です
WLTCモード燃費(2WD)は、「ハリアーハイブリッド Z Leather Package」は22.3km/Lで、「NX350h Version L」は20.9km/Lになる。さらに使用燃料は、「NX350h」はプレミアムガソリンだが、「ハリアーハイブリッド」はレギュラーガソリンだ。燃料代は、「ハリアーハイブリッド Z」のほうが安く抑えられるだろう。
今回、2車を比較試乗して感じたのは、まず「ハリアー」は日本のユーザーのことを考えて作られたクルマということだ。乗り心地や取り回しのしやすさなど、低速域における運転のしやすさを考慮して開発されている。対する「NX」は、基本部分は「ハリアー」と共通化されているものの、世界に向けて作られているクルマなので、重厚感のあるしっかりとした運転フィールが特徴的だ。高速道路など、高い速度域で長距離を運転するのに向いている。今回の2車は、目指す方向性がそれぞれ異なることを考慮しながら比較検討するといいだろう。
「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も大切と考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心掛けるモータージャーナリスト