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今や大人気の「クロスオーバーSUV」は 普通のクルマと何が違うのか!?

名だたるスポーツカーメーカーのフェラーリも、ついにクロスオーバーSUVを発表! なんてニュースを見るほど、世の中ではクロスオーバーSUVの人気が不動のものとなっています。

でも、何となく「車高の高いクルマのことだよね?」とは思っていても、実際にどんなクルマなのか、人気の理由はどこにあるのか、だいぶ昔に流行っていたいわゆる「ヨンク」とは何が違うのか、今さら聞けないけどよくわからない、と言う人もいますよね。今回は、クロスオーバーSUVをいろいろな視点からご紹介したいと思います。

大人気のトヨタ「ハリアー」もいわゆるSUVに分類されるモデルです

大人気のトヨタ「ハリアー」もいわゆるSUVに分類されるモデルです

そもそもクロスオーバーSUVって?

まずクロスオーバーSUVの定義ですが、「クロスオーバー」という言葉そのものは、「セダン×スポーツカー」でもいいし、「クーペ×ワゴン」でもいいし、さまざまなものを指すことができます。そして、日本ではクロスオーバーモデルというと、「クーペ×SUV」、「ワゴン×SUV」など、SUVと異なる要素を掛け合わせて作られた乗用タイプのSUVを指すことがほとんどです。

SUVは「スポーツ・ユーティリティー・ヴィークル」の頭文字をとったもので、日本語にするとスポーツ多目的車といった意味になります。この「多目的」というのは、日常の買い物などだけでなく、アウトドアやレジャーなどさまざまなシーンに使うことを想定していますが、どちらかというとクルマそのものでスポーツをするのではなく、目的を実行する場所へ行くために適したクルマ、という意味合いが強いと言えます。そのため、クルマそのもので悪路を走破することを目的とした本格的なオフロード車(クロカン)、いわゆる「ヨンク」と区別するための呼称とも言えます。

実は日本は、80年代から2000年代前半くらいにかけて、世界に誇れる“ヨンク大国”でした。現在国内で販売継続されているのはトヨタ「ランドクルーザー」のみですが、三菱「パジェロ」、日産「サファリ」のヨンク御三家が特に人気で、世界一過酷との呼び声高い「ダカールラリー」(旧称パリダカ)で、「パジェロ」が1983年に初参戦していきなりクラス優勝、1997年には日本人ドライバー初勝利をもぎ取り、2002年から7年連続で総合優勝に輝くなど、日本の本格オフローダーは圧倒的な強さを見せつけ、世界中にファンを増やしていったのです。

「ランドクルーザー」の現行モデル。一般道はもちろん、悪路の走破性も高く大人気

「ランドクルーザー」の現行モデル。一般道はもちろん、悪路の走破性も高く大人気

いわゆる“ヨンク”とは車体の構造が異なる

では、これらのクルマはクロスオーバーSUVと何が異なるのか? 「ランドクルーザー」や、軽自動車で唯一の本格オフローダーであるスズキ「ジムニー」にも当てはまりますが、まず骨格が強靭なラダーフレーム構造であることです。現代の乗用車はモノコック構造という、ボディとシャシーがタマゴのように一体化した構造なのに対して、ラダーフレームはハシゴのような骨組みの上に上屋を載せるシンプルな構造です。

耐衝撃性、耐荷重性にすぐれるのが特徴で、荒れた路面を走行する際に強い衝撃を受けても、ちょっとやそっとでは歪まない構造です。クロスオーバーSUVの多くは、このラダーフレームではなく、モノコック構造を採用していますので、ちょっとした雪道やオフロードは問題なく走れますが、砂漠や岩場のような過酷な環境を走ることは考えられていません。その代わり、乗用車として求められるよい乗り心地や舗装路での走行性能、静かさといった性能が重視されています。見た目にはそれほど違いがなくても、両者の中身はまったく別モノなのです。

和製ヨンクの代名詞的存在のスズキ「ジムニー」。小さいながら、非常に高い悪路走破性を持ち、世界中で信頼を得ています

和製ヨンクの代名詞的存在のスズキ「ジムニー」。小さいながら、非常に高い悪路走破性を持ち、世界中で信頼を得ています

ラダーフレーム構造。ハシゴ(ラダー)のように組み合わされた骨格にボディが載ります

ラダーフレーム構造。ハシゴ(ラダー)のように組み合わされた骨格にボディが載ります

普通のクルマより運転がラク!

では、人気のクロスオーバーSUVは、何がいいのでしょうか?

魅力のひとつは、運転のしやすさで、運転がラクだと感じる人が多いということ。ヒップポイントが高いので、道路の遠くまで見通しがきくことや、ボンネットの両端や先端が運転席から確認できるモデルが多いので、車両感覚がつかみやすいところも特徴。

そして、本格オフローダーほどではないにしても、セダンなどの乗用車と比べると最低地上高が高く確保されているので、ちょっとした段差などが気にならないこと。アプローチアングル&デパーチャーアングルも確保されているので、凸凹している道や急坂から平坦な道への継ぎ目などでも、バンパーを擦ったりする心配がなく、安心して運転できます。総じて、運転がラクに感じられると言ってもいいでしょう。

アプローチアングルとデパーチャーアングル。大きな凹凸や段差を乗り越えるときに、この値が大きいと走りやすい

アプローチアングルとデパーチャーアングル。大きな凹凸や段差を乗り越えるときに、この値が大きいと走りやすい

「ヤリス」と「ヤリスクロス」で比べてみた

では、車名やデザインが似ているモデルを例にとって、具体的にクロスオーバーSUVのよさをもう少し探っていきましょう。

今回はトヨタの「ヤリス」と「ヤリスクロス」を比べてみます。「ヤリス」はハッチバックタイプのコンパクトカーで、「ヤリスクロス」はそれをベースとしたクロスオーバーSUVです。

まずデザインですが、「ヤリス」はいかにも走りがよさそうな、躍動感あふれる肉食系のデザイン。でも「ヤリスクロス」は、「ツルンとしたむきタマゴ」とか、「キュートな未確認生物」などと言われ、SUVにありがちな「ゴツい」「泥臭い」というイメージを見事に払拭しています。ちょっと愛嬌があって都会的な雰囲気も加わり、男女問わず好まれるデザインではないでしょうか? 実際、「ヤリス」と「ヤリスクロス」の外観で共通するパーツは、サイドミラーとアンテナくらいだそうです。

「ヤリス」の躍動感あふれるフロントフェイス

「ヤリス」の躍動感あふれるフロントフェイス

「ヤリスクロス」のフロントフェイスはクールで都会的な印象を醸し出しています

「ヤリスクロス」のフロントフェイスはクールで都会的な印象を醸し出しています

次に「ヤリス」との大きな違いとなるのが、運転感覚。ボディサイズを比べると、「ヤリス」が全長3940mm、全幅1695mm、全高1500mm(2WD)に対して、「ヤリスクロス」は全長4180mm、全幅1765mm、全高1590mmとひとまわり大きくなっています。

最小回転半径は「ヤリス」が4.8〜5.1mで、「ヤリスクロス」が5.3mなので、この数値だけを見ると「小回り性能が悪くなっているのでは?」と思うかもしれません。しかし「ヤリスクロス」は運転席の視点がアップライトで遠くまで見通しやすく、車両感覚がつかみやすいことと、最低地上高が170mm確保されているので、車道からコンビニなどに入る際の段差や、駐車場の輪止めの高さなどに気を使わずに済むことなど、リラックスして運転しやすいのが特徴。「ヤリスクロス」のほうがラクに運転できると感じる人も多くいます。

両車を見比べてみると、車高やアイポイントの違いがわかると思います。この"高さ"が運転をラクにしてくれるのです!

両車を見比べてみると、車高やアイポイントの違いがわかると思います。この"高さ"が運転をラクにしてくれるのです!

さらに、室内空間を見てみると、後席スペースがややタイトである点はそれほど変わらないのですが、数値で見るとどちらも室内長が1845mm、室内幅が1430mm。室内高は両車で異なり、「ヤリス」の1190mmに対して、「ヤリスクロス」が1205mmと高くなっていますので、頭上のゆとりは少しだけ「ヤリスクロス」に分があります。

大きく異なるのはラゲッジスペース

それよりも、大きく変わるのはラゲッジスペースです。「ヤリス」も荷室幅は1000mmあるので、コンパクトカーとしては標準的なスペースではありますが、やはり5名乗車時の奥行きは630mm、デッキボードで2段階に変えられる高さは通常だと692mm。

しかし「ヤリスクロス」は違います。まず荷室幅が1400mmと大きく広がり、開口部がガバッと大きいので、ゴルフバッグなどの大きな荷物も積みやすく感じます。クロスオーバーSUVのユーザーから、ゴルフバッグが横積みできるラゲッジの要望が多いことから、開発陣は荷室両端をえぐって“横の長さ”を出したのだそう。

また、5人乗車時の奥行きは820mm、高さはデッキボードが通常の位置で732mmを確保しており、キャンプなどアウトドアレジャーの荷物を積むにも十分なスペースを持っています。

「ヤリス」のラゲッジスペース。コンパクトカーとしては標準的な容量を持っていますし、シートを倒せば大きなものも積載可能です

「ヤリス」のラゲッジスペース。コンパクトカーとしては標準的な容量を持っていますし、シートを倒せば大きなものも積載可能です

「ヤリスクロス」のラゲッジスペース。両脇のえぐれにより、ゴルフバッグなど長いものを横積みできるよう工夫されています

「ヤリスクロス」のラゲッジスペース。両脇のえぐれにより、ゴルフバッグなど長いものを横積みできるよう工夫されています

このように、クロスオーバーSUVの魅力はさまざまありますが、やはり、人と荷物のスペースがしっかりと確保できていることと、舗装路では乗用車としての快適性を保ちながら、ちょっとくらいのラフな道でも気にせず走れること、また、人によっては乗り降りがしやすい座面の高さだったり、運転しやすく感じる視点の高さが備わっていたりすることも、魅力を感じる部分と言えそうです。

ファミリーで使う人や、アウトドアな趣味を持つ人は特に、コンパクトカーやセダンではちょっと物足りないな、と感じたら、クロスオーバーSUVに目を向けてみると満足できる1台が見つかるかもしれませんね。

まるも亜希子

まるも亜希子

2006年より日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。日本自動車ジャーナリスト協会会員。誰でも今日からできる交通安全応援プロジェクト「OKISHU(オキシュー)」でイベント等も開催。

記事で紹介した製品・サービスなどの詳細をチェック
ヤリスクロス 2020年モデルの製品画像
トヨタ
4.01
(レビュー155人・クチコミ4124件)
新車価格:179〜293万円 (中古車:159〜369万円
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