近年、ビジネスバッグの定番となった「バックパック」。なかでも、厳密な定義は定まっていないものの、先進デバイスをスマートに活用しながら、アクティブに行動する通勤者に向けたモデルを「コミューター」と呼ぶことがある。
ツールの仕分けに便利なオーガナイザー機能を備えたザ・ノース・フェイスの「ローマーデイ」も、「プレミアムアーバンコミューターパック」と自認するモデルだ。
ザ・ノース・フェイス「ローマーデイ」(NM82060)。公式サイト価格は31,900円(税込)
オールブラックの洗練されたデザイン
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ザ・ノース・フェイスは、プロフェッショナルから一般ユーザーまで、幅広くカバーするアメリカ発のアウトドアブランド。ダウンを使った「バルトロライトジャケット」や高機能な「ヌプシブーツ」など、高品質なアパレルアイテムが何度もブームを巻き起こしたことで有名だ。また、ボックス型リュック「ヒューズボックス」が若者の定番となるなど、バッグの領域でも確固たる地位を築き上げている。
今回紹介する「ローマーデイ」は、PCやガジェット類を効率よく収納できるポケット構造を備えたプレミアムアーバンコミューターパック。デイリーユースはもちろん、現代のビジネスパーソンのニーズにも応えている。
サイズは、32(幅)×50(高さ)×19(奥行)cmで、容量は24.5Lと十分な大きさを確保。奥行もしっかり設けているので、サンプル商材や一眼レフカメラなど、マチのある荷物も収納しやすい。
サイズは、32(幅)×50(高さ)×19(奥行)cm
重量は約1.41kgで、ビジネスリュック全般としては標準的と言えるレベル。むしろ、正面上部や底部にレザーを使っていたり、多彩な収納スペースを設けていたりしながら、この重量で抑えているのは評価したいポイントだ。
重量は約1.41kg
メインに使われている素材は、840デニールナイロン。確かな生地感があり、わずかに光沢感もあって品のよさも感じさせる。部分的にレザーが使われており、それがまた高級感を高めている。
素材は、840デニールナイロンとレザー
ファスナーの引き手は金属素材。先端部分をわずかに傾斜させることで、指でつまみやすくなっている。マットな表面仕上げや、ファスナーの務歯(むし)を隠す配置からも、落ち着いた雰囲気が感じられる。
オリジナルの金属製ファスナープルを採用
背面には立体的なパッドを配置し、身体にフィット。通気性もよく、不快なムレを抑制する。
クッション性にすぐれたバックパネル
本モデルは、バックパックの中では底面の面積が広いタイプで、かつフラットな形状のため自立させることが可能。そのため、床に置いた状態で荷物を出し入れしやすいのはうれしいポイントだ。
フラットで自立する底部
次に、気になる収納性を見ていこう。
「ローマーデイ」は、大きく3つのコンパートメントから構成されており、各種ツールを適切に収納できる作りになっているのが特徴だ。
なお、以下で掲載する写真は、「写っているツールがすべて入る」のではなく、「こうした類のツールの収納に向いている」ことを示している。
メインコンパートメント
U字型ファスナーで大きく開くメイン収納部。
●メイン収納(写真・赤)
【SPEC】留め具/ファスナー、内寸/29(幅)×49.5(高さ)×13(奥行)cm
奥行があり、書類やランチボックス、ジム用の着替え、シューズなども余裕で入れられる。
B4ファイル用クリアケースも、余裕で収納できるサイズ感。大抵のビジネスツールを問題なく収納できそうだ
●メッシュポケット(写真・青)
【SPEC】留め具/ファスナー、内寸/横22×縦13.5cm、間口/17.5cm
メッシュ生地のポケットスペース。グルーミングキットやピルケースなどを入れておくのによさそう。
セカンドコンパートメント
本体正面上部に位置する外ポケット。ラウンドファスナーで大きく開口でき、収納スペースも深く、移動中に出し入れする小物類の収納に適している。
●ポケット(写真・赤)
【SPEC】留め具/ファスナー、内寸/横28×縦30cm、間口/28cm
ポケットのメインスペース。意外と深さがあり、バイブルサイズのシステム手帳や書籍なども入れておける。
●メッシュポケット(写真・青)
【SPEC】留め具/ファスナー、内寸/横20.8×縦10.5cm、間口/17cm
メッシュ生地で、中身が見えるポケット。ペンやイヤホンケース、ケーブルなど、大きなポケットに入れると見失いそうな小物を、ここに仕分けておきたい。
●オープンポケット(写真・黄)
【SPEC】留め具/なし、内寸/横19×縦12.5cm、間口/19cm
幅が広めの内ポケット。小型のメモ帳やティッシュなどの収納に。
●オープンポケット(写真・緑)
【SPEC】留め具/なし、内寸/横9×縦12.5cm、間口/9cm
幅が狭めの内ポケット。スマホや名刺ケースなど、細長のアイテムの収納に向いている。
●キークリップ(写真・紫)
【SPEC】留め具/マグネット式ワンタッチロック
自宅のカギやアップル「AirTag」などを付けておくのに適した、ナスカン付きキークリップ。マグネット式ワンタッチロック採用で、簡単に着脱できる。
背面側に位置する収納スペース。
テックコンパートメント
●ポケット(写真・赤)
【SPEC】留め具/ファスナー
2層に分かれており、ノートPCやタブレットPC、ファイル類を収納できるジャバラ付きポケット。
●フリースライニングポケット(写真・青)
【SPEC】留め具/ファスナー、内寸/横24×縦12cm、間口/22cm
起毛&クッション生地が使われたポケット。マウスやACアダプタ、ケーブルといったPC周辺機器や、デジカメなどのガジェットを収納しておくのに最適。
このほか、オープンタイプのサイドポケットも備えている。
「ローマーデイ」を実際に使ってみて便利に感じたのが、セカンドコンパートメントの存在だ。移動中に使うであろう荷物を、ここひとつに集約できた。
小物を集約できるセカンドコンパートメント
たとえば、スマホを筆頭に、イヤホンケースや手帳、書籍といったアイテムだ。スペースに深さはあるが、それでもバッグの中間くらいまでの深さなので、「奥に入ってしまい、手が届きにくい」こともない。電車での移動中、バッグを前抱えするような時も、スムーズに利用できた。
電車での移動中も、荷物がサッと取り出せる
キークリップが付いているのも便利。ここにカギを付けておけば、ほかの荷物にまぎれて紛失してしまうリスクは減るだろうし、マグネット式ワンタッチロックを使っているので着脱も簡単だった。
カギは、キークリップに付けておける
背面側にノートPCを収納できるスペースを設けているのは、そう珍しいことではないが、「ローマーデイ」の場合、より使い勝手を高める工夫が凝らされているのが好感触だった。
まず、2層ジャバラ式になっているため、ファスナーを開けると中身が大きく開き、ノートPCやファイル類を手軽に取り出すことができた。ひんぱんにノートPCを利用する人にとっては、毎回の出し入れでストレスを感じないのは大きなメリットになる。
ジャバラ式で大きく開くテックコンパートメント
また、上部にフリースライニングポケットを備え、PC周辺機器をまとめておけるのもよい。一般的にこうしたツールは、別のポケットに収納しがちだが、「ローマーデイ」ではPCの近くに集約しておけるので、「PC作業をする時は、テックコンパートメントを開く」という、シンプルなアクションで済むわけだ。
周辺機器もまとめて収納できる
以上のほかにも、実用性を高めるポイントが随所に見られた。
たとえば、メインコンパートメント。U字型ファスナーで大きく開くのが特徴だが、移動中に大きく開き過ぎて荷物が転落してしまうようでは問題だ。そのため、ファスナーの一部を斜めに配置させることで、上部だけをフタのように開けられる仕様になっている。これにより、バッグを手持ちした状態でも、問題なく荷物を出し入れできる。
上部だけをフタのように開けられるメインコンパートメント
ドリンクボトルなどを入れられるサイドポケットは、生地の一部をストレッチ素材に切り替えており、伸縮性を確保。未使用時は、フラットでシンプルなフォルムを保つ仕組みだ。また、裏地には撥水性のある生地を採用。結露で濡れたボトルを入れても、その影響が内部に及ばないようにしている。
一部に伸縮素材を使い、裏地に撥水生地を使ったサイドポケット
ドリンクボトルを入れておける
細かい話だが、ファスナーの曲線の半径が比較的大きいのも特徴だ。つまり、カーブがゆるやかなために引っかかりを感じることが少なく、いわゆる「角」に当たる部分もスムーズに開け閉めできた。「もう片方の手で生地を押さえないと、ファスナーが引けない」バッグも、意外とあるもの。今作は「ファスナーの開け閉め」という基本中の基本まで、使いやすさにこだわっていると感じた。
角の部分もスムーズに開閉
本モデルで唯一気になった点は、各コンパートメントの関係だ。
小物類をまとめられるセカンドコンパートメントは、使用頻度の高いスペースだが、大きく開けようとすると前方向に押し広げることになる。ところがメインコンパートメント、およびメインコンパートメント内のポケットに荷物をパンパンに詰め込んでいると、セカンドコンパートメントのほうまで圧迫され、やや開けづらくなってしまった。
メインコンパートメントはかなりの容量があり、荷物で満たされることはそう多くないため大きな問題にはならないが、お互いが干渉する収納構造になっていることは知っておきたい。
一部コンパートメントの見取り図
細部にまでこだわりが凝縮された、ザ・ノース・フェイス「ローマーデイ」。デジタルガジェットの収納性にすぐれているうえ、スポーツジムや旅行の荷物まで入りそうな容量を確保しているのは、「リモートワーク」や「ワーケーション」など、多様化する現代のビジネススタイルにかなうモデルと言えそうだ。これほどの機能性を備えつつ、モダンなデザインに昇華させているのも、人気ブランドらしい手腕を感じさせる。
カバン、靴、時計、革小物など、男のライフスタイルを彩るに欠かせないモノに詳しいライター。時代を塗り替えるイノベーティブなテクノロジーやカルチャーにも目を向ける。