2023年1月27日、カシオからG-SHOCK「フロッグマン GWF-A1000APF」が発売される。「フロッグマン」誕生30周年を記念する特別モデルで、アマゾンに生息するヤドクガエルの体色を表現しているのが特徴だ。
2023年1月27日に発売される「フロッグマン GWF-A1000APF」
始めに、「フロッグマン」の足跡を簡単に紹介したい。
初代モデル「DW-6300-1A」が誕生したのは1993年、G-SHOCKで初めてISO規格の200m潜水用防水機能を実現したダイバーズウォッチとして登場した。「フロッグマン」という愛称が公式で名付けられたのも、同モデルが初。以後、1995年に「マッドマン」、1996年に「フィッシャーマン」など、特徴的な機能を有したモデルが続々と登場し、過酷な環境下での利用を想定したプロフェッショナル向けの「マスター・オブ・G」としてシリーズ化を果たすことになる。
1993年に登場した初代「フロッグマン DW-6300-1A」。生産終了
その後、タフソーラーや電波受信機能、水深計といった高度な技術を搭載した新作を定期的に発表し、G-SHOCKブランド内で一大勢力を形成。2020年6月には、ケースと裏ブタを一体化した「カーボンモノコックケース」によってアナログ表示を実現した「GWF-A1000」を発表し、新たな可能性を示した。
「フロッグマン」の実力は海難救助のプロも認めており、2018年には海上保安制度創設70周年を記念した限定コラボモデルが発売され、大きな話題を呼んだ。今や日本を代表するダイバーズウォッチの1つとなっている。
「フロッグマン GWF-A1000APF」の公式サイト価格は137,500円(税込)
今作「GWF-A1000APF」は、2020年6月に発売されたアナログ式の「GWF-A1000」をベースにした新色・新素材モデルだ。
何と言っても特徴的なのが、全体にあしらわれた大胆なカラーリング。ビビッドでユニーク、さらに言えば毒々しく、なんだか気になって仕方がない……。それもそのはず、カラーテーマにヤドクガエルを採用しているからだ。
ビビッドな体色をしたヤドクガエル
アマゾンの原生林に生息しているヤドクガエルは、最大でも6cm程度と非常に小さなカエルだが、たった20μgでも死に至らしめるほどの猛毒を分泌する危険な生物だ。その分泌物は吹き矢に塗る矢毒として用いられてきたことから、ヤドクガエルと名付けられたという。オレンジやブルー、ブラックという鮮やかすぎる体色は生物学上「警告色」と呼ばれ、あえてド派手にすることで毒の存在を捕食者に警告するという生存戦略に基づいている。直接の捕食者ではない人間にとっても、この色合いを目にすれば穏やかな気持ではいられなくなる。
「GWF-A1000APF」は、このヤドクガエルのカラーリングを採用。特に注目したいのがベゼルの表現だ。シート状のカーボンおよびカラーグラスグラスファイバーをある程度不規則に積層させてストライプにすると同時に、あえて歪みをつけて積み重ねることで有機的なゆらぎを表現。ブロック状に固めたのち、ほとんどの部分をくり抜くように贅沢な切削作業を施すことで、唯一無二のベゼルを生み出している。
積層したカーボンをデザインのアクセントにしたのは、2019年10月発売の「MTG-B1000XBD」から確立された手法で、「ここいちばん」な高級モデルや限定モデルの目玉に用いられてきた。今作でも、積み重ねてきた技術力が遺憾なく発揮されている。
シートをブロック状に積み重ねたベゼルの元素材
均一ではないストライプ柄が目を引く
よく目を凝らすと、ケース素材がシート状に積み重ねられていることがわかる
また、ケース本体を覆うアシンメトリーなプロテクターも「フロッグマン」の特徴だが、ヤドクガエル色のカーボンベゼルの存在感を発揮するため、透明な樹脂が使われている。歴代の「フロッグマン」は、この部分にマットなブラックを起用するデザインがほとんどなので、そのことからも従来モデルとは異なる印象を受ける。
一部に透明な樹脂素材を採用
文字盤にもヤドクガエルカラーがあしらわれている。インデックスや秒針には力強いオレンジが使われ、長短針やインジケーターにはブルーを配色。インパクト大なデザインに仕上げつつ、視認性をしっかり確保しており、プロ仕様のダイバーズウォッチであるという矜持も感じせる。
文字盤もヤドクガエルカラーを採用
裏ブタには、いつものようにカエルのキャラクターを刻印。三ツ矢型のフロントビスを表現した目や、アナログ針を抱えているポーズはほかの「GWF-A1000」と同じだが、体表がヤドクガエルの模様で、さらに「30th FROGMAN」との刻印を追加しているところが新しい。
特別なグラフィックを施した裏ブタ
バンドには、偏光カラーのスプレー塗装を施したフッ素エラストマーバンドを採用。不均一に吹き付けられた模様は、ヤドクガエルが生息する原生林を彷彿とさせる。
スプレー塗装を施したフッ素エラストマーバンド
モジュールには、アナログ式「フロッグマン」共通の「5623」を搭載。
3時位置にインジケーター、8時位置にインダイアルを設け、さまざまな情報を表示する。ストップウォッチやタイマー、アラームのほか、潜水時間と水面休息時間を針で表示する「ダイブモード」や、任意の場所の潮汐情報を表示する「タイドグラフモード」という、ダイバーズウォッチならではの機能も備える。
主にモードを示す3時位置のインジケーター
第2時間帯の表示や各モードの詳細情報を示す8時位置のインダイアル
インジケーターやインダイアルの上にセンター針が重なってしまっている場合は、左上のボタンを押せば上か下かにスーッと移動してくれる針退避機能が付いている。操作が簡単なので、「ちょっとインジケーターが見えにくいな」というときは、サッと利用できてストレスがない。
左上ボタンに「針退避」機能が割り当てられている
海中などの暗い場所でも視認できるように、蓄光塗料を採用。ブルーとグリーンの2色で分けられており、見間違えにくい。
2色で彩られた蓄光塗料
このほか、世界6局の標準電波を受信できる「マルチバンド6」や、ソーラー充電システム「タフソーラー」、Bluetooth機能でスマホと連携する「モバイルリンク機能」といった機能も搭載。ダイビングというシチュエーションに限らず、幅広いシーンにおいても満足できるハイスペックモデルに仕上がっている。
そもそもアナログ式の「フロッグマン」は、G-SHOCKが実現してきた高度な機能がふんだんに盛り込まれており、実用性にすぐれたモデルだ。そこに今作では、“ゆらぎのあるカーボン積層ベゼル”という意欲的な技術を採用。これがまたヤドクガエルという生命感にあふれたテーマとマッチしていて、まさに生き物であるかのような躍動感をもたらしていた。この特別な「フロッグマン」がもたらす刺激的な“毒”は、今後何十年にわたってG-SHOCK史に残るはずだ。
「フロッグマン GWF-A1000APF」
【SPEC】
●ガラス:球面・曲面ガラス/内面反射防止コーティングサファイアガラス
●防水性:ISO200m潜水用防水
●ケース・ベゼル材質:樹脂/カーボン
●バンド材質:樹脂バンド
●ケースサイズ:51.7(横)×56.7(縦)×19.7(厚さ)mm
●重量:110g
カバン、靴、時計、革小物など、男のライフスタイルを彩るに欠かせないモノに詳しいライター。時代を塗り替えるイノベーティブなテクノロジーやカルチャーにも目を向ける。