カシオからG-SHOCK「ユーティリティ メタルカバード GM-2100C」が発売された。八角形フォルムで人気の「2100」に、クロスバンドを組み合わせたモデルだ。
2023年2月に発売されたG-SHOCK「ユーティリティ メタルカバード GM-2100C」
「ユーティリティ メタルカバード GM-2100C-5AJF」の公式サイト価格は28,600円(税込)
本連載で何度も紹介してきているように、「2100」は今やG-SHOCKにおいて1、2を争う人気シリーズだ。同シリーズは2019年8月に登場。初代G-SHOCKのデザインコンセプトに由来する八角形ベゼルのほか、基板配置を最適化した薄型モジュールや、カーボンコアガード構造によるスリムケースが特徴だ。
勢いそのままに、2021年8月にはベゼルにメタル素材を採用した「メタルカバード GM-2100」が登場。今作は、そのメタルカバードモデルにクロスバンドを組み合わせた仕様だ。
実用性をともなうタフネスという意味では、強度の高い繊維を織り込んだ生地で作られたクロスバンドは、G-SHOCKと親和性の高いパーツだ。同バンドは1994年1月に発売された通称「ガンダムモデル」の「DW-6400B-1」(生産終了品)が初出で、そのあとはエクストリーム系スポーツモデルやコラボモデルなど、テーマ性の強いモデルを中心に採用されてきた。ただ、それも年に1〜2モデル程度の頻度であり、どちらかと言うと目立たない存在だった。
風向きが変わってきたのはここ最近。G-SHOCK初のバンド付け替えモデルとして2019年3月に発売された「GA-2000E-4JR」(生産終了品)を皮切りに、クロスバンドが徐々に拡充されてきている。
・カーボン素材によってケースそのものの耐衝撃性がさらに向上
・バンドを簡単に着脱できる機構の標準化
・ファッションにおける多様性へのニーズの高まり
といった理由から、選択肢のひとつとしてクロスバンドを取り上げるケースが増えている。
では、今作「GM-2100C」で使われているクロスバンドを見てみよう。
ファブリックは細い繊維を高密度で詰めたもので、両端部を折り返した2枚の生地を合わせてミシンで縫い留める、いわゆる返し合わせで縫製されている。切りっ放し&コバ処理や片へり合わせの多い革バンドとは異なる趣きがある。2枚の生地を合わせていることから厚みをそこそこ感じるが、しなやかさもあり、腕に心地よくフィットしてくれる。
また、ピンを通すための小穴は、穴を開けたのちにほつれが出ないように周辺部を固めた作り。この手のバンドでは革で補強しているものもあるが、今作はシンプルに仕上げることで「ミリタリー」や「ビンテージ」よりも「ワーク」なスタイルを強調している。
タフでしなやかなクロスバンドを採用
遊環や美錠には、G-SHOCKには珍しい棒状のメタルを採用。潔いまでにシンプルだ。
メタルの遊環&美錠もワークな雰囲気を高める
クロスバンドには、「卓上に置きやすい」という利点もある。湾曲した樹脂バンドでは時計を横にしないと安定して卓上に置けないが、今作の場合はクロスバンドを真っすぐ伸ばしたり、下側のバンドを180度回転させたりすれば水平に設置できる。こうした使い勝手のよさは、今作に「ユーティリティ」との名称を与えた所以でもある。
水平にして卓上に置けるのもメリット
また、バンドの付け根にはクイックリリース機能を搭載。今作は付け替え用のバンドが同梱されているわけではないが、手持ちがあればほかのバンドへの交換も可能だ。クロスバンドを交換してしまうと今作のアイデンティティーが失われしまうように思うかもしれないが、後述する文字盤の仕上げや色合いから漂うワークテイストも唯一無二であり、独特の魅力が宿っている。
簡単に着脱できるクイックリリースを装備
ほかのバンドに付け替え可能
次にフェイスを見ていこう。
フェイスは「2100」最大の特徴である八角形ベゼルに、メタル素材を採用。同社が誇る高度な加工技術に基づき、細部の凹凸に至るまで、オリジンである樹脂ケース同様のフォルムで構成されている。
細部まで精巧に作られたメタルベゼル
さらに、サイドには顔も映り込みそうなほどつややかな鏡面加工を、正面には同心円状のヘアライン加工を施すなど、樹脂素材ではできない表現も駆使されている。「2100」が世界中のファンを歓喜させたのは、他ブランドでも見られる「ラグジュアリースポーツ」な雰囲気が宿っていたことが大きいが、メタル化によって高級感がさらに高まっている。
フェイス正面にはヘアラインを施している
なお、フルメタルの「GM-B2100」とは異なり、この「GM-2100C」はカーボンファイバー強化樹脂製ケースをメタルでカバーしたモデル。ただ、メタルの質感に大きな違いはなく、G-SHOCKアナデジモデルとしてクラス最高の薄さも維持している。
異なる仕上げを組み合わせて高級感を醸成
文字盤にもワークな雰囲気が凝縮されている。端部分が傾斜した立体バーインデックスにはメタリック蒸着を施し、針にはカラー蓄光を採用。G-SHOCKのロゴマークやインジケーターなどはクロスバンドと同じベージュで彩ることで、全体的な統一感を高めている。
クロスバンドと同じベージュの差し色がアクセントに
さりげなくヘアラインを施した樹脂製の文字盤
ここで、これまで数多くのファミリーを生み出してきた「2100」のフェイスのデザインやディテールについて、改めて振り返ってみよう。
2019年8月発売の元祖「2100」は、八角形ベゼルがラグジュアリースポーツな雰囲気を生み出しているいっぽうで、フェイスデザインそのものは非常にシンプルな仕上がりだった。文字盤もインデックスもすべて樹脂製で、仕上がりはマット。当初はカラーもワントーンの徹底ぶりだった。
2021年8月発売の「メタルカバード GM-2100」は、ベゼルがメタル、バンドが樹脂というコンビモデルだったため、フェイスはメタルらしさを強調。文字盤には縦目のヘアラインを施したメタル素材を採用し、インデックスには新たにメタリック蒸着を施したうえで細かな溝を設けるなど、質感を引き上げていた。
2022年8月発売の「フルメタル GM-B2100」では、また異なる表現で高級感を演出している。今作ではメタルブレスが使われているため、あえて文字盤は樹脂に戻し、メタリック蒸着のインデックスは傾斜のないタイプに。溝でなくプリントで表現したミニッツトラックやメタリックなロゴマークなど、多くの仕様を変更していた。
そして今作「ユーティリティ メタルカバード GM-2100C」は、やはりメタリック蒸着のインデックスを用いながら文字盤には樹脂を採用。これはクロスバンドとのバランスを図るための措置で、メタルカバードの「2100」として新たな魅力を表現している。
同じ「2100」でもフェイスデザインは大きく異る
誕生からおよそ3年半、これまで数多くの派生モデルを世に送り出してきた「2100」。2021年にはフルメタルも登場し、そろそろ「出尽くしてきたのでは?」との思いも芽生えてきそうなころだったが、今作「ユーティリティ メタルカバード GM-2100C」はそうした疑念を見事に打ち払うものだった。
クロスバンドの採用が最大の特徴だが、単にバンドの素材を替えただけでなく、フェイスデザインにも趣向を凝らし、「ワーク」という確固たるスタイルを築き上げている。同時に「2100」が秘めるポテンシャルの高さを知らしめており、今後の展開も楽しみだ。
「ユーティリティ メタルカバード GM-2100C-5AJF」
【SPEC】
●ガラス:無機ガラス
●防水性:20気圧防水
●ケース・ベゼル材質:樹脂/ステンレススチール
●バンド材質:クロスバンド
●ケースサイズ:44.4(横)×49.3(縦)×11.8(厚さ)mm
●重量:72g
カバン、靴、時計、革小物など、男のライフスタイルを彩るに欠かせないモノに詳しいライター。時代を塗り替えるイノベーティブなテクノロジーやカルチャーにも目を向ける。