レビュー

手を使わず履ける話題の「ナイキ ゴー フライイーズ」、履き心地はぶっちゃけどうなの!?

2021年初頭、一部のナイキ メンバーに対してのみの招待制というプレミアムな販売方法と、“両手を使わずに脱ぎ履きできる”というユニークなギミックが相まって大きな話題となった、ナイキの「ナイキ ゴー フライイーズ(NIKE GO FLYEASE)」。同年中に一般販売もスタートしてから2年が経ち、すっかりその人気は落ち着いたとばかり思っていたら、最近また妊婦や子育て世代を中心にSNSでバズっているという。しかも、2023年4月からは、「ABC-MART GRAND STAGE」および「ABC-MART GRAND STAGEオンラインストア」にて順次発売がスタート。ナイキ直営店以外での取り扱いは初めてのことだとか。

ナイキの「ナイキ ゴー フライイーズ」の人気は止まるところを知らない

ナイキの「ナイキ ゴー フライイーズ」の人気は止まるところを知らない

さて、そんな「ナイキ ゴー フライイーズ」だが、ネット検索してみると「手を使わずに脱ぎ履きが可能」という点ばかりピックアップされているように見える。でも実は、それはあくまでもオマケ。スニーカーの本分とは、履いている状態で“いかに快適に歩けるか・走れるか”。そうなるとやはり気になるのが、実際の着用感なのだ。

「価格.comマガジン」では同モデルのニュース記事や簡単なレビュー記事が読めるが、今回は「Daddy's Sneaker」という、30〜40歳代のパパにとって本当に使えるスニーカーを模索する連載企画を担当している筆者が、実際に脱ぎ履きするだけでなく、歩いて走って、実際の履き心地はどんなものなのか? を正直にレポート。「ローンチ当時は手に入らなかったが、今だったら履いてみたい」と思っている読者諸氏の参考になれば幸いだ。

スタイリッシュなモノトーン配色&手を使わずに脱ぎ履き可能

まずはシューズの概要と基本スペックに改めて触れていこう。そもそも「フライイーズ」シリーズは、障がいを持つアスリートの意見をもとに、シューズの着脱を容易にすることを目的にスタートした。これまで、ファスナー仕様の「ジップアップ」や、コードやストラップを引くことでフィットさせる「プルタイト」、ヒール部分を踏んで足を滑り込ませる「ステップイン」などがラインアップされていたが、この「ナイキ ゴー フライイーズ」で完全ハンズフリー化を実現した。

ナイキの「ナイキ ゴー フライイーズ」(ブラック/品番:DR5540-002)。価格は15,400円(税込)

ナイキの「ナイキ ゴー フライイーズ」(ブラック/品番:DR5540-002)。価格は15,400円(税込)

ここで取り上げるのは、「ABC-MART GRAND STAGE」やそのオンラインストアで販売される2カラーのうちの「ブラック」。もう一色の「ホワイト」(品番:DR5540-102)とはアッパー部分の色以外に違いがなく、両色ともモノトーンカラーなので汎用性も高い。これはパパ世代に間違いなく推せる。

そして肝心の“手を使わずに脱ぎ履きできる”仕組みの要(かなめ)となるのが、ソールに搭載された「双安定性ヒンジ(ちょうつがい)」だ。シューズを履く際は、起き上がったソールに足を入れて重心をかけることで、そのヒンジが伸びてシューズ全体が足にフィット。シューズを脱ぐ際は、ヒールに搭載されたキックスタンドを逆の足で踏むことでヒンジが閉じて足を取り出すことができ、シューズは着用前の状態へと戻る。

こちらが着用前の状態。着用時はこの大きく開かれた開口部に足を入れて、かかとに体重をかけるだけ

こちらが着用前の状態。着用時はこの大きく開かれた開口部に足を入れて、かかとに体重をかけるだけ

アッパー部分は、やわらかく若干伸縮性のあるネオプレンのような素材とメッシュ生地を重ねることで、足を包み込むような絶妙なフィット感と、内部を快適に保つための通気性を兼備。アウトソールは、縦横に分割されたブロックの前足部と後足部に×型の溝を走らせることで屈曲しやすくなっており、着用時のしなやかな接地と蹴り出しをサポートする。

【写真上】ネオプレンのような素材とメッシュ生地を重ねることで、足を包み込むような絶妙なフィット感と、内部を快適に保つための通気性を兼備したアッパー 【写真下】屈曲しやすいパターンが刻まれており、着用時のしなやかな接地と蹴り出しをサポートするアウトソール

【写真上】ネオプレンのような素材とメッシュ生地を重ねることで、足を包み込むような絶妙なフィット感と、内部を快適に保つための通気性を兼備したアッパー 【写真下】屈曲しやすいパターンが刻まれており、着用時のしなやかな接地と蹴り出しをサポートするアウトソール

想像よりも歩きやすく、走れる! というか自然と前に足が出る感覚

では、実際に履いて歩いてみよう。

まず構造上から、着地時のソールの安定感が気になっていたが問題はなし。ソールユニットのクッショニングもやわらかく、若干のロッカー構造(ソール面がトゥからヒールにかけて曲線を描いている)もあって地面を蹴らなくても前に進むような感覚が得られた。

履いて歩いてみた。ソールが若干のロッカー構造を採用しているので、体重移動で自然と前に進む

履いて歩いてみた。ソールが若干のロッカー構造を採用しているので、体重移動で自然と前に進む

続いては、軽く走ってみるとしよう。

スニーカーなら普段だと9インチ(27cm)を履く筆者だが、今回は9 1/2インチ(27.5cm)をチョイス。やや大きいかなと感じたので心配だったが、足入れしたところ、歩くのも走るのも問題なし。ナイキ伝統のクッショニング技術である「ナイキ エア」こそ搭載していないものの、ソール自体に弾力のあるクッションフォームが使われているため、着地時の衝撃吸収と反発性も良好。確かに足運びがスムーズに感じられるので、“滑らかな履き心地”をうたっていることにも異論なし。耐久性も気になるが、普通に使用している分にはまず大丈夫そうだ。

軽く走ってみた様子。ソールのクッションフォームが弾性も備えているため、着地時の衝撃吸収と反発性がしっかり機能し、スムーズな足運びが可能だった

軽く走ってみた様子。ソールのクッションフォームが弾性も備えているため、着地時の衝撃吸収と反発性がしっかり機能し、スムーズな足運びが可能だった

お次は、なかなかほかでは見かけない正面からの図。ナイキの他モデルと比べてもかなり角張ったフォルムのようだ。トゥを接地した状態のままかかとを上げてみると、ソールユニットとソックライナー&インソールの間に若干隙間が生まれることから、完全に一体化した構造ではなく、部分的に接合していることが窺える。合わせるボトムスはあまり細身すぎるとシューズだけが悪目立ちするので、細くてもスリムシルエットまでに留めておくのが賢明だ。

トゥが接地した状態でヒールを上げると、ソールユニットとソックライナー&インソールの間に若干隙間が生まれていることがわかる。またシューズのフォルム的に合わせるボトムスは不問だが、あまり細すぎるものよりも写真くらいの太さまでに留めるのが正解

トゥが接地した状態でヒールを上げると、ソールユニットとソックライナー&インソールの間に若干隙間が生まれていることがわかる。またシューズのフォルム的に合わせるボトムスは不問だが、あまり細すぎるものよりも写真くらいの太さまでに留めるのが正解

斜め後ろからのビュー。ソールに入ったスリットが屈曲をサポートするのと、アッパー全体がソックスのように足を包み込んでいるからか、フィット感は通常のスニーカー以上によい感じ。それでいて、曲げても窮屈に感じることはない。重量は片足約300g。重さ自体はスニーカーとしては平均的だが、メッシュ素材のアッパーを採用していることに加え、テクニカルな金属製のパーツを使用していないこともあって、より軽快に感じられた。

【写真上】しなやかに曲がるソール 【写真下】直線的なソールとやわらかなカーブを描くアッパーの対比が特徴的。その特徴的なルックスに、ランニングやバスケットボールといったスポーツカテゴリーに属さないライフスタイルシューズであることを改めて実感させられる

【写真上】しなやかに曲がるソール 【写真下】直線的なソールとやわらかなカーブを描くアッパーの対比が特徴的。その特徴的なルックスに、ランニングやバスケットボールといったスポーツカテゴリーに属さないライフスタイルシューズであることを改めて実感させられる

実際に両手を使うことなく、完全ハンドフリーで脱いでみた

本モデルの最大の利点である“完全ハンドフリーでの着用”に欠かせないパーツは2つ。滑り止めが施されたラバー素材で補強されたトゥ部分のキャップと、後方にせり出したヒール部分のキックスタンドだ。黒いラバーの中に見える細かな点々はリサイクル素材を使用している何よりの証左。地球環境への配慮も忘れていない。

トゥ部分のキャップとヒール部分のキックスタンド。この2つのパーツと独自のヒンジ構造が合わさることで、両手を使わない状態での脱ぎ履きが可能となった

トゥ部分のキャップとヒール部分のキックスタンド。この2つのパーツと独自のヒンジ構造が合わさることで、両手を使わない状態での脱ぎ履きが可能となった

それでは最後に、シューズを脱ぐ際の一連のシークエンスをご覧いただくとしよう。まずは右足から。

1.背面に突き出たヒール部分のキックスタンドに左足のトゥ部分をかけて、軽く踏み込む

2.そのまま右足のかかとを軽く持ち上げる。するとヒンジが開いて、シューズがヘの字型に変形

3.左足で押さえたまま、右足を引き抜く。続いて左足も

4.脱いだ右足のツマ先で、先ほどと同様にヒール部分を軽く踏み込む

5.そのまま左足のかかとを軽く持ち上げる。すると、こちらもシューズがヘの字型に変形

6.右足で押さえたまま、左足を引き抜く

確かに評判どおり、両手を使わず簡単に脱ぎ履きできた。ただし、履いているソックスがくるぶし丈よりも短い場合、脱ぐ際に一緒に脱げてしまうこともあるので要注意。また課題だと感じたのが、先に脱いだ側の足が直接ソールや地面に触れてしまう問題。両手を使わないで済むというメリットは、荷物で両手がふさがっているとき、もしくはしゃがむのが困難な妊婦や怪我人、手に障がいがある人などにとってはありがたいが、毎回足裏が汚れてしまうのはいかがなものか。これは玄関で靴を脱ぐという文化を持つ日本ならではの問題ではあるが、ぜひ今後のアップデートにも期待したい。

【まとめ】歩いても走っても快適、履くのも脱ぐのも両方楽しい。買わない理由がない

●撮影協力:ABCマート

●撮影協力:ABCマート

今回、ナイキの「ナイキ ゴー フライイーズ」を実際に履いてみて、何より強く感じられたのが、“ガジェットとしての面白み”である。足元を支えるスニーカーに求められる快適な履き心地をしっかり担保しつつ、脱ぎ履きのたびに楽しめるユニークなギミック。それこそが「ナイキ ゴー フライイーズ」の持つ最大の魅力と言えよう。

スニーカーに何を求めるかは人それぞれだが、機能性とそこにひもづいたデザイン性を備え、かつ履いているだけで会話のネタにもなるし、さらに価格は15,400円(税込)と昨今のスニーカー平均額から考えると、比較的手を出しやすいプライスゾーンに設定されている点も高評価。

だが、ここでひとつ問題が……。本稿を読んだ読者諸氏がいざ買おうにも、残念ながら今回紹介した「ブラック」と「ホワイト」は「ABC-MART GRAND STAGE」および同オンラインストアともに全サイズ完売! 「これは詰んだな……」と思った人には朗報を。2023年7月にはリストックが予定されているというのでご安心を。ぜひこの機会を逃すことなく、その面白さと便利さを肌で感じ取ってもらいたい。

TOMMY

TOMMY

メンズファッション誌を中心に、ファッションやアイドル、ホビーなどの記事を執筆するライター/編集者。プライベートでは漫画、アニメ、特撮、オカルト、ストリート&駄カルチャー全般を愛する41歳。

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