レビュー

「カンガルー革」なら残暑も快適!? 1年中履けるレザースニーカーを自腹で買ってみた

万年筆好きを公言している筆者ですが、実は、レザー素材も好きです。共通しているのは、メンテナンスの楽しさ。普段は自分で、たまにプロにお願いをして、変化を楽しみながら長く付き合っていける魅力があると思います。

特に靴は、履き心地や見た目が変わっていくのを楽しめるレザー素材のものがいちばん好きです。それだけに、秋冬の時期しか履けないのが残念ですが……。

なんてことを某靴屋にて話したら、「夏だって、レザー履けますよ?」と店員からあっさり言われました。外は強い日差しが降り注ぎ、ジーワジーワとセミの鳴き声が響いています。この暑さの中で、レザーシューズですと?

耳を疑う筆者に紹介されたのが、国産スニーカーブランド、SPINGLE MOVE(スピングルムーブ)の1足でした。

カンガルーレザーを採用したスピングルムーブのハンドメイドスニーカー

スピングルムーブは、日本のスニーカーメーカー、スピングルカンパニーが2002年に立ち上げたブランド。その翌年発売したカンガルーレザーを使用したローカットスニーカー「SPM-110」は、現在も同ブランドでトップクラスの人気を集めているロングセラー製品です。

カンガルーレザーは繊維の密度が非常に高く、タフなのが特徴で、サッカースパイクなどスポーツシューズにも採用されています。薄く加工できるため、軽やかでフィット感のある履き心地に仕上がるのだとか。

「これだけ薄くできるからこそ、蒸れにくくて、オールシーズン履きやすいんですよ」。その言葉が見事に刺さり、気づけば、ファスナー付きのハイカットスニーカー「SPM-443」をレジに持っていってました。

アッパーにカンガルーレザーを採用したハイカットスニーカー「SPM-443」(スピングルムーブ)。サイズはXS(22.5cm相当)〜XL(28.5cm相当)の7種類を展開しており、ユニセックスで使用できます。写真はMサイズ(25.5cm相当)です

アッパーにカンガルーレザーを採用したハイカットスニーカー「SPM-443」(スピングルムーブ)。サイズはXS(22.5cm相当)〜XL(28.5cm相当)の7種類を展開しており、ユニセックスで使用できます。写真はMサイズ(25.5cm相当)です

写真のカラー名は「Dark Gray(ダークグレー)」ですが、実際にはグレージュのような、温かみのある色合いです。ちなみに、カンガルーレザーを使ったスニーカーは、写真のハイカットモデルのほか、サイドゴアデザインのミドルカットモデル「SPM-442」、ローカットモデル「SPM-110」なども展開されています

写真のカラー名は「Dark Gray(ダークグレー)」ですが、実際にはグレージュのような、温かみのある色合いです。ちなみに、カンガルーレザーを使ったスニーカーは、写真のハイカットモデルのほか、サイドゴアデザインのミドルカットモデル「SPM-442」、ローカットモデル「SPM-110」なども展開されています

実際に手に取ってみると、軽い! そして思った以上にカンガルーレザーが薄べったく、それでいてミッチリしてる!! 目の詰まった布を触ったときのような、薄手ながら密度の高さが伝わってくる感触でした。

ライニングはシボ柄の合皮を採用。表面はサラッとした質感で、通気性に配慮されているのがわかります。シュータンをつまんでみたら、裏側の指の輪郭がわかるほどの薄さで驚きました

ライニングはシボ柄の合皮を採用。表面はサラッとした質感で、通気性に配慮されているのがわかります。シュータンをつまんでみたら、裏側の指の輪郭がわかるほどの薄さで驚きました

インソールはラテックススポンジを採用しており、スピングルムーブのロゴがプリントされています。ライニングと同じくサラサラとした肌当たりで、素足で履きたくなります

インソールはラテックススポンジを採用しており、スピングルムーブのロゴがプリントされています。ライニングと同じくサラサラとした肌当たりで、素足で履きたくなります

そして、この独特なソールの形状を見てください。メーカーサイトでは「巻き上げソール」と称されており、アウトソールがミッドソールまで“巻き上がっている”のが特徴です。

アウトソールの意匠がミッドソールまでそり上がっており、独特の見た目に仕上がっています

アウトソールの意匠がミッドソールまでそり上がっており、独特の見た目に仕上がっています

このソールは、ゴムをやわらかな状態のまま、手作業で底面に貼り付けて形作られたもの。それを加硫釜に入れ、加圧と加熱によってゴムを硬化させて仕上げています。人の手でしっかりと接着してからゴムを固めるため、より丈夫に仕上がるのが特徴です。

この加硫釜によってゴムを硬化させる製法は「バルカナイズ製法」と呼ばれるもので、1839年にアメリカで開発されたとても古典的なスニーカーの製法です。有名なもので言うと、コンバースの「オールスター」などにもこの製法が用いられています。

アウトソールの意匠はいくつか種類があるようですが、今回紹介する「SPM-443」には「No.8Outsole」が採用されています。底が磨耗した際には、修理サービス(有料)が受けられるのもうれしいところ

アウトソールの意匠はいくつか種類があるようですが、今回紹介する「SPM-443」には「No.8Outsole」が採用されています。底が磨耗した際には、修理サービス(有料)が受けられるのもうれしいところ

ただ、この「バルカナイズ製法」は、先述のゴムを貼り付けるなど多くの手作業が必要になり、生産コストがかかるため、もう採用しているメーカーは少なくなっているのだとか。それなのに、なぜスピングルムーブはわざわざそんな面倒な製法をとっているのでしょう……。

実はスピングルカンパニーは、老舗のゴム総合メーカーから派生したという、ユニークな経歴を持っているのです。つまり、ブランドを立ち上げる時点で、「バルカナイズ製法」ができる自社工場と、長年培ってきたゴム加工技術がすでに揃っていたということ。これらを最大限生かしたブランドとして、スピングルムーブが誕生したのです。

炎天下で履けば普通に暑い! けど、確かに蒸れにくい!!

実際に履いてみた感想ですが、これをあえて最初に言わせてください。いくら薄手のカンガルーレザーと言えども、「炎天下で履けば普通に暑い」です。メッシュアッパーのように風がヒュンヒュン通るわけではないので。ただ、確かに履いていて蒸れに悩むことはなく、真夏も問題なく履けました。

あと、履き心地が意外なほどしなやかで快適! レザーの薄さとやわらかさがよい具合にきいていて、巻き上げソールも思った以上に柔軟に動き、しっかりと“足に付いてくる”感覚が得られました。

密度の高さから受けるしっかりした印象とは裏腹に、しなやかにフィットしてくれます。そして軽い!

密度の高さから受けるしっかりした印象とは裏腹に、しなやかにフィットしてくれます。そして軽い!

ちなみに、捨て寸が多めに取られていて、爪先にゆとりがあるのもうれしいポイント。歩いていて快適です ※写真ではわかりやすいよう親指を浮かせているため、歩行時の位置とはやや異なります

ちなみに、捨て寸が多めに取られていて、爪先にゆとりがあるのもうれしいポイント。歩いていて快適です ※写真ではわかりやすいよう親指を浮かせているため、歩行時の位置とはやや異なります

1つだけ残念だったのは、ファスナーの上げ下げのみで着脱するのが思いのほか難しかったこと。足の形状や履き方にもよるでしょうが、筆者の場合、いちばん上の穴に靴ひもを通さず、加えてゆるめに結ぶことで可能になりました。しかし、本来はもっとフィット感を楽しむスニーカーだと思うので、この履き方を続けるかどうかは迷うところです。

ヒールカウンターは浅めで、ホールド感と着脱のしやすさを両立できるようにという配慮を感じました

ヒールカウンターは浅めで、ホールド感と着脱のしやすさを両立できるようにという配慮を感じました

このような感じでおおむね満足していたのですが、しかし、ちょっと疑問に思ったのです。「この“快適!”という感覚は、ただの思い込みでは? カンガルーレザーの特性を聞いて、そんなような気持ちになっているだけなのでは?」と。そもそも暑い時期にレザーを履いたことがなく、比べようがないわけで。

そこで、冬に履いていたカウレザーのショートブーツを引っ張り出してきて、夏の正午に外出してみました。筆者はあまり足には汗をかかないタイプなのですが、歩いて15分で後悔しました。

昼間とはいえ、試したのは8月下旬だったのですが、想像以上の暑さと蒸れにやられました

昼間とはいえ、試したのは8月下旬だったのですが、想像以上の暑さと蒸れにやられました

正直なところ、外出した時点で「暑い〜!」と苦しむことは覚悟していたのです。でも、実際にやってみると「ただただ不快」のひと言でした。

脚から足首へ汗が流れ、靴下の履き口がじっとりと湿り、つま先には当たり前のように熱がこもり、ひたすら不快感が溜まっていく……。「SPM-443」を履いているときには気づかなかった、蒸れの恐ろしさを実感しました。

【まとめ】「オールシーズン、レザーが履きたい」に応えてくれる1足

トータルで振り返ると「バランスのよさ」を強く感じる1足でした。しなやかなカンガルーレザーとよく動く巻き上げソールの組み合わせにより、「軽やかだけどタフ」「しっかりしているけど柔軟」という独特かつ快適な履き心地を味わえました。

暑い中でも問題なく履けて、まさに「オールシーズン履けるレザー!」と形容するにふさわしく、ガンガン愛用できるタフさも備えています。レザーがお好きな人には、季節問わず履ける“1軍候補”として、ぜひ1度試していただきたいです。

和田 友梨(編集部)

和田 友梨(編集部)

万年筆、インク、紙を肴に飲む辛党ライター。チカチカ点滅するモニター画面や丸い押しボタン、ローレット加工を施したダイヤルなど、レトロチックなデザインにロマンを感じます。

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