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「GINZA SIX」の人気酒販店店長が種類別にイチオシをセレクト

《2018年》人気の日本酒の違いを解説! 「いまでや 銀座」店長の厳選10本

近年、日本酒は、食の多様化や和食の世界進出、さらには若手蔵元の活躍などで注目が集まっています。ただ、一説には2万種類以上あると言われており、自分好みの1本が見つかりにくいのも事実です。そこで、話題の商業施設「GINZA SIX」内にある人気の酒販店「いまでや 銀座」の大川翔平店長に協力を依頼しました。

「いまでや 銀座」店長 大川翔平さん
【Profile】バーテンダーとして飲食の世界に入るものの、日本酒のレベルの高さに感銘を受けて2009年に飲食店「日本酒スローフード【方舟】」へ。都内数店舗の責任者を歴任し、2016年に「いまでや」に入社。2017年より現職。SSI認定の唎酒師(ききざけし)で、EMOバンド「mamo」のドラマーという肩書も持っています

今回、日本酒を精米歩合(お米を削る割合)や、泡、にごり、贈答用など、味わいやシーン別に10カテゴリーに分類。大川店長に同店が誇る約900種の日本酒の中から、各10カテゴリーのイチオシ銘柄を紹介してもらいます。さらに、それぞれの辛甘度、濃薄度、酸味の3項目も10点満点で採点してもらいました。

大川店長が選んだ珠玉の10本! 好みの1本が見つかるはず

大川店長が選んだ珠玉の10本! 好みの1本が見つかるはず

日本酒の分類を簡単に解説!

イチオシ銘柄の紹介の前に、日本酒の分類の簡単な解説から始めましょう。ポイントは2つ。純米酒かどうかと精米歩合です。

純米酒というのは、水以外の原材料を米と米麹で醸しているもの。そうでないものは、一定量までの醸造アルコールを添加しています。後者は「アル添」などと揶揄(やゆ)されがちですが、決して純米酒より味が劣っているわけではありません。米不足だった昔はかさ増しのために用いられたこともありましたが、現代ではキレや辛味をプラスしたり、発酵を止めたりする目的で使われています。

これは純米酒。どの日本酒もラベルを見ると、それがどのカテゴリーに入っているかがわかり、商品によっては甘さや辛さを示す「日本酒度」などが書いてあります

もうひとつの精米歩合については、これから紹介する中で解説していきます。そのほか、お米、酛(もと)、しぼり、火入れなどでも細分化できますが、詳しくはこちらに載っているので参考にしてください。

左から、純米酒、純米吟醸酒、特別純米酒、純米大吟醸酒

左から、純米酒、純米吟醸酒、特別純米酒、純米大吟醸酒

01
蔵元の特徴や個性が出やすい
「純米酒」

「純米酒」は、水以外に米と米麹だけを原料としてつくられた日本酒。精米歩合に規定はなく、吟醸酒や本醸造酒と比べ濃厚で、蔵ごとの特徴や個性が出やすくなっています。

-大川店長イチオシの「純米酒」-
「田中六五 純米」(福岡)

「田中六五 純米」

「田中六五 純米」

「名前の『田中』は蔵元の苗字であるとともに、蔵が田んぼの中に建っていることも由来。そして『六五(ろくじゅうご)』というのは精米歩合が65%という意味です。ネーミングだけでなく、つくり手の田中克典さん自身も個性的で、日本酒の新たな世界を切り開く先駆者のようなイメージがあります。実際、九州の蔵元のヒーロー的な存在だと思います。
『田中六五』は今でこそ全国流通していますが、デビューした10年前ぐらいは入手困難でした。この純米は香りが抑えめないっぽう、甘味、旨み、酸味のバランスが適度。食中酒として飲んでも間違いないですよ。グラスも選ばないですが、味と香りを楽しむという意味では、口と同じ大きさのそば猪口(ちょこ)もいいと思います」

「田中六五 純米」味わいレビュー
辛甘度:3(1:甘い〜10:辛い、以下同)
濃薄度:5(1:薄い〜10:濃い、以下同)
酸味:4(1:弱い〜10:強い、以下同)

02
ライトな吟醸香と濃厚なコクがある
「純米吟醸酒」

「純米吟醸酒」は、水、米、米麹でつくられた、精米歩合が60%以下の吟醸酒。普通の吟醸酒に比べると香りは控えめになりますが、味はより濃厚でコクがあります。

-大川店長イチオシの「純米吟醸酒」-
「AKABU 純米吟醸」(岩手)

「AKABU 純米吟醸」

「AKABU 純米吟醸」

「『AKABU』ブランドは、“チーム赤武”を掲げる、平均20代の若手が取り組む有力株。新酒鑑評会でビリというスタートから、4年で岩手No.1になるまでレベルを上げたことでも有名です。
味わいはみずみずしくてフレッシュ。爽やかで飲みやすく、今時らしい酸味も残しています。でもスッキリというよりは、かすかなフルーティー感のある酒質。ワイングラスで飲んだり、欧風料理と合わせたりしてもいいですよ。若い人にはもちろん、甘口ではないのでお父さん世代とも相性は抜群です」

「AKABU 純米吟醸」味わいレビュー
辛甘度:5
濃薄度:3
酸味:6

03
よりよい味わいを追求
「特別純米酒」

「特別純米酒」は、精米歩合が60%以下、または特別な醸造方法を使用したものというのが定義。純米酒の中で、精米歩合や酒用米の使用比率など、よりよい味わいを求めて特別な醸造方法を採用しているものがこれにあたります。

-大川店長イチオシの「特別純米酒」-
「惣誉(そうほまれ) 生酛 特別純米」(栃木)

「惣誉 生酛 特別純米」

「惣誉 生酛 特別純米」

大川店長の解説&レビュー

「『惣誉 生酛 特別純米』は、今や日本酒の中でも1割に満たない、『生酛(きもと)』という伝統製法に注目いただきたい1本。『生酛』ならではの濃厚な骨格を上品に出しながらも、『老香(ひねか。劣化した香り)』に由来する菌が入ってないんです。
ほのかにウッディな香味と深いうまみがありながら、やさしい酸味があって料理にもバッチリ。肉であれば牛肉よりも鶏肉をタレで焼いたような焼鳥、照り焼き、豚肉も生姜焼きなどの醤油を使った料理との相性がいいと思います。あとは、常温や燗で飲むのにも適した味わいですね」

「惣誉 生酛 特別純米」味わいレビュー
辛甘度:4
濃薄度:9
酸味:5

04
最高峰と言える贅沢なつくり
「純米大吟醸酒」

「純米大吟醸酒」は、純米酒であり、なおかつ米を50%以下まで磨いた贅沢なつくりが特徴。原料、製法ともに日本酒の中で最高峰と言えるカテゴリーです。

-大川店長イチオシの「純米大吟醸酒」-
「加茂錦(かもにしき) 純米大吟醸 生詰原酒 出羽燦々(でわさんさん)」(新潟)

「加茂錦 純米大吟醸 生詰原酒 出羽燦々」

「加茂錦 純米大吟醸 生詰原酒 出羽燦々」

大川店長の解説&レビュー

「『加茂錦』は、先ほどの『赤武』と双璧をなす若手の超注目蔵。日本酒の業界紙を20年分読破したり、あらゆる蔵元さんの酒質設計を全部試して自社の味を追求したりするなど、次世代を担う天才と言われる蔵元・田中悠一さんが醸したお酒です。
この銘柄の味わいは、ピチピチとしたフレッシュさと甘み、酸味のバランスがちょうどよくて、わかりやすく『おいしい』と思えるはず。日本酒を初めて飲む人にすすめるなら、これで間違いなし!」

「加茂錦 純米大吟醸 生詰原酒 出羽燦々」味わいレビュー
辛甘度:8
濃薄度:4
酸味:6

  • 加茂錦 純米大吟醸 生詰原酒 出羽燦々

  • 参考価格 -

  • 2018年8月20日 12:36 現在

05
手間と時間をかけて高品質を実現
「大吟醸酒」

「大吟醸酒」は、50%以下に磨いた米と米麹、そして醸造アルコールを使用したカテゴリー。フルーティーな香りと、雑味のないスッキリとした味わいが魅力の吟醸酒以上に手間と時間をかけて実現した品質の高さが特徴です。

-大川店長イチオシの「大吟醸酒」-
「手取川(てどりがわ) 大吟醸吉田蔵」(石川)

「手取川 大吟醸吉田蔵」

「手取川 大吟醸吉田蔵」

大川店長の解説&レビュー

「『手取川 大吟醸吉田蔵』は、2017年に専務となった次期蔵元の吉田泰之さんがつくった名酒。その酒づくりのストーリーは、2015年公開のドキュメンタリー映画『The Birth of Sake』で描かれています。
この銘柄は、今回紹介した10本の中では1番ドライな印象で、昔ながらのスッキリした淡麗辛口タイプ。でも、酸もおだやかに感じられて香りも適度に華やぐ好バランスな味わいです。こういったきれいな大吟醸は価格も割高になりがちなんですが、720mlを1,500円前後、1800mlを3,000円前後というお手ごろ価格で入手できるのがポイントですね」

「手取川 大吟醸吉田蔵」味わいレビュー
辛甘度:2
濃薄度:2
酸味:3

06
弾ける泡の口当たりが人気
「スパークリング」

「スパークリング」は、発酵を止めずに瓶詰めしたり、ガスを注入することで発泡の特徴をもたせた日本酒。前者は瓶内2次発酵タイプか活性にごりタイプ、後者は炭酸ガス注入タイプがラインアップされます。

-大川店長イチオシ「スパークリング」-
「MIZUBASHO PURE」(群馬)

「MIZUBASHO PURE」

「MIZUBASHO PURE」

大川店長の解説&レビュー

「2016年秋に発足した『awa酒協会』。こちらはスパークリングのお酒で1番おいしいのはどんな味かを追求している団体ですが、その代表である永井則吉さんがつくった渾身の1本が『MIZUBASHO PURE』です。
特徴は、炭酸からしてクリアで味わいもみずみずしく、でも米の旨みがフワッと香る美しい味わい。炭酸が抜けてもすごくおいしいので、きれいさがほかとは断然違うんですね。普通は味の方向性を甘みや酸味に逃げがちなのですが、バランスのよさを保ちながら日本酒らしさを目指している、そんな印象を受けます。蔵の清掃や美化も徹底されていて、この環境下でなければこんなにきれいなお酒はできなかったのでは、と思わせる傑作です」

「MIZUBASHO PURE」味わいレビュー
辛甘度:3
濃薄度:2
酸味:4

07
米の旨みが豊かで発泡性もあり
「にごり酒」

「にごり酒」とは、アルコール発酵させた米=もろみの中の旨み成分「澱(おり)」を、粗く搾ることであえて多く残した日本酒のこと。基本的に火入れを行わず、酵母が生きたままの状態で瓶詰めされるため、発泡性のあるものがほとんどです。

-大川店長イチオシの「にごり酒」-
「貴 夏純米 にごり」(山口)

「貴 夏純米 にごり」

「貴 夏純米 にごり」

大川店長の解説&レビュー

「地域に根差して世界を目指し、未来にも続くようなブランドを見据えている。そんな『貴』の魅力のひとつが、いいお米を使っているところ。これにより、商品全体としてその旨み成分がすごくきれいに出ています。たとえるなら、お米と果物の間みたいなジューシー感。
このにごり酒も同様で、独特の旨みとフルーティーさがあります。またコクがあるのにスッキリしている印象で、後味のキレは素晴らしいですね。微発泡ですので2〜3日で泡の感じはなくなりますが、そのぶん旨みが前面に出てきます」

「貴 夏純米 にごり」味わいレビュー
辛甘度:4
濃薄度:7
酸味:4

  • 貴 夏純米 にごり

  • 参考価格 -

  • 2018年8月24日 12:36 現在

08
温めることで旨みが増す
「燗酒」

「燗酒」は、温めた日本酒のこと。約30℃が「日向燗」、35℃が「人肌燗」、40℃が「ぬる燗」、45℃が「上燗」、50℃以上を「熱燗」と呼ぶのが一般的です。日本酒に含まれるアミノ酸や乳酸などの旨み成分はお燗をすることで増加しますが、燗に適した銘柄とそうでないものがあるのも事実。その中から最適なものを紹介!

-大川さんイチオシの「燗酒」-
「山形正宗 純米吟醸 雄町」(山形)

「山形正宗 純米吟醸 雄町」

「山形正宗 純米吟醸 雄町」

大川店長の解説&レビュー

「豊かな旨みとキレのある酸が特徴の『雄町(おまち)』というお米は、燗酒との相性が抜群なことでも知られています。そして『山形正宗』をつくる水戸部酒造は、この表現に関するスペシャリストだと思える蔵元。
この銘柄は飲みやすいんだけど、適度な酸味とパワフルな旨みがあります。そこのバランスが素晴らしいですね。フードペアリングは、イカの塩辛のような味の濃い珍味が本当に最高! 酸味があるので、温めるときは40〜45℃ぐらいがいいですよ」

「山形正宗 純米吟醸 雄町」味わいレビュー
辛甘度:5
濃薄度:7
酸味:7

09
深みがあってほろ甘い
「熟成古酒」

日本酒の「熟成古酒」に関する明確な定義はありません。ただ、その第1人者と言える「長期熟成酒研究会」では、「満3年以上蔵元で熟成させた、糖類添加酒を除く清酒」を「熟成古酒」と定義しています。特徴は、琥珀に似た色味や、深みがあって紹興酒のようなほろ甘いニュアンス。なお、各銘柄名に入る「BY」は「Brewery Year=醸造年」を指し、「H16BY」なら平成16年が醸造年という意味で、約14年前の古酒ということになります。

-大川店長イチオシの「熟成古酒」-
「義侠(ぎきょう) 熟成」(愛知)

「義侠 熟成」(写真は「義侠 純米吟醸 特別栽培米 H16BY」)

「義侠 熟成」(写真は「義侠 純米吟醸 特別栽培米 H16BY」)

大川店長の解説&レビュー

「『熟成酒』は一期一会的な部分もあって、商品数が安定しないのも事実。また、常温の熟成は環境によって左右されるので、販売店によって味わいにバラツキも出てきます。老香が出やすいとも言えるでしょう。でも『義侠』ブランドでは多くの種類の『熟成酒』をつくっていて、-1〜-3℃の氷温で熟成させたきれいなものも。新聞紙で包んでいるため、酒の色もさほど変化しないのが特徴です。
熟成年によっても変わってきますが、『義侠』は酸味が弱めないっぽうでお米の旨みは強く、味がまろやかなのが特徴。とろみもあって、バランスのよさだけでは語れない、日本酒の新しい贅沢を体験させてくれるお酒だと思います」

「義侠 熟成」味わいレビュー
辛甘度:3
濃薄度:7
酸味:3

10
いざという時のために覚えておきたい
「贈答酒」

「贈答酒」というカテゴリー自体はありませんが、プレゼントに最適なプレミアムなタイプが日本酒にはあります。そして、箱が付いた贈答向けのパッケージが用意されている銘柄もあります。その中から、イチオシの銘柄を選んでもらいました。

-大川店長イチオシの「贈答酒」-
「醸し人九平次(くへいじ) 純米大吟醸 彼の地(かのち)」(愛知)

「醸し人九平次 純米大吟醸 彼の地」

「醸し人九平次 純米大吟醸 彼の地」

大川店長の解説&レビュー

「この銘柄をつくる『萬乗醸造』は、自社で田んぼを開拓するほど、お米へのこだわりが強い蔵元です。早くから輸出に力を入れていたこともあって、国内はもとよりフランスでも米作りをしているとか。これは『テロワール』(主にワイン用語。味の個性が土壌や気候風土などに左右されること)を表現したお酒をつくりたいという思いからでしょう。
でも、それ以上に僕がこの蔵元で感動したのは、あえて生酒を出荷しないという信念です。その理由は、生酒は酵母が生きているために、店や消費者の環境によっておいしさが変わってしまうから。つまり、最高の状態を届けたいという思いが強いんです。バナナでたとえるなら、黄色くてシュガーポット(黒い点)が最良に出ている時期ですね。
で、この『彼の地』はフルーティーでみずみずしい甘みがあり、さらに酸味もしっかりあって好バランス。しかも『九平次』ブランドは進化が顕著なのも特徴で、2018年のものは豊かなお米の旨みと水の透明感に驚きました。味わいにストーリーがある。贈り物にはぴったりですね」

「醸し人九平次 純米大吟醸 彼の地」味わいレビュー
辛甘度:6
濃薄度:4
酸味:5

【まとめ】

夏は爽快な夏酒、秋はひやおろし、冬は燗酒など、季節に合わせた味を楽しめるのもほかの酒にはない日本酒の魅力。大川店長いわく、10年前までは夏酒は少なかったものの、日本酒業界全体の活性化や酸味への注目度の高まりで増えてきたそう。今回紹介した銘柄は、「価格.com」や「いまでや 銀座」でも取り扱っているので、まずはチェックをして晩酌の参考に活用してください!

【取材協力店舗】

「いまでや 銀座」
住所:東京都中央区銀座6-10 「GINZA SIX」地下2階
営業時間:10:30〜20:30
定休日:「GINZA SIX」に準ずる

「いまでや 銀座」の店内には、スタンディングのバーカウンターを併設。日本酒をはじめ、本格焼酎や日本ワインなどを有料でテイスティングできます

中山秀明

中山秀明

食の分野に詳しいライター兼フードアナリスト。雑誌とウェブメディアを中心に編集と撮影を伴う取材執筆を行うほか、TVや大手企業サイトのコメンテーターなど幅広く活動中。

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