いいモノ調査隊
海苔の良し悪しの違い、ウマい海苔の見極め方、激ウマ海苔などをプロが伝授

本当にウマい海苔はこう選ぶべし! 海苔問屋の店主が選び方&食べ方を伝授

お寿司にラーメン、おにぎりをはじめ、国民食といわれる料理に欠かせない存在が「海苔(のり)」。昨年、TV「マツコの知らない世界」で紹介されるなど、注目される側面も。そんな海苔は、日常的に使うものから贈り物にされる高級品まで、グレードはさまざまです。でも、その差は何が関係しているのでしょうか? 知られざる海苔の秘密を聞くべく、今回は築地の老舗海苔問屋を直撃!

1930年に築地で創業した「鳩屋海苔店」。乾海苔問屋として、海苔をはじめお茶やナッツなど、さまざまな食品を取り扱っています。築地に3店舗と事務所を構えており、今回は2号店に当たる新店を訪問

お話をうかがったのは、店主の鵜飼友義(うがい ともよし)さん。江戸っ子という印象がぴったりの元気のよさで、ツイッターでは“築地で一番ノリのいいおっさん@鳩屋海苔店”として発信しています。

鵜飼友義店主。「どうぞ〜!」と気さくに試食させてくれる、ノリのよさ!

鵜飼友義店主。「どうぞ〜!」と気さくに試食させてくれる、ノリのよさ!


東京湾産の海苔のほうが香り豊かな傾向にある

まずは、海苔に関しての素朴な疑問をぶつけてみました。よく見かけるのは10枚入りで、どれもそのサイズは同じです。どうしてこの形になったのでしょうか。

「これは『全形(全型)』と呼ばれるものですね。統一したほうが流通に都合がいいということで規格化され、今は海苔を成形する機械によって、どのメーカーでも同じ形になるようになっているんです。江戸時代なんかは今より大きく、また戦後はちょっと小さかったようなんですけど、現在のサイズはタテ21cm×ヨコ19cmが基本。これが絶妙な長方形でして、正方形ではないんですね。その理由は、まあ規格化したほうが何かと便利なんですが、私ら問屋から申し上げると、重ねて10枚の束――つまり1帖ずつにしたとき、互い違いにしとくと勘定がしやすくて助かるんです」(鵜飼さん)

パック詰めされる前の海苔。長方形であれば、束を90度ずつずらして重ねることで目印になります

パック詰めされる前の海苔。長方形であれば、束を90度ずつずらして重ねることで目印になります

では、いよいよ味の違いに迫ってみます。日本の海苔の産地は九州の有明海、近畿〜中国にまたがる瀬戸内海、そして中部の伊勢湾、関東の東京湾といくつかありますが、地域によって味に差はあるのでしょうか。

鳩屋海苔店で扱っている海苔は、鵜飼さんが各地の海苔を食べて厳選したものばかり。写真で鵜飼さんが持っている海苔は、左から「千葉 富津海苔」(700円)。中央には佐賀産の「初摘み」(1,200円)で、右が熊本産の「青まぜ」(1,200円)。価格の違いは、産地の違い以上に収穫時期だそう

「なんやかんや、産地によっての違いはあります。でも産地以上に、その地域の海苔の作り手のこだわりで個性が出るのかなと。たとえば有明海なら、しなやかさと口どけを狙ってますねぇ。東京湾なら口どけのよさもありながら、しっかりした食感と、香りのよさを大事にしていると思います」(鵜飼さん)

海苔の味は、地域の嗜好によっても違いはあるのでは、と鵜飼さん。顕著な例がおにぎりで、関西は味付け海苔、関東は味付けではない海苔で巻くのが通説。海苔そのもののおいしさを重視する関東だからこそ、作り手も香りのよさにこだわるのではないかといいます。

「鳩屋海苔店」にはもちろん味付け海苔も。しかも、わさび海苔や高級な味付け海苔など数種類がラインアップ

「鳩屋海苔店」にはもちろん味付け海苔も。しかも、わさび海苔や高級な味付け海苔など数種類がラインアップ


海苔のおいしさや等級は収穫した時期で決まる

本題に進みます。価格が安い海苔と高い海苔の違いは、何が違うのでしょうか。

「やっぱり、あ、パリって言っちゃった。“パリパリ食感”が大事な海苔屋だけに! やはりおいしさでしょう! そして香り! なんつったって『味・香り・良し』ですよ。ただ、お寿司屋さんに限っては色の濃さとかしなり方といった、見栄えも重要視されることもございます。味・香りに加えて、口どけも気にされるお客様も多いんですよ。これらは作り手のこだわりですねぇ。自然相手なものですから、やはりバラつきは出てきてしまうんですが、なるべく理想に近づけたいと頑張ってらっしゃるんですよ」(鵜飼さん)

お店の最高品質の海苔を裏表で。海苔の密度があって重厚なうまみを持ちながら、薄くパリっとしていて口どけのいい海苔は、養殖から成形、箱詰めの瞬間まで作り手のこだわりの賜物(たまもの)

でも、産地や製法以上に決定的な違いを生むものがあるとのこと。それは素材のよさ。しかも、収穫した時期が強く関係しているそうです。

「いわゆる『くさ』と呼ばれる部分で、生産者が一番気を使う部分。育て方まで含めるとすごく長い話になっちゃうので、簡潔に話しますね。海苔が取れるのは、水温が18度以下になる11月の終わりから4月の頭。で、原料として一番出来がいいのは11月終わりの初摘みから1月半ばぐらいまでです。その後になると徐々に色落ち・味落ちしていって、水温が上がる春ごろになると色も味もよくないわけなんです。海苔にも等級がありましてね。11月から1月半ばぐらいの海苔は、そらぁ高いけどいい海苔ですよ」(鵜飼さん)


同じ価格なら専門店で買う海苔のほうがおいしい

ここからは、いい海苔の選び方や見極め方について。ここまで何度か「色」についての話が出ましたが、同じ値段であれば、黒々として濃い海苔のほうがおいしいのでしょうか?

「前述したように、昔は今以上に色が大事とされていました。お寿司屋さんが、色の濃い海苔を好んで使っていた背景があり、高級とうたいやすかったんです。でも、そこまで黒くなくてもおいしい海苔はおいしいですから。濃さは1つの目安になると思いますが、決定的に大事なのは、やっぱり収穫時期です」(鵜飼さん)

黒々とした濃さは、あくまで目安の1つだそう

黒々とした濃さは、あくまで目安の1つだそう

では、たとえば同じ価格で2種類の海苔が並んでいた場合、違いはないということでしょうか?

「1つのスーパーなど、同じ店で買う場合なら大差はないでしょう。つまり、海苔のおいしさは値段に比例するということです。ただ、たとえば同じ500円だった場合、スーパーとうちのような海苔問屋では、問屋のほうが格段においしい。これは流通経路の違いだけでなく、問屋はそれだけしか売らないので回転が早く、海苔の鮮度がいいというメリットもあります」(鵜飼さん)

鵜飼さんは、グレードの違う海苔を食べ比べる際にも言及。1000円と2000円程度の価格差の大きい海苔よりも、200円と500円といった安価なグレードの数百円の差のほうが、味の違いは大きいと教えてくれました。


高級海苔の味をチェック! おすすめの食べ方も聞いた

ここからは、海苔問屋が扱う海苔のおいしさをチェック。数種類のグレードを扱う中で、最も高品質な海苔を食べさせてもらうことに。そこで出てきたのが、同じ価格ながらタイプの違う2つの海苔。これは何が違うのでしょう?

「鳩屋海苔店」自慢の逸品である「初摘み」1200円。くっきりとした味わいと、口の中でほろりととける柔らかさが印象的です

「商品名どおりで、最初に摘んだもの。一番おいしい時期に収穫しているので、味はトップレベルです。海苔そのものの味わいが深くて口どけがよく、ご贈答にもおすすめできますよ。食べ方としてはお寿司がいいでしょう。酢飯と海苔だけで食べても、そのおいしさを堪能できます。おにぎりにするなら、すぐ食べる場合ならいいですが、持ち歩く用にすると湿ってしまい、香りが飛んでしまうのでもったいないですね」(鵜飼さん)

食べてみると、いつも食べているスーパーの焼き海苔とは全然違い、海苔のうまみを濃く感じて驚きました。鳩屋海苔店と同じものではありませんが、「初摘み」の海苔はネットでも取り寄せることができます。以下のリンク先から選んでみてください。

この「青まぜ」は同じ1,200円ながら、その名のごとく青いデザインが印象的。味も、青海苔を思わせる磯のニュアンスを感じました

「青まぜは、11月中ごろの水温が下がりきる途中の時期だけ獲れる個性的な海苔。海苔の全体の1%と希少でもあります。限られた条件内だけ、海苔の原材料であるスサビノリに青海苔が混じるんですね。だから、海苔そのもの以上に青海苔の香りが豊か。香りが目立つ分、お寿司屋さんはあまり使いません。ある意味クセはあるんですが、その鮮烈な香りが好きな方にはたまらないんです。醤油(しょうゆ)に負けない香りがあるので、お餅や卵かけごはんにはおすすめだと思います」(鵜飼さん)

筆者もいただいてみると、先ほどの「初摘み」とはまったく異なる香りと味わい! 青海苔の風味が豊かで、同じ海苔でもこんなに違うのかと驚きです。どちらかというと女性に人気なんだそう。こちらも、ネット通販ではいろいろな産地のものを取り寄せられるので、以下のリンクから探してみてください。

「初摘み」や「青まぜ」が一般的なお店に並ぶのは、12月の上旬。スーパーではあまり置かれないとのことで、特に「青まぜ」は専門店でも取り扱いは少ないとか。ただ、鵜飼さんはこれが好きで1年間分買い付けているから常時あるそうです。

「おにぎりに合うかどうかはその方の好み次第。ただ、しっとり巻くタイプのおにぎりや、海苔弁当などにするなら、香りが強い『青まぜ』がいいかもしれません」と鵜飼さん

最後に、おにぎりやお寿司以外でおすすめの食べ方を教えてもらいました。1つは卵かけごはん。「青まぜ」のような香りの豊かな海苔で、そのまま巻いて食べるのがイチオシだそうです。

醤油はお好みで。ただし、海苔の風味を楽しみたい場合は入れすぎないように

醤油はお好みで。ただし、海苔の風味を楽しみたい場合は入れすぎないように

もう1つは意外な食べ方。海苔の佃煮とオリーブオイルを混ぜてソースにして、バゲットにのせて味わうというのです。

佃煮は「鳩屋海苔店」の「黒炊き」を用意。110gを1200円で販売しています

佃煮は「鳩屋海苔店」の「黒炊き」を用意。110gを1,200円で販売しています

オリジナルの佃煮オリーブソースをバゲットにオン

オリジナルの佃煮オリーブソースをバゲットにオン

パンに海苔という組み合わせが、意外に合うことをご存じでしょうか。実際に提供している老舗喫茶店もあるほどですが、今回のバゲット×佃煮オリーブソースも絶品。アレンジで、バターやチーズを組み合わせてもいいでしょう。ぜひお試しあれ。


なるべく湿気させないことが大切

最後に、ここまで話題に出なかったことで、アドバイスできることを鵜飼さんに聞いてみました。海苔を買ううえで、気を付けるべきことってありますか?

「贈答用に関しては、どれも高品質な海苔が入っているんですが、有名店の海苔はブランドの価値が上乗せされているケースもあります。後、缶などのパッケージ代も。ただ、贈答品というのは相手さまに喜んでいただくためのものなので、理にかなっているともいえるでしょう。また、安価な海苔でいえば、『寿司はね』や『ハネだし』がありますよね。これはお寿司屋さん向けに作ったものの、欠けてしまったなどでハネた“訳アリ”的な海苔なのですが、中には本当のハネではないものも存在します。最初から訳アリっぽく作った商品ですね。どう見ても安すぎるハネには注意したほうがいいかもしれません」(鵜飼さん)

そして買った後の海苔についても。海苔にとっての大敵は湿気。そのため、海苔の袋には乾燥剤が入っていますが、密閉できない袋や缶は湿気やすく、なおかつ普通の透明な袋は防湿効果がイマイチ。そのため、アルミなどが使われた専用の袋で保存をすべきだとか。

このような海苔用の保存袋がベスト。そして、もし乾燥剤がパンパンになってしまったら寿命の合図なので、交換を

「湿気たらあぶるという方もいると思いますが、コンロで直接という方法はおすすめできません。もしやるなら、フライパンやホットプレートを使いましょう。というのも、特に都市ガスは水分を含んでいるので湿気を飛ばすのには向かないんです。後は、やっぱりどうしても香りが飛んでしまいがちだから。焦がしてしまうこともありますし。なので、そもそも湿気ないように保存していただけたらと思います」(鵜飼さん)


海苔に関するトリビアや、ためになる話をたくさん教えてくれた鵜飼さん。軽快なノリでいろいろ教えてくれるので、築地で見かけたらぜひ声をかけてみましょう。

今度海苔を買うときは、少し奮発して一度おいしい海苔を食べてみましょう。海苔問屋やお取り寄せで購入するなら、まずは「初摘み」「青まぜ」を試してみると、いつもの海苔との違いに驚くはず。いつものスーパーなら、ワンランク高めのものを選ぶだけで味が変わることを実感できますよ。海苔が変わるとおにぎりの味も変わります。海苔にこだわって、これからの行楽シーズンをより楽しくおいしくしてみては。

【取材協力店舗】
鳩屋海苔店 本店
https://tabelog.com/tokyo/A1313/A131301/13168803/
住所:東京都中央区築地4-14-16 築地場外市場
電話番号:03-3541-5523
営業時間:5:45〜14:30
定休日:なし
アクセス:都営大江戸線 築地市場駅下車 徒歩5分、東京メトロ 築地駅下車 徒歩5分

中山秀明

中山秀明

食の分野に詳しいライター兼フードアナリスト。雑誌とウェブメディアを中心に編集と撮影を伴う取材執筆を行うほか、TVや大手企業サイトのコメンテーターなど幅広く活動中。

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