どれもパーティーを盛り上げる人気アイテムぞろい! 味の違いやいかに?
「リッツクラッカー」(以下、リッツ)や「オレオ」は、世界的に知名度の高いお菓子。これらは現在、「ナビスコ」というブランドから販売されています。
しかし、数年前までは違いました。ある“大人の事情”によってブランド名が変わり、その結果、「リッツ」によく似た「ルヴァン」という商品が誕生。今では2商品とも市場に出回っています。そこで気になるのは両者の違い。パッケージや中身の形、素材、成分、味などを比較レポートしたいと思います。
数年前、“ナビスコショック”が話題になったことを覚えていますでしょうか。ざっくりと解説すると、「リッツ」や「オレオ」などを日本でライセンス販売していたヤマザキ・ナビスコが、その契約を大元のモンデリーズ・インターナショナルによって切られたのです。
今では、「リッツ」などはモンデリーズ・ジャパンが販売。ヤマザキ・ナビスコは社名を「ヤマザキビスケット」に改め、その商品類の代替として「ルヴァン」をはじめとする数々のブランドを立ち上げ、現在に至ります。お店に行くと「リッツ」の隣に「ルヴァン」が売られていることも珍しくありません。
そんな特殊な誕生秘話を持つ「ヤマザキビスケット」の商品群は、モンデリーズ製の商品とどんな違いがあるのか。さっそく食べ比べていきましょう。今回用意したのは、両ブランドを代表する3つの商品です。
【モンデリーズ・ジャパン】
・「リッツクラッカー」
・「オレオ バニラクリーム」
・「プレミアム クラッカー」
【ヤマザキビスケット】
・「ルヴァン」
・「ノアール」
・「ルヴァン クラシカル」
TVCMでもおなじみの、香ばしい風味とサクサクの食感が世界中で愛されている「リッツ」。そのまま食べるだけでなく、どんな食材とも合わせやすい万能型クラッカーとしても優秀です。具材をトッピングしたフィンガーフードの代名詞。
1枚当たりの重量は3g
ヤマザキ創業期から作り続けてきた製パン技術を生かした、こだわりのサックリ食感のクラッカー。原材料にライ麦が使われていて、芳醇なコクと旨みを感じられます。
1枚当たりの重量は3g
「ルヴァン」1枚1枚は角ばった形をしていますが、ほかにも赤いパッケージで丸い形の「ルヴァンプライムスナック」というクラッカーもラインアップされています。
パッケージは、赤と青の相反するカラー
「リッツ」は円形、「ルヴァン」は八角形
食べ比べないとわからないレベルですが、「リッツ」のほうが若干エアリーで、口どけがやや繊細。香りが豊かで、甘みも感じられます。バターの量が多いのかもしれません。ドロドロになるまで咀嚼を重ねると、より素材の甘みが楽しめます。
対して「ルヴァン」は、わずかに硬く重厚な印象。やわらかくなるまで嚙む回数がリッツより必要です。味も素朴な感じで、たとえるなら乾パンのような方向性。これはライ麦の味わいが出てくるからでしょう。そして注目すべきは、形よりも穴。「ルヴァン」のほうが「リッツ」より穴が小さくて数が多いのですが、これも味や食感の違いに影響しているはず。ちなみに、口の中の水分を持っていかれる“リッツあるある”は共通です。
大きさはほとんど同じですが、穴の数や大きさが異なります。焼く工程が異なるのか、全体的に茶色がかった「リッツ」(写真左)に対して、「ルヴァン」(写真右)はまだらに焼き目がついています
重量は同じなのに、「リッツ」(写真右)は空気多めでサクサク、「ルヴァン」(写真左)は中身が詰まったザクザクとした食感です
ビターなチョコレートクッキーと芳醇なクリームのコンビネーションが魅力。世界100か国以上で親しまれているビスケットブランドです。
1枚当たりの重量は10g
ブラックココアパウダーをたっぷり使用したクッキーと、ほどよい甘みで香り豊かなバニラクリーム。サクサク、ふんわりした食感とリッチな味わいのココアサンドクッキーです。
「オレオ」と同じく10g
ナビスコの青 VS. ヤマザキの赤。「リッツ」「ルヴァン」のパッケージとは逆の構図
クッキーの色味は「オレオ」(写真左)のほうが黒め。日本生まれの「ノアール」(写真右)は、桜がデザインされています
「オレオ」は外国のお菓子っぽい、独特の甘やかな風味が感じられます。いっぽうで、苦みも強め(色も黒いし)。生地が崩れやすく、「ノアール」よりもわずかにエアリーな印象です。クリームのテクスチャーは、駄菓子の「モロッコヨーグル」に似ていますが、似ているのはあくまでテクスチャーであり、味は別物。ミルク感が強いわけでもなく、甘いバタークリームというニュアンス。味の余韻は「オレオ」のほうが長く続きます。
いっぽう「ノアール」は、表面の装飾が「オレオ」より粗いデザインが施されていて、食べるとこれが“タッチの違い”(より大味な印象で生地も硬い)に通じています。クリームはやはり「モロッコヨーグル」な舌触りで、ビスケットからしっかりとはがれます。バタークリームっぽい味なのは同様で、「オレオ」より硬めな感じはあるものの、かといって油分の差はほぼ感じませんでした。「オレオ」が四つ葉のクローバーなのに対して、桜を採用している大和魂が泣けます。
重量は同じですが、厚さはわずかに「オレオ」(写真左)のほうが厚め
クリームの色にも違いがあります。「オレオ」(写真左)のほうがまったりと粘度が高めです。「ノアール」のクリームが、ビスケットからきれいにはがれているのがわかります
伝統的なおいしさで長く愛されてきた、アメリカ生まれのロングセラー。どんな食材とも相性がよく、シンプルでプレーンなおいしさが魅力です。
1枚当たりの重量は2g。同社の「リッツ」よりも軽めです
層になった生地のサクッとした食感と、小麦の味わいと発酵の風味が特徴のクラッカー。旨みと酸味のバランスを追求した、毎日食べても飽きないプレーンなおいしさです。
「プレミアム クラッカー」と同じく2g。重量比べは、各対決ともすべて引き分けでした
構造の違いで顕著なのは、「プレミアム クラッカー」(写真左)は2枚がつながっていて、割れる仕様になっていること
「プレミアム クラッカー」には、「ルヴァン クラシカル」より焼き立てっぽいクリスピー感があり、歯で嚙んだ際の生地の弾け具合に勢いがありました。表面をよく見ると、全粒粉を使ったパンのように細かい粒が混じっていて、これがクリスピー感や香ばしさに起因しているのかもしれません。若干塩気が強く、嚙んでいくと素材の旨みが出てきます。「ルヴァン クラシカル」よりも香りは弱いですが、その分、具材を乗せたときに寄り添うのはこちらでしょう。
対して「ルヴァン クラシカル」は、麦を中心とした素材の香りが強い印象。「プレミアム クラッカー」より穴が少し大きく、生地の層の気泡も大きめです。ただ生地がエアリーかというとそうでもなく、むしろ凝縮感が若干強く、しっかりとしています。
「プレミアム クラッカー」(写真左)のほうが全体的に色づいていて、クリスピー感が強め
「ルヴァン クラシカル」(写真右)のほうが空気の層が多めですが、ドッシリとした食感です
3つの商品カテゴリーで比較しましたが、それぞれの対戦相手との差異はごくわずか。同時に食べ比べて初めて違いがわかりました。
たとえば、「オレオ」VS.「ノアール」は、両者とも特徴は近似していて食べ応えはたっぷりですが、前者のほうは複雑味があって余韻が長いことが辛うじてわかる程度です。あえて差をあげるとすれば、従来からのナビスコ3製品のほうが、全体的に生地が繊細で口どけが早いことくらい。
オリジナルにここまで近づけているヤマザキの開発力の高さはさすがです。シーンや好みで変える、というよりは、たまたま売っていたほうを買うくらいの気持ちで十分でしょう。
どの商品もいろいろな食材と合わせて、オシャレにおいしく食べられます!
もちろん、どの商品もパーティーのお供にぴったり。単品で食べても、意外とお酒のつまみになります。人が集まる場所にはナビスコとヤマザキの商品を用意して、素敵な時間をお過ごしください!
食の分野に詳しいライター兼フードアナリスト。雑誌とWebメディアを中心に編集と撮影をともなう取材執筆を行うほか、TVや大手企業サイトのコメンテーターなど幅広く活動中。