最近、無印良品が力を入れているカテゴリーと言えば「食品」。その中でも人気のシリーズが「不揃いバウム」です。その人気を裏付けるように、バリエーションも20種類ほどがラインアップされており、購入する時に迷ってしまいそうです。
無印良品の公式サイトには、「不揃いバウム」の人気ランキングが掲載されています。確かに購入時の参考にはなるものの、実際のところどうなの?ということで、今回は特に人気が高いバウム15種を集めて食べ比べ。フードアナリストの筆者が評価と味わいをレポートしていきます。
15種類並べると、さすがに圧巻!
今回集めたのは、以下の15種類。無印良品の公式サイトでは、人気ランキングが5位までしか紹介されていないので、今回は通販サイト「LOHACO」の人気順(2021年10月10日時点)からベスト15をピックアップしました。
無印良品のバウムクーヘンは、元々「バウム」シリーズとして展開されていました。これを2017年にリニューアルしたのが「不揃いバウム」。これまで、味はおいしいのに見た目がイマイチという理由で弾かれてきた、焼きムラや凹凸、変形した部分も採用することで、食品ロスを減らすのが目的です。とはいえ、見た目が完璧なバウムを別で販売しているわけではありません。この「不揃いバウム」が無印良品では1軍です。
不揃いになったことと合わせて、食べ切りやすいスティック状のサイズや、買いやすい価格を採用することで、元々あった人気に拍車がかかりました。ちなみに、1個150円(税込)です。
ここからは、「不揃いバウム」の人気が高いほうから順に紹介していきます。2019年12月に実施した時のランキングからどう変化しているかも注目です。
人気第1位はバナナ味。2年前にチェックしたランキング(2019年12月12日時点)でも1位と不動のトップで、「不揃いバウム」の代表作と言える逸品です。
水分量が多いのか、単にサイズが大きいのか、重量は15種類の中で断トツのトップ。その分、カロリーや糖質も高めです。
●内容量:平均110g●カロリー:457kcal●炭水化物:49.2g ※「平均」という表記は、不揃いで商品に個体差があるためだと思われます
バナナの繊維的な素材がそのまま練り込まれているような仕上がりで、これがしっとりモイスチャーな食感を生んでいます。容量の大きさと香りの強さも特徴で、食べ応えは抜群。また、香料やエキスといった風味付けだけでなく、ピューレなどをうまく使って本物のバナナの味に近づけている点がいい意味で意外でしたし、その味作りから無印良品の本気度を感じました。「不揃いバウム」の中で不動の人気No.1というのも納得です。
本物のバナナに近い風味が濃厚で、食べ応えがあります
第2位は、「バターバウム」。なぜか、パッケージデザインがほかの味とはやや異なり、透明ではない袋に入っています。ちなみに、バターはバウムクーヘンに欠かせない素材のひとつ。あえてバターを強調させているのか、それともスタンダードなバウムクーヘンなのか、そのあたりも気になります。
●内容量:平均71g●カロリー:326kcal●炭水化物:31.5g
食べてみると、確かに同シリーズのほかのフレーバーより、バターの風味が強く、生地によく染み込んでいる印象です。バターテイストが口の中でジュワッと広がり、濃密な味わい。しっとり感もあって、リッチかつ正統派です。わかりやすい王道のおいしさで、人気の高さにも納得しました。
内容量がやや少なく、また炭水化物の量が最小なのは意外でした。とはいえ、デパ地下でも通用しそうなリッチテイスト。味の方向性的に、フィナンシェ好きの人には絶対おすすめです
第3位という高評価は、2位の「不揃い バターバウム」と同様に、定番なおいしさという理由でしょうか。バターのほうが濃厚なイメージですが、ミルクとの味の違いは?といった点も踏まえてチェックします。
●内容量:平均80g●カロリー:345kcal●炭水化物:35.4g
うん、確かに想像どおり。食感はふんわりやわらかく、味はまろやかで口どけもなめらか。バターの風味は強過ぎず弱過ぎずで、バランスのよい塩梅です。お手本というか、間違いのないおいしさというか、とにかく「バウムクーヘンと言えば、これ!」的な正統派の味わいです。
万人受けの味わい。シンプルながら説得力のあるおいしさです
チョコレートの風味がふんだんに感じられる「塩チョコバウム」。前回は、第9位でしたが、今回は4位に浮上していました。塩を加えることで、チョコレートの甘さやコクを引き出しているのが特徴です。
●内容量:平均93g●カロリー:408kcal●炭水化物:38.7g
生地は比較的にパサついた感じがありますが、その分香ばしいニュアンスが出ています。味わいについては、塩が効いているからなのか、奥深さと余韻がより豊か。コーヒーやお茶などとの相性が非常によさそうです。
ショコラケーキほどではないですが、全体にチョコレートの風味がほんのり香る落ち着いたバランスです
前回の第6位からやや浮上したこちらは、スイーツ界でトレンドとなった塩とキャラメルを使ったバウム。わずかにカラメルがかった色味が、焦がした香ばしさをイメージさせます。
●内容量:平均91g●カロリー:398kcal●炭水化物:42.7g
塩を効かせているからか、味に深みがあり、ただ甘いだけではない飽きないテイストに仕上がっています。しっとり感も豊かで、風味の奥深さとあいまって、口の中でじんわり広がるおいしさが絶妙です。
塩とキャラメルの効果はてきめん。シンプルながら深い味わいです
第2位の「不揃い バターバウム」同様、透明ではないパッケージに入っている「宇治抹茶バウム」。内容量が少ない点も類似しています。もしかしたら、内容量の少なさをパッケージでごまかしているのかもしれません。
それはさておき、中身としては「抹茶を使っている」ということがわかる、緑色のカラーリングが印象的です。ちなみに、前回の第3位からランクを3つ落としました。
●内容量:平均71g●カロリー:316kcal●炭水化物:32.6g
しっとり感はなかなかのもので、後述の「紅茶バウム」と似た方向性を感じさせるクオリティの高さ。甘さが控えめになっている影響もあるのか、想像以上に抹茶の渋味が表現されています。
抹茶の苦みや風味を強めに感じる仕上がりです
見た目は、普通のバウムクーヘンですが、風味のアクセントにメープルシュガーを使用した1品。前回のランクは第5位で、やや下がりました。メープルフレーバーのバウムクーヘン自体は珍しくないですが、この商品に無印良品らしさみたいな特徴があるのか、改めて吟味します。
●内容量:平均91g●カロリー:421kcal●炭水化物:43.9g
メープルの風味は、思ったより弱め。さらに甘さも控えめですが、逆にこのおとなしさが、無印良品“らしさ”とも言えるのでしょう。欧米のお菓子にありがちなガッツリ感がなくて、上品さを感じさせます。ただ、もう少ししっとりしていたら、さらにおいしくなる気がしました。
ほのかにメープルが香るやさしいテイスト
炭酸水やレモンサワーなど、ドリンクでは大定番のレモン味。第8位ということで、今回のランキングとしては真ん中の位置です。洋菓子にもよく使われますが、「不揃いバウム」シリーズのおいしさはどうでしょうか。
●内容量:平均93g●カロリー:409kcal●炭水化物:42.6g
香りは、レモンケーキによく似た爽やかで甘いフレーバー。とは言え、さっぱりという感じではなく、バターなども効いたボディのある味わいです。生地はしっとりしていて、柑橘のニュアンスが、どこかマドレーヌに近いテイストを彷彿(ほうふつ)とさせます。
レモンの香りで上品な方向性。飲み物は紅茶が合うと思います
今回の15品の中で、「バナナ」や「レモン」に並ぶ果実系バウムクーヘンが、この「不揃い 白桃バウム」。桃のジャムやペーストを使い、フルーツテイストを再現しているようです。
●内容量:平均74g●カロリー:321kcal●炭水化物:33.7g
白桃パワーは想像以上で、香りも甘さもしっかりめ。酸味はほどほどで、フルーツ感が豊かだからか、バターはやや控えめに感じます。どこか、昔ながらのフルーツパウンドケーキ的なニュアンスも。味の特徴がわかりやすいバウムクーヘンと言えるでしょう。
生地はしっとりで、口どけも良好。甘さを求める人にもおすすめです
「バナナ」や「宇治抹茶」、「紅茶」などと同じく、「不揃いバウム」シリーズ登場時の2017年から発売されているロングセラーのさつまいも味。生地の色も黄色く、袋を開けると甘いさつまいものフレーバーが香ります。
●内容量:平均98g●カロリー:437kcal●炭水化物:46.2g
さつまいもの自然な甘さを表現しているからか、甘さは控えめで、温めて食べたくなるようなほっこり感が特徴です。バターやクリームチーズなどを塗って食べるのもおいしそう。個人的には、もっとさつまいもの香りや甘みは強くてもいい気がしました。
2年前は第4位。今回のバームクーヘンの中では、比較的やさしい風味です
前回は第7位だった「不揃い コーヒーバウム」。キレのよいコーヒーの香りと苦みをプラスした、大人な味わいの定番バウムです。とは言え、生地の色からもわかるように、たっぷりというよりは、ほんのりと効かせて上品に仕上げています。
●内容量:平均94g●カロリー:410kcal●炭水化物:45.7g
ビター感は抑え気味な分、ほろ甘感が出ていて、コーヒーというよりカフェオレ(イタリアのカフェラッテではなく、フランスのカフェオレ)的な方向性。クリームチーズと一緒に食べると、ティラミスっぽくなって面白そうです。モイスト具合もイイ感じで、全体的にリッチな味わいです。
コーヒーのほろ苦さにミルクのコクが加わった、贅沢感のあるおいしさ
第10位の「不揃い さつまいもバウム」に飽き足らず、かはわかりませんが、紫さつまいもを使ったバージョンも存在します。気になるのはやはり、味わいの違い。使っているさつまいもの品種の違いを確かめます。
●内容量:平均76g●カロリー:325kcal●炭水化物:34.3g
「不揃い さつまいもバウム」のスペックは、平均98g、437kcal、炭水化物46.2gだったので、こちらのほうが全体的にボリュームダウン。こちらも味はほっこりしていますが、焼き栗のような甘香ばしい風味が豊かです。芋けんぴのような、糖蜜やカラメル的なニュアンスとも言えるかもしれません。
「不揃い さつまいもバウム」より人気が低いのは、個性がある分飽きるということかも。でも、おいしいので、ぜひ食べ比べてみてください
なぜか前回の第2位から大きくランクダウンした「不揃い 紅茶バウム」。茶色がかった生地の中には細かな黒い点が見られ、紅茶の茶葉がミックスされていることがわかります。
●内容量:平均92g●カロリー:393kcal●炭水化物:43.1g
シフォンケーキのような食感かと思いきや、より生地の密度が高くてキメ細かく、それでいてパサパサしていません。ふんわりという感じではないものの、なかなか好感触。甘さはほんのりで、しっかりと紅茶の渋味を生かした上品な味わいに仕上がっています。
紅茶の爽やかで上品な風味が、フワッと広がります。ランクダウンの理由はわかりませんが、味は悪くないものの、リピーターは少ないということかもしれません
個人的に、今回最も味の想像がつかなかったのが「不揃い 水切りヨーグルトバウム」です。ストレートにヨーグルトバウムではなく、水切りとしている点も注目ポイント。ヨーグルトのさっぱりとした風味が特徴です。
●内容量:平均93g●カロリー:409kcal●炭水化物:44.6g
味わいとしては、香りが強めでサワー的なテイスト。タブレット菓子「ヨーグレット」のようなキャッチーさを感じます。酸味はないいっぽうで、甘みはしっかり。しっとりなめらかで、食感も絶妙ですが、スペックが特段ヘルシーというわけではないのであしからず。
水切りヨーグルトの要素は、口の中でとろける感じで表現しているのかもしれません
今回第4位の「不揃い 塩チョコバウム」、5位の「不揃い 塩キャラメルバウム」に次ぐ塩シリーズ。両商品より人気が高くないのは、塩バニラが若干マイナーだからでしょうか。味の完成度はいかに。
●内容量:平均85g●カロリー:390kcal●炭水化物:34.5g
こちらも、ほかの塩シリーズ同様に、塩のうまみやエッジを感じる見事な味の相乗効果。さらには、しっかりしたバニラの風味がバターの香りと相まって、リッチなテイストを生み出しています。
塩がふくよかさや奥行きを生んでいて、濃厚さにもつながっています。個人的には、もっとランクが上でもいいような……
無印良品「不揃いバウム」15種を食べ比べました。
全体的な印象としては、各フレーバーがしっかり引き出されており、基本的には甘さは控えめ。しつこくはないと思います。小腹が空いたときのおやつにはぴったりですし、甘過ぎるお菓子が苦手な人にもおすすめできる味わいです。
ティータイムのおともにも最適!
ちなみに、筆者の独断による各部門のNo.1は以下の通りです。
・【しっとりNo.1】バターバウム
・【甘さNo.1】 白桃バウム
・【大人味No.1】 紅茶バウム
・【食べ応えNo.1】 バナナバウム
・【筆者の好みNo.1】 コーヒーバウム(塩キャラメルバウムも捨てがたい!)
それぞれ個性があって、15種類食べても飽きないおいしさでした
全20種以上ラインアップされ、どれも税込150円で買えるので、本稿のように複数のバウムを大人買いするのも楽しいです。皆さんも、自分だけのNo.1バウムを見つけてみてください。
食の分野に詳しいライター兼フードアナリスト。雑誌とWebメディアを中心に編集と撮影をともなう取材執筆を行うほか、TVや大手企業サイトのコメンテーターなど幅広く活動中。