レモンサワーが、ここ数年ブームになっています。
サントリーの「こだわり酒場のレモンサワー」の大ヒットがあったり、コカ・コーラ初のアルコール飲料「檸檬堂」や、EXILE監修のローソン限定品「LEMON SOUR SQUAD from NAKAMEGURO」が人気で品薄になったりするなど、その勢いは止まるところを知りません。
缶チューハイには、商品名で「レモンサワー」とうたっているもののほか、レモンフレーバーのチューハイも多数存在。今回はそのなかから、メジャーな銘柄10種と2021年上半期の新作5種を飲み比べ。成分量などの違いから味わいの特徴まで、さまざまな角度からレポートしていきます。
まずは、メジャー銘柄10商品からレポ―ト!
アルコール度数の高いもの低いもの、焼酎やウォッカなどベースが異なるもの、缶を逆さにして味わう果実系など、個性豊かな顔ぶれです
1984年、日本初の缶入りチューハイとして発売されたパイオニア的名作。イタリアのシチリア産手摘みレモンと、炭でろ過したクリアな味わいの水を使用。ベースになるのは、宝酒造が保有する約2万もの樽の中から厳選した11種類の焼酎です。
●ベース:焼酎●アルコール度数:8%●レモン果汁:3.3%●100ml当たりカロリー:57kcal
さすが元祖という味わい。
焼酎のおいしさを前面に感じられる、宝酒造ならではのオンリーワンのおいしさです。レモンはあっさりしていますが、だからこそ焼酎のテイストをジャマせず、この商品の場合はよいいほうに作用していました。
宝酒造こだわりの焼酎のウマみが感じられます
大衆酒場などで焼酎のレモンサワーを飲み慣れている人は、むしろこの方向性の「タカラcanチューハイ レモン」だからこそ「お店の味っぽい」と感じられると思いますし、それがロングセラーの理由だと思います。
本品は、下町の大衆酒場で飲むハイボールの味を再現した「タカラ焼酎ハイボール」シリーズの1品。強炭酸の爽快なキレ味と、アルコール度数7%の飲み応えが特徴の辛口チューハイです。甘味料、糖質、プリン体がゼロなのも魅力。
●ベース:焼酎●アルコール度数:7%●レモン果汁:1.5%●100ml当たりカロリー:42kcal
商品のコンセプト通り、古典酒場のレモンサワーに1番近いと思います。ある意味で、安心感すら感じられる“あの味”です。
飲んでいると、行きつけの居酒屋の情景が浮かんできます
ベースの焼酎のコクが抜群で、チューハイとして飲んだときの厚みと満足度は抜群! 醤油や味噌の味わいが前面に出ているような和風のつまみと合わせるのがオススメです。
キリンのロングセラー「氷結」は、ほどよいアルコール度数とスッキリした飲みやすさを両立させた缶チューハイシリーズ。本製品は、シチリア産レモンのストレート果汁をメインに使用した、爽やかなおいしさが楽しめます。
●ベース:ウォッカ●アルコール度数:5%●レモン果汁:2.7%●100mlあたりカロリー:45kcal
「スッキリ」という表現がとても似合うレモン缶チューハイです。みずみずしく、澄み渡るような爽快感でキレも十分。暑い日や炎天下のBBQなどでは、よりおいしく感じられそうです。
夏にキンキンに冷やして飲みたくなる味わい
レモンフレーバーはガツンと来るほど強くはありませんが、酸味が適度にあって飲み飽きないおいしさがあります。
「本搾り」シリーズは、果汁とお酒の“ありのまま”のおいしさを楽しめる本格チューハイ。レモンの爽やかな酸味とみずみずしい味わいが特徴です。香料、酸味料、糖類は無添加。果汁が多いので、飲む前に逆さにしてから飲みましょう。
●ベース:ウォッカ&レモンリキュール●アルコール度数:6%●レモン果汁:12%●100ml当たりカロリー:38kcal
甘さが最も控えめないっぽうで、レモンの皮をほうふつとさせるビター感が本格的なニュアンスを醸し出しており、苦味は今回の10製品の中で最も強め。「ビターズ」という「RTD(=Ready To Drinkの略。購入後すぐ飲める缶飲料などを指す)」を出しているキリンビールならではと言える味わいでした。
甘さ控えめで、ビターな味わいが本格的!
中身のにごりもそれなりにあって、本格度が高いです。ドライでキレもあり、甘くないのでさまざまな料理に合いそう。辛口なお酒が好きな人にオススメです。
「アサヒ贅沢搾りレモン」は、レモンまるごと1個分以上の果汁を使った、ネーミング通り“贅沢”なチューハイ。人工甘味料は不使用で、14%の高い果汁量ならではの豊潤な香りとみずみずしさが特徴です。複数の果汁をブレンドした複雑な味わいの中に、バランスのよさが感じられました。
●ベース:ウォッカ●アルコール度数:4%●レモン果汁:14%●100ml当たりカロリー:39kcal
レモンの果汁感は確かに圧倒的で、フルーティーな香りも鮮烈。それでいて、酸っぱ過ぎない飲みやすさがあって、完成度が非常に高い1本です。
フルーティーな果汁感をたっぷり楽しめます
アルコール度数もやさしめで、ゴクゴクいけそう。同じ果実系の「本搾り」とはカテゴリーが同じでも、キャラクターはかなり異なりますので、お好みでチョイスしてみてください。
レモンサワー好きが求める“濃さ”にこだわった「レモン・ザ・リッチ」シリーズの3作から、今回は「濃い味レモン」をセレクト。レモン果皮、レモンオイル、レモンパルプが入った混濁果汁による、奥行きのある味わいが特徴です。
●ベース:ウォッカ●アルコール度数:5%●レモン果汁:3%●100ml当たりカロリー:55kcal
レモン果汁はそこまで多くないのに、果実系缶チューハイに負けないレモン感が楽しめました。サッポロは、ポッカサッポロの超名作「ポッカレモン100」や「キレートレモン」などをリリースしている実績もあり、レモンに関する開発力はハンパじゃないと思いました。
レモンに強いサッポロならではの濃い味わいが印象的
ネーミング通り、酸味も甘味も濃いめで飲み応えがあってリッチ。それでいて、アルコール度数は控えめで飲みやすい1本です。
純度99.99%のウォッカを使うことで、雑味のないクリアな飲み味を実現した「99.99(フォーナイン)」シリーズの1品。レモンの酸味でキリッと引き締まった、飽きのこない味わいが特徴です。
●ベース:ウォッカ●アルコール度数:9%●レモン果汁:0.3%●100ml当たりカロリー:55kcal
高純度がどういうものなのかは、飲んでみるとよくわかります。とにかくクリアで、シャープなアタックがありながらも、エグみがなくてフレンドリー。レモン感はほんのり感じられる程度で、ビターなニュアンスもありました。
味わいもパッケージデザインもスタイリッシュです
総じてスッキリしていて、ドライな味わい。余韻の透明感は、同社のロングセラー焼酎「トライアングル」的なニュアンスに近いと思います。
「-196℃ ストロングゼロ〈ダブルレモン〉」は、レモン果汁に加え、「-196℃製法」で瞬間凍結させて粉砕した果実をそのまま使ったストロング系チューハイ。高アルコール度数の飲み応えと、しっかりとしたレモンの果実感が特徴です。甘くないので食事にもすこぶるマッチ。
●ベース:ウォッカ●アルコール度数:9%●レモン果汁:3%●100ml当たりカロリー:54kcal
アルコール度数は9%と確かに高いですが、甘味や酸味なども高いレベルでバランスよく作られているので、嫌な酒臭さがなく、おいしく飲めました。
甘味と酸味の好バランスのほか、レモン感もしっかりしているので、高アルコール度数でも飲みやすい!
アルコールのパンチだけでなく、味わいのアタックも強めで、揚げ物をはじめとするコッテリした料理に合いそうです。
「こだわり酒場のレモンサワー」は、お店で飲める味を目指した1本。厳選したレモンをまるごと漬け込んだ浸漬酒と、複数の原料酒をブレンドしたスピリッツによって、豊かなウマみと余韻が楽しめます。CMなどの登場する俳優・梅沢富美男さんのレモンのカブりものも印象的ですね。
●ベース:スピリッツ&焼酎●アルコール度数:7%●レモン果汁:未表記●100ml当たりカロリー:42kcal
ビターなストロング系と、フルーティーなレモン缶チューハイをイイとこどりしたような味わいです。
レモンもお酒もしっかりと感じられる本格派
酒の味はどっしりしていながら、レモンの酸味も強めに出ていて、ほんのり苦みも効いたナイスな完成度。ネオ大衆酒場の方向性を感じさせる、新時代のレモンサワーだと思います。
まるごとすりおろしたレモンを、あらかじめお酒に漬け込む「前割り製法」を採用した「檸檬堂」シリーズ。その4種類の中から、今回はオーソドックスな「定番レモン」をチョイスしました。果実感を前面に押し出した、フルーティーなタイプのレモンサワーです。
●ベース:スピリッツ(蒸留酒)●アルコール度数:5%●レモン果汁:10%●100ml当たりカロリー:48kcal
レモンの豊かな酸味と、それに負けない甘味もしっかり出ていて、両者がバランスよく調和しています。
酸味と甘みのバランスが絶妙で高い完成度です
ジューシーなニュアンスもあって、味の密度は総じて高め。本品は、日本コカ・コーラ初のアルコール飲料製品ですが、それを感じさせない完成度の高さだと思います。
ここからは、2021年上半期に発売された新作レモンサワーから、注目商品5種をレポートします。最近の全体的な傾向として、アルコール度数9%のストロングタイプは減少傾向で、高くても7%が主流になってきています。
既存ブランドから缶チューハイとして新発売されたものを含む、各社の5商品を同条件で飲み比べます
「麒麟 発酵レモンサワー」は、酵母発酵させたレモン果汁を使っていることが最大のウリ。濃厚さやまろやかさ、華やかさや香りなどの新たな香気成分が、通常のレモン果汁と比べて55種類も増えており、消費者のモニター調査によると、同社RTD(Ready To Drink)商品史上歴代No.1の味覚好意度を獲得したという自信作です。
●ベース:スピリッツ&レモン浸漬酒●アルコール度数:7%●レモン果汁:10%●100ml当たりカロリー:51kcal
フレッシュなレモンの香りが鮮烈で、味わいとしても店で提供されるような本格感があります。レモンの存在感は豊かながら、酸味は強過ぎず、甘さや苦味などのバランスも秀逸。新時代のスタンダードになりそうな大型ルーキーと言える貫禄があります。
濃厚さとバランスのよさが両立。満足度の高い味わいです
キリンビールは、缶チューハイの金字塔「氷結」を持つ缶チューハイのリーディングカンパニー。ソフトドリンクカテゴリーにおいても、超ロングセラーの「キリンレモン」があり、レモンは得意中の得意分野。苦味に着目した「キリンチューハイ ビターズ」、うまみに着目した「キリン 麹レモンサワー」なども発売していて、それらのノウハウが「麒麟 発酵レモンサワー」に凝縮されたかのような集大成感もあります。2021年のレモンサワー界をにぎわす1本になるのではないでしょうか。
“レモンサワーの素”として発売されていた商品が、2021年春に缶チューハイとして新発売。シチリア産手摘みレモン果汁とレモン漬け込み酒を使用することで、酸っぱく爽やかな濃い味に仕上げています。それでいて、余韻はすっきりしているのも特徴です。
●ベース:ウォッカ&レモン浸漬酒●アルコール度数:7%●レモン果汁:1%●100ml当たりカロリー:43kcal
本商品は、濃厚で良バランスという点では、(11)の「麒麟 発酵レモンサワー」と近しい方向性ながら、やや甘さ控えめで大人な味わい。また(6)のサッポロビール「レモン・ザ・リッチ 濃い味レモン」も濃厚なテイストですが、こちらはよりお酒としての飲み応えを感じます。
「しっかりすっぱい!」のうたい文句は確かに当たっています。キュッとしたレモンの酸味が印象的
飲み応えは、アルコール度数の違いによるものだと思います。(6)の「レモン・ザ・リッチ 濃い味レモン」は5%なので、パンチとしての物足りなさ感じている人は7%の本商品のほうがいいでしょう。飲み比べもおすすめです。
サントリーの「−196℃」と言えば、アルコール度数9%の「−196℃ ストロングゼロ」シリーズが定番商品として定着しましたが、この「−196℃ 〈ザ・まるごとレモン〉」はアルコール度数7%と若干抑えめ。果実を−196℃で瞬間凍結させて、皮や種を含めた果実のおいしさをまるごと閉じ込めるという、ブランドの原点回帰的な商品だと個人的には思います。
●ベース:ウォッカ●アルコール度数:7%●レモン果汁:3%●100ml当たりカロリー:44kcal
ちなみに、原材料表記のベースとしてはウォッカだけですが、表面ラベルには「レモン浸漬酒使用」と書いてあります。飲んでみて印象的に感じたのは、甘さがかなり抑えられている点。そしてレモンピール的な酸味を持ったビターテイストも感じられました。
あまり甘くなくてレモンの酸味は鮮烈。店で飲むような、リアルなレモンサワーとも非常に近いおいしさだと思います
濃さはしっかりめで、飲み応えも十分。「−196℃ ストロングゼロ」シリーズよりアルコール度数が低い分、より酒臭さがないのも魅力で、個人的には「−196℃ 〈ザ・まるごとレモン〉」のほうが好きです。シャープでキレも鋭く、こってり系フードや揚げ物にもいっそう合うと感じました。
サントリーの韓国焼酎ブランド「鏡月」から、缶チューハイとして装い新たに2021年春にデビュー。やわらかくまろやかな味わいの「鏡月」をベースに、甘くないすっきりとした味わいにするとともに、独自の「炭酸感キープ製法」で爽快感も高められています。
●ベース:スピリッツ&焼酎●アルコール度数:7%●レモン果汁:1.5%●100ml当たりカロリー:41kcal
焼酎感は確かにまろやかで、全体的に味わいがクリアな点も印象的。レモン感がそこまで強くないからかもしれません。プレーンなチューハイにレモンを少量加えたような味わいで、店っぽいピュアなおいしさでした。
サムギョプサルやキムチなど、韓国料理に合わせたら確実にドンピシャマッチ!
甘さやレモンフレーバーがかなり抑えられている分、ヘルシー感が前に出ているのもポイント。後味がシャープでキレが鋭く、甘くないので食事にもよく合うテイストです。
ロングセラーのチューイングキャンディー「かむかむレモン」ブランドから登場した、まさかの意欲作がこの「かむかむレモンサワー」。甘味料は使わず、瀬戸内産レモン果汁を一部に採用した、レモンの自然な甘さと果汁感が特徴です。
●ベース:ウォッカ●アルコール度数:5%●レモン果汁:5%●350ml当たりカロリー:230kcal
原材料における最大のポイントが、果実の皮や果肉の膜といったレモンパルプ(繊維)を大量に使っていること。つぶつぶジュースのようなはっきりとした食感はありませんが、みずみずしい舌触りや、果実味あふれるテイストは独特のものです。
ゆっくりと逆さにしてから開栓すると、よりレモンパルプを楽しめます
ブライトな甘酸っぱさが全面に出ていて、苦味は抑えめ。アルコール度数も5%と強くないので、ゴクッと飲みやすい味わいに仕上がっています。「かむかむレモン」らしいカジュアルさが見事に表現された、レモンサワーの入門者におすすめの1本だと思います。
「レモンサワー」の缶チューハイと言っても、こうして飲み比べると、それぞれの個性はまったく異なります。タイプごとのおすすめは以下の通りです。
・焼酎ベースが好きな人
「タカラcanチューハイ レモン」
「タカラ焼酎ハイボール レモン」
・ビター派の人
「キリン 本搾り チューハイ レモン」
・フルーティー派&酔いやすい人
「アサヒ贅沢搾りレモン」
・甘めが好きな人
「レモン・ザ・リッチ 濃い味レモン」
「かむかむレモンサワー」
・甘さが苦手な人
「タカラcanチューハイ レモン」
「タカラ焼酎ハイボール レモン」
「−196℃ 〈ザ・まるごとレモン〉」
「鏡月焼酎ハイ〈ちょい搾レモン〉」
今後もますます拡大していくであろうRTD市場。その旗手となっているレモン缶チューハイは、各メーカーとも販売強化に余念がなく、バリエーションも豊かです。飲用シーンに合わせて選んで、いろいろと飲み比べてみてください!
食の分野に詳しいライター兼フードアナリスト。雑誌とWebメディアを中心に編集と撮影をともなう取材執筆を行うほか、TVや大手企業サイトのコメンテーターなど幅広く活動中。