毎日食べても飽きない、“おふくろの味”の代表格と言えば、味噌汁です。「何だかんだ、人生最後の食事は白米と味噌汁がいい」と言う人や、「吉野家に行くと、必ず味噌汁も注文するタイプなんだよね」という人も少なくないでしょう。
なじみのある料理だけに、味噌汁を商品化したものは多く、なかでも定番と言えばインスタントの味噌汁です。なかでも、フリーズドライタイプが年々注目を集めていることはご存じでしょうか。フリーズドライ食品は、乾燥タイプなので軽いうえに賞味期限が長く、備蓄にも最適。味噌と具材すべてがひと袋に個包装されているため、ほかのインスタント食品より手軽に作れることも人気の理由です。
そこで今回は、フリーズドライ商品の最大手メーカー、アマノフーズの味噌汁を紹介します。
フリーズドライの味噌汁は、お湯を注ぎ、かき混ぜるだけですぐに完成。なかには、「かに」、「ふぐ」といった豪華な食材が入る商品も。具材が比較的自由なのもフリーズドライの特徴です
アマノフーズは、商品ラインアップが多く、味噌汁だけでも「いつものおみそ汁」「金のだし」「10品目の一杯」など、シリーズが多彩に展開されています。今回は、その中で最もベーシックかつリーズナブルな「いつものおみそ汁」の15種類を集めてみました。
ズラリと15種類。赤ダシタイプなど、具材以外にも違いがあります
それぞれの味の特徴を始め、ダシ感や具材を含め、1杯の総合評価を満足度5段階で評価していきます。また、朝/昼/夕方/夜の中でどの時間帯に食べるのが最もオススメか、そしてどんな料理と好相性かも考えていきます。
カロリーは1食分(9g)で30kcal
長ねぎの甘みに合わせ、やさしい甘さの味噌を使用。かつお香る合わせダシでバランスのいい味に仕上げています。
刻まれたねぎがたっぷり。ところどころ、大ぶりカットのねぎも見られます。わかめがいいアクセントに
ねぎは、シャキッとした清涼感のほか、甘みも演出。シャープなすっきり系の味噌とうまく調和しています。どんな料理にも合いそうな万能性を感じますが、特に揚げ物の定食など、濃厚なものが合いそうです。
カロリーは1食分(10g)で36kcal
ダシはかつおと昆布で深みをプラス。合わせ味噌と調合させた“ド真ん中”な味わいです。
豆腐は一般的なサイズ感。具材はほかに、ねぎとわかめが入る鉄板トリオです
正直、攻めてはいません。味のインパクトも強いわけではありません。ただ、これこそが味噌汁の真骨頂ではないかと思える安定感を味わえました。「味噌汁たるもの、目立っちゃいけないんです」「主役を立てるのが自分の役目ですから!」、そんな潔さや引き算の美学を感じます。もし「この中で一生毎日飲み続けるならどれ?」と言われたら、これを選ぶかもしれません。
カロリーは1食分(7.5g)で25kcal
コク深い赤味噌に、ふんわり香るかつおダシ。具材には、三つ葉と焼き麩(ふ)と豆腐が入る、シンプルで飲みやすい赤ダシ味噌汁です。
豆腐は小さめないっぽう、焼き麩は大きめで存在感はしっかり。三つ葉は控えめですが、風味は十分ありました
塩味よりもダシのうまみが豊かで、具材の主張も控えめと、全体的に上品な印象。三つ葉は縁の下の力持ち的な感じで前面には出てこないですが、独特の青々しい香りでしっかりとまとめ上げています。お吸い物的なニュアンスも感じました。
カロリーは1食分(8.5g)で27kcal
まろやかな合わせ味噌と、かつおと昆布としいたけのダシ。具材には、しいたけ、えのきだけ、ぶなしめじの3種のきのこと、彩りにねぎを組み合わせ、香り豊かに仕上げています。
総量としてはたっぷりとまではいかないものの、3種のきのこが味わえて満足度はなかなか
きのこはトロッとした感じではなく、むしろシャキッとした食感で意外でした。3種の“キャラクター”の違いが楽しめます。きのこ特有のクセのある香りがないのは好き嫌いが分かれるところですが、小さいお子さんでも食べやすい味だと思います。
カロリーは1食分(8g)で27kcal
ツルッとした食感のなめこが特徴。まろやかでコク深い赤味噌に、かつおダシですっきりしたニュアンスを加えた、飲みやすい赤ダシ味噌汁です。
なめこのとろける食感と、清涼感のあるねぎがメリハリを生んでいます
なめこ特有のニュルッとしたテクスチャーが印象的で、こういった食感が好きな人にはたまらない1杯。そこに、ねぎのキリッとした味が好アクセントとして光ります。赤味噌との相性もいいですね。これだけで楽しんでもいいと思いますが、合わせるなら爽やかな味のちらし寿司がよいかと。
カロリーは1食分(10g)で35kcal
味のベースは、合わせ味噌でうまみと甘みを調和させ、かつおダシですっきりと仕上げています。具材はキャベツ、ほうれん草、ねぎ、にんじん、わかめの5種類で、ふくよかな味と彩りも演出しています。
野菜は食感だけでなく、みずみずしく甘みのあるダシ感を加えているようにも感じます
味噌の甘やかなうまみの中に、野菜の甘みもブレンドされていて、総合力の高さを感じるおいしさです。具材がもっと多いと満足度はより高いと思いますが、とはいえ食事に野菜を足したい時に最適でしょう。
カロリーは1食分(9g)で31kcal
味噌はやさしい甘さの麦味噌を使い、そこにかつおと煮干しのダシをブレンド。野菜はれんこん、ごぼう、にんじん、ねぎ、しいたけを採用し、どこか懐かしい素朴な味わいに仕上げています。
麦味噌と野菜だからか、甘みが際立つ味わい。野菜はホッコリしたおいしさです
味噌汁としては甘みが豊かな印象で、野菜はれんこんやごぼうのシャキシャキ感と、きのこのプリプリが対比した多彩な食感。これに豚肉を入れれば豚汁っぽくなるはず。そんなこともあって、料理は豚肉を使った食事が合うと思いました。
カロリーは1食分(9g)で32kcal
うまみを生かした合わせ味噌と、かつおダシによるベーシックな味わい。そこに、ごぼうの力強い風味を調和させてコク深いテイストに仕上げています。
ごぼうのほか、ねぎ、油揚げ、わかめも入っています
ジャクッとしたごぼうの食感が楽しいですね。シャープな塩味の中に、油揚げがしっかりとしたボディを作っているのが好印象。ねぎやわかめもいい仕事をしていて、総じてクオリティが高いと思います。卵のマイルド感がある料理に合うでしょう。
カロリーは1食分(7g)で25kcal
定番の合わせ味噌×かつおダシに、ほうれん草のうまみがフワッと広がります。まろやかで飲みやすい味噌汁です。
具材は、ほうれん草と油揚げというシンプルな内容
01の「長ねぎ」の味噌汁にも通じる、潔さを感じるあっさりテイスト。ほうれん草と油揚げは、ともに主張し過ぎずにたたずんでいますが、力強くしっかり下支えはしています。そんな大人な存在感が楽しめます。
カロリーは1食分(8g)で26kcal
甘み広がる熟成合わせ味噌と、かつお&昆布ダシをブレンド。やさしい味わいが、あおさの存在感を引き立てます。
あおさのほか、もずくとねぎで味の輪郭をカバー。量はしっかりと入っている印象です
食べ応えとしてはほかと大差はないものの、具が全体に行き渡っていて、満足度がとても高いと思いました。あおさやもずくの磯の風味はほどほどで、嫌な生臭さは皆無。魚の刺身や生肉を使った料理に合うと思います。
カロリーは1食分(9.5g)で44kcal
まろやかな合わせ味噌と、かつおと昆布の合わせダシによるスタンダードな味噌汁。具材にはトロッと仕上げたなすを入れ、食感を楽しめるようにしています。
なすは大きめサイズのものもあって、食べ応えはなかなかのもの。ねぎとわかめも入っています
このなす、揚げているんですね。味が染みていて食感もなめらか。量もたっぷり入っています。味噌汁全体は濃厚な味で、食べ応えが抜群。揚げなすを入れる味噌汁って、実際に作ると手間がかかるので意外に飲む機会は少ないのでは。これは好きです!
カロリーは1食分(8g)で33kcal
ふんわり甘い合わせ味噌と、かつお香る合わせダシ。このやさしいうまみが、ていねいに焼き上げた香ばしいなすの味を引き立てています。
11の「なす」とはなすの切り方がやや異なります。ただ、大きさは同様になかなかのもの。また、ねぎが少々入っています
香ばしい要素はそこまで感じないものの、なすの味は絶品。ただ全体的な完成度は11の「なす」のほうが高いと思いました。満足度も比較すると劣りますが、それでもアマノフーズの「なすの味噌汁」はハズレなしですね。
カロリーは1食分(12.5g)で52kcal
ラストの3商品は、「いつものおみそ汁」の中でもプレミアムなタイプ。まずはこちらから。麦味噌と野菜のうまみが広がる合わせダシをベースにした豚汁です。
豚肉のほか、ごぼう、にんじん、玉ねぎ、長ねぎが具材に使われています
油っこさがなく、サラッと味わえる豚汁です。肉は切り身のサイズと量ともにまあまあのボリュームという印象。それでもしっかりとおかずとして成り立っていて、食卓にもう1品加えたい時に活躍してくれそうです。
カロリーは1食分(14g)で23kcal
熟成合わせ味噌と、あさりの風味豊かな合わせダシによる贅沢な1杯。あさりのうまみと香りが、口の中でまろやかに広がります。
あさりは4個入り。ねぎがアクセントに
甘やかなあさりの風味はさすが。4個という数は少ない気もしますが、1袋100円ちょっとという価格であれば適正な気もします。あさりには身自体にうまみが凝縮されていて味も濃く、酒のつまみにもなりそうなパンチを感じられました。
カロリーは1食分(16g)で27kcal
赤味噌と、しじみとかつおによる魚介ダシをブレンド。殻付きしじみと相性のいい赤味噌を合わせることで、しじみのうまみを引き出しています。
小粒な分、14の「あさり」より個数は多め。こちらもねぎがアクセントに
赤味噌を使っているだけあって、ダシの方向性が14の「あさり」とは異なり、土着的な風合いに仕上がっていました。味わいとしては、赤味噌がシャープさ、しじみがまろやかな甘みを醸し出しているいっぽうで、具の種類は少ないので、味噌汁としてはシンプルな構成。酒を飲んだ後にオルニチンを摂取する目的で飲んだり、食事の際にソース系の洋食と合わせたりするのがオススメです。
個人的な各時間帯のNo.1味噌汁は以下の通り。
・朝食時に食べたいNo.1「なめこ」
・ランチ時に食べたいNo.1「ごぼう」
・夕食時に食べたい夕方No.1「なす」
・夜の晩酌のお供No.1「あさり」
No.1にはならなかったものの、「あおさ」や「長ねぎ」もとても美味でした。とはいえ、15種類と豊富なので、それぞれ好みが分かれるところでしょう。
アマノフーズは味噌汁以外のスープのほか、パスタやカレーなど、フリーズドライ食品を多彩に商品化しています。また、限定で発売された「かつとじ丼」は、お湯で戻すフリーズドライ食品なのに、なぜかサクサクという驚きの食感が体験でき、話題となりました。今後もフリーズドライ食品から目が離せません!
札幌、東京(丸の内)、横浜、大阪(梅田)にあるアマノフーズの専門店では、「いつものおみそ汁」以外のシリーズも取り扱われているので、気になる人はぜひ!
食の分野に詳しいライター兼フードアナリスト。雑誌とウェブメディアを中心に編集と撮影を伴う取材執筆を行うほか、TVや大手企業サイトのコメンテーターなど幅広く活動中。