SNSなどで「コンビニ最強酒」とあがめられている、「ふなぐち」という日本酒をご存じですか?
最強の理由は後述しますが、この「ふなぐち」が、おつまみ缶詰No.1(※)の「缶つま」とタッグを組み、「ふなぐちに合う缶つま選手権」なるオンラインキャンペーンが、2020年8月7日まで開催されています。
キャンペーン内容は、「缶詰博士」として知られる黒川勇人さんが厳選した10品の「缶つま」の中から、識者投票と一般投票により、「ふなぐち」に合うNo.1のペアリングを決定するというもの。そして、投票した人の中から抽選で20名に、「ふなぐち」10缶と「缶つま」10個セットが当たるというものです。
今回、その対象商品を入手したので、筆者もペアリングしてみました。
※出典:富士経済「2019食品マーケティング便覧」
「ふなぐち」の種類はさまざま。写真中央の200mlが大定番で、500mlの大容量タイプ(左)や、2019年に新発売されたスパークリング(右)などもラインアップされています
「ふなぐち」の正式名称は、「生原酒 ふなぐち菊水一番しぼり」で、蔵元の菊水酒造は約1200ある全国の蔵元の中で、全国清酒出荷量が14位という大手です。強みは、生酒と生貯蔵酒出荷量で、こちらはなんと日本一だとか! その基盤となっているのが何を隠そう、この「ふなぐち」。パッケージに「元祖 生原酒」とあるように、1972年に日本初の缶入り生原酒として登場したという出自を持つお酒なのです。
生原酒ならではの特徴のひとつが、高いアルコール度数。一般的な日本酒はアルコール度数が15〜16度なのに対し、「ふなぐち」は破格の19度です
新潟の酒の味を表現する言葉と言えば、キレがあってサッパリを意味する「淡麗辛口」ですが、「ふなぐち」は真逆の「濃醇旨口」。ワインで言えば、甘口でフルボディな酒精強化ワインのようなタイプでしょうか。生酒ならではのフレッシュでフルーティーな香りや雄大な米のうまみ、高いアルコール度数によるガツンとしたコク――。酒好きにはたまらないインパクトがあり、その人気の高さからコンビニでも売れる、だから「コンビニ最強酒」と呼ばれるのでしょう。
対する「缶つま」は、国分グループ本社が発売する人気ブランド。その名の通り、お酒に合う肴(さかな)を缶詰にしたこだわりのおつまみが主体で、「素材を選び抜く」「製法で引き出す」「アレンジは独創的に」の3つの誓いをテーマに商品を展開しています。定番の「缶つま」のほかに、「缶つまスモーク」「缶つま極」などのシリーズもあり、トータルで70種以上もラインアップされています。
その中から缶詰博士が選んだのは、珠玉の10種。肉系から魚系までバラエティ豊かです。ズラリと並べてみました。
本稿では、これら「缶つま」を1缶ずつ食べては「ふなぐち」を飲んで相性診断を繰り返し、各味をレポート。評価は、「ドンピシャ! ベストマッチ」は「S」、「おぉ! ナイス相性」は「A」、「なかなか合いますね」は「B」で行っています。そして最終的に1品に絞り、筆者が先述のキャンペーンで投票するペアを発表します!
1缶45g当たり70kcal
北海道噴火湾で獲れたほたてのむき身を使用。桜のチップで燻製し、うまみをオホーツク塩で仕上げた1品です
本商品は、シャープな塩味で味の濃さは十分。燻製オイルのおかげで香りもしっかりしています。「ふなぐち」との相性もなかなかいいですが、醬油系で甘めの味付けにしたほうが合うかもと思いました。
1缶45g当たり80kcal
鹿児島の銘柄鶏「赤鶏さつま」を使用。塩と一味唐辛子で味付け、備長炭で香り高く焼き上げています
全国に展開する居酒屋「塚田農場」などでおなじみの炭火焼き鶏ですが、本商品も炭火でガンガン炙られた自然味あふれる香りが凝縮されていて、つまみにはぴったり。パンチのある「ふなぐち」が、風味の余韻を適度に切りつつ、しっかり調和してくれてナイスです。
1缶45g当たり85kcal
広島県海域で育ったかきのむき身を使用。桜のチップで燻製し、引き出したうまみを藻塩で仕上げた逸品です
パッケージは、人気のアウトドアマンガ「山と食欲と私」とのコラボバージョン。ブリッと引き締まった身に、かき特有のうまみと燻製の香りが凝縮されています。どっしりとした「ふなぐち」の甘みが受け止めて、これもなかなかいい塩梅。
1缶150g当たり458kcal
宮崎の霧島山麓で育った「霧島黒豚」を使い、丸大豆醬油をベースに甘じょっぱく味付け。食べ応えのあるサイズ感で、肉のうまみを存分に楽しめる贅沢な味わいです
ジューシーな身とコッテリとした脂が濃厚なタレ系の味わいとひとつになって、きわめてリッチなおいしさ。「ふなぐち」は米の甘みが豊かな濃醇旨口なので、個人的にはこのように濃くて甘じょっぱい料理のほうが合うと思いました。
1缶100g当たり203kcal
九州産のブランドぶり「うまかぶり」の希少なアラ部分を使用。じっくり炊き込むことで、骨までやわらかく仕上げられています
ぶりの持ち味である、濃厚な脂が醬油ダレとマッチしていて、ほかの魚缶詰とは一線を画すおいしさ。とろみもあって完成度が高いです。ガツンとした「ふなぐち」との組み合わせは、まさに“水魚の交わり”と言える相性のよさ!
1缶75g当たり162kcal
国産の良質ないわしを使用。ハバネロソースでスパイシーに楽しむユニークな缶詰です
これは想像以上にマッチ! 辛さもさることながら、和の味を感じさせる醬油ベースで、個性的なオイルサーディンに仕上がっています。辛さはカレーで言うと中辛程度で、箸が進むおいしさ。さらに辛くしたい人はタバスコなどを追加してもいいでしょう。「ふなぐち」のような濃い日本酒には、これくらいパンチのあるつまみのほうが合いますね。高アルコールのボディが辛さを切りつつ受け止めてくれるので、このマッチングはアリです。
1缶80g当たり177kcal
缶詰としてはおなじみのコンビーフを、ゴマ油やトウバンジャンをきかせてユッケ風に仕上げた意欲作。カナッペやサラダなど、料理のアレンジにも活用できます
ゴマ油は香りの演出だけでなく、しっとりとしたテクスチャーを加えていて、コンビーフにありがちなドライな感じがないのもイイ! 「ふなぐち」は、コンビーフが持っていない甘みを補う形でマッチして、新しいおいしさが楽しめます。
1缶140g当たり158kcal
厳選された牛すじとこんにゃくを使用。醬油ベースのタレで、じっくりやわらかく煮込まれています
牛すじとこんにゃく、このメリハリのある2つの食感が楽しめて、飽きずに食べられます。甘く濃厚なタレはトロトロとしたテクスチャーで、素材の食感とも好相性。やはり「ふなぐち」には、濃厚で甘じょっぱい味が合うと再認識しました。
1缶25g当たり51kcal
桜のチップで燻製された国産のうずらの卵が、1缶に5〜6個イン。ほどよい塩気とスモークの香りが楽しめます
燻製された卵が、缶の中では燻製オイルに浸けられているので、味と香りの染み方は抜群。食感はブリッとしていてたくましく、卵の味もしっかり。そのままだと卵のスモーキーな風味が残りますが、「ふなぐち」を飲むとリセットされ、甘みをプラスしてくれるのでよりおいしく楽しめます。
1缶40g当たり154kcal
北海道で育った鶏の、希少部位であるぼんじりを使用。直火で焼き上げ、醬油ダレで味付けした、コク深い脂と香ばしい風味が特徴です
弾力豊かなぼんじりの食感と、凝縮された脂の甘みが絶品。強いて言えば、もう少し甘じょっぱい味付けであれば、より「ふなぐち」に合うと思いました。とはいえ、コロンとしたサイズ感はナイスで、チビチビと飲みたくなるおいしさです。
10種類の「缶つま」を食べ、「ふなぐち」と飲み合わせてみた結果、マイベストは「缶つま 牛すじこんにゃく」でした。先述したように、醬油ベースの甘じょっぱさがある濃厚なタレ系の味が「ふなぐち」にはよく合うと思いました。また、トロッとした食感のつまみのほうが、甘口の高アルコールでパンチのある「ふなぐち」とよく合わさると思います。
以上はあくまで筆者の意見なので、キレのある塩味のほうが合うという声もあるでしょうし、スモーキーなほうが好きという人もいるでしょう。「缶つま」や「ふなぐち」ファンの人は、ぜひ10種類のマッチングを試して、「ふなぐちに合う缶つま選手権」に投票してみてください。
「ふなぐちに合う缶つま選手権」への投票はこちら!
食の分野に詳しいライター兼フードアナリスト。雑誌とWebメディアを中心に編集と撮影をともなう取材執筆を行うほか、TVや大手企業サイトのコメンテーターなど幅広く活動中。