先日、インスタントラーメン好きを揺るがすビッグニュースが世界を駆け巡りました。
アメリカの有名メディア「ニューヨーク・タイムズ」のレビューサイト「ワイヤーカッター」の企画「世界で最もおいしいインスタントラーメン(The best instant noodles)」で、韓国生まれの「辛ラーメン ブラック」が堂々1位に輝いたのです。
「辛ラーメン ブラック」は、日本でもよく見かけるのでご存知の人は多いでしょう。赤いパッケージで有名なあの「辛ラーメン」の別フレーバーです。ちなみに、日本メーカーの最高位は「oh!Riccy PHO BO」という、エースコックの海外向け商品が4位という結果でした。
日本でも「蒙古タンメン中本」を筆頭に辛いラーメンやカップ麺は大人気ですが、まさかアメリカ人もそこまで辛いラーメン好きだったとは……。そしてそもそも、「『辛ラーメン ブラック』ってそんなにおいしかったかな?」とも感じました。そこで、実際に取り寄せて味わいを徹底チェック。定番の「辛ラーメン」との食べ比べも行いました。
右が「辛ラーメン ブラック」。左が「辛ラーメン」です
まずは基本情報から紹介しましょう。
「辛ラーメン」は、農心というメーカーによって1986年に発売され、今や世界100か国へ輸出されています。並べると地球96周分にもおよぶ210億食(日清食品「カップヌードル」は45周年時で400億食)を売り上げる一大ブランドで、約150種類の商品がしのぎを削る韓国ラーメン市場の中で、25%のシェアを誇るそうです。
味の秘密は、さまざまな天然調味料をブレンドしたオリジナルスパイスと、素材のダシが溶け込んだウマ辛さ。開発時には1年以上研究を重ね、唐辛子、しいたけ、ネギ、ニンニクなどを混ぜて特製スープを作り、200回以上の実験を重ねたモチモチの麺との調和を狙ったとか。
フラッグシップ「辛ラーメン」を筆頭に、「ブラック」「キムチ」「ライト」「激辛」など、フレーバー展開も多彩
「辛ラーメン」と「辛ラーメン ブラック」のスペックを見比べてみると、重量などに若干の違いがあることを発見。たとえば、前者は120g、後者は130gであるものの、麺の量は前者が107gで後者が106gになっています。また、エネルギーは前者が500kcalなのに対し、後者は540kcal。この違いは、ブラックが豚骨とのWスープになっているからだと思いますが、麺の1gの差は非常に気になるところ。
筆者は同じ店からネットで購入したのですが、なぜか「辛ラーメン」は日本向けではなく韓国語仕様でした。とはいえ、中身に変わりはなく、スペックは公式サイトでも確認できます
いよいよ食べ比べ。
調理前に袋を開け、調味料などもチェックしてみました。すると、「ブラック」にだけ、「特製豚骨粉末スープ」なる小袋が入っていました。また、以前食べた時はあまり意識していませんでしたが、こうして比べてみると、肉の大きさが違う(「ブラック」のほうが肉のサイズが若干大きい)こともわかって興味深いです。
「辛ラーメン ブラック」の中身。「特製豚骨粉末スープ」と肉の大きさが10g分の内容量の差を生んでいるのだと思います。あと、小袋の色が比較的派手な印象
こちらは普通の「辛ラーメン」の中身。かやくの肉が小さいだけでなく、こちらのほうが青ネギの量が多めな気がします
また調理法をよく見てみると、そこにも違いが! それはお湯の量です。普通の「辛ラーメン」は「550ml(3カップ程)」なのに対し、「辛ラーメン ブラック」は「500ml(3カップ程)」。「同じ3カップでも、50mlの差による味の違いは結構デカいぞ」と、ツッコミを入れたいところですが、きっちりとml単位のほうに従って調理開始。
色だけ見ると、かなり辛そうな赤。香りとしては辛そうというより、普通にウマそうという印象です
そして、ともに4分半煮込んだら完成。盛りつけてみると、「辛ラーメン ブラック」のほうが若干スープの色が濃く、肉がやはり大きいです。
並べて比べると、50ml多くして作った「辛ラーメン」(写真左)との違いはあまり感じませんでした
そしてついに食べ比べへ。味の感想とともに、「辛さ」「コク」「麺の太さ」「味のしょっぱさ」「油のこってり感」で星付け評価も行いました。
まずは「辛ラーメン ブラック」から。ちなみに、麺はどちらも同じ太さでちぢれタイプ。なお、麺量1gの差がどこにあるのかはよくわかりませんでした。
日本のラーメンで黒と言うと、ニンニクを焦がした黒マー油や「富山ブラック」の濃い醤油+黒コショウを想像しますが、この「ブラック」にはそのニュアンスはありません
麺は揚げているタイプですが加水率が高く、モチモチした食感。断面が丸みを帯びているのも特徴で、ちぢれもあいまってズルーッではなく、チュルチュルッと食べるイメージ。味は、辛さがほどほどな分、コク深く、普通の「辛ラーメン」よりもどっしりとした方向性です。ただ、しょっぱいという意味での濃厚さは同じぐらいで、「辛ラーメン ブラック」は豚骨がきいている分、ふくよかな味になっていると思いました。辛さも微妙に抑えられていると思います。あと、豚骨由来のとろみはほぼありません。
辛さ「3」/コク「4」/麺の太さ「3」/味のしょっぱさ「3」/油のこってり感「3」
ノーマルの「辛ラーメン」は辛さがシンプルにスッと来る印象。できたてアツアツなので、より辛さがじっくりと染みてきます
「辛ラーメン ブラック」にはあった豚骨のマイルドなニュアンスはなく、辛さと塩味のシャープさが印象的です。この味は焼肉店などでもたまに見かける「テグタン」を思わせる、山海のダシのうまみと辛みがマッチしたあの感じ。「辛ラーメン ブラック」の余韻には脂のうまみのようなものを感じましたが、「辛ラーメン」にはそれがなく、余韻も塩辛さのほうがしっかりと残ります。
辛さ「4」/コク「3」/麺の太さ「3」/味のしょっぱさ「3」/油のこってり感「2」
まとめとしては、個人的には「辛ラーメン ブラック」のほうが好きです。「辛ラーメン」のほうが少しだけ辛さが強い気がしましたが、どちらも十分な辛さがあり、豚骨のうまみが欲しい人は「ブラック」、シャープな辛さが好きな人は普通の「辛ラーメン」のほうが好みの味となるでしょう。
食べ終わった後にスープの表面を見たところ、「辛ラーメン ブラック」のほうが脂の膜が厚くなっていました。この脂も、うまみの違いに影響しているのかもしれません
なお、韓国には「プデチゲ」という鍋料理(プデ=部隊、チゲ=鍋)があり、これには「辛ラーメン」に代表される本場のインスタント麺を入れるのが正式レシピとなっていて、個人的にはかなり好きな韓国鍋です。「辛ラーメン」も「辛ラーメン ブラック」も鍋の味付けやシメに使えば、手軽に韓国鍋風の味を再現できるのではないかと思いました。
そして、冒頭でも触れた「世界で最もおいしいインスタントラーメン」の結果に関しては、「そこまで米国民総意としておいしいかな?」というのが率直な意見です。「辛ラーメン ブラック」は完成度も高く、十分おいしいとは思いますが、世界一と言えるほど万人受けする味だとは思えません。また、そもそも食べ比べるリストに、日清の「とんがらし麺」や「セブンプレミアム 蒙古タンメン中本 辛旨味噌」、エースコックの「スーパーカップ1.5倍 豚キムチラーメン」がノミネートされていたら(されていたのかもしれませんが)、「辛ラーメン ブラック」といい勝負をしていたに違いないと思えてなりません。
一説によると、人はストレスフルになると辛い料理が食べたくなるそうで、なおかつ夏バテに辛いものを食べたいという人も少なくないでしょう。「今年は夏フェスがない」「旅行や帰省はガマンした」「暑くてバテそう」などの気持ちから辛いものを食べたくなったら、ぜひ「辛ラーメン ブラック」を試してみてください。
筆者的な世界一おいしい袋麺は、「小山製麺 ぺろっこらーめん 醤油味」。生のような“ちゅるりん”とした麺のテクスチャーに、ほほ笑みが止まりません。トッピングして盛り付けたら、インスタント麺だと気付かれないレベルです
食の分野に詳しいライター兼フードアナリスト。雑誌とWebメディアを中心に編集と撮影をともなう取材執筆を行うほか、TVや大手企業サイトのコメンテーターなど幅広く活動中。