2020年9月14日、日清食品は、「袋麺の新スタンダード」「今年いちばんのオススメ新商品」として、「日清これ絶対うまいやつ!」を発売しました。
「絶対」と聞いて、筆者は椎名林檎の名曲「ギブス」の一節を思い出しました。
「あなたはすぐに絶対などと云う あたしは何時(いつ)も其(そ)れを厭(いや)がるの だって冷めてしまっちゃえば 其れすら噓になるじゃない」(「ギブス」から引用)
それはさておき、もちろん冷める前に食べたとして、はたして本当に「絶対うまい」のでしょうか。「Don't U θink?」ということで、「背脂醤油」「濃厚味噌」「豚骨醤油」の全フレーバーを食べ比べ。また、既存ブランドとの違いを確かめるために、「日清ラ王 袋麺 醤油」も食べて、それぞれの特徴を浮き彫りにしたいと思います。
話題の新商品3品+王道1品を食べ比べ!
今回紹介する日清食品の新しい袋麺、その印象的な商品名は、「見た目からしておいしそう」という意味で最近よく使われるセリフが由来。若いパパママのファミリー層がターゲットとのことで、こういうネーミングになったのでしょう。
味のコンセプトは、国道などのロードサイドにあるラーメン店の1杯。あの濃くておいしそうな見た目と香りに、思わず「これ絶対うまいやつ!」と言ってしまうような1杯を再現しています。
味は、「背脂醤油」「濃厚味噌」「豚骨醤油」の3種類が同時リリースされました。それぞれ背脂、香味野菜油、黒マー油でパンチのあるフレーバーをきかせています。
それではさっそく、各商品の味をチェックしてみましょう。
まずは「背脂醤油」から。鶏をベースに背脂のコクをプラスした濃厚な醤油ラーメンです。麺はノンフライ中細ストレート麺。
パッケージに書かれているとおりの工程と茹で時間で調理していきます。手順は従来の袋麺と同様で実にシンプル。丼に付属のスープを入れて、お湯で溶かせば準備完了。別の鍋で茹でた麺を丼に入れれば完成です。
麺とスープの比較なので素ラーメンでもよかったのですが、今回は見栄えを重視して、チャーシュー、メンマ、味玉、ネギをトッピングしました。
100g(麺75g)当たり324kcal、炭水化物60.7g
ノンフライ麺と液体スープのシンプルな構成です
麺の茹で時間は4分。簡単に調理できます
食べてみると、ベースは鶏で、醤油の風味が強めで色も濃いめ。背脂は、オイリーな部分よりも脂の甘みとして発揮されている印象です。ギトッとした感じはありませんが、ニンニクの香味がしっかりしていて、全体の風味にパンチをプラスしています。
イメージとして近いと思ったのは、京都の背脂醤油ラーメン。パッケージに描かれた店のデザイン的にも、どこか京都・背脂醤油のチェーン店「ラーメン魁力屋(かいりきや)」を彷彿(ほうふつ)とさせるニュアンスがあります。麺はゆるいウェーブのかかった中細ストレートで、やや多加水なプリッとして歯切れのいい弾力です。
見た目以上にパンチがありますが、イヤなクドさは感じません
続いては、「濃厚味噌」をレビュー。
味噌のしっかりしたコクと、香味野菜油の香りが特徴的な味噌ラーメンです。麺は「背脂醤油」よりも食べ応えがありそうな、ノンフライの太ちぢれ麺。
97g(麺75g)当たり314kcal、炭水化物60.2g
3商品の中で、「濃厚味噌」だけが太ちぢれ麺を採用
麺は太めですが、ほかと同じく茹で時間は4分
「濃厚味噌」という商品名ですが、意外にも濃過ぎず薄過ぎずのバランスタイプ。味噌は、甘さ控えめ、かつコクは豊かなスッキリタイプです。
麺は3商品の中で最も太く、ちぢれが強めの平らな角麺。太いとはいえ、ブリッとした感じはなく、ほどほどの太さです。スープがそれほど濃厚なわけではないので、このラーメンならアリな麺なのかなと思います。食感はモチモチしたタイプではなく、コシがあってパリッとしたタッチです。
全体的に万人受けする方向性に仕上がっていますが、個人的には、もっとスープも麺もパワーのあるタイプにしたほうが商品のイメージには合っているかなと思いました。
思ったほど濃厚ではなく、バランスのよさが際立ちました
3つめは「豚骨醤油」です。
豚骨のまろやかな味わいに、黒マー油の香ばしさをプラスした豚骨醤油ラーメン。麺は、「背脂醤油」と同じくノンフライ中細ストレート麺です。
87g(麺75g)当たり322kcal、炭水化物58.3g
ノンフライ中細ストレート麺を採用。粉末スープと黒マー油で調味します
茹で時間はこちらも4分
クリーミーで、とろみはほどほど。味、粘度ともに濃厚過ぎないやさしい豚骨醤油です。スープの方向性は博多ラーメンに近いですが、臭みはなくマー油が入っているため、熊本ラーメンのほうが近いかと思います。
麺に関してはもはや九州ではなく、関東寄りのベーシックな中華そばタイプ。「背脂醤油」と似た中細のストレートで、加水のムッチリ感もあるので、九州系の低加水パツパツ麺とは異なります。ただ、スープがほどよいマイルド豚骨なので、この麺が合うと思います。
特製黒マー油の効果は絶大で、パンチのある個性を生み出すアクセントになっています。全体的に、東京豚骨と九州豚骨のいいとこ取りをしたような印象です。
適度に濃厚なスープに、黒マー油のアクセントがきいています
今回の3商品の特徴をより明らかにするために、日清食品の定番「日清ラ王 袋麺 醤油」と食べ比べてみます。
「日清ラ王」シリーズの大きな特徴は麺。小麦をまるごと挽いた全粒粉を使用することで、モチモチとした食感だけでなく、小麦本来の香ばしさが楽しめます。なかでも「醤油」は、キリッとした醤油に、鶏油(ちーゆ)のうまみをプラスした、上品な端麗系スープです。
101g(麺80g)当たり346kcal、炭水化物60.8g
全粒粉を使った麺は、ところどころに黒っぽいツブツブが見える特徴的な麺です
「これ絶対うまいやつ! 背脂醤油」が、鶏清湯(チンタン)×豚背脂だったのに対して、こちらは丸鶏系の清湯。まろやかさとスッキリ感を両立させた淡麗な味わいで、「背脂醤油」に比べて上品さを感じます。
麺が全粒粉入りなのもポイントで、香ばしい風味やパツッとしたしなやかな歯応えが独特です。
どちらも鶏ベースですが、「日清ラ王」のほうが上品な味わい
スペックを比較すると、意外にも「日清ラ王」のほうが量が多く、カロリーなどはほぼ同じ。「これ絶対うまいやつ!」がガッツリ感で勝っているかと思いきや、「ラ王」もどっこい、それなりにパワフルです。また、歴史が長くて研究し尽くされている分、「ラ王」はそつがないおいしさで、こちらが「これ絶対うまいやつ!」という商品名でも納得できる完成度です。
インパクトはありつつもバランスが秀逸な「ラ王」は、さすがロングセラーというべき安定感です
どの商品もコンセプトどおり個性的で、「うまいやつ」でした。それぞれをひと言で表現するなら、以下のようになります。
「背脂醤油」……京都・背脂醤油っぽいやつ!
「濃厚味噌」……意外に万人受けするやつ!
「豚骨醤油」……東京豚骨と九州豚骨のいいとこ取りなやつ!
また、あえて「日清ラ王 袋麺 醤油」に言及するなら、これも絶対うまいやつ!です。
皆さんも自分好みの1杯を見つけてください!
在宅ワークの人が増えた昨今、インスタントの袋ラーメンの需要は伸びていて、メーカーも一層意欲的に開発しているはず。まずは食べてみて、絶対に「うまい!」と言えるかどうか、ご自身でもジャッジしてみてください。
食の分野に詳しいライター兼フードアナリスト。雑誌とWebメディアを中心に編集と撮影をともなう取材執筆を行うほか、TVや大手企業サイトのコメンテーターなど幅広く活動中。