健康志向が年々高まる中、糖質ゼロビールの存在感も高まっています。2022年のトピックスと言えば、元祖糖質ゼロビールの「キリン一番搾り 糖質ゼロ」が7月製造分から大幅リニューアルしたこと。また、ライバル商品であるサントリーの糖質ゼロビール「パーフェクトサントリービール」も、年初にパッケージを大幅刷新するとともに、味も進化させています。
「キリン一番搾り 糖質ゼロ」と「パーフェクトサントリービール」。キリンビールが大幅に進化させた今、再注目のカテゴリーです
大きなポイントは、すっきり系のキリンビールvsどっしり系のサントリーという構図に変化が起きたこと。というのも、「キリン一番搾り 糖質ゼロ」はリニューアルにより、飲み応えがアップし、どっしり系に寄ったからです。
本稿では糖質ゼロビールの変遷にも触れながら、改めて2022年版の2社の糖質ゼロビールを飲み比べて、その違いをレポートします。
まずは、それぞれ新旧を比較。そのうえで、「キリン一番搾り 糖質ゼロ」と「パーフェクトサントリービール」を飲み比べます
糖質ゼロビールのパイオニアはキリンビール。2020年10月に、日本初の糖質ゼロビール「キリン一番搾り 糖質ゼロ」を発売しました。それから遅れること約半年後の2021年4月、サントリーが「パーフェクトサントリービール」を発売し、市場は一層の盛り上がりを見せました。
左が「キリン一番搾り 糖質ゼロ」で、右が「パーフェクトサントリービール」。ともにデビュー当時のモデルです
ともに、完成まで5年の歳月をかけたそうですが、先に進化させたのはサントリー。2022年1月販売分からリニューアルさせて今にいたりますが、味以上にインパクトが大きかったのはパッケージの刷新。ロゴも完全な新デザインを採用し、まるで新商品のようないで立ちで登場したのです。
写真左が旧モデルで、右が新モデル。製品名のイニシャルを取った「PSB」ロゴの採用や、「糖質0」のキーワードを大きくして訴求点を伝えやすくしたことなどがポイントです
味に関しては、上質で深いコクが特徴の「ダイヤモンド麦芽」を1.3倍に増量し、飲み応えをさらに強化。また、同年3月から飲食店限定で「パーフェクトサントリービール樽詰」を発売したことも見逃せません。
いっぽうの「キリン一番搾り 糖質ゼロ」は、パッケージにこそ大きな変化がないものの、中身はフルモデルチェンジと言っていいほどリニューアルされました。まず、アルコール度数が4%から5%へと1.25倍にアップ。
パッと見では気付かないかもしれませんが、右上の「新」というアイコンや下部の「ALC.5%」「ビール」などのキーワードがリニューアル版の目印です
また、「糖質カット製法」に磨きをかけるとともに麦芽を増量。さらに、ホップ配合を見直すことで、ひと口目に感じるビールの飲み応えを向上させ、後味はすっきりと澄んだ味わいを実現したのだとか。
では、各商品の味は実際にどう進化したのでしょうか。まずは「パーフェクトサントリービール」の基本情報から。
こちらは「ザ・プレミアム・モルツ」ブランドで培ってきた醸造技術やノウハウを活用。麦芽のうまみと飲み応えを最大限に引き出しながら、糖質の元となるでんぷんを手間暇かけて分解し、糖質ゼロと力強い飲み応えのアルコール度数5.5%を実現しています。
「パーフェクトサントリービール」は、“本格ビールのうまさで糖質0”がウリです
そして前述したとおり、年初のリニューアルによって麦芽を1.3倍に増量。なお、缶側面のスペックをチェックすると、数値の変化はありませんでした。
エネルギーはともに100ml当たり32kcalで、糖質はもちろんゼロ。そのほかのスペックもまったく同じでした
それぞれグラスに注いで色や泡立ちを比べてみると、どちらもほぼ同じかと思います。では、味のほうはどうでしょうか。うん、確かに若干ながら、リニューアル版のほうが麦の香りとうまみを豊かに感じます。
どちらもビールらしい芯のある味わいで、余韻にはキレや爽快感も
お次は、「キリン一番搾り 糖質ゼロ」。
こちらは、独自の「一番搾り製法」に、新技術の「糖質カット製法」を組み合わせているのが特徴。「一番搾り麦汁」の雑味をなくし、澄んだ麦芽のうまみを閉じ込めつつ、新開発した発酵技術で糖質をカットしています。
「キリン一番搾り 糖質ゼロ」。なお、旧作では非熱処理の「生ビール」だったのが、熱処理を行ったため「ビール」になりました
中身を大幅に刷新して飲み応えをアップさせたことは前述したとおりですが、スペックを比較すると数値にも変化が……。
100ml当たり、エネルギーは23kcalから29kcal、たんぱく質は0.1gから0.2gに。そのほか、炭水化物などの量は変わりません
そして、グラスに注ぐと色味は濃く、泡のもちもよくなっていることがわかりました。そして気になる味はというと……、おぉ、これは旧作と結構違う! 旧作はシャープな爽快感があってすっきりした、淡麗な味わい。リニューアル版は、そこにうまみとコクと香り高さがプラスされており、アルコール度数1%のアップもあって厚みとボリュームも感じます。いっぽう、ホップ由来のビター感は、新旧大差ない気がしました。
右側がリニューアル版ですが、ひと目でわかる色の濃さ。なお、アタックが強くなった分、スカッとしたキレも強くなったと感じます
ここからは、本稿のメインマッチ「キリン一番搾り 糖質ゼロ」と「パーフェクトサントリービール」の違いをチェック。改めて双方のスペックを比べると、「キリン一番搾り 糖質ゼロ」の数値が増加しているとはいえ、それでも「パーフェクトサントリービール」のほうが若干高めです。
ポイントはアルコール度数とカロリーで、「キリン一番搾り 糖質ゼロ」が5%の29kcal(100ml当たり/以下同)なのに対し、「パーフェクトサントリービール」は5.5%の32kcal。ほかの数値も、「パーフェクトサントリービール」のほうが全体的に高くなっています
ならば、味のほうはどうでしょうか。相互に飲み比べて違いをチェックすると、「キリン一番搾り 糖質ゼロ」のテイストが「パーフェクトサントリービール」に近づいた印象があります。ビールらしさという点で言えば、「キリン一番搾り 糖質ゼロ」は爽快感やホップのビター感がリード。「パーフェクトサントリービール」は麦の香りが秀でている印象です。
色は「パーフェクトサントリービール」のほうがやや濃いめです
麦汁のうまみやキレはほぼ互角。そしてボディは、サントリーのほうが0.5%高い分強めです。そのため飲み応えは、「パーフェクトサントリービール」のほうがあるかもしれません。とはいえ「キリン一番搾り 糖質ゼロ」も十分に厚みがあり、それでいて余韻はすっきりしているので、飲みやすさはこちらに軍配が上がるかも。実にいい勝負です。
ビールの味わいにおいては、王道の最高峰である「キリン 一番搾り」が好きな人、あるいは香りや泡が絶品の「ザ・プレミアム・モルツ」が好きな人などと、好みが分かれるものです。糖質ゼロビールにおいても同じで、味の方向性に違いがあるので、好みが分かれることでしょう。
まずはどちらも飲んでみて、好みの糖質ゼロビールを選びたいところ。なお、飲み比べる際は、香りを感じやすいグラスに注いでお試しを
個人的に注目しているのが、アサヒビールやサッポロビールによる糖質ゼロビール開発。こうした各社の攻勢によって市場が盛り上がるのも、ビールの面白さだと思っています。目下は、キリンビールとサントリーの一騎打ちですが、まずはどちらが好みか、飲み比べてみてください!
食の分野に詳しいライター兼フードアナリスト。雑誌とWebメディアを中心に編集と撮影をともなう取材執筆を行うほか、TVや大手企業サイトのコメンテーターなど幅広く活動中。