欧米で定番のシリアル、オートミールや小麦ふすま(ブラン)が、「お米の代わりに使える。しかも低糖質」「発酵性食物繊維が豊富で健康的」といったヘルシーさで注目されています。その背景にはいわゆるコロナ太りがありますが、オートミールが品切れになるスーパーがあったり、日本ケロッグの「オールブラン」が一時休売されたりと、事実上の大人気に。
特に昨冬は鍋のシメに使うレシピで重宝されましたが、次の鍋シーズンを迎えるこのタイミングで発売されたのが、日清シスコの「おいしいオートミール チーズクリームリゾット風」と「おいしいオートミール トマトクリームリゾット風」です。
2021年9月27日に新発売となった、日清シスコの「おいしいオートミール チーズクリームリゾット風」(左)と「おいしいオートミール トマトクリームリゾット風」(右)
個人的には、リゾット風の味付けで打ち出している点にマーケティングの鋭さを感じます。というのも、前述の鍋のシメレシピでは“オートミールとチーズでリゾット風に”的なアイデアが多いから。しかもクリーミーなリゾットであれば、ポタージュ=朝食の発想で、シリアルの主戦場であるモーニングとの親和性も高いからです。
となると気になるのは味。しかも商品名に「おいしい」という強気な文言が入ってるじゃありませんか。パッケージにこそ「おいしい」の表記は控えめですが、自信があるということでしょう。ということで、プレーン味の定番オートミールとともに味わいを比較し、本当においしいのかを確かめてみましょう。推奨レシピとアレンジレシピで、汎用性や「本当に米の代わりになるのか?」などもチェックします。
まずはパッケージやスペックを確認。両製品ともに「発酵性食物繊維たっぷり」「糖質ひかえめ」「9種のビタミン」「カルシウム入り」「鉄分たっぷり」といいことばかり書いてあります。
ビタミンに関しては、1食40gで1日に必要な量の1/3が接種できるそう
そのうえで、「おいしいオートミール チーズクリームリゾット風」はオニオン具材入りで、「おいしいオートミール トマトクリームリゾット風」にはトマトとオニオン具材入り。そして、誤差ですがカロリーや糖質にも差があります。
「おいしいオートミール チーズクリームリゾット風」は1食40gあたり166kcalで炭水化物26.0g(糖質19.9g、食物繊維6.1g)
「おいしいオートミール トマトクリームリゾット風」は1食40gあたり163kcalで炭水化物27.0g(糖質21.0g、食物繊維6.0g)
今回の2商品の比較対象とした定番オートミールは、クエーカーの「インスタントオートミール オリジナル」。音楽室によくある作曲家のいかつい肖像画のようなおじさんイラストがインパクト大ですが、その下には「WORLD‘S No.1 OATS BRAND」の文字が。世界一のオートミール商品なのです。
「インスタントオートミール オリジナル」は1食40gあたり155kcalで炭水化物27.8g(糖質23.8g、食物繊維4.0g)
スペック面で意外だったのが、プレーン味の「インスタントオートミール オリジナル」より、味付きの「おいしいオートミール」のほうがカロリーは高いものの、若干低糖質かつ食物繊維豊富ということ。ちなみに比較例として、健康管理の総合サポートサイト「イートスマート」によると、精白米(炊く前の白米)は40gに換算すると137kcalで炭水化物31.0g(糖質30.8g、食物繊維0.2g)。「おいしいオートミール」は味付きながら低糖質で食物繊維豊富と、なかなか優秀なことが判明しました。
次は、3商品それぞれをそのまま食べて味を比較してみましょう。ということで皿に開けてみると、見た目からして三者三様でした。しかも粒感からして異なり、「おいしいオートミール トマトクリームリゾット風」はオートミール同士がくっついて塊になっているものが多数。「チーズクリームリゾット風」も、トマトクリームほどではないですが、ところどころに塊がありました。
並べるとこのような感じ。同じオートミール商品でも結構違います
「おいしいオートミール」は味付けされているからか、サクサクの食感。いっぽう「インスタントオートミール オリジナル」は「原材料名:全粒オーツ麦(オーストラリア産)」ということで味付けがなく、手触りもやわらかくてサラサラです。では味はどうでしょうか。
「おいしいオートミール チーズクリームリゾット風」。チーズの香りと味は控えめながら、ベシャメル(ホワイト)ソースとコンソメが合わさったようなマイルドな味わいです
「おいしいオートミール トマトクリームリゾット風」。よく見るとトマトのキューブが入っていて、うまみが濃くミネストローネのようなテイストです
「インスタントオートミール オリジナル」は、いわゆる素材の味。かむにつれて素材の素朴な甘みを感じますが、このままではあまりおいしくありません。ミルクやヨーグルトを入れたくなります
「おいしいオートミール」は、そのままでもスナック感覚で食べられる味であることを実感。特に「トマトクリームリゾット風」のほうは「ベビースターラーメン丸」的な食べごたえで、子供のおやつにもよさそうです。
ではいよいよ「おいしいオートミール」2種を、裏面にある「お召し上がり方」のレシピを参考に牛乳で調理し、「リゾット風」の真価を確かめてみました。
レシピは実に簡単で、「おいしいオートミール」40gに牛乳を80〜100ml好みで注ぎ、レンチンするだけ
2商品とも分量などは一緒。筆者は牛乳80mlを注ぎ、600Wの電子レンジで1分50秒温めました
レンチンが完了すると、沸騰するほど温まった牛乳がオートミールに吸い込まれてドロドロの状態に。「チーズクリームリゾット風」のほうが塊が少ないので、混ざりやすい印象でした。
下の器が「チーズクリームリゾット風」。上が「トマトクリームリゾット風」
ともによくかき混ぜて味わってみると、粘りが出て確かにリゾット風のテクスチャーになりました。膨張率もなかなかです。
まずは「チーズクリームリゾット風」からひと口。
チーズの香りはあまりしませんが、結構乳化していておいしそう
「チーズクリームリゾット風」の第一印象は、まろやかでミルキーな味ということ。味としてもチーズのコクは強くありませんが、クリーミーでおいしいです。特筆すべき点は食感。オートミールの繊維質が、リゾットならではのアルデンテ(かすかに芯が残る食感)を演出していて、アクセントがなかなかいいと思いました。
次は「トマトクリームリゾット風」を。どことなく、こちらのほうが甘やかでキャッチーな香りがします
なるほど。やはりチーズテイストはほどほどですが、チーズクリームよりもトマトのほうが甘みやうまみが豊か。いっぽうでトマトの酸味は控えめです。また、トマトのキューブが濃いめな好アクセントの具材となって、子供にもよろこばれそうな味わいだと感じました。
次に試したのはアレンジ。もう一歩踏み込んだレシピで、よりおいしい料理を作るという試みです。参考になるものを探したところ「ドリア風」なるものがあり、その例に従って作ってみました。まずは「おいしいオートミール チーズクリームリゾット風」を使ったチーズカレードリアから。
別途用意するのはカレー(レトルトも可)とピザ用チーズ。もしあれば、卵もおすすめです
「おいしいオートミール チーズクリームリゾット風」40gに牛乳40ml、そしてカレーとチーズを適量乗せ、卵を落としてレンチンするだけです。
レンジは600Wで1分が目安。卵は爆発しないよう、楊枝などで穴を開けましょう
「おいしいオートミール トマトクリームリゾット風」はミラノ風ドリアをイメージ。プレーンなオートミールも用意するのが推奨レシピのようです
トマトのほうは、「おいしいオートミール トマトクリームリゾット風」20gとプレーンなオートミール20gを混ぜ、ミートソース(レトルトも可)とピザ用チーズを適量オン。チーズクリームと同様の時間でレンチンします。実に簡単で、あっという間に2品ができました。
ともにレンチン完了。やはり卵が乗ったほうが、ビジュアル的にはおいしそうです
溶けたチーズを全体にからめるため、さらによく混ぜてから実食。チーズクリームのドリア風から味わいました。
とろけるチーズがスパイシーなカレーと相まって、想像以上のおいしさ。それとなしに、カレードリア感もあります
うん、これは絶品。チーズの濃厚なタッチも加わるので一層トロみが強くなりますが、レアな卵がいい感じのつなぎになって食も進みます。オートミールの存在感は薄まるものの、かえってこれぐらい主張しないほうが全体をおいしくしていると感じました。
トマトのほうは卵がない分粘りが強めで、味も濃いめ。プレーンのオ―トミールを混ぜる理由は、味が濃くなりすぎるからということかもしれません
トマトとチーズの相性が抜群なのはご存じの通り。ひき肉入りのミートソースが加わることで、確かにドリアっぽいテイストになります。なお上記のカレードリアよりも水分量がないので、ベシャメルソースのニュアンスが欲しい人は牛乳をやや多くするといいでしょう。
スナック感覚で小腹満たしにつまんだり、簡単調理で朝食に味わったり。また、昨冬人気を博した欧風鍋のシメはもちろん、シチュー、ロールキャベツ、クラムチャウダー、ミネストローネといった料理の“味変”に活用するのにも役立つと思います。
お米の代用とまでは強く言えませんが、洋風のライスメニューを作るなら活用できそう
そして最後のアレンジは、大した手間がかかっていないにもかかわらず、驚きのウマさでした。お米の代替品とまではいかないものの、このクオリティなら十分昼食や夕食として味わえますよ。
従来のオートミールに「おいしい」というイメージを持つ人は少ないと思いますが、このオートミールは確かにおいしかったです。牛乳やヨーグルトと合わせて甘く食べるのではなく、しょっぱい系なのもいいですね。ヘルシーでもあり、なかなか優秀な新商品だと思います。
シリアルの入門としても最適ではないでしょうか。「おいしいオートミール」、なかなかアリですよ!
食の分野に詳しいライター兼フードアナリスト。雑誌とWebメディアを中心に編集と撮影をともなう取材執筆を行うほか、TVや大手企業サイトのコメンテーターなど幅広く活動中。