無印良品には、衣食住さまざまな商品が揃っていますが、特に最近力を入れているのが食品分野。なかでも、レトルトカレーは有名ですが、レトルト食品でもうひとつ「ごはんにかける」シリーズが最近注目度を高めています。そこで今回は、フードアナリストの筆者が10種類を実食して、独自にランク付け。味の特徴や感想などもレポートします。
「ごはんにかける」シリーズの中から選んだ10品
「ごはんにかける」シリーズの特徴は、日常的に食べられている、国内外の定番料理や屋台料理を手軽に楽しめるところ。新商品も続々と仲間入りしており、2021年秋には、より身近な料理や知っている味、なじみのある味が追加されました。その新作も今回の10品に含まれています。
堂々の1位は、タイの国民食とも言えるガパオライス。日本でもおなじみで、タイ料理店のほか、フードトラックやカフェ、コンビニなどでも見かけます。この料理を、エスニックフードの開発を得意とする無印良品がレトルト商品化。それが「ごはんにかける ガパオ」です。
「ごはんにかける ガパオ」は1人前150gで、292kcal。公式サイト価格は、350円(税込)
具材は、鶏のひき肉とタケノコがメイン。味付けは、バジルやナンプラー(魚醤)、オイスターソースで香り高く、甘辛いテイストに仕上げられています。水分は今回の10製品の中で最も少なく、テクスチャーはペースト状とも言える状態。そのため、サラダや豆腐など、水っぽくなりがちな料理の上にのせる食べ方においても重宝しそうです。
今回は、日本で一般的なうるち(ジャポニカ)米の白米にのせていますが、粘り気の少ないインディカ米や、そのなかでも高級な、タイのジャスミンライスを使うのもおすすめです
肉は多く、粒感もしっかりしており、そのなかでキューブ型のタケノコが好アクセント。バジルの香りは豊かないっぽう、ナンプラーや辛さは控えめで、甘みも抑えられています。とはいえ、味は濃厚なので、本場同様に目玉焼きをのせてマイルドに中和するのもアリ。ひと手間かけて、ぜひお試しを。
「ごはんにかける」シリーズで、これまでありそうでなかったのが麻婆豆腐です。それが今秋ついにデビュー。本格派かつ、豆腐入りで簡単という点も加味して「ごはんにかける 麻婆豆腐」は2位に選びました。スパイスには、シビれの強い赤花椒(ホアジャオ)の粉末と、香りが強い粗びきの青花椒を効かせ、輪切り唐辛子と黒胡椒で辛みもプラス。具材は、国産の黒豚ひき肉と豆腐がメインです。
「ごはんにかける 麻婆豆腐」は1人前160gで、180kcal。公式サイト価格は、290円(税込)
スパイス系の食品が得意な無印良品らしい、絶妙な辛さと香り高さ。とろみも、サラサラ過ぎずドロドロ過ぎず、白米はもちろん、麺類ともマッチするちょうどよさだと思います。味は、豆豉(トウチ/黒豆ベースの中華調味料)のうまみが前に出ており、奥に甘みなどがほんのりと。このバランスも見事です。
豆腐は崩れがなく、しかも味が染みていて絶品
香辛料は、やはり2種の花椒による相乗効果が光ります。ピリッとしていてもガツンとではなくしんみりと効いてきて、余韻には爽やかなシビれが舌を心地よく刺激。期待を裏切らないおいしさです。
3位は、「ごはんにかける ルーロー飯」。ルーロー飯は、近年の台湾ブームとともに認知度が高まっているアジアメシで、一般的な人気も高い気がします。
「ごはんにかける ルーロー飯」は1人前140gで、192kcal。公式サイト価格は、350円(税込)
商品自体の内容は、豚ひき肉とタケノコ、キクラゲを、八角やショウガ、オイスターソースを使った甘じょっぱいタレで煮込んだもの。確かに開封した瞬間から、八角を思わせる甘やかな香りが漂います。
汁のとろみは控えめでサラッとしています。そのいっぽうで、具材はぎっしり入っており、なかなか食べ応えがありそう
一般的なルーロー飯には、脂身の多い豚バラ肉を使いますが、「ごはんにかける ルーロー飯」の豚肉は油分が少ないので、それほどコッテリしていません。味わいとしては、甘じょっぱく濃いめですが、重くないので余計に食が進みます。肉のサイズが大きければよりうれしかったですが、クセになるおいしさで見事です。
担担麺と言えば、中国・四川発祥の麺料理としておなじみですが、こちらをスープタイプで日本に紹介(本場の担担麺は汁なし)したのが、“料理の鉄人”陳建一シェフの父親、陳建民さんです。そしてこのスープを応用したのが、第4位に選んだ「ごはんにかける 胡麻味噌担々スープ」。豚ひき肉を、白胡麻のコクと豆板醤の辛みを生かしたスープで煮込み、花椒油の香りも効かせた本格テイストに仕上がっています。
「ごはんにかける 胡麻味噌担々スープ」は1人前180gで、262kcal。公式サイト価格は、290円(税込)
ゴマの香ばしさとコクが凝縮した、安定のおいしさ。具材はタケノコとシイタケが多めで、ひき肉とのメリハリも十分です。辛みはほどほど。シビれは2位の「麻婆豆腐」ほどではありませんが、アフターテイストでじんわりと感じられました。
担担麺好きの人にも、ぜひ試してほしいおいしさ
テクスチャーはサラッとしているので、麺類のスープとして食べるのにもおすすめ。タケノコなどの具材のアクセントも楽しい、新感覚の担担麺が味わえると思います。
第5位は、神戸発祥の郷土料理「ぼっかけ」を手本にした、「ごはんにかける 牛すじとこんにゃくのぼっかけ」。牛すじとコンニャクをショウガの効いた醤油ダレで甘じょっぱく煮込み、輪切りの唐辛子が辛みのアクセントを演出しています。
「ごはんにかける 牛すじとこんにゃくのぼっかけ」は1人前160gで、209kcal。公式サイト価格は、350円(税込)
牛すじのコラーゲンによるものなのか、一般的な牛もつ煮込みよりもとろみがあって、その分白米にもよくなじみます。肉はホロッと崩れるやわらかさでありながら油っこくはなく、大きさもなかなかで満足度も高いです。
コンニャクの食感が、牛すじとのメリハリを創出。白米はもちろん、お酒も進みそうな甘じょっぱさです
また、ショウガが爽やかさを、輪切り唐辛子は強過ぎない辛さを演出しており、トータルバランスも秀逸。濃厚さの奥で香辛料がよい仕事をしていて、単調な味になっていないのもポイントです。酒のツマミとしても最適で、万能性が高い1品と言えるでしょう。
今秋登場した新作「ごはんにかける 八宝菜」は、個人的に第6位にあげました。具材の多彩さが大きな特徴で、うずらの卵や白菜、ヤングコーン、豚肉、タケノコ、ニンジン、玉ネギ、シイタケ、キクラゲと、9種類も使用。味付けにはショウガやニンニクを効かせ、野菜のうまみと動物のガラスープでコクを出しています。
「ごはんにかける 八宝菜」。1人前195gで、183kcal。公式サイト価格は、290円(税込)
味わいとしては、具材が確かに多くて全体的に十分なボリューム。野菜が豊富というのもうれしいポイントです。ひときわインパクトのあるうずら卵はまったりと、いっぽうでヤングコーンはコリッとしているなど、多彩な食感も好印象。
とろみはかなり強め。白米とよくからみます
味は、ほんのり醤油系のうまみを感じるやさしいテイスト。さらにゴマ油が効いていて、味として濃厚ではないものの、力強い香りで全体のおいしさをアップさせています。辛さがない分刺激も抑え目なので、食べる時間帯や年齢層などを問わず楽しめる点も魅力だと思いました。
第7位は、焼肉店などでもおなじみのユッケジャン。牛肉の細切り、豆モヤシ、ゼンマイなどを、唐辛子を効かせて煮込んだ料理で、実は今夏リニューアルされた商品でもあります。
「ごはんにかける ユッケジャン」。1人前180gで、161kcal。公式サイト価格は、290円(税込)
具材の量を増やしつつ、香りと辛みが強い韓国式コチュジャンと、コクと甘さが特徴の中国式コチュジャンの2種類を使用。うまみとコクのあるスープに仕上げたのがリニューアルのポイントです。
スープ自体はサラッとしていますが、具だくさんでボリュームはなかなかです
スープは、味噌系のコクがしっかりと感じられる中辛。その奥に、甘みや素材のうまみも感じられます。細切り牛肉、豆モヤシ、ゼンマイ以外にもシイタケ、キクラゲなどが入っており、食感もバラエティ豊か。中華麺や春雨のスープとしても大活躍してくれると思います。
酸辣湯(スーラータン)とは、“酸っぱくて辛いスープ”の意味。日本では東京・赤坂にある中華料理店「榮林(エイリン)」発祥と言われる「酸辣湯麺」のほうが有名ですが、何はともあれ、酸辣湯を白米に合うようにアップデートしたのが、「ごはんにかける 酸辣湯」です。
「ごはんにかける 酸辣湯」は1人前160gで、123kcal。公式サイト価格は、290円(税込)
具材は黒豚、タケノコ、キクラゲなど。
ちなみに、ここまでいくつか「ごはんにかける」シリーズを食べてきて、タケノコとキクラゲの使用率が高いということに気付きました。ただ、商品ごとに切り方や大きさを変え、おいしさが最も引き立つように調理されている点はさすがだとも思います。
いずれにせよ、「ごはんにかける 酸辣湯」の味も秀逸。酸辣湯の特徴を抑えつつも、クセは抑え気味なので、辛過ぎてむせたりすることはないでしょう。
テクスチャーは、ほどよくトロトロ。シャキッとしたタケノコや、サクッとしたキクラゲの食感も引き立ちます
味わいとしての辛さはじんわりとしたもので、それよりも酸味がやや主張。これはコクのある黒酢によるものですが、ニュアンスはまろやかでツンとした感じはありません。そしてベースにはゴマ油の香りもあって、まとまり感は絶妙。もちろん麺類など、白米以外にもおすすめです。
ここまでの上位は、「八宝菜」以外、ピリ辛から辛口系が多くを占めていましたが、次は辛さが苦手な人にもおすすめな1品。「ごはんにかける サムゲタン」です。
「ごはんにかける サムゲタン」は1人前180gで、58kcal。公式サイト価格は、290円(税込)
無印良品では、冷凍食品のサムゲタンも人気。今回の「ごはんにかける サムゲタン」は、鶏肉のうまみと高麗人参の風味を生かしたスープに、白キクラゲやネギを加え、まろやかな味わいに仕上げています。
具材は、鶏むね肉とキクラゲがメインで、クコの実は入っていません。味わいは、鶏のダシと野菜のうまみが溶け込んだやさしい仕上がりです
全体的には、塩べースのマイルドな味で、ホロッとしたまったり系の方向性。カロリーも低めですし、夜食やお酒のシメにもぴったりだと思います。
ラストは、鹿児島県奄美大島の郷土料理を手本にした「ごはんにかける 奄美大島風鶏飯」。「鶏飯」は「けいはん」と読み、英語にするとチキンライスですが、ケチャップとあえる洋食のチキンライスとも、東南アジアの海南チキンライス(海南鶏飯)とも異なる独自料理です。レトルトで売られているのは、なかなか珍しいのではないでしょうか。
「ごはんにかける 奄美大島風鶏飯」は1人前180gで、92kcal。公式サイト価格は、290円(税込)
具材は、蒸し鶏とレンコン、シイタケ、ニンジンなど。ショウガと鶏肉のうまみを効かせたダシで煮込んでおり、スープはサラサラかつ多めです。味付けは、醤油と魚介ダシがほんのり香るまろやかなテイストで、9位の「サムゲタン」同様に夜食やお酒のシメにもよさそうです。
メイン食材の蒸し鶏は、細かなほぐし身。油っこさもなく、かなりあっさりとしています
味わいのヘルシーさもさることながら、カロリーが控えめなのも魅力。味、口当たりともにどこか雑炊のようなやさしさがあり、食欲がない時でもイケそうなおいしさです。
今回「ごはんにかける」シリーズを10品食べ比べました。筆者の独断による各部門のNo.1は以下のとおりです。
【本格度No.1】
「ごはんにかける 麻婆豆腐」
【大人味No.1】
「ごはんにかける ルーロー飯」
【万能性No.1】
「ごはんにかける 胡麻味噌担々スープ」
【食べ応えNo.1】
「ごはんにかける 八宝菜」
【希少性No.1】
「ごはんにかける 奄美大島風鶏飯」
個人的なイチオシは「ごはんにかける ガパオ」。お店で出されるガパオより具材は地味ですが、香りや味はかなり好みでした。また、汁気が少ないため、水分が多い料理に合わせやすいという点も魅力的
総評としては、濃厚からあっさりテイストまで、サラサラからドロドロまで、甘口から辛口まで、と、「ごはんにかける」シリーズは想像以上にバラエティ豊かであると感じました。エスニック、中華、和の郷土料理とジャンルも幅広く、白米のほかに麺類などにも合わせやすい汎用性の高さは、同社のレトルトカレー以上だと思います。ネットでも気軽に買えるので、チェックしてみてください。
食の分野に詳しいライター兼フードアナリスト。雑誌とWebメディアを中心に編集と撮影をともなう取材執筆を行うほか、TVや大手企業サイトのコメンテーターなど幅広く活動中。