低カロリーで高たんぱく、環境負荷が低い(動物は飼育に大量のエサが必要)、動物肉よりも倫理的、などを背景に、SDGs(Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標)が叫ばれるなか、代替肉が注目を集めています。
代替肉の主役は、日本では昔から「畑の肉」と言われてきた大豆。特に多く商品化されているのがハンバーグです。ファストフードやカフェなどで、ハンバーガーとして発売されている大豆肉メニューを食べたことがある人も少なくないでしょう。
そこで今回は、大豆肉(大豆ミート)をベースにしたパウチタイプのハンバーグを食べ比べ。メジャーな5商品を集め、フードアナリストである筆者が味わいやスペックをチェックします。
食べ比べたのはこの5商品。冷蔵タイプだけでなく、常温保存できるものもあり、今回はすべてレンチンで温めました
日本の小売業界における大豆肉の先駆的商品が、大塚食品の「ゼロミート」。デビューは2018年1月で、ハンバーグを皮切りにソーセージタイプとハムタイプも発売しています。ナチュラルローソンに陳列されることもあり、一般的な存在感としてもメジャーな部類に入るでしょう。
「ゼロミート デミグラスタイプハンバーグ」。容量は140gとなっています
「ゼロミート」のハンバーグにはデミグラスタイプと、チーズインデミグラスタイプの2種があり、今回試したのは前者。肉だけでなく卵も使わず、植物性の原材料だけでハンバーグの味を表現しています。
スペックは140gあたり204kcalで、炭水化物が15.3g、たんぱく質が14.1g
食べた感想として印象的だったのは、ビーフらしさの奥にラム肉を思わせるワイルドな風味と、熟成や香ばしさを感じさせる味付け。ヘテロ感(食感や弾力におけるメリハリやコントラスト)もなかなかで、パサパサやベチャベチャ感はなく、ほどよいジューシーさでした。
大豆の風味も感じるものの、パティやソースの味付けでうまくカバーしている印象です
今回取り上げた中では最も知名度は低そうながら、実力の高さを感じさせるのが三育フーズ。同社は穀物・卵乳菜食のポリシーを掲げ、植物たんぱく食品、豆乳、クッキー、ゴマ加工品などを製造するメーカーであり、製造受託(PBなどの請け負い)では大豆肉商品を得意としています。
「デミグラスソース風野菜大豆バーグ(大豆ハンバーグ)」。容量は100gで、固形量は60gとなっています
三育フーズは小売りや流通業界では有名な企業なのでしょう。自社商品でも大豆肉(植物たんぱく食品)は多く、ハンバーグはデミグラスソース、トマトソース、てり焼きソースと3種を発売しています。そのなかで今回チョイスしたのは「デミグラスソース風野菜大豆バーグ(大豆ハンバーグ)」。常温保存できる利便性もナイスです。
100gあたり128kcalで、炭水化物が14.6g、たんぱく質が8.3g
ほのかに大豆の風味を感じるものの、パティもソースもヘテロ感もハイレベル。チキンハンバーグに最も近しいのはこの商品だと感じました。力強い弾力や、ビーフ的なワイルドさはそれほどではありませんが、これはこれでありです。
個人的には、野菜の甘みを感じるフルーティーなソースが好印象です
次は今回比較した中で最も入手しやすいであろう、無印良品の「大豆ミート ハンバーグ」。無印は大豆ミートのほかにコオロギせんべいなど、代替食にはなかなか力を入れており、そのひとつがこのハンバーグです。大豆ミートでは得意のレトルトカレーや、ミートボール、ミンチ肉などもラインアップされています。
「大豆ミート ハンバーグ」。容量は80gです
ソースがないプレーンなタイプですが、逆にすっぴんなところはいさぎよく、無印らしいとも思います。ソースが欲しい人は、ケチャップなどをかけるといいでしょう。また、常温保存できるメリットも見逃せません。
80gあたり198kcalで、炭水化物が14.2g、たんぱく質が10.1g
ソースがないので味もドライですが、素材のうまみや味作りの秀逸さを感じる出来ばえです。どこかコーヒーのように、煎った豆の香ばしさを感じる風味で、深いコクはメイラード反応(加熱による褐色のおいしい変化)にも通じるような。このままでも、前述のようにケチャップをかけたり、無印のレトルトと組み合わせたりしてもおもしろいと思います。
大豆の風味はあるものの、嫌みのないスパイシーさがあり、マイルドながら輪郭とコクが豊かな味になっています
ハムの大手メーカーも大豆ミートは商品化していますが、その中から今回は伊藤ハムの「まるでお肉!大豆ミートのハンバーグ デミグラスソース」を取り上げます。特徴は、赤ワインを使ったうまみのあるデミグラスソースで煮込んでいるところ。
「まるでお肉!大豆ミートのハンバーグ デミグラスソース」。容量は150gです
今回比較した中では容量が最も多い150g。これはソースが多いということでしょう。というのも、ソースがない無印(80g)の約2倍の重量だからです。
150gあたり227kcalで、炭水化物が19.1g、たんぱく質が12.6g
パティはやわらかめで、ところどころにヘテロ感があります。ただ素材の味は淡めで、大豆風味とともにパティの存在感も弱め。その分ソースが印象的で、こちらは香ばしさが控えめで甘さが豊かです。大豆の味が苦手な人にはおすすめかもしれません。
ハムメーカーとしては意外で、肉よりもソースにこだわっている印象の味わいです
最後はセブン&アイによるおなじみの、セブンプレミアムから「大豆ミートと牛肉のハンバーグ デミグラスソース 120g」を。こちらは大豆肉に牛肉を混ぜたハイブリッドタイプですが、その技ありなところも加味してチェックします。
「大豆ミートと牛肉のハンバーグ デミグラスソース 120g」。容量は商品名通り、120gです
調理法にもこだわっているようで、両面を鉄板でこんがり焼くことでうまみを中に閉じ込めているとのこと。そのうえで、ワインとマデラ酒仕込みのオリジナルデミグラスソースを合わせています。なお、製造は伊藤ハム米久ホールディングス傘下の米久が担当。
120gあたり236kcalで、炭水化物が15.8g、たんぱく質が10.1g
ということで食べてみると、ビーフ感は期待以上にはありません。これは、他社の大豆肉ハンバーグが善戦しているからかもしれません。とはいえ本商品の香ばしさはナイスで、その分リッチなテイストに仕上がっています。パティには玉ネギの甘みを感じ、ソースは酒よりもゆずやしょうがといった和のニュアンスが印象的。てり焼きソースにおろしポン酢を混ぜたような味で、パティにもマッチしておいしいです。
ビジュアルとしても、デミグラスというより和風ライクなソース。味にはフルーティーな甘酸っぱさを感じました
代替肉の食品に関する記事やコメントでよく見るのは「本物の肉のほうがおいしいので大豆肉を買う気が起きない」という声です。それもあってか、大豆肉ハンバーグを置いていないスーパーも珍しくありません。技術革新によって味の差は年々狭まっていると思いますが、今回食べ比べた印象としてもまだ道半ばという気がしました。
また、代替肉商品は安いわけではないので、普及には味だけでなく価格の問題もあるでしょう。とはいえ、味や価格と並行して視聴者意識が変わればより身近な存在になると思います。いずれにせよ普通のハンバーグよりもヘルシーではあるので、まずは一度味わってみてはいかがでしょうか。以下に個人的目線から、各No.1をあげたので参考にしてください。
・個人的総合No.1:三育フーズ「デミグラスソース風野菜大豆バーグ(大豆ハンバーグ)」
・パティの意外性No.1:大塚食品「ゼロミート デミグラスタイプハンバーグ」
・ソースの意外性No.1:「大豆ミートと牛肉のハンバーグ デミグラスソース 120g」
・入手しやすさNo.1:無印良品「大豆ミート ハンバーグ」
・大豆感なしNo.1:伊藤ハム「まるでお肉!大豆ミートのハンバーグ デミグラスソース」
個人的には味やスペックのほか、保存の利便性がいい「デミグラスソース風野菜大豆バーグ(大豆ハンバーグ)」が好みです
より一般的になれば、ハンバーグ以外の代替肉商品も充実するはず。そのときには改めて食べ比べをしたいと思います。
食の分野に詳しいライター兼フードアナリスト。雑誌とWebメディアを中心に編集と撮影をともなう取材執筆を行うほか、TVや大手企業サイトのコメンテーターなど幅広く活動中。