「おい、頭を冷やせ!」。そう突っ込みたくなるような衝撃の冷凍食品がデビューしました。レンジでチンすると冷たい「冷やし中華」ができあがるというものです。開発したのは冷凍食品の最大手、ニチレイフーズ。2022年春季新商品の目玉として、この冷凍食品を打ち出したのです。
商品名はシンプルでいさぎよい「冷やし中華」。しっかり具材が付いているところもナイスです
つまり、今季最大の自信作ということでしょう。これはおもしろい!ということで、ひと足先にサンプルをいただき、食べてみました。スペック、麺、タレ、具材などをチェックしながら、味のレポートをしていきます。
商品パッケージをよく見ると、大きいほうの写真はトレイに麺と具材が盛り付けられたものだということがわかります。具材は、煮豚、錦糸卵、刻みオクラ、紅生姜。冷やし中華の野菜にはキュウリがよく用いられますが、オクラというのは興味深いところ。
こちらは以前筆者が撮影した、冷やし中華の草分けと言われる老舗「揚子江菜館」の「五色涼拌麺」。キュウリときぬさやが緑色のアクセントで、錦糸卵は富士山にかかる雲をイメージしているとか
裏面には調理法がイラストとともに掲載。500Wレンジなら3分30秒、600Wなら2分50秒が目安です。トレイ付きなので器を用意する必要がなく、3分程度レンジでチンするだけで作れるというのもポイント。これが一般的なチルドの冷やし中華の場合、鍋に湯を沸かして麺を3〜4分茹で、ざるにあけて冷水でシメて水を切り、別途用意した具材とともに器に盛り付けるのがセオリーなので、本商品はかなり効率的です。
加熱ムラを防ぐため、500Wまたは600Wでのレンチンがおすすめとのこと
裏面にはスペックも載っていて、エネルギーが426kcal、炭水化物は80.6gとのこと。また、1人前あたり360gで、そのうち麺は200gだそうです。いわゆる街中華のラーメンはおおむね1玉150g前後ですが、冷やし中華やつけ麺は1.5倍(つけ麺の場合は2倍とかそれ以上も)で提供されることが多いので、200gは一般的な量です。
具材付きで1人前426kcalというのは、なかなかヘルシーなほうだと思います
中身を出すと、パッケージの配置そのままの内容。タレは加熱せず、レンジでチンしている間に自然解凍させて食べる直前にかけるという工程です。そして、なによりインパクト大なのは麺の上に乗っている数個の氷。
直径数cm大の氷が約15個入っていました
この氷はインパクトだけでなく、商品をおいしくするために欠かせない要素です。商品情報によると、マイクロ波の影響を受けにくい氷の特性を生かした独自技術を採用しているのだとか。しかも特許出願済。レンジでチンした後にも適度に氷が残ることで、冷たい状態で食べることができるというのです。
具材のトレイは麺の器に乗せたままレンチンしますが、後で盛り付けやすいように取り外し可能となっています
つまり、氷はレンジでチンしても溶けにくい性質を持っているということでしょう。勉強になったところで、いよいよ調理。ラップはかけずにそのままレンジで加熱します。
氷をレンジでチンするとは。初めての経験かもしれません
加熱が完了してレンジでから取り出すと、確かに氷はしっかり残っていました。それでいて、麺と具材はいい感じに解凍されています。ちょっとイリュージョン的な驚きです。
自然解凍されたタレもサラッとしたテクスチャー。麺をほぐしながらかけて混ぜていきます
レンジでチンしたとはいえ、麺は完全に熱くなっているわけではないので混ぜても氷はすぐに溶けません。なるほど、確かに氷がいい感じで残るから冷たい状態でできあがるというわけですか。味わいだけでなく、冷たさの面でも期待できます。
パッケージ通りに具材を盛り付けていきます
完成。具材の色みバランスもよく、ウマそうです
味は、ニチレイフーズの自信にも納得のハイクオリティなおいしさです。麺はツルツルとした、のどごしのよい食感。たっぷり入ったタレはサラッとしたさっぱり系ですが、麺にゆるやかなウェーブがかかっているのでよくからみます。また、残った氷が麺とタレの冷涼感をキープし、最後までプリッとキリッとした冷やし中華を楽しめます。
工場で打ちたての麺を急速凍結。生麺のような食感を目指したとのこと
タレは醤油べースで、3種類の酢を使用しているのがこだわりとのこと。フルーティーな甘酸っぱさを感じますが、ツンとしたカドがなく心地いいあんばい。このバランスのよさは、酢をブレンドすることで成り立っているのでしょう。
具材も、それぞれがいい仕事をしています。キュウリではなくオクラなのにも納得。あの粘りがサラッとしたタレにとろみを演出し、より麺とからみやすくなります。煮豚はしっとりしていながらも油っこくなく、適度なメリハリを演出。錦糸卵のマイルドな味とふんわり感は箸休めのクッション効果となり、いっぽうで紅生姜はピリッとした刺激に。
本商品には冷やし中華のベストパートナーである練り辛子が付いていませんが、この紅生姜が色と辛みのアクセントとなるので問題なし
聞けば構想から約5年、具現化するまでに約3年を費やしたとか。長期間温めたアイデアを具現化すべく、情熱をもって作り上げたとのことですが、食べてみれば冷静に計算し尽くされた傑作であることがわかりました。
ニチレイフーズさん、この調子でゴマダレ冷やし中華や冷麺、そば、サラダうどん、そうめん、カペッリーニなども期待しています!
なお、本商品はタレが多めなので、生野菜を追加しても味が薄まらず食べられますし、練り辛子、納豆、カニカマなどさまざまな具材を独自にプラスするのもおすすめ。また、さっぱりしているのでゴマ油や豆板醤などでパンチを効かせるのもあり。アレンジも楽しめると思います。発売は先を見越した3月1日ですが、夏季には一層反響となるはず。大ヒットに注目です。
食の分野に詳しいライター兼フードアナリスト。雑誌とWebメディアを中心に編集と撮影をともなう取材執筆を行うほか、TVや大手企業サイトのコメンテーターなど幅広く活動中。