ハウス食品による、スパイスカレーの新たな挑戦が始まりました。これまで同社ではレトルトでスパイスカレー商品はあったものの、ルーなどのカレーの素では存在しなかったのです。それがついに商品化。2022年2月に発売された「スパイスカレーの匠 チキンカレー」です。具材を準備するだけで、家で手軽に本格的なスパイスカレーを作れるのだとか。
「スパイスカレーの匠 チキンカレー」。スパイスカレーブームの立役者と言える「旧ヤム邸」が監修しています
さて、ここでカレー好きならきっと気付くはず。「あれ、ハウスの『旧ヤム邸』ってレトルトもなかったっけ?」と。その通り! 2018年の夏に同店監修の「選ばれし人気店 牛豚キーマカレー」が発売されており、筆者も当時、「『食べログ カレー 百名店』印のレトルトカレーを実店舗のカレーと食べ比べてみた!」で取材しています。
「スパイスカレーの匠 チキンカレー」は、その名の通りシンプルなチキンカレーを推奨。いっぽう、レトルトは牛と豚のキーマカレーで、ごぼうやぶなしめじが入っているなど具材の違いはありますが、両者を食べ比べてみることにしました。本当に本格的なスパイスカレーが作れるのかはもちろん、両者にどんな違いがあって共通点は何なのか、などをレポートします。
「スパイスカレーの匠」を実際に作りつつ、「選ばれし人気店 牛豚キーマカレー」(右)と食べ比べます
まずは「スパイスカレーの匠 チキンカレー」の開発背景を紹介。スパイスカレーには具体的な定義はなく、むしろ自由なことが特徴といっても言いほど。そのため、基本のスパイスカレーとして、同商品の味わいを決めていくことは難しかったそうです。
ヒントとして数多くのスパイスカレー店を巡り、たくさんのレシピを参考にしたうえで、「旧ヤム邸」の植竹大介オーナーに監修を依頼。結果、15種のスパイスの華やかな香り、鶏や魚介のうまみを生かしたカレーの素が完成したのだとか。
特徴のひとつが、味を重層的にさせるための工夫。「炒め用スパイスオイル」「煮込み用特製濃縮ペースト」「仕上げ用スパイスミックス」の3つをステップで分けることで、フレッシュな香りや味のレイヤー感を狙っているのです
レシピ通りの材料を用意して、さっそくクッキング開始。水と油以外に用意する食材は、鶏モモ肉とたまねぎのみです。ポイントは、たまねぎの繊維に沿って2等分にカットし、繊維と垂直に薄くカットすること。そしてフライパンにサラダ油と「炒め用スパイスオイル」を入れ、鶏肉とたまねぎを炒めます。
先に鶏肉を炒めて表面がこんがりしたら、たまねぎを加えて薄く色づくまでソテーします
最初の炒め工程で使う「炒め用スパイスオイル」は、これだけでもかなりスパイスフル。熱することでそのアロマがいっそう広がり、キッチンが一気に本格カレー店のような香りに。
火を止めて、「煮込み用特製濃縮ペースト」を投入。なお、商品には2皿分入っていますが筆者は1皿分で作っています
「煮込み用特製濃縮ペースト」は、カレーのコアとなる要素です。水を加えて一緒に混ぜていくと溶けていくので、ここで再び火をつけひと煮立ち。とろみがなくサラサラ系ですが、スパイスカレーの多くは小麦粉を使わないのでこれは一般的。軽く煮立ったら火を止め、「仕上げ用スパイスミックス」をかけて完成です。
「仕上げ用スパイスミックス」はなかなか多め。カルダモンの香りが強めな印象で、お好みで調整してもいいでしょう
ここで、レトルトのほうも調理開始。とはいえ袋ごとレンチンできるタイプなので、非常に簡単。箱を開けてくるっとやったらそのままレンジで温めるだけです。
600Wのレンジで1分加熱。あとはそれぞれ盛りつければ完成です
食べる前に、それぞれスペックの情報もお伝えしましょう。調味料やスパイスに関して、「スパイスカレーの匠 チキンカレー」だけに入っているものは、チャツネ、オイスターソース、魚醤、ジンジャー、アサリエキス、レモン濃縮果汁など。レトルトの「選ばれし人気店 牛豚キーマカレー」だけに入ってる調味料やスパイスは、味噌、醤油、昆布エキスなどになります。
上がレトルトの「選ばれし人気店 牛豚キーマカレー」、下2箱が「スパイスカレーの匠 チキンカレー」。レトルトは150g入りで、175kcal、炭水化物12.0gです
ということで、いよいよ実食。「スパイスカレーの匠 チキンカレー」はレシピ通りに鶏肉100gで作りましたが、ゴロッとしていてインパクト十分。数種の具材が入っている「選ばれし人気店 牛豚キーマカレー」より、見た目からしてウマそうです。
並べるとご覧の通り。やはり自炊カレーの大きな魅力は、具材を豪華にできることでしょう。また、カレーソースの色にも若干違いが
香りも、完成直前に「仕上げ用スパイスミックス」を加えた「スパイスカレーの匠 チキンカレー」のほうがフレッシュかつボリューミー。食べてみると、スパイス感や辛みもしっかりありながら、わずかにフルーティーな甘みを感じます。そして、手前味噌ながらかなりウマい! 商品のおかげですが、コアなスパイスカレー好きにも褒めてもらえそうなクオリティだと思います。
2皿分で、税別希望小売価格が356円。ルーカテゴリーとしては高めながら、食べれば納得できるはず
テクスチャーはサラッとした中に、パウダーの要素を感じました。これはもしかしたら「仕上げ用スパイスミックス」によるものかもしれません。辛さはハウスの指標では4辛となっており、激辛ではないので苦手でなければ楽に食べられるレベルでしょう。
スパイスはカルダモンの青々としたニュアンスが強め。ローストしたような香ばしさや甘みもあり、スパイスカレーらしい複層的なテイストに仕上がっています
次は「選ばれし人気店 牛豚キーマカレー」を。前回の取材以来何度か食べていますが、多くのレトルト系スパイスカレーの中ではかなり秀逸だと思います。価格に対する味のクオリティがよく、しっかり個性もあってスパイスフル。そういった印象を持っています。
こちらもサラサラですが、「スパイスカレーの匠 チキンカレー」より若干とろみがあるかもしれません。また、色が少し濃いです
うん。こちらもやはりカルダモンの風味が強めで、次にマスタードシードのパンチを感じます。レイヤー感もさすがで、トップはスパイスと和ダシの絶妙なシーソーゲーム、ミドルはカレーのコクが盛り上がり、ラストは爽やかな辛さの風が吹くようなイメージ。ミンチは少なめですが、ごぼう、ぶなしめじ、くわいなど、和を感じる具材は印象的です。
「選ばれし人気店 牛豚キーマカレー」は、和ダシの風味がより豊か。甘さは控えめで、そのためか辛さはやや強めに感じました
「スパイスカレーの匠 チキンカレー」で、本当に本格的なスパイスカレーが家で作れました! 食べ比べたまとめとしては、どちらもカルダモンが強めで、これが「旧ヤム邸」らしさだと改めて感じました。また、和ダシのやわらかい風味も特徴的。それぞれ、前に出ている部分をあげたので、こちらも参考に。
・「スパイスカレーの匠 チキンカレー」のほうが豊かな要素
全体的な香りのボリューム感、ロースト感、甘み
・「選ばれし人気店 牛豚キーマカレー」のほうが豊かな要素
和ダシの風味、色の濃さ、辛み(僅差)、とろみ(僅差)
香りも、「スパイスカレーの匠 チキンカレー」のほうがより爽やかな方向性。お試しあれ
今回はレシピに沿って鶏モモ肉で作りましたが、牛豚の合挽肉を使ったキーマカレーにしてみるのもいいと思います。スパイスカレーならではの香り高さが感じられるので、自宅で本格的な味を楽しみたい人はぜひ「スパイスカレーの匠 チキンカレー」にトライを!
食の分野に詳しいライター兼フードアナリスト。雑誌とWebメディアを中心に編集と撮影をともなう取材執筆を行うほか、TVや大手企業サイトのコメンテーターなど幅広く活動中。