1976年のデビューから愛され続ける国民的カップうどん&そば「どん兵衛」(正式なブランド名は「日清のどん兵衛」)ですが、発売から46年を経て「日清の最強どん兵衛」なる商品が爆誕。麺、つゆ、具材、薬味とすべてにこだわった、いわゆるプレミアム版の「どん兵衛」です。
「日清の最強どん兵衛 きつねうどん」(左)と「日清の最強どん兵衛 かき揚げそば」(右)。CMでもガンガンPRされていて、大きな話題となっています
筆者は「さては、以前の『もっちもち麺』はこのための布石だったな?」と、ピンときました。というのも、2020年末には「日清のどん兵衛 限定プレミアムきつねうどん 史上最もっちもち麺」が発売され(レビューはこちら)、45周年だった2021年にも再発売されていたからです。
あの知見を踏まえたうえで全体的にブラッシュアップし、そば版も商品化するとは、さすが日清食品! ただ、やはり気になるのはその味です。麺を太くしたり、6種の合わせダシを使ったりしているとのことですが、はたして通常版と比べてどれぐらいウマいのか。
うどんとそばのそれぞれ、スタンダードな「どん兵衛」(つゆは東日本版)を食べ比べ、何がどうグレードアップしているのかをレポートします。
スタンダードな「どん兵衛」と食べ比べます。なお、メーカーの希望小売価格は通常版が税別193円で、最強版が税別248円。約50円の差があります
まずはうどんのデザインやスペックから比べていきましょう。「日清の最強どん兵衛 きつねうどん」は、基本のデザインを踏襲しつつ金色を用いた高級感のある装い。また、差別化ポイントが文字と写真でわかりやすく主張されています。そして、調理時間が通常版より3分長い8分であることもポイント。
「日清の最強どん兵衛 きつねうどん」の差別化ポイントは大きく4点。「極太うどん」、6種の合わせだしを使用した「つゆ」、通常よりぶ厚い「おあげ」、長野の老舗「八幡屋礒五郎」が特別に調合した「特製ゆず七味唐辛子」です
うどんの太さが違うので、重量も違うのかと思ったらやはりでした。「日清の最強どん兵衛 きつねうどん」の麺は66g(全体では93g)なのに対し、「日清のどん兵衛 きつねうどん」は74g(全体は96g)。意外にも、通常版のほうが8g多いという結果に。
最強(上)は410kcalで、炭水化物が53.9g。通常版(下)は421kcalで56.1g。(E)というのはEAST=東日本版の味という意味です
ともに開封して中身をチェックすると、なんとなく「日清の最強どん兵衛 きつねうどん」のほうが貫禄のある印象。特に粉末スープに付いた「八幡屋礒五郎(やわたやいそごろう)」のゆず七味が印象的です。また、麺に関しても確かに太め。
左が最強版。麺の太さの違いは一目瞭然です
そして「おあげ」に関しては、四方の大きさはほぼ一緒ですが厚さに違いがあり、乾燥した状態での重さを量ると、最強版が23gで通常版は14g。商品ごとに個体差はあると思いますが、筆者のチェックでは約1.7倍であることがわかりました。
おあげを重ねて比較。最強版(上)は、最も厚い部分で1.6cm、通常版(下)は最も厚い部分で1.0cmでした
「史上最もっちもち麺」を食べ比べたときと同様、先に8分調理の最強版に熱湯を入れ、3分後に通常版を調理開始。同時に完成させると、仕上がりのルックスでも違いが浮き彫りになりました。
パッと見でわかるのが、薬味の色。ゆずが入った「八幡屋礒五郎」の七味唐辛子は、色もオレンジが強めです
では肝心の味をチェック。立体感のある麺はふわっともっちりした食感で、ボリューム感やなめらかなタッチがリッチさを演出します。つゆはダシの複層的な香りのあとに七味のゆずが華やかな表情を添え、かえしの甘みと醤油感がジンワリと。「おあげ」のジュワッとした弾力も見事です。
乾麺タイプのカップうどんで、この高級感は秀逸。全体的に贅沢な味わいであることがわかりやすい仕上がりです
では、改めて通常版の味はどうでしょうか。麺は立体的でない分淡麗なタッチですが、さすがの「どん兵衛」クオリティで弾力もコシも十分。つゆはより関東らしい醤油感の豊かなテイストで、甘みも若干強め。「おあげ」も安定のジューシーさで、当然ではあるものの悪くないおいしさです。
通常版は比較的シンプルながら、完成度の高さはさすが。麺もつゆも、こちらのほうが好きという人は少なくないはず
麺とつゆだけを取り出して比較。つゆの色は最強版のほうが若干淡くなっています
以下は、通常版をオール3とした場合の「日清の最強どん兵衛 きつねうどん」の評価点です。
次はそば。こちらもうどんと同様の差別化が図られており、弾力とのどごしが豊かな「新太そば」、6種の合わせだしを使用した「つゆ」、通常より厚い「鬼かき揚げ」、東京・浅草の老舗「やげん堀」で特別に調合した「特製七味唐辛子」が「日清の最強どん兵衛 かき揚げそば」の特徴です。
最強版(左)の調理時間は、通常版(右)より2分長い5分
スペックを比べてみると、うどんとそばとでは数値相関が若干違いました。「日清の最強どん兵衛 かき揚げそば」の麺は66g(全体では101g)なのに対し、「日清のどん兵衛 天ぷらそば」は72g(全体は100g)。最強版は麺が軽いいっぽうで、全体容量は重いのです。最強版は、かき揚げが重いということかもしれません。また、最強版は通常版より炭水化物が低いものの、カロリーは通常版を上回っていました。
最強(上)は494kcalで、炭水化物が55.7g。通常版(下)は487kcalで57.2g
中身に関してはうどんのときと同様、最強版のほうがゴージャス。麺が太く、かき揚げにもインパクトがある「日清の最強どん兵衛 かき揚げそば」のほうが貫禄十分です。
麺の太さと、ずっしり感のあるかき揚げに注目。なお、写真のかき揚げは両方とも袋から取り出して撮影しています
また、うどんの「おあげ」は厚さの違いだけでしたが、そばのかき揚げ(天ぷら)は素材からして別物。特にたまねぎの甘香ばしい風味を強く感じます。
かき揚げ(天ぷら)も比較してみることに。最強版(上)は31gで、最も厚い部分は2.3cm。通常版(下)は19gで、最も厚い部分は1.2cmでした(筆者調べ)
ともにかき揚げは、あと乗せする形で調理開始。2分の時間差を考慮して熱湯を注ぎ、七味唐辛子を振って完成です。第一印象で感じたのは、最強版のかき揚げの存在感。やはりたまねぎの甘香ばしさが前面に出ています。
「やげん堀」の七味もナイスな仕事ぶり。黒ごまが香ばしく、上品さを演出しています
最強版の麺は、田舎そばを彷彿(ほうふつ)とさせる素朴な歯応えがあるものの、決してボソッとした感じはありません。「どん兵衛」らしいしなやかなタッチや、りりしいテクスチャーも健在です。つゆは最強うどんよりも醤油感が主張。かき揚げのたまねぎにも影響されているのか、甘みも豊かに感じます。
そしてかき揚げは、つゆに浸った底面はふわっと、上面はサクサクで、たまねぎのシャキシャキ感もしっかり。その分海老や青のりの香ばしさは息をひそめますが、リアルなかき揚げ感があって驚きのおいしさです。ただし大きめのかき揚げは油分も増えるからか、若干こってりした印象も。
麺のファーストタッチはモフッとしていて、かむとコシの強さがわかります。また、比較的に硬めかつほぐれにくいので、よく混ぜたほうがいいでしょう
続いて通常版の味をチェック。ツルッとなめらかな麺はのどごしもよく、繊細という面での上品さであれば通常版のほうが上かもしれません。また、天ぷらは最強版のかき揚げとは明らかに違う方向性。通常版は海老の香ばしさと青のりの磯っぽい香りが前に出ていて、海鮮風味が強めです。
麺、つゆ、天ぷら、薬味のバランスがピカイチ。「どん兵衛といえばこの味だよな」と、思わず納得してしまう安定感です
そばつゆの色は、うどんに比べて最強版と通常版で違いはあまり感じません
以下は、通常版をオール3とした場合の「日清の最強どん兵衛 かき揚げそば」の評価点です。
今回うどんとそばをそれぞれ食べ比べ、最強版で特に名役者だと感じた素材をまとめました。感じ方は人それぞれですが、味わう際の参考にしていただけたら。
・日清の最強どん兵衛 きつねうどん:麺のふわもち感とゆず入り七味の華やかな香り
・日清の最強どん兵衛 かき揚げそば:麺の強いコシとたまねぎ入りかき揚げのリッチなうまみ
多くの人が食べたことのあるブランドだけに、ちょっとしたネタとして知人と一緒に味わって感想を言い合うのもおすすめです
冒頭でCMのことに触れましたが、過去の「日清のどん兵衛 限定プレミアムきつねうどん 史上最もっちもち麺」に比べ、今回は日清食品の本気度をいっそう感じます。もしかしたら今後はこの最強版を定期的に積極展開、あるいは通年販売して通常版との二極化路線で攻めていくのかもしれないとも思いました。
となると、鴨だしそば、カレーうどん、肉うどんなど、ほかの「どん兵衛」でも最強版が出てもおかしくないわけで、今後の戦略にも期待です!
食の分野に詳しいライター兼フードアナリスト。雑誌とWebメディアを中心に編集と撮影をともなう取材執筆を行うほか、TVや大手企業サイトのコメンテーターなど幅広く活動中。