お酒のトレンドがいくつかある中で、近年注目されている新カテゴリーが「ハードセルツァー」です。
米国で人気になった後、日本に上陸したトレンドですが、「何だ、それ?」と思う人も少なくないでしょう。そこで、ハードセルツァーの概要を解説するとともに、2022年春に新発売となった2つのブランドの新製品を飲み比べてレポートします。
近所のスーパーマーケットでも、ハードセルツァーがプッシュされていました
ハードセルツァーは、直訳すると「アルコール入り炭酸水」という意味。米国で2018〜2019年ごろに大ヒットしたカテゴリーです。特徴は、一般的にサトウキビの糖蜜由来のアルコールを使用していて、味わいはとてもライト。甘さもきわめて控えめです。スペック的には、低カロリー&低糖質というのが特徴で、米国では健康志向の強いミレニアム世代を中心に人気が高いそうです。
日本でも以前から、クラフトビールのインポーターを中心に発売されていましたが、2021年からは大手メーカーも参入。販売終了したブランドもありますが、いっぽうで2022年から新商品を発売したメーカーもあり、今後の市場動向が注目されています。
左から、2021年にデビューした「DOSEE」、「トポチコ ハードセルツァー」、「サッポロ WATER SOUR」。「DOSEE」と「サッポロ WATER SOUR」は販売終了となりました
とはいえ、よくよく考えてみると、日本には缶チューハイという独自のお酒があり、なかにはライトでヘルシーなタイプも発売されています。では、これらとハードセルツァーは何が異なるのか、という点が気になります。
大きな違いは、個人的には飲み応えかなと思います。ハードセルツァーは、アルコール度数が低めで、お酒っぽいボディも抑え気味。ライトで飲みやすいうえ、サラッとしていてゴクゴクいける炭酸アルコール飲料です。イメージとしては、ほんのり甘くフルーティーな“フレーバー炭酸水のお酒版”と言えるでしょう。
ということで、今春日本で発売されたメジャーなハードセルツァー「スミノフ セルツァー」と「アサヒ FRUITZER(フルーツァー)」の特徴や味わいを解説していきます。
左から、キリンビールの「スミノフ セルツァー オレンジ&グレープフルーツ」と「スミノフ セルツァー ホワイトピーチ」、アサヒビールの「アサヒ FRUITZER Lemon & Lime」と「アサヒ FRUITZER Pink Grapefruit」
「スミノフ」は、瓶入りRTD(Ready to Drink=開栓してすぐ飲めるドリンク)である「スミノフアイス」でご存じの人が多いでしょう。「スミノフ」は、イギリスのディアジオ社が展開するプレミアムウォッカブランドで、日本ではキリンビールが販売を担っています。
そして2022年3月22日、新発売されたのが「スミノフ セルツァー オレンジ&グレープフルーツ」と「スミノフ セルツァー ホワイトピーチ」。RTDでありがちなレモンフレーバーがなく、いっぽうで甘くやさしい印象のピーチがあるのがラインアップの特徴です。まずは、「オレンジ&グレープフルーツ」のスペックからチェック!
「スミノフ セルツァー オレンジ&グレープフルーツ」は250mlで、アルコール度数は4%。100ml当たり26kcal、炭水化物は0.8gです
スペックは、定番缶チューハイの「キリン 氷結 シチリア産レモン」が100ml当たり45kcal、炭水化物3.9gなので、確かに「スミノフ セルツァー」は比較的ヘルシーだと言えるでしょう。では、味はいかに。
液体の色はほぼ透明で、香りはしっかり。炭酸も十分に弾けます
飲んでみると、香りは強いですが、味はさほど濃くありません。その分、ゴクゴクいける飲みやすさがあり、ウォッカらしいボディもありますが、カドはなくスムーズです。フレーバーは最初にオレンジが来て、アフターはグレープフルーツ。ビターテイストは弱く、ブライトで温かみのあるシトラス感です。
このマイルドな感じは、甘夏や文旦(ぶんたん)的な和柑橘のニュアンスもあるかなと思いました。ペアリングとしては、塩系の洋風メニューやスナック菓子が特に合いそう。なお、甘さや酸味など、いくつかの項目を点数にしたので参考にしてください。
「スミノフ セルツァー ホワイトピーチ」は、白桃をフレーバーのベースに、ほどよい甘さのすっきりした味に仕上げられています。これまで、日本のメジャーなハードセルツァーにはなかった白桃フレーバーである点が気になるところです。
「スミノフ セルツァー ホワイトピーチ」。アルコール度数4%で100ml当たり30kcal、炭水化物は1.7gです
白桃の甘やかな香りが印象的で、甘さは「オレンジ&グレープフルーツ」より若干豊か。カロリーなどのスペックも、やや高めです。ほんのり甘みがあるとはいえ、一般的な缶チューハイよりは甘くなく、スッと消えるキレもしっかり。
実にフルーティーで、酸味は柑橘系よりもおだやかです
白桃の風味によるものか、味わいにはどこかクリーミーなニュアンスもあり、ライトなカクテルとして飲むこともできそう。フルーティーでやわらかな甘みは、タレ系の料理や黒酢を使った中華に合うと思います。
続いては、アサヒビールが新発売した「アサヒ FRUITZER」。2022年4月5日から首都圏・関信越エリアで先行発売されており、7月5日からは全国展開されます。「スミノフ セルツァー」と同じく、アルコール度数は4%、ベースはウォッカながら、サイズはやや多めの355ml缶。また、人工甘味料を使っていないこともウリにしています。
「アサヒ FRUITZER Lemon & Lime」は355mlで、アルコール度数は4%。100ml当たり32kcal、炭水化物は2.6gです
スペックとしては、「スミノフ セルツァー」よりカロリーも炭水化物もやや多め。味わいはレモンよりライムの青々しい香りが強めで、ビター感も感じられました。甘みはかなり控えめで、ウォッカのボディもそこそこ。
色はやはりクリア。キンキンに冷たくして飲みたい味です
柑橘フレーバーもかなりシャープで、すっきりさっぱりとしたテイストです。口の中をリセットするウォッシュアウト効果も見込め、揚げ物には特に合う1本だと感じました。
最後は、「アサヒ FRUITZER Pink Grapefruit」。「Lemon & Lime」と同じく、人工甘味料を使わず、自然な味わいを生かしています。グレープフルーツもレモンやライムと同じ柑橘類ですが、味わいにどんな違いがあるのかが気になるところです。
「アサヒ FRUITZER Pink Grapefruit」。100ml当たり35kcalで炭水化物は2.9gと、「Lemon & Lime」より少しだけ高めです
味の方向性としては、「スミノフ セルツァー オレンジ&グレープフルーツ」に近しいですが、オレンジがない分、よりストレートな柑橘テイストを感じます。ピンクグレープフルーツの果実にはジューシーな苦みがあるものの、そのビター感は抑えめで飲みやすく、甘さはほんのり。みずみずしく、フレンドリーな味わいだと思います。
味わいは総じてライトながら、香りのボリュームはしっかりしています
それはまるで、苦みが出ないように皮を除いて果肉だけをくり抜いたピンクグレープフルーツの味わい。温かみのあるシトラスフレーバーで、「Lemon & Lime」より甘みも感じます。ピザやハンバーガーなど、濃厚な洋風メニューによく合うのではないでしょうか。
以上をまとめると、ハードセルツァーはどれもみずみずしくてライトな味わいながら、甘みが欲しい人は「スミノフ セルツァー ホワイトピーチ」を、逆にドライな辛口が好みなら「アサヒFRUITZER Lemon & Lime」を選ぶと正解です。その中間が好みなら「スミノフ セルツァー オレンジ&グレープフルーツ」や「アサヒFRUITZER Pink Grapefruit」がおすすめです。
どれもゴクゴクいける飲みやすさ。暑い日のリフレッシュに最適なお酒です
なお、アサヒビールは2022年6月28日から「Amazon.co.jp」で新たなハードセルツァーブランド「アサヒ VIVA(ビバ)」を数量限定で新発売することも発表。アルコール度数がさらに低い3%で、フレーバーは「アサヒ VIVA Lemon」と「アサヒ VIVA Grapefruit」の2種類を揃えます。「『アサヒ FRUITZER』と、味がほぼカブっとるやないかい!」と、つっこみたくなる部分はあるものの、別ブランドで販路や数量を限定していることには意味があるのかもしれません。
何はともあれ、ハードセルツァーは暑い季節にマッチする、みずみずしさと爽快感が魅力。今夏はこれで決まり!
食の分野に詳しいライター兼フードアナリスト。雑誌とWebメディアを中心に編集と撮影をともなう取材執筆を行うほか、TVや大手企業サイトのコメンテーターなど幅広く活動中。