恒常的にトレーニングを行い、筋肉の肥大をねらっている人や、ダイエット中の人にとって、「たんぱく質」は不可欠な栄養素です。そういう人たちは、プロテインやサラダチキンなどを積極的に摂取している印象がありますよね。
たんぱく質は、肉類や魚介類、乳製品、大豆などに多く含まれています
いっぽうで近年、“そうではない人”もたんぱく質は摂取したほうがいい、そんなムーブメントを感じてはいませんか?
たとえば、セブン‐イレブンでは「たんぱく質が摂れる〇〇」シリーズが人気ですし、さまざまな食品に「たんぱく質〇g」といった記載を強調するパッケージが増えた気がします。
どうやら、普通に暮らしているだけでも、たんぱく質は摂ったほうがいいらしい……。でも、卵とかサラダチキン、プロテインにたくさん入っているんだよね?くらいの知識しかない私、どうしたらいいのでしょうか。
そもそもたんぱく質とは、アミノ酸から構成されているもので、筋肉だけでなく、身体の臓器や皮膚、髪の毛などを作るのに必要な栄養素です。「臓器や皮膚に使う栄養」と聞くと、筋肉や美容が気になる人のためだけではなく、人間誰しも不足すると本当にヤバイものなんだなと改めて実感しますよね。
さらに、たんぱく質は、まとめて食べて身体の中に溜めておけないため、毎日摂取する必要があります(これには諸説あり)。
にもかかわらず、日本人の1日当たりのたんぱく質摂取量は、年々下がってきており、2011年頃には、戦後の1956年程度の摂取量にまで落ち込んでいると言われています。
こんなに食べ物にあふれた現代なのに、戦後と同じくらいの水準なのは、インスタント食品などの手軽な食事が増えたせいだとも言われていますが、とにかく意識をしなければ、たんぱく質は不足してしまうということなのです。
ところで、たんぱく質は1日当たりどのくらい摂取しなければならないのでしょうか。
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、成人男性は65g、女性は50gのたんぱく質の摂取が推奨されていますが、これを食事だけで摂るとすると……。
・白米:どんぶり1杯
・牛もも肉:100g
・紅鮭:1切れ
・納豆:1パック
・牛乳:コップ2杯
これらを毎日食べるとなると……、うーん、毎日は難しいかな?と感じる量。毎日牛もも肉のステーキってわけにもいきませんし、メニューを考えるのも結構めんどうですよね。だからといって、毎日プロテイン剤で補うのも地味にしんどい。飽きますし。できれば、普通の食事で多く摂ることを意識したいなと思いました。
豆由来のたんぱく質を多く含む食品が注目されています
たんぱく質を摂取したい人に向けて近年、豆関連食材が多く登場しています。これらは、代替肉や代替乳製品など、本来は肉や乳製品で作るものを、豆で製造している食材。なぜ豆関連食材はここまで注目されているのでしょうか? 単純にそういったテクノロジーが進化した、というだけではありません。
まずは、健康志向の高まりです。健康や美容のためにたんぱく質が重要だということが広まり、コンビニでも「たんぱく質が摂れるシリーズ」の商品がヒットするなど、トレーニングやダイエットを行っている人以外にも「こういうものが売っているってことは、たんぱく質は大事なんだ!」という認知が広まったことは大きいと思います。
もうひとつの理由は、環境面への配慮です。「SDGs」がさまざまな場所で提唱されていますよね。たんぱく質を多く含む食品には、牛肉や豚肉、鶏肉などがありますが、なかでも大豆は、牛肉よりも生産時の水の消費量が1/8と、環境への負荷が圧倒的に少ないのだそう(東京大学生産技術研究所沖研究室の調査より)。
また、気候変動や人口増加による食糧不足を意識する人も増えています。こうしたことから、「たんぱく質を摂取しよう! それも豆で!」と企業がさまざまな商品開発を行い、それに賛同する人が増えていることが予想されます。そして、口にした人が「意外とおいしい!」と健康のために取り入れていたり、ヴィーガン人口が年々増加したりしていることも、少なからず影響しているのではないでしょうか。
単純にたんぱく質を摂取したいだけなら、肉やプロテインでよいのかもしれませんが、肉だとカロリーや脂質、コレステロールも摂取してしまう懸念が生まれます。しかし、豆製品なら、たんぱく質だけでなく、イソフラボンやビタミン、食物繊維など、大豆特有の栄養素も同時に摂れる。これも大豆が注目されている理由のひとつで、乳アレルギーの人、乳糖不耐症の人からも支持されているようです。
そこで試しに、豆関連食材メインで1日過ごしてみました。とはいえ、豆ばっかりの食事って、味が単調で味気なさそうですが……はたして、どうなんでしょうか?
【朝】
・豆乳製のヨーグルト
・たんぱく質豊富なアプリコット/プロテインブロート
・豆腐チーズ
・目玉焼き
まずは朝食から。
朝はヨーグルトが定番の筆者ですが、なんと、豆乳から作られたヨーグルトを発見。
たんぱく質を摂取できるだけでなく、お通じの改善にもよいと書かれています
メーカーの「マルサン」と言えば、味噌や豆乳で有名な会社。この「豆乳グルト」は、乳成分不使用で、豆乳が原料です。一般的なヨーグルトと比べ、たんぱく質は多く、いっぽうで炭水化物は低く、コレステロールはゼロ!
これに、フルーツの中でもたんぱく質が豊富だと言われているアプリコット(あんず)を入れて食べてみました。
ヨーグルトなのに“だま”があるのが「豆腐」っぽい
一般的なヨーグルトと比べると、まず見た目が豆腐っぽい! そして、食感と酸味はヨーグルトなんだけど、ひと口目は豆腐っぽい味がありつつ、でも後味はヨーグルト……という不思議な感覚でした。さっぱりあっさりしているのがとても新鮮で、おいしいです。
あんずとの相性も良好! ひと晩漬けておくと、ドライフルーツはよりやわらかくなります
さらに、もうひと手間かかりますが、パンも食べてみましょう。
欧米の商品っぽい見た目のパッケージです
こちらは、ドイツのメルテバッハー社製のライ麦パンで、「プロテインブロート」という名前からもわかるように、たんぱく質を始め、食物繊維、ビタミンB1/B2が豊富に含まれているパンです。
かなり薄くて、食パンの半分サイズのものが5枚入り。……足りる?
この商品は、薄くスライスされた状態で5枚入りです。
この「プロテインブロート」に、チーズと目玉焼きをのせていただきましょう。
チーズはこちら! 大豆で作られたチーズ、相模屋食料「BEYOND TOFU」を使用します。チーズを大豆で作る?というのはちょっと不思議な気もしますが、低脂肪豆乳を使うことで、乳製品を一切使用しないにもかかわらず、まるでチーズのような食感と、とろける感じが出せるのだそう。
ピザの写真と「TOFU」の文字が不思議な違和感
足りないかなと思っていた「プロテインブロート」は、意外と食べ応えがありました!
「プロテインブロート」に「BEYOND TOFU」をのせ、レンチンし、さらに目玉焼きをオン。「プロテインブロート」は食パンの半分くらいの大きさなので、足りなくない?と最初思ったのですが、ぎゅっと詰まっている感じがして、しっかりと満腹感を得られました。
「BEYOND TOFU」は、不思議! 食感や口当たりの塩味はチーズなんだけど……チーズと判別するには決定的な何かが足りないような気がしました。おそらくコクなのかな……。
のど越しというか、食べている最中に吸い込んで入ってくる空気が、チーズじゃない感じです。でも、脳はだませているというか混乱しているので。ダイエット中とか「どうしてもチーズたっぷり食べたいけど、罪悪感がある!」な時にもよいですね。
【朝食で摂取したたんぱく質】
「豆乳グルト」:120g当たりのたんぱく質 4.2g
アプリコット:10g当たりのたんぱく質 0.1 g
「プロテインブロート」:100g当たりのたんぱく質20.1g
卵:1個当たりのたんぱく質6.2g
「BEYOND TOFU」:50g当たりのたんぱく質:1.1g
――
合計31.7g
【昼】
豆製ヌードルでビビン麺
在宅勤務時の昼食は麺という人、多いのではないでしょうか。お腹にも溜まるし、おいしいし、手軽。だけど、眠くなっちゃうとか、グルテンフリー(健康や美容のために小麦を避ける)にしたほうがいいのかなとか、そういうことも頭をよぎる人も少なくないでしょう。
そんな時によさそうなのが、ZENBの「黄えんどう豆100%でできた麺」。麺って小麦からじゃなくても作れるんだ……!
パッケージはスタイリッシュ!
「ゼンブヌードル」を使ったおすすめレシピは、公式サイトでたくさん紹介されていたんですが、その中でいちばんおいしかったのは「ビビン麺」!
茹でた「ゼンブヌードル」と、きゅうり・キムチ・ごま油・めんつゆ・酢・砂糖を和え、ごまと卵黄をのせるだけ!
一般的なパスタと比べると、少しコリコリとした食感で、モチモチさはないですが、若干香ばしく、冷麺に少し近い味! もっちり食感を味わう系のソースとかよりは、こういう野菜と一緒に食べるほうが合いますし、お昼ごはんとしても満足度が高かったです。
【昼食で摂取したたんぱく質】
「ゼンブヌードル」:80g当たりのたんぱく質13.0g
ちなみに、この豆ヌードルを開発したZENB JAPANの調査によると、「白米・うどん・パンなどの食品よりも血糖値を上げにくい豆食品を昼食に摂取することで、午後のパフォーマンスが上がる」という結果があるのだそう。
「代替品で我慢している」感がないのがよいです
「白米・うどん・パン」を食べた週と「豆類で作った麺」を摂取した週では、脳波の「集中度」が上がっていたり、タイピングの正確性がアップしていたり、さらに仕事の効率やモチベーションアップを実感した人が多かったといいます。
その理由として、豆類で作った食品は、「低GI食品」(=食後の平均血糖値が上がりにくい)であることが要因だと言われています。そんなうれしい効果もあるのなら、たんぱく質の摂取とパフォーマンスアップのために、いつもの麺を変えてみようかな〜と思いますよね。
【おやつ】
大豆スナック菓子
キレイゴトを言えば、「おやつは食べない」のが健康とかダイエットにはいいんでしょうが、おやつ……食べたいですよね。おやつもたんぱく質意識系のものが登場している……ということに気付いてしまいました。
商品名は、まさにストレートに「だいずのスナック」。チーズ味もラインアップされます
「ベビースターラーメン」でおなじみのおやつカンパニーが発売している、その名も「だいずスナック」です。
ベビースター的要素もあっておいしそう!
割としっかりとした歯応えで、塩味は一般的なスナック菓子よりも若干薄め。海苔味も薄めですが、歯応えがあるので「お菓子を食べた感」は感じられます。おやつ食べたい!でも罪悪感がある……そんな時に気兼ねなく「いや、たんぱく質摂取が目的だし」と食べられると思いました。
【夜】
“豆関連食材”のオールスターで作るグラタン
夕食にはグラタンをチョイス! グラタンと言えば、何だかガッツリメニューですが、可能な限り、たんぱく質摂取を意識した食材を使ってみようと思います。
まずは、グラタンには欠かせないマカロニですが、ZENB「マメロニ」を使用しました。
豆のマカロニだから「マメロニ」。名前がめちゃかわいいです
この商品は、昼食の「ゼンブヌードル」と同じシリーズで、同じく黄えんどう豆で作られたマカロニです。使い方は、一般的なマカロニと同じく、沸騰したお湯で8〜10分ほど茹でて使用します。茹でた後にそのまま食べてみると、食感はほぼマカロニなのですが、独特の豆っぽさは若干感じられました。とはいえ、そこまで気にならないレベルです。
続いては、牛乳の代わりに使用するミルク、スウェーデンのスプラウド「植物性ミルク」。黄えんどう豆でできたミルクです。そのまま飲んでみると、あっさりしていて豆乳のような口当たりで、コーヒーや紅茶に合うと定評があるようです。普通に牛乳感覚で使用できるとはいえ、牛乳よりもお値段はかなり高いかも……。
めちゃオシャレなパッケージです
飲んだ感じは豆乳に近い!
そして、朝食時にも登場したチーズ代替品を使用。
見た目は完全にとろけるチーズですが……
「BEYOND TOFU」は、パンの上にのせてレンジで加熱した際にはいい感じにチーズ感が出ましたが、グラタンに使用するとどうなるのでしょうか。
最後に、バターの代わりに使用する大豆&こんにゃく製のマヨネーズ、蒟蒻屋本舗「マヨール ゼロプラス」。大豆とこんにゃくから作られたマヨネーズで、卵は不使用! 卵アレルギーの人にもよいですね。コレステロールゼロで、マヨネーズと比べてカロリー58%オフとのこと。さらにすごいのが、味は普通に酸味しっかり目のマヨネーズ! 本物と比べてもまったく全く遜色がありません。
大豆とこんにゃくからマヨネーズって作れるの!?
見た目も味も完全にマヨネーズ!
グラタンが完成!何も言われなければ、いつものグラタンに見えるはず!
あとは、タマネギや鶏もも肉を使ってグラタンをいつもどおり作りました。見た目は普通のグラタンですね。
とろ〜り感もちゃんとありますが……
しかし、やはり乳製品を使用していないこと、豆関連食材は味があっさりしている傾向にあるため、いつもよりしっかりめに塩コショウで味をつけたほうがよいかもしれません。割と薄味にしがち(そして上にかける溶けるチーズで調整しがち)な筆者の場合、豆腐製のチーズがそこまでチーズ臭くないため、かなりあっさり味になってしまいました。しかし、食べた感じは完全にグラタン。味さえ好みの濃さに調整できれば、満足感はあると思います!
【夕食で摂取したたんぱく質】
「マメロニ」:25g当たりのたんぱく質4.55g
「スプラウド」:200ml当たりのたんぱく質3.2g
「BEYOND TOFU」:50g当たりのたんぱく質1.1g
「マヨール ゼロプラス」:5g当たりのたんぱく質 0.1g
鶏もも肉:50g当たりのたんぱく質 8.3g
――
合計17.25g
以上、たんぱく質摂取を意識した食事を1日分摂ってみた結果……、総たんぱく質摂取量は69.15g!
成人男性の1日の摂取目標量をしっかりと超えることができました。時にはプロテインでも調整しつつ、だけど普段とできるだけ変わらないメニューでも、豆関連食材を上手に使えば満足度を落とすことなく、手軽にたんぱく質を摂取できそうです。
すべての食材を一気に豆製品に置換するのは、価格的に、調理的に難しいケースもあるかもしれませんが、たとえば夜だけは豆製品にしてみるとか、少しずつ無理のない範囲で取り入れていきたいと思いました。
恋愛・就職・食レポ記事を数多く執筆し、社長インタビューから芸能取材までジャンル問わず興味の赴くままに執筆するフリーランスライター。Twitter:@KA_HO_MA