今、完全栄養食が、ますます盛り上がりを見せています。そのなかでも注目は、日清食品のあの大型ブランドから発売された新作「完全メシ」シリーズです。2022年5月30日に公式オンラインストア、および「セブン-イレブン」でも販売を開始しました。
日清食品の完全栄養食は、以前「『完全栄養食パスタ』とは!? 2大ブランドをフードアナリストが食べ比べ」でも紹介しましたが、今回はパスタではなく、カレー、油そば、スムージー、グラノーラと、新ジャンルをバラエティー豊かに取り揃えています。
なかでも、カレーは「カレーメシ」、油そばは「ラ王」と、それぞれの同社の名門ブランドを冠しており、さらにコンビニ最大手の「セブン-イレブン」の流通網にのせるとは、日清食品の自信と気合いを感じます。
左が「完全メシ カレーメシ 欧風カレー」で、右が「完全メシ 豚辛ラ王 油そば」
ウリは“栄養とおいしさの完全バランス!”とのことですが、本当にちゃんとおいしいのでしょうか? そこで、「完全メシ カレーメシ 欧風カレー」は既存の「日清カレーメシ ビーフ」と、そして「完全メシ 豚辛ラ王 油そば」は「日清ラ王 汁なし担々麺」と食べ比べ! スペックや味の違いを深掘り調査しました。
「カレーメシ」と「ラ王」、それぞれを食べ比べます
食べ比べに入る前に、まずは完全栄養食について解説します。完全栄養食には明確な定義こそないものの、厚生労働省が提示した「日本人の食事摂取基準」をもとに、“1日に必要な栄養素の1/3を含む食品”を示すのが一般的。日々の食事に取り入れることで、バランスが崩れがちな栄養素を上手に摂取できるのが魅力です。
このカテゴリーのパイオニアがベースフード社。同社のパン「ベースブレッド」は、今や大手コンビニやドラッグストアの棚に通年陳列されるほど定着しています。
写真は「ファミリーマート」にて。店によっては「ベースフード」のコーナーが設けられています
今回の「完全メシ」も、「日本人の食事摂取基準」で設定された33種類の栄養素を摂取できる設計。三大栄養素である炭水化物、たんぱく質、脂質の比率を理想値にしたうえで、食物繊維、ビタミン、ミネラル、必須脂肪酸もバランスよく配合されています。
33種類の栄養素は、たとえば「ビタミン」と名が付く要素だけでも、ビタミンA、D、E、K、B1、B2、B6、B12、Cと豊富。ほかにもナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、鉄、亜鉛なども、しっかりと摂取できるのです。
では、いよいよ食べ比べを始めます。まずは「カレーメシ」のスペックから比較していきましょう。「カレーメシ」は、日清食品が大事に育ててきた即席ライスブランドで、ビーフ、キーマ、シーフードなど、数種のラインアップが存在。完全メシの商品名は「完全メシ カレーメシ 欧風カレー」なので、味が最も近そうなのが、定番の「日清カレーメシ ビーフ」だと思います。
左が「日清カレーメシ ビーフ」で、右が「完全メシ カレーメシ 欧風カレー」。パッケージは酷似していて、「たまねぎの旨みと甘みドドドーン」の文字も同じです
こうして見比べると、パッケージは色やデザインからして非常に似ています。では、スペックはいかに。ビタミンなどの詳しい栄養成分の量はパッケージには載っていないうえ(公式サイトにはグラフなどで記載あり)、「日清カレーメシ ビーフ」のほうは詳しい栄養成分の情報がないため比較にならないので、わかりやすいカロリーなどをお伝えします。
「日清カレーメシ ビーフ」は107g入りで465kcal、炭水化物が74.1g、たんぱく質が7.2g、脂質が15.5g。辛さレベルは中辛です
なお、日清食品ならではのユニークさを垣間見れるのが、「たまねぎの旨みと甘みドドドーン」の下に書かれた一文。「日清カレーメシ ビーフ」には「※カップヌードルよりウマい!(自称)」と書かれていますが、「完全メシ カレーメシ 欧風カレー」のほうには、「※普通のカレーメシよりむしろウマい!(自称)」の記載が。これはますます期待できます。
「完全メシ カレーメシ 欧風カレー」は119g入りで471kcal、炭水化物が74.4g、たんぱく質が20.9g、脂質が12.4g。辛さレベルは「日清カレーメシ ビーフ」と同じく中辛です
このスペック比較からわかるのが、完全メシはカロリーや炭水化物こそほぼ変わらないものの、たんぱく質がより豊富で脂質はやや低いこと。カロリーが低いわけではないのでダイエット向きとまでは言えませんが、これはうれしいポイントです。
次はフタを開けて中身をチェック。ちなみに「完全メシ カレーメシ 欧風カレー」の上部プラ部分には、2種の袋が入っていました。
「日清カレーメシ ビーフ」はカップの中に固形ルーが入っています。「完全メシ カレーメシ 欧風カレー」にはルーが入っておらず、その分を2種の袋で調味するのでしょう
具材はともに、味付けミンチとフライドポテト、にんじんが入っていますが、肉は種類が異なります。「日清カレーメシ ビーフ」は牛で、「完全メシ カレーメシ 欧風カレー」は豚。なるほど、完全メシのほうは“欧風ポークカレー”ということですか。
ではいよいよ、両方に熱湯を入れて調理へ。ともに待ち時間は5分で、開封すると泡だったビジュアルに。これをスプーンでよくかき混ぜると完成です。
湯戻し5分でご覧のとおりに。これをスプーンでよく混ぜると、カレー色に変わっていくのです
「完全メシ カレーメシ 欧風カレー」の2種の袋は、それぞれ「完全謎パウダー」と「仕上げオイル」。前者には「信じて混ぜろ! 完全謎パウダー きっとカレーになる」との文字……。ここからも、カップヌードルのDNAというか、日清食品のすてきなバカッぽさが感じられます。
「完全謎パウダー」は非常にきめ細かな、カレー風味の茶色い粉。「仕上げオイル」は透明で、やや甘い香りがします
では、いよいよ試食。「日清カレーメシ ビーフ」はねっとりとしたテクスチャーが強く、コクも豊か。たまねぎの甘みやトマトの酸味もそこそこあって、洋食のビーフカレー的なデミグラス感がある、深い味わいです。
どっしりとしたうまみはビーフ由来によるものでしょう。ホロッとしたライスのタッチもよく、ヤミツキ感があります
いっぽうの「完全メシ カレーメシ 欧風カレー」は、比較的サラッとしたテクスチャーとライスの粒立ちが、「日清カレーメシ ビーフ」と異なるポイント。お湯をやや少なめにすると、「日清カレーメシ ビーフ」のようにとろみが強くなると思います。基本的な味構成は似ていますが、コンソメ的なダシやカラメル的な甘みがあり、少々余韻が短いところも異なります。ケミカルな違和感はなく、完成度はかなり高いと感じました。
「完全メシ カレーメシ 欧風カレー」のほうは肉に豚を採用していますが、違和感はありません
全体的な濃厚さや味の深みで言えば、やはり「日清カレーメシ ビーフ」に軍配が上がるものの、「完全メシ カレーメシ 欧風カレー」も十分なおいしさ。「普通のカレーメシよりむしろウマい!」は言い過ぎだと思いますが、サラッとしたテクスチャーが好きな人は「完全メシ カレーメシ 欧風カレー」のほうが好みの味かもしれません。
価格は「完全メシ カレーメシ 欧風カレー」のほうが高いですが、栄養バランスを求める人はぜひこちらを!
「ラ王」のまぜそばジャンルに関して、約1年前は、「完全メシ 豚辛ラ王 油そば」に近しい系統の「日清 汁なし豚ラ王」が発売されていたのですが、現在は販売されていません。そこで、「完全メシ 豚辛ラ王 油そば」に対しては、現在発売中のまぜそば「日清ラ王 汁なし担々麺」をセレクト。単純な味わいの比較はできませんが、麺の違いなどにフォーカスしていきましょう。まずは、パッケージやスペックからチェック。
「日清ラ王 汁なし担々麺」は121g(麺80g)入りで501kcal、炭水化物が71.3g、たんぱく質が9.4g、脂質が19.8g。辛さレベルは3、シビレレベルは4とのことです
なお、以前販売されていた「日清 汁なし豚ラ王」は「ヤサイ、アブラ、ニンニク」がウリの“ラーメン二郎風”な方向性でしたが、「完全メシ 豚辛ラ王 油そば」には「ヤサイ、アブラ、ニンニク」の文字が書かれていません。さらには、黄色×黒を前面に打ち出していないなど、パッケージの世界観からしてラーメン二郎系とは異なるようです。
「完全メシ 豚辛ラ王 油そば」は121g(麺90g)入りで466kcal、炭水化物が70.8g、たんぱく質が20.2g、脂質が13.2g。辛さレベルは2
「完全メシ」のほうが高たんぱくかつ脂質が低いというのは、「カレーメシ」と同様。そして開封して中身をチェックすると、「日清ラ王 汁なし担々麺」には2つ、「完全メシ 豚辛ラ王 油そば」には4つの小袋が入っていました。
「日清ラ王 汁なし担々麺」は、かやくと液体たれのみ。「完全メシ 豚辛ラ王 油そば」には、かやく、粉末調味料、液体たれ、仕上げオイルの4つが同梱されています
「日清 汁なし豚ラ王」も小袋は4つでしたが、かやく、焼豚、液体たれ、アブラ増し袋だったので、今作とは構成が少々異なりますね。完全栄養食ながら、「完全メシ 豚辛ラ王 油そば」は、粉末調味料と液体たれの2つで味付けするとは、なかなかのこだわりよう。
麺とかやくはそれぞれこのような感じ。「日清ラ王 汁なし担々麺」のかやくはチンゲン菜と味付け肉そぼろ、「完全メシ 豚辛ラ王 油そば」はキャベツと味付け豚肉です
そして、麺に関してはタッチこそ似ているものの、色が若干異なります。これは、「日清ラ王 汁なし担々麺」には「花椒(ホアジャオ)練り込み麺」を採用しているからかも。調理時間はともに、5分のノンフライ麺です。
熱湯で戻し、それぞれのかやくや調味料などをかけました。見た目や香りからして、方向性はかなり異なります
ここで肝心なのが、プレーンな状態での麺の味の違い。そこで、たれなどを混ぜる前に麺を別皿に移し、それぞれ麺だけで食べ比べてみました。すると、練り込まれた素材の味だけでなく、食感にも大きな違いがあることがわかりました。
左が「日清ラ王 汁なし担々麺」で、右が「完全メシ 豚辛ラ王 油そば」。左のほうが透明感があり、これは加水率の違いによるものと言えるでしょう
麺の違いをストレートに表現するなら、「日清ラ王 汁なし担々麺」はモチモチ・ピロピロで、「完全メシ 豚辛ラ王 油そば」はパツパツ・モソモソ。太さはどちらもほぼ同じの、中太平打ち麺です。なお、「日清ラ王 汁なし担々麺」に練り込まれた花椒はほんのり風味で感じるレベルで、個性的ではあるもののシビレはそんなに感じられません。
そして、まぜまぜ完了。じっくり食べ比べます
「日清ラ王 汁なし担々麺」は、ゴマ由来の芝麻醤(チーマージャン)がしっかりきいており、コクと甘みがしっかり。酸味も若干あって、タレにはシビレも感じられる本格四川系です。弾力豊かなもっちり麺がタレによくからみ、甘みのある肉そぼろやビターさを感じるチンゲン菜も好アクセント。さすが日清食品、人気店やトレンドをよくとらえて作っています。
ビヨーンとよく伸びそうな麺。なかなかオイリーですが、麺とタレの完成度や一体感も秀逸です
そして肝心の「完全メシ 豚辛ラ王 油そば」。混ぜる前の麺の味は素朴なプレーンテイストでしたが、タレが加わるとガラッと変化。特に“くさウマ豚骨”を連想させるようなパワーが印象的で、そこに魚粉の香りが加わることで若干中和しています。
香りが印象的。“くさウマ”なジャンク感が、あふれんばかりに炸裂しています
辛さレベルは2とのことですが、ピリッとした刺激があって、ジャンク感は高め。ただ、「日清ラ王 汁なし担々麺」よりオイルが少なめかつ、パツッとした麺の関係で、こってりヘビーという感じではないですね。インパクトはありながらも、栄養価とのバランスを調整しながら、うまくまとめたという印象です。
微かな記憶ですが、以前食べてレポートした、日清の「All-in PASTA」(2019年に登場して終売した完全栄養食)よりも麺のタッチやすすり具合に違和感がなく、タレとの調和も見事。研究の成果がしっかり発揮されている印象です。
左側が「日清ラ王 汁なし担々麺」で、右側が「完全メシ 豚辛ラ王 油そば」。上は調味料を混ぜる前、下は混ぜたあとです。完全メシのほうも、しっかりおいしいクオリティです
「完全メシ」のウリのひとつが、「栄養バランスを考えるのがめんどくさい人に!」。完全栄養食はダイエットではなく、食事に手軽さと栄養価の両方を求める人向けだと思うので、その点ではかなり優秀だと思います。
「カレーメシ」は本家と大差ない完成度で、「ラ王」は過去の「All-in PASTA」を凌駕したと思える出来栄え。「食事はレトルトカレーやカップ麺で済ませたいけど、健康面で罪悪感が……」というジレンマを抱えている人には特におすすめです。
日清食品は完全栄養食に全社をあげて注力しているので、ほかのフレーバーの登場も気になるところ
なお「完全メシ」には、今回の「カレーメシ」と「ラ王」のほか、「グリーンスムージー」「バナナスムージー」「大豆グラノーラ」もラインアップされているので、ぜひあわせてお試しを!
食の分野に詳しいライター兼フードアナリスト。雑誌とWebメディアを中心に編集と撮影をともなう取材執筆を行うほか、TVや大手企業サイトのコメンテーターなど幅広く活動中。