日本で最も有名なポップコーンブランドと言えば、「マイクポップコーン」ではないでしょうか。
これについては歴史や実績が物語っており、1957年に日本で初めてのポップコーン企業としてマイクポップコーン有限会社(現在のジャパンフリトレー株式会社)が設立され、同年には「マイクポップコーン」ブランドから日本初となる袋入りポップコーンが発売されました。もちろん、同ブランドは現在、ポップコーン市場売上No.1ブランド(※)で、1983年にデビューしたロングセラー商品「マイクポップコーン バターしょうゆ味」は、もはや国民的ポップコーンと言っても過言ではありません。
そんな王者に挑戦状を叩きつけた新商品が、2022年8月29日に同ブランドから発売された「マイクポップコーン オリジナル 極みだし味」です。同社によると、ブランド誕生65周年の集大成として、構想3年を経て「バターしょうゆ味」超えに挑んで開発した商品だとか。
新作の「マイクポップコーン オリジナル 極みだし味」(左)と、定番の「マイクポップコーン バターしょうゆ味」(右)を食べ比べます
ほほー。面白いじゃないですか。ということで、今回はこの2商品を食べ比べ、新作の完成度を確かめたいと思います。
※:「スナック カテゴリー ポップコーン市場」販売金額(累計)/インテージ SRI(2001 年 4 月〜2020 年 3 月)
「マイクポップコーン オリジナル 極みだし味」は、ブランド誕生65周年の集大成と銘打つだけあって、これまでの新作とは熱の入りようが違います。着目したのは、日本市場でポップコーンが広まる鍵となった、和のフレーバー。
「マイクポップコーン オリジナル 極みだし味」。1袋50g当たり、246kcalで糖質は25.1g。食物繊維は5.0gで、これはレタス約2個分に相当するそうです
そこでヒントになったのが、醤油が使われる以前より親しまれていた「煎り酒」です。「煎り酒」とは、梅干しと鰹節を日本酒で煮詰めた日本古来の調味料ですが、これをキーエッセンスに、日本人好みの塩味と旨味の絶妙な黄金比が研究され、生み出されました。
袋の裏面には、おいしさのヒミツ「味の三段活用」が、グラフで解説されています
なお、開発にはカルビー「かっぱえびせん」などを手がけ、日本で和フレーバーを広めた先駆者とも呼ばれる伊藤政喜氏(カルビー株式会社 CTO 兼ジャパンフリトレー株式会社マーケティング本部 開発部)も参加したそうで、より本気さが伝わってきます。
前置きはこの辺にして、さっそく食べてみました。
香りは「バターしょうゆ味」ほど強くなく、とうもろこし本来の香ばしさがじんわりと。ポップコーンの形状は、既存品と同じくバタフライ型とマッシュルーム型の2種類が入っています
印象的なのは、ジワジワと広がっていく旨味。ファーストタッチの味のボリュームは抑え気味で、噛むごとにレンジが大きくなるイメージです。そのなかには、ところどころで顔を出すシャープな塩味、さらにはやわらかな甘みも感じられます。全体的に、技ありで奥深いフレーバーに仕上がっています。
イメージは、塩昆布のように旨味が加わった塩味。“大人のゆとり”を感じさせる上品なおいしさです
強い主張はないものの、つい手が伸びてしまう不思議な魅力を持った味。たとえるなら、毎日でも飽きない味噌汁(味噌の味はしませんが)のような立ち位置と言えるでしょう。もしおつまみにするなら、日本酒や焼酎、レモンサワーがおすすめ。ワインなら、やはり白ですね。
次は、ブランドの大黒柱「マイクポップコーン バターしょうゆ味」。
パフッと軽い食感のポップコーンに、北海道産バターと醤油による風味豊かな味わいが楽しめます。
「マイクポップコーン バターしょうゆ味」。1袋50g当たり244kcalで糖質は26.1g、食物繊維は4.8gと、「極みだし味」とのスペックに若干の違いが見られます
香りのインパクトは、やはりこちらのほうが強め。バター特有のリッチな風味がプンプン漂ってきます。そして同時に、「これだよ、これ!」的な安心感も。幼少期から刷り込まれた、味の記憶がそう思わせるのでしょう。
ボリューミーな香りが印象的。色は、こちらのほうが少しだけ濃いめです
そして、味わいもやはり安定感が抜群。バターのミルキーなマイルド感に醤油のコクが合わさり、甘みをはらんだ旨味が口の中に広がります。そこに、メイラード反応(加熱で生まれる香ばしさや褐色化などのこと)的なロースト香も。なんだかんだ、ジャパニーズポップコーンと言えばコレですね。
おつまみには、ビールやハイボールがマッチ。ワインなら赤です
「マイクポップコーン オリジナル 極みだし味」の滋味深い大人なテイストもいいのですが、「マイクポップコーン バターしょうゆ味」のストレートでわかりやすいおいしさもナイス。食べ手の嗜好や食べるときの気分、シチュエーションなどで好みが分かれると感じました。
混ぜて食べてみると、味の統一感がなくなり、バランスが悪くなりますが、これはこれでアリかも
定番の「マイクポップコーン バターしょうゆ味」は2023年でデビュー40周年を迎えるロングセラーですから、そのおいしさを超えるのはかなり難しいでしょう。そして超えたかどうかは消費者が決めることになると思いますが、「マイクポップコーン オリジナル 極みだし味」もかなり研究し尽くされているだけあって、説得力のある名作だと思います。
ぜひ、実際に食べ比べてジャッジしてみてください
カルビーの「ポテトチップス」には、比較的近年人気が高まって定番化した「しあわせバタ〜」というフレーバーがありますが、ポップコーンでも同様に「だし味」というジャンルが確立されていくのでしょうか。要注目です!
食の分野に詳しいライター兼フードアナリスト。雑誌とWebメディアを中心に編集と撮影をともなう取材執筆を行うほか、TVや大手企業サイトのコメンテーターなど幅広く活動中。