2023年4月10日、大ヒット作「檸檬堂」を手掛けた日本コカ・コーラが、ウイスキーとコーラの缶カクテル「ジャックダニエル&コカ・コーラ」を発売します。本製品は2022年からメキシコでも発売されていましたが、中身は日本向けにローカライズされているとか。その詳細に迫るとともに、試飲レビューで特徴を明らかにします。
左が「ジャックダニエル&コカ・コーラ」。アメリカンウイスキーの至宝「ジャックダニエル」と、おなじみ「コカ・コーラ」による缶のカクテルです。今回は、本家同士を割ったものと飲み比べました
同社の新製品発表会では、それぞれ日本法人の代表が登壇してプレゼン。彼らの話によると、実は世界では、「ジャックダニエル」の約40%が「コカ・コーラ」を含むコーラ飲料割りで飲まれており、特に「ジャックダニエル」と「コカ・コーラ」のカクテルは「ジャックコーク」という愛称で親しまれているのだとか。
発表会のプレゼン資料より
この数値には納得です。というのも、そもそもアメリカンウイスキーは近年、カクテルのベースとして高い人気を誇るから。世界のバーにおける人気カクテルランキング「The World’s Bestselling Classics」では、「オールド・ファッションド」というアメリカンウイスキーベースのカクテルが近年7年連続1位を獲得しました(2022年は「ネグローニ」に首位を明け渡したものの、2位にランクイン)。
また、「ジャックコーク」というカクテル名は聞き慣れていなくとも、「ウイスキーコーク」という言葉は聞いたことがあるという人はいるでしょう。たとえば、矢沢永吉の名曲「ウイスキー・コーク」や、浅井健一の「RUSH」やceroの「ベッテン・フォールズ」など、歌詞に「ウイスキーコーク」が登場する楽曲は数多くあげられます。音楽を通じて、日本人に名が知れ渡っているカクテルでもあるのです。
「ジャックダニエル」と「コカ・コーラ」は、ともに100年を超える世界的ブランド。ちなみに、「ジャックダニエル」のほうが“20歳年上”です
なお、「コーク」というのは「コカ・コーラ」の愛称であって、「ペプシ」の呼称としては使われません。加えて、「コカ・コーラ」はアメリカ生まれのドリンクなので、混ぜ合わせるウイスキーも同国のアメリカンが合うというのが定説。味わいとしても、アメリカンウイスキーの特徴と言えば、新樽で熟成させたバニラやキャラメル的なフレーバーなので、甘やかな風味のコーラにぴったりなのです。
ウンチクをもうひとつ。「ジャックダニエル」はバーボンの条件をすべて満たしていますが、さらに製法や産地に対する基準を満たした、バーボンとは別格の「テネシーウイスキー」を名乗っています
※一部文言を修正しました(2023年4月17日)先述の発表会では、新製品「ジャックダニエル&コカ・コーラ」のいくつかの特徴を教えてもらいました。ひとつは、「ジャックダニエル」と「コカ・コーラ」ともに、定番フレーバーを使ってブレンドしているということ。「ジャックダニエル」ブランドには「ジェントルマンジャック」などもラインアップされていますが、「ジャックダニエル&コカ・コーラ」には大定番「OLD No.7」を使用。また、「コカ・コーラ」も「ゼロ」などではない定番の「コカ・コーラ」が使われています。
「本製品を『檸檬堂』に続く2本目の柱にしたい」と意気込む、日本コカ・コーラのホルヘ・ガルドゥニョ代表取締役社長(左)。右は、「ジャックダニエル」を日本で展開するブラウンフォーマンジャパンのアーロン・マーティン代表取締役ゼネラルマネージャー
そして、冒頭でも日本向け仕様について触れましたが、もうひとつの特徴はアルコール度数。聞けば、先行発売されているメキシコでは5%に設定しているところ、日本や北米ではもう少し高いほうが受け入れやすいだろうという判断で、7%にしたそうです。
「ジャックダニエル&コカ・コーラ」のプレスリリースを読むと、“カンペキな味わい”とのうたい文句があり、メーカーとしての自信がうかがえます。その真偽を確かめるべく、じっくりチェックすることに。まずは原材料を見比べたところ、1点気になる違いを発見しました。それは、カフェインの有無です。
パッケージの表記をじっくり見てみると、右の「コカ・コーラ」には書かれているカフェインの文字が、「ジャックダニエル&コカ・コーラ」には見当たりません
「ジャックダニエル&コカ・コーラ」がノンカフェインであることは、発表会でも言及されていました。その理由までは聞けなかったのですが、一般的にカフェインには苦味があると言われます。であれば味に違いが出るのでは? とも思うのですが、何はともあれ飲んでみました。
「ジャックダニエル&コカ・コーラ」。氷を入れればより泡立ちますが、そうすると味が薄まり素の味がチェックできないので、試飲はそのままで実施しました
おお〜! 「ジャックダニエル」はウッディーなコクと、クリーミーなニュアンスを演出。「コカ・コーラ」は甘酸っぱくスパイシーな風味を、パワフルな刺激とともに主張。お互いの個性を醸し出しながらケンカしないようにブレンドされていて、どちらの魅力もしっかりと感じます。
やっぱり「コカ・コーラ」の「No Reason」「さわやかになる、ひととき。」は健在!
ただ、グラスに移したからなのか、炭酸のパンチはもっとバッキバキにキマッていたほうが「コカ・コーラ」としてのカクテルらしさはより出るかもと思いました。
次は普通に「ジャックダニエル」を「コカ・コーラ」で割った「ジャックコーク」と、「ジャックダニエル&コカ・コーラ」を飲み比べます。
「ジャックダニエル」はアルコール度数40%なので、「コカ・コーラ」を5〜6倍の量で割り、約7%の濃さにしてテイスティング
あ、確かにいるいる。慣れ親しんだ「コカ・コーラ」の中に、「ジャックダニエル」が! カフェインの有無で違いが出るかと思いましたが、違和感はなく「ジャックダニエル&コカ・コーラ」と同じ味がしました。
炭酸もアタックに違いはなく、独特のクリーミーな甘酸っぱい爽やかさも健在。刺激が「コカ・コーラ」をそのまま飲んだときほどバキシュワッとしていないところもそっくりで、本家同士をしっかりと混ぜ合わせていることがわかりました。
昨今人気の柑橘系チューハイと比べると甘さが強めに感じますが、コーラカクテルならばアリでしょう
「ジャックダニエル&コカ・コーラ」が“カンペキな味わい”かどうかは人によると思いますが、強烈なインパクトのあるこの味を出せるのは、ドリンク界の二大スターがコラボしたから。とにかく強力なタッグです。
発表会時に試飲したものも炭酸がきいていましたが、それでも本家「コカ・コーラ」ほどではありませんでした。ただ、「ジョジョの奇妙な冒険」で登場する名言「コーラを飲んだらゲップが出るっていうくらい確実じゃッ!」のとおり、ゲップはしっかりと出ます
前述したように甘さが強めなので、この点で好みは分かれるかもしれません。食事との相性もメニューを選ぶと思いますが、ハンバーガーやピザのようなパンチのあるファストフードや、BBQソースやケチャップなどの酸味ある甘じょっぱい味の料理とはよく合うでしょう。「コカ・コーラ」好き、そしてウイスキーファンはぜひお試しを!
食の分野に詳しいライター兼フードアナリスト。雑誌とWebメディアを中心に編集と撮影をともなう取材執筆を行うほか、TVや大手企業サイトのコメンテーターなど幅広く活動中。