ついに、真打ち登場です。
今回紹介するのは、2023年8月8日に発売される「サントリープレミアムハイボール〈山崎〉350ml缶」。同年6月6日に発売され、大きな話題とともに完売した「サントリープレミアムハイボール〈白州〉350ml缶」に次ぐ、蒸溜所のアニバーサリー企画第2弾です。
第1弾の白州蒸溜所は竣工50周年、そして第2弾の山崎蒸溜所は建設着手100周年を記念した製品。ちなみに、山崎蒸溜所は日本初のモルトウイスキー蒸溜所。つまり、今や世界に名だたるジャパニーズウイスキーの生誕100周年をも意味するため、「サントリープレミアムハイボール〈山崎〉350ml缶」は“真打ち”なのです。
1923年に建設が始まった山崎蒸溜所で生み出され、1929年に発売された初の本格国産ウイスキーが「サントリーウイスキー白札」。写真は、山崎蒸溜所と同じ敷地にある「山崎ウイスキー館」の展示ブース
「サントリープレミアムハイボール〈白州〉350ml缶」の発売時にも、その基本モルトに当たる「サントリーシングルモルトウイスキー 白州」で作ったお手製ハイボールとの飲み比べを行いましたが、今回も同様にレビューしていきます。
左が「サントリープレミアムハイボール〈山崎〉350ml缶」。右の「サントリーシングルモルトウイスキー 山崎」(容量は180mLサイズのボトル)を使った自家製ハイボールとの違いを確かめます
まずは「サントリープレミアムハイボール〈山崎〉350ml缶」の特徴からチェック。
前回もそうでしたが、ただ定番品のモルトをハイボールにしているわけではありません。「サントリープレミアムハイボール〈白州〉350ml缶」では「香るスモーキー」と銘打つほどスモーキーフレーバーを利かせていましたが、今回はミズナラ樽の香りを前面に出したヴァッティング(モルトウイスキー同士を混ぜ合わせること)を採用しており、パッケージにも「ミズナラの深い余韻」と銘打たれています。
「サントリープレミアムハイボール〈山崎〉350ml缶」のパッケージ表裏
このミズナラは、別名「ジャパニーズオーク」。ウイスキーの樽には基本的にオークという木材が用いられるのですが、産地によって個性が異なり、たとえばバーボンにはアメリカンオーク(別名ホワイトオークとも)の新樽が使われるほか、スコッチウイスキーの多くはバーボン樽(バーボンの熟成に使った樽を再利用)で熟成されます。
山崎蒸溜所を取材した際の写真。左から3番目がミズナラ樽です
ミズナラ樽で熟成されたモルトは、白檀(ビャクダン)や伽羅(キャラ)といった香木をイメージさせる、オリエンタルなアロマが特徴。同時に、この個性が独特の甘やかさや厚みのあるテクスチャーをまとわせています。また、この樽は希少性が高いこともあって、世界中で人気です。
山崎蒸溜所のミズナラ樽原酒がこちら。ミズナラはその名のとおり、水を多く含むため、原酒が漏れやすい材質。繊細であるため扱いが難しく、その希少性も人気の要因です
なお、山崎蒸溜所ではミズナラ樽ばかりで熟成しているわけではありませんが、結びつきは非常に強い蒸溜所です。それは100年の長い歴史にも関係しており、時は約80年前の太平洋戦争。戦中から戦後にかけては、海外製の樽の輸入が困難になりました。そこで、国内のさまざまなオーク材から貯蔵に適したものを探し求め、そのなかから選ばれたのが北海道を主産地とするミズナラだったのです。
「山崎ウイスキー館」にて。シングルモルトウイスキーの山崎ブランドでは、過去にミズナラ樽に特化した限定ボトルも発売しています
こうした長年の研究開発により、ミズナラ樽熟成に関するトップレベルの知見を持っているのが山崎蒸溜所。その点を踏まえると、今回の「サントリープレミアムハイボール〈山崎〉350ml缶」にミズナラ樽熟成モルトを使うことは実に納得できる点と言えるでしょう。
前回の白州同様、原材料はモルト(モルト原酒)と炭酸のみ。また、アルコール度数も同様に9%です
ということで、実際に飲み比べていきます。
「サントリープレミアムハイボール〈山崎〉350ml缶」をそのままグラスへ。比べる対象は、「サントリーシングルモルトウイスキー 山崎」をハイボール缶とほぼ同じアルコール度数9%になるよう、モルト1:炭酸水4の比率で割ったハイボールです。
炭酸水は、古くから名水の里として知られる大阪府・山崎の天然水で作られた「ザ・プレミアムソーダFROM YAMAZAKI」(右端)を使用
グラスに注ぎ、並べて色を観察すると、「サントリープレミアムハイボール〈山崎〉350ml缶」のほうが若干淡い印象。味や香りのキャラクターはどれだけの違いがあるのか、気になるところです。
左のほうが、少しだけ淡い色合い。なお、加水による味や色のブレを防ぐため、あえて氷は入れていません
「サントリープレミアムハイボール〈山崎〉350ml缶」からテイスティングしてみると、香りの時点で明らかに“一般的な缶入りハイボール”より高級であることがわかります。そしてこの優美な香りは、缶天面の小さな開け口からでは存分に堪能できません。ぜひグラスに注いで楽しんでほしいです。また今回は、比較のために氷なしで味わいましたが、同製品は氷を入れたグラスに注いで楽しむことを想定した味わい設計なので、飲む際は氷も用意しましょう。
説得力のある奥深いコクと上品なスイートフレーバーは、さすが山崎。1本税込660円(希望小売価格)ですが、個人的には安いぐらいだと思います
香りの特徴は、どこか妖艶なニュアンスすら感じさせる、ウッディーな方向性。コク深くどっしりしたタッチと、まろやかに伸びていくクリーミーな甘みが続き、余韻の長さも印象的。炭酸のキックは強すぎず、この上品な刺激も心地いいです。
飲み口もスムース。ほかのアルコール度数9%のRTD(Ready To Drinkの略で、缶やビンなど開封してすぐ飲めるドリンクのこと)とは一線を画すほど、アルコールの高さを感じません
そして、次は自家製の山崎ハイボールを。なるほど、甘み豊かな香りや重厚なコクは缶同様に感じつつも、オリエンタル感はやや落ち着いた印象。その分、モルトの香ばしさや、完熟リンゴ、ドライレーズンなどを思わせるまろやかな果実味が、エレガントな風味を醸し出しています。
ストレートのモルトを炭酸水で割った際の、香りの開き方もダイナミック。隠れていた香味すら目覚めるような、華やかな広がり方が見事です
「ザ・プレミアムソーダFROM YAMAZAKI」の上品な炭酸感もいいですね。決してバチバチの強炭酸水ではないのですが、この余裕すら感じさせるキックがむしろナイス。「サントリープレミアムハイボール〈山崎〉350ml缶」の炭酸感とも似ていて、心地よく贅沢な飲み口を演出しています。
味わいの高級感はもちろん、こちらも余韻の長さが圧倒的。ぜひお試しを
「サントリープレミアムハイボール〈山崎〉350ml缶」と、「サントリーシングルモルトウイスキー 山崎」による自家製ハイボール。どちらもリッチさを感じさせる味わいながら、香りのキャラクターに違いがあることがわかりました。
なお、白州とのわかりやすい違いをいくつかあげるなら、白州はグリーンな清々しさや爽やかな果実味、かすかなスモーク香が特徴的で、山崎は重厚な甘みやまろやかさ、熟したフルーツのニュアンスが魅力かと思います。
ペアリングは、ストレートやロックならドライフルーツ、チーズ、ビーフジャーキーなどがマッチしますが、ハイボールの場合はちょっと贅沢に、すき焼きやビーフシチュー、ウナギ蒲焼きなどの料理がおすすめ
発売日がお盆前の8月8日ということで、帰省時の両親や旧友との晩酌・パーティーに最適と言える「サントリープレミアムハイボール〈山崎〉350ml缶」。希少性や高級感もあるので、お土産としてももちろん重宝するでしょう。ぜひ今夏は記念の限定品で、ウイスキー好きな人との優雅なひとときを。
食の分野に詳しいライター兼フードアナリスト。雑誌とWebメディアを中心に編集と撮影をともなう取材執筆を行うほか、TVや大手企業サイトのコメンテーターなど幅広く活動中。