レビュー
武士道精神に心が震える

PS4「Ghost of Tsushima」は2020年ベストゲームの筆頭候補! 心を鷲づかみにする面白さとは?

次世代機「PlayStation 5」の発売を年末に控えるPS4ですが、怒濤のAAA級タイトルラッシュが止まりません。2020年6月には数多くのファン待望の「The Last of Us Part II」が発売され、その興奮も冷めやらぬ内に、今度は「Ghost of Tsushima(ゴースト・オブ・ツシマ)」が発売されました。発売当初は、「面白そうだけど、よくあるグラフィックがキレイな和風アクションゲームだろうな」と思っていたのですが、プレイした今はそんな自分を叱りたい気分です。

なぜなら、ゲームを進めれば進めるほど、「マイ・ゲーム・オブ・ザ・イヤー」が決定するほどの衝撃に打ちのめされたからです。今ではゲーマーの友人や同僚に会うたびに「めちゃくちゃ面白いぞ」と、布教活動を行うほどまでに筆者を魅了した「Ghost of Tsushima」の、魅力を解説します。

※本レビューはゲームのネタバレ(序盤)を含みます。ストーリーの核となるネタバレではありませんが、未プレイの人は気をつけてください。

「Ghost of Tsushima」とは?

「Ghost of Tsushima」は、中世日本(1274年〜)の鎌倉時代中期にあったモンゴル帝国(元朝)と高麗による日本侵攻「元寇(蒙古襲来)」をテーマにした作品です。ゲームジャンルは、アクションを主体としたオープンワールドRPGになっています。

モンゴル帝国軍(元軍)は、日本を属国とするための足がかりとして、手始めに対馬に襲来しました。史実では、対馬で闘った武士がほとんど全滅するほど、壊滅的な被害にあったと言われています。いっぽうの、「Ghost of Tsushima」では、対馬侵攻を生き延びた侍・境井 仁(声:中井和哉)が、オープンワールドで再構築された対馬を駆け巡って元軍に逆襲するという、史実と異なるストーリーが繰り広げられます。

史実とは異なるストーリーを描く「Ghost of Tsushima」

史実とは異なるストーリーを描く「Ghost of Tsushima」

ゲームと時代劇が高次元で融合した唯一無二の世界観

「Ghost of Tsushima」を開発したサッカーパンチ・プロダクションズが目指したのは、「時代劇の世界を堪能できるゲーム」とのこと。ゲームを開発するにあたっては、黒澤明監督の映画作品から多くのアイデアの着想を得ています。

たとえば、戦闘スタイルひとつをとっても、侍らしい太刀を使った剣戟は、やみくもに攻撃を連打しても勝利を収めることはできません。間合いを計りながら敵の一太刀に応じて「いなす」か「かわす」というアクションが重要になり、最適なタイミングを見計らいカウンターの隙を作り出し、勝機を見い出すという剣戦が楽しめます。

序盤は攻撃を数発食らうだけでも死亡するため、自分の行動ひとつが生死を分け、緊張感は抜群です。攻撃や防御のタイミングも非常にシビアで、敵の強弱によらず、どの戦闘をとっても相手の出方を見極める「間」に重きが置かれています。

いっぽうで、敵を数発で倒すことも可能なため、上手に闘えば集団戦でもあっという間に敵たちをバッサバッサと切り伏せられ、まさに時代劇で見るような「静と動」のチャンバラ劇を、コントローラーで体験できます。時代劇とゲームという異なるジャンルのコンテンツを融合させることに成功していると感じました。

なお、筆者は最高難易度でプレイしていますが、“死にゲー”として有名な「DARK SOULS」や「SEKIRO」「仁王」などと比べるとそれほどめちゃくちゃな難易度とは感じず、「難しいけど面白い」という程度にバランスがとられているのも魅力のひとつです。
※2020年7月28日に「アップデート1.05」が配信され、究極難易度「万死」が追加されました。

プレイヤーを惹きつけてやまない武士道精神

日本人の多くは「侍」や「武士」についてはある程度の知識を持っていると思いますが、「Ghost of Tsushima」では登場する侍たちから改めて学ぶ「武士道精神」が、ゲームのプレイ体験向上に多大な影響を与えています。

たとえば、主人公である仁が、幼少期に育ての親である叔父上・志村(声:大塚明夫)が賊に背後から不意をつかれ刀傷を負うという回想シーンがあります。仁は卑怯な賊に対し怒りに任せて剣を振るおうとするのですが、志村は「怒りや恐れで人を殺めてはならん。誉れを胸に切れ」と諭します。

賊を成敗した仁に対して、志村は「命を奪うときも、相手を見据えろ。情けと覚悟を持て。それが侍の姿だ」と武士道精神を説くのです。領土を収める身分の高い「侍」であるからこそ、守るべき民に対して見本となる必要があり、「当時の侍はただ闘いに明け暮れていたのではなく、こんな精神で生きていたのだろうか」と、日本の歴史に想いを馳せられる印象的なシーンです。

ゲームから武士道精神を感じられるのも「Ghost of Tsushima」の魅力

ゲームから武士道精神を感じられるのも「Ghost of Tsushima」の魅力

この志村の教えは仁に深く根付いているのですが、圧倒的戦力で攻め込んでくる元軍に対して、「武士の誉れ」をどこまで貫くべきなのか。プレイヤー自身もゲームをどのように進めるべきか、仁の葛藤を自分のことのように考えさせられてしまうのです。

誉れ高い「侍」になるか、冥土から蘇った「冥人(くろうど)」になるか

ゲーム序盤には、敵陣に入って名乗りを上げ、正々堂々と一騎打ちを申し込んだ対馬の侍が、相手にされることもなく、火あぶりにされ斬首されてしまうシーンが出てきます。

清く正しい「侍」として生きてきた仁も「このままでは勝てない」と葛藤し、武士道精神に背いて背後から敵を小太刀で暗殺する、「くない」や敵の兵器である「てつはう」などの暗器を活用するといった「冥人(くろうど)」の戦闘スタイルを身につけていきます。

「てつはう」は手で投げると爆発する火薬爆弾。武士道精神に背くものの、集団を一気に制圧できる。

「てつはう」は手で投げると爆発する火薬爆弾。武士道精神に背くものの、集団を一気に制圧できる。

ゲームタイトルの「Ghost」は、まさにこの「冥人」のことを表していますが、これは「ASSASSIN'S CREED」や「ファークライ」シリーズなどステルスゲームでは当たり前の闘い方ですよね。筆者は、攻撃を受けることなく敵を倒せるステルススキルを「効率的な闘い方」として疑問を覚えたことはありませんが、「Ghost of Tsushima」では、プレイヤーに「武士としてどうなのか?」という思いが芽生えるのが面白いところです。

プレイヤーの葛藤もゲームプレイに反映することができ、「冥人なんて侍じゃない!」と思ったら、侍としての戦闘スタイルを貫くことも可能です。敵陣に攻め入る時は「一騎打ち」を申し込み、騒ぎを聞きつけて集まる多数の敵を切り伏せるスキルがあれば、武士道をまっとうすることができるのです。

なお、西部劇風ゲーム「Red Dead Redemption 2」には、善行と悪行によってストーリーに影響を与える「名誉ゲージ」が上下するシステムがありましたが、「Ghost of Tsushima」では、「侍」か「冥人」という戦闘スタイルによってストーリーに与える影響ははなく、あくまで「自分の信念としてどのように闘うか」という粋な考え方となっています。

日本人の胸を打つ「和」のグラフィック

「Ghost of Tsushima」の序盤で、筆者は見渡す限り一面に白いススキの穂が波打つ草原の美しさに心を打たれました。普段ゲームをプレイする時は、ゲーム記事を書く仕事で必要な時しかスクリーンショットを撮らないのですが、本作では自然としばらくの間足を止めて画面を眺めたり、カメラモードを使って写真を撮ったり、「グラフィックを楽しむ時間」が生まれました。

白いススキが一面に波打つ草原のシーン。美しさのあまり見とれてしまうほどでした

白いススキが一面に波打つ草原のシーン。美しさのあまり見とれてしまうほどでした

それは単に美しい映像というだけではなく、純白のススキの穂、赤くビビッドな彼岸花、黄金色に輝くイチョウの森など、日本人の目にもなじみ深い印象的な「和」の要素が散りばめられていたからです。さらに、プレイ中にBGMはほとんど流れず、聴こえるのは鳥のさえずりや、吹き付ける風音といった環境音であるのも、粋な要素のひとつです。

プレイ中のBGMは環境音がメインなので、「Ghost of Tsushima」の世界に没頭できます

プレイ中のBGMは環境音がメインなので、「Ghost of Tsushima」の世界に没頭できます

ゲーム内の景色は、実在の対馬をそのまま再現したのではなく、日本本土の風土から得た着想なども加え、本作独自の“対馬”を作り上げたと言います。開発陣はインタビューで「対馬への恋文」と語っており、細部にわたる作り込みからしっかりとその想いが伝わります。

これらの美しい自然は、そのままゲームシステムに組み込まれています。たとえば、地図で目的地を設定すれば、風の流れが目的地へと誘ってくれ、キツネについて行けば強化アイテムが手に入る神社にたどり着き、黄色い鳥を追えば付近にある重要なポイントが見つかります。

正直なところ、風による行き先案内はわかりづらい面もあるのですが、行き先を示す無粋な矢印や方向アイコンが表示されることはなく、ゲームの没入感を向上させているのは間違いありません。

また、本作には数々の影響を受けたという黒澤明監督へのリスペクトとして、「黒澤モード」が用意されています。このモードでは、グラフィックがモノクロになるだけでなく、フイルム映画風のノイズやくぐもったサウンドになり、もはや「7人の侍」をプレイしているような気分になれるのです(見づらいのでプレイ難易度は上がりますが……)。これは映画ファンにも刺さる演出ではないでしょうか。

モノクロの「黒澤明モード」

モノクロの「黒澤明モード」

「洋ゲー開発会社の和ゲー」とは思えない完成度の高い作り込み

これほどまでに「対馬愛」を感じる作り込みで描かれる「Ghost of Tsushima」を開発したのは、サッカーパンチプロダクションズというアメリカのゲーム開発会社です。海外ゲームが日本版になる際、日本語へのローカライズが行われますが、残念な「トンデモ翻訳」に違和感を覚えたことがある人も少なくないかと思います。

本作は発売前こそ、海外のインターネット上で「日本語がおかしい」と話題になったこともありましたが、実際はどの日本語にも全く違和感がなく、徹底的なローカライズがなされているのがわかります。

ゲームでは珍しく、数多くのローカライズスタッフが動員されているのも特徴で、アソシエイトローカライズスペシャリストの坂井大剛氏は「アメリカ発『日本が舞台の時代ゲーム』を日本語版にローカライズなんて初めて聞いたときは耳を疑いましたが、そうっと蓋を開けてみると往年の日本映画へのラブが詰まったそれはそれは素敵な内容でした。これはサッカーパンチが日本に宛てた贈り物です。ぜひお受け取りください」とTwitterでコメントしています。

数々のこだわりが詰め込まれた「Ghost of Tsushima」。武士の誉れを貫くか、闇の中から正義を下す冥人となるか……。個人的には、史実では対馬軍をほぼ全滅に追い込んだ元軍に対して、「武士の誉れ」を貫くのは現実的ではなく、使えるものはなんでも使う「冥人」としてプレイするほうが、実際にありえたかもしれないパラレルワールドとしての歴史を歩んでいるような気持ちになれました。

これまでのオープンワールドゲームと比べても、「ゲームとしての面白さ」と「映画のような体験」が釣り合っているため、ゲーム通だけでなく映画や時代劇ファンがプレイしても楽しめるのではないでしょうか。記事を書いていたら続きがやりたくなったので、さっそくプレイしてきます。

M田Y太

M田Y太

普段はウェブメディア業界に潜伏し、休日はゲームの世界とサウナの狭間で生きるライター。

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