文明が崩壊した未来の世界で原始時代のような暮らしを送る人類と、さまざまな動物を模して作られた「機械獣」が共生するというポスト・アポカリプスな世界を冒険するヒットタイトル「Horizon Zero Dawn」。2017年の発売当時、その独特な世界観に魅了された人も多いのではないでしょうか。
筆者も前作をやり込んだプレイヤーのひとりでありますが、2022年2月18日、5年越しに続編となる「Horizon Forbidden West」が発売され、早速ハマっています。今作も時間泥棒になってしまうのか、PlayStation 5(PS5)版を約30時間プレイしたレビューをお届けします。
現代から約千年後の未来を舞台にした「Horizon Forbidden West」。人類の末裔は狩猟と採集を行う原始的な暮らしをしており、過去の文明は崩壊してしまって受け継がれていません。そんな人間に代わって自然の楽園となった大地を支配するのは、動物を模した自律型の「機械獣」です。
機械獣は人間に敵対行動をとりますが、その理由は、機械獣が千年前の天才科学者、エリザベトによって、崩壊した世界を再構築するために作られたシステムであるためです。しかし、再構築システムが正常に作動せず、植物の腐食や異常気象を発生させる原因となっており、人類は再び滅亡の危機にさらされています。
再び訪れた人類の危機に立ち向かうのが、主人公のアーロイ。アーロイは、エリザベトのクローンとして生まれたため、これらのシステムに干渉できる唯一の人間という特性を備えます。このアーロイが、人類を救うべく「Forbidden West」(禁じられた西部)を冒険する、というのがメインストーリーになります。
アーロイは、機械獣の弱点をスキャンしたり、古の建造物を操作したりと、肉眼では見えない情報を集める「フォーカス」という特殊な装置を扱えます。ほかのゲームで言うところのスキャンモードのような役割で、これを活用することで、本作ならではの戦術性に富んだバトルが楽しめるようになっています。
アーロイの冒険を妨げる存在の機械獣。戦闘系の機械獣のほかにも、輸送や収集を目的とする機械獣も存在します
本作は、オープンワールドのアクションRPGで、アーロイが扱うのは槍や弓矢といった原始的な武器です。これらを駆使して、機械獣や敵対する部族と闘いを繰り広げます。マップ上にある収集可能な「資源」や、倒した機械獣から回収できる「素材」により、矢など戦闘に必要な消耗品の作成や、装備のアップグレードが可能です。
ひし形のアイコンで示されるのが、素材や資源。これらを集めて、消耗品を作成したり、装備のアップグレードを行うなど、クラフト的な要素も多く用意されています
機械を「フォーカス」でスキャンして弱点をハイライトし、弓矢で射抜いて貴重なパーツを収集するもよし。弱点となる属性を把握して、酸・炎・氷・水・雷の属性攻撃を浴びせるもよし。ステルスに特化した防具をまとって静かに敵を葬るもよし。前作同様に、プレイヤーの好みに合わせたスタイルで戦術性とアクション性の高いバトルが楽しめるのが特徴です。
機械獣を「フォーカス」でスキャンすると弱点部分がハイライトされます。機械獣の体は部位ごとにパーツに分かれており、そのパーツを破壊することで無効化することが可能
本作はPS4とPS5のどちらでもプレイ可能ですが、PS5版であれば襲いかかる機械獣の部品のディティールから、風にそよぐ植物の穂先まで美しく表現された、驚愕のグラフィックが楽しめます。前作よりはるかに広くなったフィールドの表現は細かな部分まで描かれており見応え抜群。グラフィックには一切手抜きが感じられません。
大自然に支配された大地は、壮大で美しい。地面や木々のテキスチャーなど細部にいたるまでしっかり描かれており、PS5のグラフィック性能をフルに生かしていると感じます
いっぽうで、今作では壁面をスキャンすると、手でつかんだり、グラップルポイント(ロープを使って移動するプルキャスターをひっかける場所)が黄色くハイライトされるようになりました。うれしい進化なのですが、これを持ってしても、壁面を登っている時など、「行けそうなのに行けない」「次はどこに行ったらいいかわからない」となることが多かった印象です。縦方向への移動は、横方向の地上での移動に比べると、操作性があまりよくないと感じました。
つかめる場所が目立つようになったものの、わかりづらさが目立った縦方向の移動
そんな移動のストレスを吹き飛ばしてくれるのが、「ファストトラベル」のサクサク感。各地に点在する「たき火」を見つけると、それ以降はマップからたき火までファストトラベルできるのですが、PS5版は高速SSDによりロード時間はほとんどなく、広大なフィールドをストレスなく歩き回れるのはうれしいポイントですね。
「Horizon Forbidden West」で一番楽しいと感じるバトルに関しては、入手できる武器の種類が前作より豊富になったことで、より幅の広いバトルが楽しめるようになっています。武器ホイールに6種類の好きな武器をセットし、戦闘中の状況を見つつ巧みに切り替えられるバトルには、いやが上にも熱中してしまいます。
画面右に表示されているのが武器ホイール。これで武器を瞬時に切り替えて、戦いを有利に進めます
本作は、ダメージの種類によって戦闘スタイルがガラッと変わるシステムになっており、槍と弓矢には体力を削る「衝撃」ダメージや、特定の部品を切り離す「切断」ダメージが設定されています。それ以外は「爆発」や「属性」攻撃が可能な飛び道具が多くあります。
多種多様な武器は、作業台でアップグレードして強化することが可能
前作にはなかった武器も2種類が登場。投げ槍型の武器「スパイクスローワー」はダメージ量が最大級で、大型の機械とも渡り合えますが、部品もろとも爆発させてしまいます
「スパイクスローワー」とは対照的に、切断ダメージが最大級の武器「シュレッダーガントレット」は近接系の武器。ノコギリのような輪っかを射出して、特定の部品を切り離すことに特化しています。
防具は前作と変わりなく、着替えるとアーロイのビジュアルが変わります。それぞれ特化した性能やスキルがあるため、戦う相手によって切り替えると戦闘が楽になる仕組みです。
ひと通りの武器を試したのですが、6種類の武器ホイールをあますことなく使いこなすのは難度が高く、筆者は基本的に「弓矢と槍」のみで立ち回っていました。爆発系の武器は、倒した機械獣から回収できるアイテムまで爆破してしまう(回収できなくなる)ため、必然的に出番が少なくなってしまいました。
ヘビーゲーマーの筆者でも、「Horizon Zero Dawn」においては、上手なプレイというのが難しく感じましたが、ステルスとサイレントキルを活用すれば初心者でも何とかなるのが本作の面白いところです。加えて、バトルは歯ごたえのある高難度であるため、さまざまな武器を駆使してスタイリッシュに戦いたい上級者も満足できるというのが、「Horizon Zero Dawn」の特徴でしょう。
今作ではレベルアップやクエスト報酬で手に入る「スキルポイント」を使って、6種類のスキルツリーからスキルを習得してアーロイを成長させられます。スキルツリーを進めていくと「勇技」という必殺技も習得できるようになりました。
戦闘などでたまっていく「義勇ゲージ」を消費すると、セットしている「勇技」を発動でき、攻撃力や防御力を一時的に増加させる、体力を回復する、特定の武器で必殺技を発動するなどの効果が得られます。
うまく使えば役に立つシステムですが、セットできる「勇技」はひとつだけ。「勇技」のセットはメニューからスキルツリーを開いて、枝分かれしたツリーのあちこちから選ぶ必要があり、こまめな切り替えをバトル中に行うのは面倒です。また、習得した「勇技」の一覧が見られないのは、ユーザーフレンドリーではないように感じました。せっかくの新要素なので、もう少し使いやすくしてほしかったところです。
基本的には前作のシステムを継承しつつ、追加要素が盛りだくさんとなった今作。よく言えば戦術的ともとれますが、やることが多すぎて使いこなすまでに相応のプレイスキルが要求されます。
30時間ほどプレイした結果、筆者はすべての要素を使いこなすにいたっておらず、「武器は弓矢と槍のみ」「勇技は回復系で固定」「道具スロットは回復薬と石投げのみ使用」というようなシンプルな立ち回りになりました。
せっかくなら新武器や新システムを駆使して立ち回りたいところですが、あれもこれもと操作が要求されるため、かなりの慣れが必要とされます。少しプレイの間が空くと「あれってどうやるんだっけ……?」ととまどってしまうので、必要最低限の機能で遊ぶのもひとつの手かもしれません。
それでも、美しいグラフィックで描かれる機械獣とのバトルは非常にやりがいがあります。巨大な機械獣の攻撃をかわしながら特定の部品を攻撃しまくり、剥がせるだけの部品を剥がして、丸裸にしてからとどめを刺した瞬間は、ものすごいアドレナリンと、達成感が体を駆け巡ります。
今作は「メインクエスト」に加え、「サイドクエスト」「サブクエスト」などのやり込み要素が、「これでもか!」というくらい用意されています。近場のクエストを全部片付けてからいくか……、と思ったら、丸1日メインクエストが進まないほどです。
いずれもクエストをクリアするためのバトルが楽しいのはもちろん、クエスト中に出現する機械獣から得られる部品や、クエスト報酬で装備を強化できるレアな素材が手に入るため、モチベーションを高く保て、やりがいがあります。
いっぽうで、クエストを進めるとたびたび会話シーンが挿入されるのですが、なぜか多くの場合で早送りができません。かといってスキップで会話シーンを終わらせると何の話かわからなくなってしまうし、後でシーンを見返すアルバム機能もないので、なかば強制的に会話シーンを見なければならないことがあります。今後、全シーンで早送りの実装を切に期待します。
会話も逃さず聞いて本作の世界を味わってほしい、という意図は感じるのですが、それでもゆっくりと進む会話にはストレスがたまってしまいました
「Horizon Forbidden West」は、操作性やUIの面で若干のマイナス点があるものの、やり出すと思わず何時間も経ってしまう中毒性の高いゲームに仕上がっています。それは、妥協を一切許さないグラフィックで構築された美しい世界と、アクション性と戦術性が高い、手に汗握るバトルが絶妙なバランスで融合されたからこそだと思います。ただし、前作に関連したストーリー展開となっているため、本作を遊びたい人は迷わず前作を先にプレイすることをおすすめします。
普段はウェブメディア業界に潜伏し、休日はゲームの世界とサウナの狭間で生きるライター。