レビュー

不朽の名作、PS5版「ラスアス」レビュー。強烈な感情移入で心が揺さぶられる

2022年9月2日、SIE(ソニー・インタラクティブエンタテインメント)からPS5用サバイバルアクション「The Last Of Us Part T」が発売された。今回は、SIEより本作の先行プレイ権利をいただいたので、本編+DLCクリア後のレビューを述べていこうと思う。率直な感想を申し上げると、原作である「The Last Of Us」をプレイ済みの筆者の立場から見ても、本作は確実に新鮮な体験ができる作品だった。

2022年9月2日発売のPS5ソフト「The Last Of Us Part T」

2022年9月2日発売のPS5ソフト「The Last Of Us Part T」

筆者は、偶然にもつい2か月ほど前に原作をプレイ(2周目)していたので、そこまで新鮮さを感じないこともある程度想定していたのだが、プレイしながら抱いた感想の大部分は、あの“ラスアス”が最新ゲーム技術でよみがえったことによる感動だった。

原作から格段に進化したグラフィックをはじめ、3Dオーディオやアダプティブトリガーなど、PS5だからこそ体験できる要素によって原作「The Last Of Us」の世界は、より鮮明かつ、深みの増した体験が味わえる世界へと昇華したことは間違いないだろう。

このレビューでは、PS5「The Last Of Us Part T」が、どのような体験を与えてくれるゲームなのか? どのような人に購入をおすすめできるのか? 筆者なりの感想を述べていく。

本作はフルプライスのリメイク版であるため、“ラスアス”好きの人たちの中でも購入を悩んでいる方がいると思うので、ぜひ参考にしていただきたい。

また、本記事では「The Last Of Us」というゲーム自体の面白さではなく、あくまでリメイク作としての評価を中心にレビューしていく。よってすでに原作をプレイ済みの方向けのレビューとなっており、原作未プレイの方にとってはネタバレに感じる部分もあるかもしれないので、その点だけご留意願いたい。

「The Last Of Us Part T」の概要

「The Last Of Us Part T」は、2013年にPS3で発売されたNaughty Dogのアクションホラーゲーム「The Last Of Us」のリメイク版ソフトだ。原作である「The Last Of Us」は、多くのメディアでゲーム・オブ・ザ・イヤーを受賞したほか、PS4でもリマスター版が発売され、世界中の多くのゲーマーが美しいグラフィック、完成されたサバイバルゲームシステム、そしてその心揺さぶる物語とゲーム体験に感動した。

2013年にPS3で発売された原作「The Last Of Us」

2013年にPS3で発売された原作「The Last Of Us」

そして、本作「The Last Of Us Part T」は、グラフィックなどを中心に一新された“リメイク版”なのだが、ゲームシステム的に大きな変更点はなく、原作をビジュアル面で進化させた印象が強いものになっている。

物語冒頭のシーン。主人公ジョエルとその娘サラ

物語冒頭のシーン。主人公ジョエルとその娘サラ

ほかのリメイク作品でいうと、「バイオハザードRE:2」や「FINAL FANTASY VII REMAKE」(FF7 リメイク)は、グラフィックの一新だけではなく、ゲームシステムなども大幅に変更されまったく次元の違うゲーム体験が実現されていた。

そういった基準でいうと本作「The Last Of Us Part 1」は、リマスター以上リメイク以下と呼べる作品かもしれない。次項からは、本作が原作から具体的にどのように進化し、それによるゲーム体験にはどれほどの変化が見られるのか詳しく述べていく。

グラフィックの進化

やはり本作を見るうえで最も目を引くのは先ほどから述べている通り、一新されたグラフィックによるビジュアルチェンジだろう。

エリーにライフルの使い方を教えるジョエル。髭やシワの細かさまでこだわり抜かれている

エリーにライフルの使い方を教えるジョエル。髭やシワの細かさまでこだわり抜かれている

キャラクターのビジュアルは、原作から目に見える進化を遂げており、主人公であるジョエルとエリーの見た目も、毛穴や皮膚のシミ、髪、髭1本1本の細部まで見えるほどに、そのリアルさは増していた。

テス、ビル、ヘンリー、サムら、主人公2人の旅物語に深く関わる重要人物達も、揃ってより鮮明かつ人間味を感じられる見た目に進化しており、物語を進めながら出会うたびに原作からの変化に見惚れる自分がいた。

ビル(画像上)とヘンリー、サム(画像下)

ビル(画像上)とヘンリー、サム(画像下)

たとえば、テスは、原作の美人な見た目からほうれい線がくっきりして、円熟味の増した印象になった。原作の見た目から大きく変化したことが、一部インターネット上でも物議を醸していたが、テスは、主人公ジョエルの仕事仲間でありながら、ジョエルに想いを抱いていると想像できる存在であり、ジョエルが40代後半のキャラクターであることを考えると、テスも設定上は40〜50歳くらいのキャラクターだ。

そういった意味では、年相応のビジュアルになったことで、より人間像がわかるキャラクターになったとも言える。キャラクターそれぞれの表情の豊かさや仕草も進化しており、原作では見られなかった表情や反応を見られる瞬間もあったのは、プレイしながら新鮮さを感じられたポイントだった。

ジョエルの仕事仲間であるテス。原作から明らかに見た目が変わり、実年齢の読み取れるキャラクターに生まれ変わった

ジョエルの仕事仲間であるテス。原作から明らかに見た目が変わり、実年齢の読み取れるキャラクターに生まれ変わった

原作「The Last of Us」は、名シーンと呼べるムービーがいくつもある作品だ。そのため、原作からさらに細やかな表情まで読み取れるようになった本作では、各シーンでも原作とはキャラの表情が違っており、感情移入の度合いに関しては、原作からさらに胸に刺さる強烈さが増していた。

しかし、キャラクターのビジュアル以上に衝撃だったのは、周りの景色のビジュアル進化についてだ。特に、光と水の表現に関しては本当にすばらしく、馬に乗ってジャクソンを旅立つシーン、夕陽に照らされた東コロラド大学、土砂降りの中でボストン隔離地域周辺のビル街を軍から逃げるシーン、逆光や光の反射、水面の波紋、濡れた肌や衣服の表現は見るたびに感動を覚えた。

馬でジャクソンを旅立つジョエルとエリー。逆光の美しさが映えるシーンだ

馬でジャクソンを旅立つジョエルとエリー。逆光の美しさが映えるシーンだ

ボストン隔離地域外の廃墟。雨の表現がよりリアルに進化している

ボストン隔離地域外の廃墟。雨の表現がよりリアルに進化している

もちろん、こういった美麗で鮮明なグラフィックは、現代のAAA級ゲームでは特段珍しいものではない。あくまで原作の「The Last of Us」で見た光景がよりキレイになっていることを実感できるからこその感動なのだ。

原作でも十分すぎるほどの美麗な光景を見られたが、本作におけるグラフィックの一新は、その美麗さを何倍にも増大させて、プレイヤーに原作プレイ時の感動を再び味合わせてくれるように感じた。

ほかには、PS5のマシンパワーによって描写できるオブジェクトが増えたことや、装備カスタマイズのパートでジョエルが直接武器を改造する様子が見られるようになったこと(「The Last Of Us Part U」で登場した要素)も、ゲームビジュアルの部分で確実に貢献をしている。本作でのグラフィックのリメイクが、「The Last of Us」というゲームの体験に新たな感動を与えているのは間違いないだろう。

ライフルにスコープを装着するジョエル

ライフルにスコープを装着するジョエル

ただし、どんなに美しいグラフィックでも長時間プレイしていれば見慣れてくるものであり、本作もそういった意味では、その例に漏れない。実際にプレイ中の探索時などでは「原作と特に何かが変わったわけではないな」と感じる瞬間は確かにあった。

しかし、継続的に訪れる新たなキャラクターたちとの出会い、新しい風景の登場、そして生まれ変わった名シーンの数々、これらによって最後まで新鮮な体験と発見が持続されたと感じている。

特に、ラストの衝撃的なシーンはどのように生まれ変わっているのか? 本編のプレイ中には、そのことを終始気にしながらプレイしていたし、クリアまでプレイし終わったときの感覚は、まさしく「The Last of Us」の物語を走り抜けたあの感覚だった。本作のグラフィックの一新は、確実に意味のあるアップデートであり、ラストオブアスの世界、情景にリアリティーをもたらすことに成功した部分として高く評価したい。

3DオーディオサウンドとPS5コントローラー「DualSence」

リメイクである本作にとって重要な役割を果していたのが、3DオーディオをはじめとするPS5のオーディオ技術と、コントローラー「DualSense」に搭載されているアダプティブトリガー、ハプティックフィードバック機能だ。

筆者は、ヘッドホンとスピーカーの両方でプレイしたのだが、ヘッドホン装着時のプレイ感覚は、非常に新鮮なものがあった。たとえば、戦闘時に聞こえるクリッカーの鳴き声がそれに当たる。

クリッカーは、捕まえられると一撃でやられてしまうほど強い敵であるため、ステルスで身を隠しながら対応する必要がある。ひっそりと隠れてやり過ごしている最中に聴こえる不気味なクリッカーの鳴き声が、ただ細やかに耳に響くだけではなく、位置までわかるように聴こえ、演出による恐怖感にはさらに磨きがかかったと言える。

ほかには武器のリロード音、射撃音などもより繊細に演出されるようになっており、「The Last of Us」の世界における臨場感を拡張している。

作中で即死攻撃を持つクリッカー。不気味な鳴き声は、3Dオーディオにより臨場感と恐怖がアップしている

作中で即死攻撃を持つクリッカー。不気味な鳴き声は、3Dオーディオにより臨場感と恐怖がアップしている

さらに、本作ではPS5コントローラー「DualSense」の機能がフル活用されているのだが、こちらも言わずもがな「The Last of Us」の世界を鮮明に映し出す要素としてしっかり機能している。たとえば、アダプティブトリガーによって変化する弓を引いた時のトリガーの強弱、ハプティックフィードバックによって細やかに手に伝わってくるキャラクターの鼓動などだ。

弓を引くときには「DualSense」のアダプティブトリガー機能が動作し、トリガーの押し加減に強弱がつけられる

弓を引くときには「DualSense」のアダプティブトリガー機能が動作し、トリガーの押し加減に強弱がつけられる

これらの機能は、PS5だからこそ味わえる要素であるため、リメイクである本作に搭載されたことによって「The Last of Us」がパワーアップする要因になっていることは言うまでもない。ただ、アダプティブトリガーに関してはもっと強めに設定できるように調整できればよかったとも思う。

「The Last of Us」のように、敵NPCを殺すたびにプレイヤーの心情を掻き乱してくるゲームは、敵を殺す前の緊張感や、殺した時の反動が強烈に伝わってくればくるほど、演出として効果的に感じる。

個人的には、弓を引くときには少々指が痛くなるほど力を込めないと十分威力を発揮できない、それくらい強弱を付けてもよかったと思う。これらに関してはプレイヤーの好みで設定できるようになってはいるが、自分がもっと強めにしたいと思って変えようとしたときにはデフォルトで最大設定になっていたので正直物足りなさを感じた部分だ。

アダプティブトリガー自体も、プレイヤーによって好みが分かれる仕様ではあるが、個人的には大変気に入っている次世代機PS5ならではの機能なので、今後もその設定の幅や強弱に関してはよりバリエーションを持たせてもいいのではないだろうか。

豪華になった戦闘

本作に関して個人的にどうしても触れておきたいのは戦闘に関する部分だ。先ほど述べたグラフィックの飛躍的な向上によって、感染者をはじめとした敵キャラクターも「The Last Of Us Part U」と同水準にまでリアリティーを増しており、先述した3Dオーディオや「DualSense」による臨場感も相まって、戦闘部分は原作から基本的には豪華になったと言える。

ただ、個人的にどうしても残念だったのは、本作におけるゴア表現(血しぶきが飛ぶよううな残虐なシーン)の部分だ。本シリーズは、もともと日本国内版が表現規制を受けており、ゴア表現の部分に関しては北米版とかなり差異があることで有名なタイトルだ。

そして、リメイク作である本作でも、その規制はしっかりとかけられていた。具体的に言うと肉体の欠損表現などが削除され凄惨な戦闘という印象を強く抱き過ぎないように修正されていた。つまり、「The Last Of Us Part U」と同レベルの表現規制が本作でもかけられたことになる。

本作では肉体の欠損表現が、北米版から削除されている

本作では肉体の欠損表現が、北米版から削除されている

この点に関しては大方予想通りであったし、原作から血しぶきなどの出血表現はより生々しく感じられるようになっているので、本作の根幹である「終末世界で生きる血生臭い人間同士の殺し合い」という部分において説得力が保たれていないとは感じない。

ただし、ゴア表現に関しては原作(北米版)では欠損表現が採用されていたうえに、ショットガンで感染者を吹き飛ばせば肉片が飛び散るなどの表現が採用されている。これらは、「The Last of Us」の世界における残酷さ、人間を武器で殺害することの本質を表現しており、本作を語るうえで、なくてはならない要素だ。

それが、原作(北米版)から修正されたままであるため、ここに関しては素直に“残念だった部分”と評価するしかない。ただし、ゴア表現が苦手な方も多いのでこの修正を闇雲に否定したいわけではないことも理解していただきたい。

むしろその点を踏まえたうえで、最後の総評について読んでいただきたい。

「The Last Of Us Part T」総評。本作はどのような人にすすめられるか?

「The Last Of Us Part T」の総評だが、ずばり本作は購入する価値がある作品かどうか? ということを述べていきたい。本作の希望小売価格は8,690円(税込)、いわゆるフルプライス価格の販売となっており、決して安い金額ではない。

「バイオハザードRE:2」や「FF7リメイク」のような、グラフィックからゲームシステムまですべてを一新したリメイク作品であるなら、フルプライス価格に文句を言う人はいないだろう。しかし、本作のような一見グラフィックをきれいにしただけのように見えるリメイク作にフルプライス価格を払う価値があるかは意見が分かれる点である。

実際に、インターネット上においても、ストーリーが特に追加されていない作品にフルプライスは高すぎるという意見が多く見られ、本作が割高感の否めない作品だというのは十分一般的な認識と言えるだろう。

ただし、筆者も実際にプレイしてみて確信したことだが、本作は開発元のNaughty Dogが述べているように、原作時とは違う現代の最新グラフィック技術を駆使して原作のフルリメイク&完全再現に挑戦した作品であり、ゲームシステムこそ大きく変わらないものの、キャラクタービジュアルやステージビジュアルはまったくリマスターの領域ではない。

おそらくだが、フルプライスという価格設定は、Naughty Dogもそれ相応のコストをかけて制作している上でのことだろう。ただし、フルプライスを実際に払うかどうか決めるのは消費者であるプレイヤーなので、そのプレイヤーにとって払う価値があるかが重要である。

結論を言うと「The Last Of Us」という作品自体への思い入れが強い人ほど本作は購入の価値があると筆者は思う。今まで原作を何周もプレイしてきたが、「各キャラクターの表情や心情描写は最新グラフィックによってどのように変わり、鮮明さが増しているのか興味がある、しばらくプレイしていなかったが久しぶりにジョエルとエリーの冒険劇を次世代機のグラフィックでプレイしたい、そういった気持ちを抱ける方にとっては原作経験者であっても本作をフルプライスで購入する価値は十分あると思う。

また、一部インターネット上で空前絶後の賛否両論を巻き起こした「The Last Of Us Part U」に合わせて本作のストーリーを改変するのではないかという邪推も見られたのだが、そんなことはもちろんなかったので安心してほしい。

むしろ、原作時にはなかったオブジェクトの日本語翻訳部分があったりして、原作時には気付かなかった世界観の深堀りもできる作品になっている。きっと原作プレイ済みの方にとっては新たな発見や視点が得られるきっかけになると思うので、プレイする際にはそういった部分も気にしてみてほしい。

原作では日本語で読めなかった、序盤で発見できる新聞記事。本作では日本語で読めるようになっている

原作では日本語で読めなかった、序盤で発見できる新聞記事。本作では日本語で読めるようになっている

また、「The Last of Us」自体をまだプレイしたことはないが、気になっているという人にも本作は、もちろんすすめられる。個人的には原作であるPS3版やそのリマスター版であるPS4版なども選択肢としてはあるが、せっかくなら最新グラフィックでプレイしたいという方も多いと思うので、未体験の方もぜひ購入を検討してみてほしい。

ジョエルやエリーの見た目をはじめさまざまなボーナスコンテンツの追加、あるいはタイムアタックモードなどの新モードも追加されているので、その点も原作よりお得になっている部分だろう。
 
ただし、「The Last of Us」に思い入れの強い方でも一部購入をいったん見送ってほしい方々がいる。それがPCを所持している方々だ。本作は、PC版もそう遠くないうちに発売されると言われているのだが、PC版では先ほど述べたゴア表現の規制が撤廃される可能性がある。言うならば、余計な規制がかかっていない本当の「The Last Of Us」が、PCなら遊べるかもしれないということだ。

これも最終的にどうなるかわからないが、もし北米版と同水準の表現で「The Last of Us」をプレイできるのであれば、個人的にはPC版を選びたい。この点に関しては実際にPC版が出るまで確定事項は言えないが、もともと原作をプレイ済みなのであれば急いでプレイする必要もない作品だと思うので、PCを持っている方はそちらの情報が出次第購入を決定するのがベターだろう。

ぐう実況(ゲーム紹介系YouTuber)

ぐう実況(ゲーム紹介系YouTuber)

YouTubeを中心に活動するゲーマー。PSやPCのソフトを中心にゲーム紹介をする機会が多く、同分野を専門に活動しています。プライベートでは任天堂などの作品も頻繁に遊びます。

記事で紹介した製品・サービスなどの詳細をチェック
関連記事
プレゼント
価格.comマガジン プレゼントマンデー
SPECIAL
ページトップへ戻る