2022年11月9日、SIE(ソニー・インタラクティブエンタテインメント)からPS4/PS5向けアクションゲーム「ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク」が発売された。今回はストーリークリア、やり込み要素を含めて50時間ほど遊んだのでレビューをしていきたい。
本作は、北欧神話の世界を舞台にした重厚感のあるゲームプレイと、衝撃的に展開していく物語が特徴だ。元々、前作「ゴッド・オブ・ウォー」の時点で圧倒的なクオリティの高さを有していたが、前作からさらにパワーアップしたゲーム要素の数々はもちろん、何より「ゴッド・オブ・ウォー」北欧神話編の完結作として描き抜かれた怒涛のストーリーは本当に目が離せない。正直、前作からそれほど変わっていないと感じる部分も多少はあるのだが、それを含めても全体的にすばらしい“やりごたえ”を感じられる作品であったのは間違いない。
今回は前作を2週やり込んだ筆者の視点から、最新作である本作をプレイした感想などを述べていく。今回のレビューでは、ストーリーの核心には触れないものの、ストーリー紹介やゲーム要素の解説によってはネタバレになってしまうかもしれないので、その点は注意していただきたい。
「ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク」は、SIEサンタモニカスタジオの最新作で、2018年にPS4で発売された「ゴッド・オブ・ウォー」の続編タイトルに当たる。「ゴッド・オブ・ウォー」シリーズは、”クレイトス”を主人公としたアクションゲームであり、2010年に発売された「ゴッド・オブ・ウォー3」でギリシャ神話編が完結し、前作より新たな物語を描く北欧神話編として再スタートが切られた。
前作「ゴッド・オブ・ウォー」(2018)
前作は、PS4の能力を限界まで引き出した驚異的に美麗なグラフィック、美しい北欧神話の世界を探索できるマップデザイン、残虐な殺戮神クレイトスの豪快な戦闘などが評価され、2018年の「ゲーム・オブ・ザ・イヤー」にも選ばれた名作である。
前作では、主人公クレイトスが、息子のアトレウスとともに北欧神話の世界を冒険し、父親となったクレイトスの心情描写、新たな神々との出会いや敵対する様子が描かれた。
そして、続編である本作では、クレイトスとアトレウスという2人の主人公を中心に最終戦争のラグナロクまでが描かれ、前作から始まった北欧神話編の完結作となっている。
本作は、前作で完成されたゲームシステムを引き継ぎつつ進化させ、新たな北欧神話の世界や神々との戦いを描いている。次章からは、各要素について触れていき、ゲームの詳細な感想を述べていこう。
まずは、本作のグラフィックや基本的なプレイについて見ていこう。PS5の最新作としての評価が気になっている人も多いことだろう。率直な感想を述べると、本作のグラフィック自体が、前作から大きく進化したという印象はそこまで抱けなかった。
もちろん、多少の進化は感じたが、前作のPS4版から飛躍的にグラフィックが美しくなったと感じるほどではない。ただ、そこに対しての不満はほとんど感じなかった。前作「ゴッド・オブ・ウォー」の時点で、PS4の限界値的な美しいグラフィックを完成させていたのであり、それから4年が経った今でも、グラフィックの進化が顕著ではないことへの失望などは感じる隙がほとんどなく、むしろ本作のグラフィックの美麗さを改めて再認識させられたほどだ。
本作の序盤の舞台「スヴァルトアフルヘイム」。美しい水面と山々、ドワーフ達の建造物の間を船で探索できる
PS5の画質選択で「パフォーマンス重視」を選択してプレイすると、常にフレームレートを60fpsにキープするよう設定でき、ヌルヌル動くクレイトスを操作しながら美しい北欧神話の世界を冒険できる喜びは前作ファンの筆者にとって感激ものだった。(ちなみに本作はHDM2.1ケーブルと対応ディスプレイさえあれば120fpsでプレイすることも可能とされている)
また、プレイしていて非常に重要だと感じたポイントが、ロード時間に関する部分だ。前作「ゴッド・オブ・ウォー」では、ほかの世界に移動する際に「狭間の扉を開けて世界樹ユグドラシルをつたってほかの世界に移動する」というシーンがロード時間中に登場するのだが、PS5版「ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク」はロード時間が極端に短くなっており、キャラクター同士の会話を聞いておけばロードが完了するので、ロードのストレスが格段に軽減されていると感じた。
前作では、このユグドラシルでの待機時間、すなわち移動した先の世界をロードする時間がかなり長く不評な点だっただけに、これらの改善はゲームプレイの快適さにかなり貢献している。
本作のPS5版では世界樹ユグドラシルでの待機時間はかなり短く、前作に比べ明らかに快適になっている
高速ロード時間は、PS5でプレイした場合に限られており、PS4版でプレイする場合はこれらの恩恵を受けることは難しい。しかし、ロード時間の高速化は、前作の問題点を解決している部分でもあるため、本作をPS5でプレイする価値はやはり相当高いと言える。
美しい北欧神話の世界を冒険することが大きなコンセプトである「ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク」だが、そのかなめと言えるのがマップ内を巡る探索要素だ。
本作では北欧神話で登場する九つの世界(九界)、そのすべてを訪れることが可能になっている。前作では九界(くかい)を行き来する要素はあったものの、一部の世界しか訪れることができなかったのだが、今作で遂にすべての九界を冒険することができるようになった。
アース神族と敵対するヴァン神族の世界「ヴァナヘイム」。森と川が織りなす美しい世界も本作で冒険できる
各世界は、大小さまざまな大きさで構成されおり、広大なオープンワールドと言えるようなフィールドデザインではない。これは前作と変わりないが、圧倒的に美麗なマップ内に豊富な探索要素を詰め込むことによって凝縮された神話体験を過不足なく提供している点は、やはり本作ならではの完成度がうかがえる点だ。
探索要素が豊富なマップと、そうでないマップの両方が共存しているのは前作同様で、一部自由な探索要素がほとんど用意されていないマップもあったのは残念な点だったが、訪れることができる風景と探索要素自体は格段に前作より増したことは確かである。
本作はメインストーリーだけではなく、さまざまな探索が寄り道要素として機能することによって、壮大な北欧神話世界の冒険を実現している。探索で最も肝になっている要素のひとつが謎解きだ。前作でも謎解きによって道を切り開いたり、アイテムを見つけたりしていくゲームプレイが登場した本作だが、本作でもメインストーリー含め相当数の謎解きに遭遇する。
しかも、本作では扱える技の増加などにともない、前作には登場しなかったギミックまで多数追加されているので、謎解きの豊富さややりごたえも格段に増していると感じた。
本作で新たに登場した謎解きギミック。リヴァイアサン(斧)を投げて反射させ、目標物に当てる
加えて、今作では最初に訪れた時には通れなかった場所も、後にゲームを進めていく中で手に入ったアイテムなどを使用することで新たな道が開けるようになるといった展開が隠されているので、同じ場所でも訪れるたびに新しい発見がある。こういった部分はゲーマー心をくすぐられるポイントだった。
謎解きに詰まった際も、必ず解けるはずという信念を持ってチャレンジし続け、謎を解ききったときは、今作で達成感を最も感じられる瞬間のひとつと言える。
本作における探索要素は非常に魅力的なのだが、この探索要素を語るうえで重要なのがサイドクエストだ。本作では、新たな世界を訪れるたびにさまざまなサイドクエストに出会い、最終的には膨大な量のサイドクエストが遊べる。
サイドクエストの内容についても、依頼された敵を倒す、九界に散らばったアイテムをすべて見つける、隠された扉の鍵を集めるなど、実に多種多様でやり込む際は相当な時間を費やすことになる。
サイドクエストの中には、北欧神話に登場する巨大生物に出会えるイベントなども多数登場し、メインストーリーの遜色ないほどの満足感を与えてくれる瞬間も多々あるので遊び逃し厳禁だ。
巨大なクラゲのような生物「ハーヴグーヴァ」の解放イベント。本作のサイドミッションではさまざまな北欧神話上の生物に出会える
こういったイベントは、メインストーリーを進めながらでも常時解放されていくので、メインストーリーを急いでプレイするのではなく、マイペースに探索や寄り道をしてサイドクエストを埋めていきながらじっくりと物語を進めていくゲームプレイは、前作同様、今作でもかなり楽しめる。
本作でも、前作同様裏ボスやムスペルヘイムでの試練などがあり、屈指の強敵がクレイトス達を待ち受けているので、本作をプレイする際は、ぜひそれらにも挑戦してみてほしい。
なお、前作では「ヴァルキュリア」が裏ボスだったが、今作では新たな裏ボスにも出会えるはずだ。もちろん、裏ボスまでいかなくとも、多種多様な強敵がクレイトス達を待ち受けているので北欧神話の世界を隅々まで冒険し、幾度とある死闘を制していただきたい。
実体を持たないボス「ファントム」。こういった特殊な攻略法が求められる敵も登場する
本作は、アクションゲームとしてもかなり骨太で、ひと筋縄ではいかないバトルに仕上げられていることが前作の時点でも特徴的だったが、今作でもその戦闘デザインの根本は変わっていない。
迫りくる強敵の数々を、クレイトスの豪快なアクションでなぎ倒し、時には強力な敵と遭遇し苦戦を強いられる、爽快さとやりごたえが共存するバトルは今作でも健在だ。本作では、パリィによるスタンや武器の切り替え、スキル解放による派生アクションの増加によって戦法が広がるというバトルデザインがメインに据えられているのだが、ここでもいくつか進化したポイントがある。
ひとつは繰り出せる技のバリエーションの増加だ。リヴァイアサンとブレイブ・オブ・カオス、それぞれのスキルツリーはより強化され近距離と遠距離、両方の場面で派生できる技が増えた。
さらに、本作は、ゲームを進めると使える技が増える仕組みになっており、最終的に使える技の多さは、前作とは比較にならないものになっている。そして同行キャラクターもアトレウスだけではなく、前作で仲間になったドワーフ、シンドリやブロック達も戦闘に加わることがあり、付いてくる仲間によっても戦闘の色合いが変わってくる点は今作ならではの新鮮なポイントと言える。
装備品に関しても、レリックや各武器のアタッチメント、強化できるアイテムなどが増えており、装備を充実させていく過程にも前作以上の深みがある。
経験値を消費することで各武器の派生技が次々と解放されていく
そして、本作の戦闘において最も新鮮さを感じられたのが「アトレウス」パートだ。主人公クレイトスだけではなく、息子アトレウスの操作パートも登場しており、こちらの戦闘の完成度もすばらしい。
「アトレウス」パートでは弓術と体術を生かした戦闘が楽しめる
前作では、父クレイトスのサポート役に徹し、単独行動することはなかったアトレウスだが、今作では弓によるアクションと近接攻撃を駆使し、父クレイトスのもとを離れ自力で敵に挑む姿が描かれる。
初めてアトレウスを操作した時は、何よりその快適さにおどろかされるだろう。父がいなくても巧みな弓術と体術で敵をなぎ倒していく様子は、前作時には幼かったアトレウスの成長を感じるとともに、彼もまた「戦争の神」の血を引く者であることをわからせてくれる。
レイジゲージ(消費することによって無敵モードになれるゲージ)を使用したアクションでは、狼に変化し敵を食い倒すなど、クレイトスとはまったく違うものの、同等かそれ以上の爽快さを感じさせてくれる。この「アトレウス」パートは本作の目玉のひとつと言える新要素だ。メインの操作キャラであるクレイトスに比べると、スキルや装備などのやり込み要素は充実していないが、本作だからこそ味わえる新パートとして大きなやりごたえを感じる部分と言える。
戦闘部分に関しては、基本的なベースが前作をそのまま引き継いでいるので、先ほど述べた探索部分ほどの進化は感じなかったが、新要素「アトレウス」パートを筆頭に前作よりできることが増えたのは明らかだ。強化など没頭できる部分も増したので、これらの部分が本作をやり込むひとつの原動力になっていることは間違いない。
おそらく前作をプレイ済みで今作を購入しようと思っている方が最も気になっている部分であり、楽しみにされているのは今作の物語だろう。ここでは核心的なネタバレについては触れないが、一切のネタバレのリスクを冒したくないという人はスルーしていただければと思う。
本作は、「ゴッド・オブ・ウォー」北欧神話編の完結作であり、前作で起こった争い、そして判明した真実を元にクレイトスとアトレウスが最終戦争ラグナロクへと向かっていく物語が描かれる。
凄惨な過去を捨て去り、平穏な生活を送るため前作で北欧神話の世界へとやってきたクレイトス。北欧神話の神々との最終決戦までの過程で何が起こり、登場人物それぞれがどのように動くのか、クレイトス達に待ち受ける運命はいかなるものなのか?本作の手に汗握る物語はおそらく多くのプレイヤーを釘付けにすることだろう。
本作では前作の流れからさまざまな神々との戦いを描き、最終戦争ラグナロクまでが描かれる
本作で非常に重要な存在になってくるのはクレイトスの息子であり、もうひとりの主人公であるアトレウスだ。今作は前作から3年後の世界を描いているため、アトレウスも身体的かつ精神的に随分と成長している。
たとえば、前作では崖を登る際はクレイトスの肩に掴まっていたアトレウスだが、今作では自分で崖を登り、先ほど述べた「アトレウス」パートの様に戦闘でも前作とは比にならないほどの活躍を見せてくれる。
前作から声変りもし、動物に対してのやさしさを人一倍持つほど内面的にも自立してきているアトレウス。父クレイトスはそんな息子とどう向き合い、どのような答えを出すのか。本作の物語の核はそこにある。
父から自立し成長していくアトレウスは、道中でさまざまな出会いを遂げながら、自分の道を進んでいく
クレイトスは「父として息子にどう向き合うべきか」と悩み続ける
息子に自分と同じ「戦争の道」を歩んでほしくないクレイトスと、主神オーディンの野望を暴きラグナロクを止めたいアトレウス。互いの意見は徐々に衝突し、すれ違っていく。そしてアトレウスは、父のいない場所でいろいろな人たちと出会いを重ね、ひとりの子どもから大人への階段を上がっていくのだ。
クレイトスは、父としてアトレウスに何をしてやれるか。それを悩み、息子への姿勢を模索しながら物語は確実に最終戦争ラグナロクへと進んでいく。父と息子の関係性を描く物語が非常に重厚に、かつ、ていねいに描かれており、その過程で起こる出来事も衝撃的な展開の連続なので、「ゴッド・オブ・ウォー」北欧神話編の完結をぜひ見届けてほしいと思う。
そして今作ではオーディンやトールを始め、前作で登場しなかった北欧神話の神々が次々と登場する。クレイトスとアトレウス以外のキャラクターについても非常にていねいな人物描写がされているので、この点も必見だ。
物語冒頭、クレイトス達に密会するオーディンとトール。本作では前作時に登場しなかった北欧神話の神々が次々と登場する
「ゴッド・オブ・ウォー」を遊ぶ際に、北欧神話は知識として必須ではないものの、元々の神話の内容と照らし合わせながら遊ぶと、さらに物語の深みが増して面白いので、本作をプレイする際はぜひ登場する神々について調べながら北欧神話世界を楽しんでいただければと思う。
原話に忠実に、ときに独自の解釈を加え展開される壮大な北欧神話の冒険劇を余すところなく遊んでみてはいかがだろうか。
北欧神話の全世界を舞台に繰り広げられる壮大な冒険劇と、前作からさらに充実した探索要素、バリエーションが進化した戦闘部分などが特徴の「ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク」。ストーリー、やり込み要素含めかなりやりごたえのある完成度でボリュームも文句なしの1作だ。
しかし、そんな「ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク」なのだが、本作は続編作ということで前作「ゴッド・オブ・ウォー」をプレイされていない人には、少々おすすめしづらいという事情がある。
続編なので当然と言えば当然だが、前作でクレイトス達がどのような敵と戦ったのか、その戦いの果てに何を知ったのかなどの情報は、今作の物語にのめり込むのに必要な要素だ。
前作の物語を知らずに今作を100%楽しむのは正直難しいだろう。前作のあらすじを説明してくれるパートはあるが、あくまで前作をプレイした人が思い出すためのもの程度の役割で、前作未プレイの人が問題なく楽しめるほどのカバーはさすがにできていない。
もちろん、ストーリーに関してはほどほどにわかる程度でもいいという人もいると思うし、本作はそういった人でも十分楽しめる完成度の高さだと思う。しかし、前作をプレイせずに本作をプレイするのは、本作の物語としての魅力を考慮したときに、もったいなさ過ぎると感じるのが、筆者の個人的な意見だ。
筆者としては、シリーズ未経験の人は、まず本作ではなく前作「ゴッド・オブ・ウォー」を遊んでみてほしい。前作も、その美しさと完成度を見れば、今遊んでも十分楽しめる作品だ。前作を遊んでから本作をプレイすると、その魅力を余すことなく堪能できるはずだ。
シリーズ未プレイの方は前作「ゴッド・オブ・ウォー」(2018)からプレイするのがおすすめだ
YouTubeを中心に活動するゲーマー。PSやPCのソフトを中心にゲーム紹介をする機会が多く、同分野を専門に活動しています。プライベートでは任天堂などの作品も頻繁に遊びます。