2022年11月8日、セガより「ソニックフロンティア」が発売された。今回は、本作のPS5版を、やりこみ要素についても遊びながらストーリークリアまでプレイしたので感想を述べていく。
結論から述べると、本作は、これまでの“ソニックアクション”をオープンワールド風のフィールドデザインに落とし込むのに成功していることは間違いない。豊富な探索要素が散りばめられたフィールド、その中をソニックのスピードアクションで駆け巡りながらさまざまなアイテムを集め、強敵を倒していく。
このゲームデザインは、まるでずっとジェットコースターに乗っているかのような飽きの来ないゲーム体験を作り出している。プレイヤーからの評判も高く、Googleのレビューでも94%(2022年11月21日時点)から高評価を得ており、ソニックを初めてプレイする人から往年のソニックファンまで幅広いプレイヤーが楽しめる作品と言えるだろう。
ちなみに、筆者は、実のところソニックシリーズにそこまで精通しているわけではなく、ゲーマーとして常識レベルに知っている程度の人間なのだが、そんな筆者にとっても本作は終始楽しめる作品であったと同時に、遊びやすさとやりごたえがバランスよく感じられた。
そのすべてが完璧だというわけではなく、不満を少々覚える点もあったが、総合的には世間の評価同様に十分楽しめる作品であったと自信を持って言える。
今回は「ソニックフロンティア」のアクションとフィールドデザインの観点を中心におきながら、本作の魅力などを述べていく。
本作の主人公ソニック・ザ・ヘッジホッグ
「ソニックフロンティア」は、セガの大看板キャラクターであるソニック・ザ・ヘッジホッグを主人公にしたスピードアクションゲームの最新作。オープンワールド風のフィールドとソニックのスピードアクションを融合した作品だ。
ソニックは、古代人たちの遺跡が眠る忘れ去られた島、スターフォール諸島を舞台に、はぐれた仲間たちを探しながら、島のギミックを解いたり、遭遇するボスとのバトルに挑んだりしながら冒険していく。冒険の途中に、ソニックは謎の少女、セージと出会い、彼女の目的や島に潜入中のDr.エッグマンに迫っていくことになるのだ。
エミー、テイルス(画像上)、ナックルズ(画像下)といったおなじみの仲間たちも登場する
本作で登場する謎の少女セージ
シリーズおなじみの敵であるDr.エッグマンも登場
本作の舞台となるスターフォール諸島は5つの島に分かれている。フィールドにはソニックシリーズお馴染みのグラインドレールが張り巡らされており、ソニックのスピードアクションで島中を探索するゲームプレイが基本となっている。
島の探索だけでなく、「電脳空間」に入り込んで展開される、シリーズの伝統であるステージ型のエリア攻略や、ソニックらしいアクションを生かした大小さまざまな敵との戦闘など、ゲーム内に盛り込まれた要素は実に多様だ。
ここからは、こういった要素について触れていき、本作ならではのゲーム体験について述べていこうと思う。
“オープンゾーン”と呼ばれる広大なフィールドデザイン
まずは本作のフィールドデザインから触れていこう。本作には、オープンワールド風の開けたフィールドが数個用意されており、その中をソニックの高速アクションで駆け巡るデザインが主体となっている。
公式ではこのフィールド形式を「オープンゾーン」と呼称しているのだが、フィールド内には謎解きギミックや各種アイテム、仲間たちとの会話パート、電脳空間ステージなどが点在しており、プレイヤーは自由にフィールドを駆け回りながらオープンゾーンのマップを埋めていくデザインだ。
点在している謎解きギミックをクリアすると、周辺のエリアのマップがアンロックされ、各ポータルを巡って電脳空間に挑む、というフィールドデザインは、昨今のゲームではさほど珍しくない。
さまざまなギミックや敵が用意されたフィールド
驚くべきなのは、フィールドを周る過程における快適さである。実は、本作にはオープン型のフィールドでは必須と呼べるファストトラベル機能が最初から用意されていない。ファストトラベルは、各島の謎解きギミックをすべてクリアしないと解放されないため、ソニックで一度島のすべてを踏破しなければ使えないのだ。
通常のオープンワールドゲームであれば、広大なマップを移動するのに時間がかかってしまうため、このデザインは非常に面倒なのだが、本作では、このあたりの煩わしさをソニックの音速アクションが解決しているのだ。
離れた場所に行きたいときでも、ソニックの高速移動を持ってすれば、1〜2分で到達できるうえに、その道中でもストーリーを進めるために必要な仲間とのメモリーアイテムや、敵を倒すことでポータルを開くためのギアが手に入ったりするので、移動中の時間もむだな要素になっていない。
ソニックの移動スピード自体もゲーム中に成長していくため、フィールドを周る速度がどんどん増していくのも快適さを語るうえで重要な点だ。ソニックの音速アクションを存分に発揮するために、あえてファストトラベルを使えなくするという選択が、音速アクションを楽しめる時間を増やすとともに、オープンなフィールドに点在する各ゲーム要素に自然と目がいくようにしているのが、本作の非常に秀逸な点だろう。
本作のオープンゾーンには、さまざまなゲーム要素が点在しているのだが、そのひとつが先述した電脳空間だ。倒した敵から手に入るポータルギアを、マップに点在するポータルに納めると電脳空間に入ることができ、このステージでは歴代のソニックシリーズ伝統と言えるスピードランが楽しめる。
電脳空間では、ソニックファンなら一度は見たことがあるおなじみの風景のステージがいくつも用意されている
電脳空間は、各種障害物や、敵が設置された多様なステージのクリアに挑戦するシリーズでもおなじみのミニゲームだ。本作では、相変わらずのスピードゲームとしての楽しさだけでなく、さまざまなソニックアクションの練習、おさらい要素として機能しているのが魅力のひとつだ。
単にステージをクリアするだけでなく、Sランクタイムでのクリア、すべてのレッドリングの回収、特定数以上のリング回収、といった別の目標を達成する楽しさもある。各目標を達成した数によってエメラルドキー(エメラルドポータルを開くために必要なアイテム)の獲得数が変わるので、同じステージを何度も繰り返してプレイすることになる。ソニックシリーズ特有の中毒性が詰め込まれているため、何度も挑戦するのがどんどん楽しくなっていくのだ。
ただし、電脳空間の中には、すべての目標を達成しようとすると急に難易度が跳ね上がるステージが一部あるので、その点は注意が必要だ。一度でもミスをしたら、Sランク獲得のために必然的に最初からやり直す羽目になるため、難易度が明らかに高いステージでは1時間弱もの間、挑戦し続けるということもあった。
ついついムキになってプレイしてしまうのもソニックらしさだと思うが、必ずしもすべての目標を達成しなくても十分な数のエメラルドキーは集まるので、ストーリー1周目はプレイヤーそれぞれが自身の腕に応じてやりこみ具合を調整してみてもいいかもしれない。
次に紹介したいのは、オープンゾーンに用意された謎解きギミックだ。「?マーク」の看板が記されたギミックが島中に点在しており、用意されている謎解きをクリアすることによってアイテムが手に入ると同時に、マップが開けていき各エリアの詳細も明らかになっていく。
本作では謎解きギミックをクリアすることによってマップ情報が開けていく
この謎解きギミックは、先ほど述べたファストトラベルを解放するために必要な要素でもあることから、見つけ次第クリアしていくのが本作の定石だ。サイループ(△ボタンを押しながらソニックが地面に円を描くことで発動するアクション)を使用しなければ解けないギミックや、夜の時間帯にしか解けないギミックがあったりするので、最初のうちは解き方がわからなくて困惑するかもしれないが、慣れてくると難しくなく、淡々とこなしていけるだろう。
空中の輪にボールを通す、タイルをひと筆書きですべて踏むなど、本作の謎解きギミックは簡単に解けるものも多い
謎解きギミックをクリアすると、チカラの実やマモリの実など、ソニックのステータス強化に使えるアイテムが手に入る。謎解きとしては、そこまで凝ったものとは言えないものの、次々とギミックをクリアしてマップを開けていく楽しさがある。
オープンゾーンを語るうえで非常に重要なのは、フィールド内に張り巡らされた大量のグラインドレールだろう。離れた場所への移動や、高所への移動にはグラインドレールを使う機会が多い。このグラインドレールこそが、ソニックシリーズ特有のスピードアクションをオープンフィールドにうまく融合させたと感じられる要素になっている。
本作の”オープンゾーン”には大量のグラインレールが張り巡らされており、スピード感あふれるゲーム体験を実現している
探索中には2Dゲーム視点で進んでいく場面も多々登場し、これがまたソニックらしさを増幅させている
ただ単にフィールドを走り回るだけでなく、レールに乗って横スクロール風に展開されるアクションや、ステージ風の空間を進んでいくことで別の場所に辿り着けるデザインになっているため、本作のオープンゾーンは“常にソニックを遊んでいる”という没入感を与えてくれる。
ふんだんに散りばめられたソニックの爽快なスピードアクションと、オープンゾーンのエリアを埋めていく快感を同時に実現したことによって、ソニックの最新作に求められる面白さと新鮮さの両方を実現している点こそが、多くのユーザーから高く評価される理由のひとつだろう。
次に、本作のバトルについて解説しよう。おなじみのスピンアタックなどソニック特有の音速アクションを生かしたバトルは、本作でももちろん健在だ。
基本となるアクションが用意されているほか、スキルツリーでアクションや必殺技が解放されていき、ゲームを進めるごとに使用できるアクションが増えていく。ただし、スキルツリー自体はそこまで膨大ではなく、序盤のうちだけでも半分以上のスキルが解放できてしまうので、スキルがなかなか増えなくてもどかしいということはないだろう。スキルの中には遠距離攻撃が可能になるものもあるので、近接だけでは戦いにくい敵にも対処しやすくなる。
本作のスキルツリー
空中で衝撃波を連撃できるスキル「ソニックブーム」。安全に敵の体力を削れるので序盤のうちは特に重宝する
なお、スキルツリーの半分ほどで解放できるオートコンボスキルを使用すれば、コマンドを逐一入力しなくても勝手に技が発動する設定にでき、驚くほど簡単にソニックの爽快アクションを堪能できる。筆者は、バトルの楽しみ方としてもったいなさを感じたのでしばらく使用してオフにしたのだが、初心者でバトルを手軽に楽しみたいという人にはオススメしたい。
そして、冒険の道中には、実に多種多様な敵が登場する。敵はそれぞれ攻略法が違い、単純な攻撃で倒せるものもいれば、攻略法を発見しないと初見での撃破に苦戦するものもいる。
守護神と呼ばれる比較的大きな敵には、リングに叩きつけてスタンをとるバトルや、空中に打ち上げられたあとにボスの頭上まで戻ってきて攻撃するバトルなど、単純な殴り合い以外のバリエーションが用意されているのが楽しい点だ。
そして、こういったバトルにもれなくソニックシリーズのゲーム性を落とし込んでいるのが、すばらしいと思える点である。
リングに叩きつけてスタンを取ることで倒す敵「SUMO」
グラインドレールを滑走し、攻撃を避けながら敵に近づいていくバトルはソニックらしさ全開
さらに、本作の大ボス(各島の最後となるボス)である巨神戦では、ソニックがスーパーソニックとなり、無敵モードになりながら壮大な戦闘を繰り広げていく(敵からのダメージはないが、所持リングが徐々に減っていきゼロになる前に倒さなければならない)。
巨神戦で、ソニックは7つのカオスエメラルドを集めて”スーパーソニック”に変身する
スーパーソニックの怒涛の超高速アクションと、ボーカル付きのロックサウンドが迫力の巨神戦をさらに盛り上げる
スーパーソニック状態で巨神からの一撃をパリィし、ひるんだすきに必殺技を叩き込む。巨大なボスをスーパーソニックで滅多打ちにする爽快感はさすがの完成度だ。本作のバトルは、ソニック初心者への配慮が感じられると同時に、最新作として求められる爽快感とやりごたえも感じられる内容になっており、本作の中でも最も快感を覚えやすい。
本作は、スターフォールド諸島を舞台に、かつてこの地に存在した古代人の謎を解き明かしながら、謎の少女セージの目的とDr.エッグマンを追っていく、というのがメインストーリーだ。
各島には電脳化されたエミー、ナックルズ、テイルスなどおなじみの仲間達がソニックの助けを待っており、彼らにメモリーアイテムを届けることでソニックと仲間たちの会話、島の住人ココ達のイベントなどを見ながらストーリーを進めていく。
フィールドで集められるメモリーアイテムを電脳化された仲間たちに捧げることで会話パートが始まり、ストーリーが進行する
スターフォール諸島を冒険していく中で、ソニックは仲間たちとの絆、それぞれの想いを再確認していく
仲間との会話では、過去の戦いを思い出したり、仲間の胸の内を聞いたりすることができる。謎のAI少女セージとの会話パートも用意されており、メモリーアイテムを持っていけば、セージの目的と内情に少しずつ迫っていくことができる。こうして物語を進めていくことで、古代人たちの秘密が判明していく、というような流れだ。
物語自体は本作でそこまで大きな要素とは感じなかったが、おなじみの仲間たちとの関係性などについて知れる機会でもあったので、ソニック初心者の筆者でも自然と楽しめた。
ただ1点だけ不満があるとすれば、各仲間との会話が終わった後に時折挿入されるミニゲームだ。このミニゲームは、必ずしもソニックのアクションを生かしたものではなく、プレイしていてそこまで楽しいものではなかった。
散らばったココを1か所に集めるなど、ソニックアクションと関係ないものもミニゲームとして用意されている
筆者が個人的に最も苦労したミニゲームが「ピンボール」。クリアに必要なスコアが高いうえに、失敗するとゼロからやり直さなければならない
最初のうちは息抜きでミニゲームを遊んでいたのだが、何度も挿入されるうちに楽しさが減っていき、中にはソニックアクションとまったく関係ないうえにクリア難易度が高く、失敗すれば最初からやり直しというミニゲームもあったので、最終的には蛇足のように感じてしまっていた。
あくまでも筆者の個人的な感想であるが、この部分は少々無理やり挿入されたと感じずにはいられず、本作のゲームテンポを若干悪くしていると感じた。
「ソニックフロンティア」は、ソニックの音速スピードアクションから展開される伝統的な要素と、オープンゾーンと呼ばれるフィールドデザインを融合させた作品として一定の成功を収めているのは間違いない。
ソニックという前提を除いた場合、ゲーム自体は簡易的に仕上げられている印象も受けなくはないし、先ほど述べたミニゲームなどのように少々作りに荒さがみられる部分もある。ただし、それらを含めても本作のゲーム体験は、爽快感と没入感が大部分を占めており、総合的に十分過ぎるほどの完成度だ。
もともとソニックのゲーム自体が、ソニックらしいやりごたえを感じられる難易度と、遊びやすさのバランスという観点で近年なかなか良作に恵まれず、激動のゲーム業界の中で苦戦を強いられていたのだが、本作はそのバランスを見事に調和し「ソニックはまだまだ輝ける」ことを証明した作品と言えるだろう。
また、本作には初心者用のモードと、経験者向けのモードの両方が用意されているので、幅広いユーザーが楽しめるだろう。筆者としては、初めてのソニック体験として間違いなく上質なゲーム体験が堪能できるため、ソニックは知っているけど遊んだことはないという人にこそ、ぜひ手に取っていただきたい。
なお、本作はNintendo Switch版とPS4/5版、Steam、Xbox Series X|S、Xbox One版が用意されているのだが、Nintendo Switch版はPS4/5版などと比べてグラフィックの描写やFPS(フレームレート)、ロード時間などの点で大きな差があるので、PS4/5をお持ちの方はそちらでプレイするのが筆者的に断然オススメだ。可能であれば、PS5版でプレイするのが最もよいと思う。
広大なフィールドを音速で駆け巡っていくゲームプレイが基本となるので、高スペックな環境でプレイできるのであれば、その分だけ没入感は高まる。もちろん、Nintendo Switch版はオススメできないというわけではないので、Nintendo Switchしか持っていない人はそのままで問題ないが、本作をよりいいゲーム環境でプレイしたいという人はぜひ知っておいていただきたい。
YouTubeを中心に活動するゲーマー。PSやPCのソフトを中心にゲーム紹介をする機会が多く、同分野を専門に活動しています。プライベートでは任天堂などの作品も頻繁に遊びます。