レビュー

PS5「ゴッサム・ナイツ」全クリレビュー。バットマン亡き後の世界とは?

2022年10月21日、セガよりPS5、Xbox Series X/S、PC向けのソフト「ゴッサム・ナイツ」が発売された。本作は、DCコミックスの「バットマン」シリーズを題材にしたオープンワールドアクションRPGゲームだ。今回は、PS5版をストーリークリアまで遊んだので感想を述べていく。

最初に述べておきたいのだが、本作「ゴッサム・ナイツ」は、世間の評価がそこまで高いとは言えない。海外のレビュー総合サイトmetacriticではメタスコア69点、ユーザースコア4.7点とあまり振るわない結果で、比較的ネガティブな意見も見られる。

筆者も実際にプレイしながら感じたのだが、本作はプレイしながらどこか物足りないという感想を随所に抱きがちだったし、単純にゲームとしてのクオリティが期待されていた水準を満たしていないと感じる部分もあった。

だが、本作がまったく魅力のない作品かと言われると、もちろんそんなことはない。美しいビジュアルのゴッサム・シティを舞台にしたオープンワールドとしてのやりこみ要素やスキル解放により広がるバトルやアクションなど、のめり込める部分も確実に存在する。

実際、本作は海外のヒットチャートにランクインするほどの評価も得ており、発売から1か月がたった現在でも多くのプレイヤーがプレイしている。

そうしたさまざまな評価があるなか、本作はバットマンシリーズファンであれば誰もが楽しめる作品かと言われると、これもまた少し違う。バットマン好きの中でも意見が分かれがちな部分があり、そういった目線でも楽しめる人とそうでない人に分かれるだろう。

ちなみに筆者は、バットマンシリーズの熱烈なファンではないが、バットマンやゴッサムなどの映画作品をひと通り見るくらいには触れており、作品自体は好きだ。今回は、そんな筆者なりの目線ではあるが、どういった人が本作を楽しめるのか? 実際にプレイした感想をもとに分析も交えながら紹介していく。

また、本記事はストーリーについても触れており、場合によってはネタバレに感じられる恐れがあるので、その点に関しては注意していただきたい。

「ゴッサム・ナイツ」とは?

「ゴッサム・ナイツ」の物語はバットマンであるブルース・ウェインが宿敵ラーズ・アル・グールとの戦いの末、死亡するところから始まる。

物語冒頭、ラーズ・アル・グールとの死闘の末、バットマン(ブルース・ウェイン)はこの世を去る

物語冒頭、ラーズ・アル・グールとの死闘の末、バットマン(ブルース・ウェイン)はこの世を去る

プレイヤーは、バットマンの意志を継ぐ4人のヒーロー、ナイトウィング/レッドフード/バットガール/ロビンのいずれかを選び、バットマン亡き後の凶悪犯罪が無数にはびこるゴッサム・シティを守っていく、というのがゲームの本筋だ。

4人のヒーローは拠点であるベルフライに戻るたびに切り替えることができ、基本的には好きなヒーローを使い続けられる設計になっている。

プレイヤーはナイトウィング/レッドフード/バットガール/ロビン、いずれかを選んで操作する。

プレイヤーはナイトウィング/レッドフード/バットガール/ロビン、いずれかを選んで操作する。

ゲームプレイは、メインストーリーや各種チャレンジ、ゴッサムの犯罪行為阻止、各ヒーローの育成要素、最大2人までの協力プレイなどが含まれており、ゲーム内で遊べる要素自体は非常に豊富だ。無料アップデートにより、最大4人までの協力プレイが可能な「ヒロイックアサルト」も追加された。

メインストーリーには、ハーレイ・クインやペンギンなどバットマンシリーズでたびたび見かけるキャラクターが登場し、シリーズを知っている人からすればなじみやすいものとなっている。ここからは各要素について触れていき、本作の具体的な感想と評価を述べていこう。

美しく凶悪な街「ゴッサム・シティ」を冒険するオープンワールド体験

まずは、本作の舞台であるゴッサム・シティでできることを中心に本作のオープンワールド体験の所感を述べていこう。本作のオープンワールドでは、各ヒーローとなってさまざまな凶悪犯罪を阻止し、バットマンの残したデータを探したり、お助けキャラクターのもとを訪れ用意されたチャレンジをクリアしたり、各ヴィランに用意されたチャレンジミッションを進めたりしていくなどのプレイが中心になる。

発生する犯罪は夜のパトロールを再開するたびにリセットされる作りになっており、街の中の犯罪行為がなくなることはない。そのため、やることがなくなってしまうことはなく、飽きるまでゴッサムの治安維持を遊び続けられるのが本作の特徴だ。

ゴッサム・シティで無限に発生する犯罪を解決していく

ゴッサム・シティで無限に発生する犯罪を解決していく

第1印象としては、率直にゴッサム・シティの美しさとフィールドを移動する快適さは高く評価できるポイントだと感じた。本作では、すべてのキャラクターでバットサイクル(バイク)とワイヤーアクションを使用することができ、ゴッサム・シティ市内の移動や高所への移動などは爽快感が味わえ、かつ、非常にスムーズに行える。

本作ではバットサイクルとワイヤーアクションによってスムーズなオープンワールド移動を実現している

本作ではバットサイクルとワイヤーアクションによってスムーズなオープンワールド移動を実現している

ただし、フィールドの移動に関してネックとなっているのは、本作のファストトラベルシステムだ。本作のファストトラベルは各地点で空中に浮遊するドローンをスキャンし中立化させることで解放できるようになるのだが、このシステム自体は非常にテンポが悪い。

ドローンがどこを飛んでいるかを見つけにくい場合もあるうえに、シールドを張ったドローンはドローンが充電地点で休憩するタイミングでしかスキャンできないなど、妙に時間と手間がかかる作りになっている。ファストトラベルは言わずもがなオープンワールドである本作においてすべて解放するのが必須であり、この部分の印象があまりよくないのは本作のひとつのマイナスポイントだろう。

ファストトラベルの解放イベントは、妙に手間がかかる作りになっている。

ファストトラベルの解放イベントは、妙に手間がかかる作りになっている。

ただし、オープンワールドのシステム自体は、ある程度の没入感を発揮するのには成功している。ゴッサム・シティは美しくも陰鬱な雰囲気を醸し出しているし、その中をバイクで駆け回り、治安を守り続けるゲームプレイ自体はオープンワールドらしさを全面に打ち出すことができていると感じた。

各イベントやミッションのテンポは若干悪く感じるところがあるため、単調な印象を抱くかもしれないが、オープンワールド好きである筆者にとってはついついすべてのポイントを回りたくなってしまう構造になっていた。

こういったゲームプレイは、2015年に発売された「バットマン:アーカム・ナイト」(本作とは別の開発会社Rock Steady Studioが開発したゲーム)で実現されていたものであり、本作が特段突出したことを成し遂げたわけではない。ただ、ゴッサム・シティを舞台にしたオープンワールドとしての水準をクリアしていることは間違いない。

アクションに単調さが目立つものの、のめり込める育成要素が楽しい

本作のアクションは、作品中でも不評が集まりやすいポイントだ。近接攻撃や遠距離攻撃、回避、投げ、つかみ攻撃、キャラ特有の必殺技などのアクションで構成されているのだが、このバトル自体は単調に感じる。ひとつひとつの攻撃は相手を殴るだけで、連続攻撃によるコンボなどもなく、地味に思える部分が多かった。敵の攻撃にも派手さがないため、特に序盤のうちは戦闘にワクワクしないことがあった。
これは本作のバトルが単純に精度高く作られていない部分で、実際にバトル自体が面倒くさく飛ばしたくなるような瞬間もあるため、本作の中でも特に退屈さを覚えやすいところだ。

本作のバトルは一度に湧く敵の数も多く、特に序盤の内は退屈さも覚えやすい

本作のバトルは一度に湧く敵の数も多く、特に序盤の内は退屈さも覚えやすい

ただそんなアクションパートにものめり込める要素がある。それが各ヒーローの育成要素だ。本作ではレベルアップする度にAP(アビリティポイント)を獲得でき、そのAPを消費することによってヒーローのステータスを上昇させたり、チャレンジをクリアすることで新しい技を会得できたりする。この育成要素があることでヒーローごとに戦法のバリエーションやアクションに新鮮さが加えられていくので、最大まで育成するにはかなりの時間を要するが、最終的にはヒーローアクションを楽しめる作品に仕上がっている。

本作ではチャレンジをクリアするたびに新技などが獲得でき、アクションの幅はどんどん広がっていく

本作ではチャレンジをクリアするたびに新技などが獲得でき、アクションの幅はどんどん広がっていく

アクションのモーションなどに関しては、筆者的にはそこまで悪いものではないように感じた。筆者はバットガールを主に使用しながらプレイしたのだが、サイレント・テイクダウンする際は足を使って敵の首を絞めるなどバットガールらしさを感じられるモーションになっているうえに、アンブッシュ・テイクダウン(不意打ち)時や最後の敵にとどめを刺す際のアクションムーブは見ていて気持ちがいいものになっている

足で首を絞めるバットガールならではのサイレント・テイクダウン。本作では状況に応じてアクションのモーションが変わる

足で首を絞めるバットガールならではのサイレント・テイクダウン。本作では状況に応じてアクションのモーションが変わる

各ヒーローで特性が違い、解放されていくスキルや技も違うので、ひとりのキャラを使い込むも、状況に応じてキャラを使い分けるもプレイヤーの自由に決められるようになっている。ゲームをやりこむほどにアクション部分で新しい発見が用意されているのは、「ゴッサム・ナイツ」の世界に没頭するうえで重要な要素だ。

バットマン亡き後のゴッサムの闇を探る、4人のヒーローの物語

本作では、バットマンであるブルース・ウェインが死亡した後のゴッサム・シティを舞台に、バットマンが生前追っていたゴッサムの闇を4人の後継ヒーローが探っていく物語が展開される。

バットマンが追っていた事件はやがてゴッサムの裏側の組織へと繋がっていく

バットマンが追っていた事件はやがてゴッサムの裏側の組織へと繋がっていく

本作の物語についても不評な部分は存在するのだが、最も問題点に感じる点はローカライズに関する部分だ。本作には日本語吹き替えが存在しないため、多くのプレイヤーは日本語字幕でプレイするのが主になると思うのだが、この字幕が非常に読みにくい。

海外製ゲームで時折あるのだが、文章が途中で改行され、字幕が一連で読めない現象が本作でも起こっており、物語の没入感に悪影響を与えている。日本語吹き替えがあればこの問題はそこまで重要ではなかったのだが、本作の字幕は日本人にとって不便さを感じる結果になってしまっているのだ。字幕は、ストーリーとは関係ないかもしれないが、ストーリーに没入するための要素でもあるため、問題点として挙げておきたい。

日本語字幕は文章が途中で切れたまま表示されることがあり、見にくいことがある

日本語字幕は文章が途中で切れたまま表示されることがあり、見にくいことがある

次に物語の内容についてだが、この部分も楽しめる人とそうでない人で分かれる印象を受けた。本作には主人公である4人のヒーローのほかに、バットマンの執事であるアルフレッド、敵役のハーレイ・クインやMr.フリーズなど、バットマンシリーズでは有名なキャラクター達が登場する。ゆえに、これまでのバットマンの世界観設定に準じ、安定した内容の物語を提供しようとしているのだが、この部分が評価の分かれるポイントだ。

ハーレイ・クイン(上)とMr.フリーズ(下)

ハーレイ・クイン(上)とMr.フリーズ(下)

たとえば、各キャラクターの人物描写に深みがなかったり、4人のヒーローの過去に関してはすでに知られているものとして触れられるだけであったり、バットマンに精通している人であればあるほどゲームとして特別感が感じられない物語だという評価が多い。やはりバットマンの死後という特別な状況を用意したからこそ、シリーズ作品としてドラマチックな内容を期待していた人たちにとって、本作の物語は物足りないのかもしれない。このことが一部のバットマンファンの本作に対する失望につながっている部分もおそらくあるだろう。

いっぽうで、筆者も当てはまるのだが、バットマンを知り尽くしているわけではない側からすると、本作の物語の内容は楽しめるものだった。主人公である4人のヒーローはコミックにしか登場していないキャラのため、彼らについて知れる機会であったことも新鮮であったし、映画「バットマン」シリーズなどを見るだけでは知れなかったキャラクターもいる。

そのため、バットマンという作品の知らない部分を発見するという意味で興味を持てるところがあった。捜査パートや謎解き部分などによる物語の単調さこそ否めないものの、未知だったバットマンの領域を知れるという意味では、本作の物語や世界観の設定などはある程度成功しているように思う。

本作が制作された意図として、これまであまり多くのメディアに露出してこなかったバットマンの新しい部分にスポットを当てたいという狙いはあっただろう。この部分に関しては、本作の少し特殊なところで、バットマンを知り尽くしている人ほど特別感がなく、バットマンに対する潜在的な興味がある人ほど楽しめるところなのかもしれない。本作の購入を検討する人はぜひ知っておいていただきたい。

総評:「ゴッサム・ナイツ」はどういった人にオススメか?

「ゴッサム・ナイツ」をオススメできるのは、長時間がっつりやり込むゲームを楽しめる人だろう。本作は、オープンワールドのやり込み要素や各キャラクターの育成要素、武器装備作成などを進めていくことによって、ゲームとしてのテンポが活性化し楽しめる領域が増えていく作りになっている。

本作を楽しむうえで、ボリュームのあるオープンワールドなどを普段から遊び慣れていることはかなり重要に思う。実際、本作のSteamのレビューページを見てみると、100時間以上本作をプレイしている人も珍しくない。じっくり腰を据えて遊ぶゲームとして見るならば、本作は決して悪くない作品だ。

反対に、比較的短時間でサクッとゲームを楽しみたいという人にはオススメしづらい。ゲームを始めたその瞬間から楽しく、あっという間に最後までプレイしてしまえるようなゲームが好きな人は、避けたほうがいいだろう。

次にオススメしたいのは、先ほども言ったように、「バットマン」作品に対して興味はあるがそこまで深く知っているわけではないという人だ。主人公である4人のヒーロー達をはじめ、今まで自分が知らなかったバットマンの領域に新鮮さを感じられる人ほど、本作は楽しめるはずだ。

反対に、バットマンに対してはコミックの内容含めよく知っているという人であれば、本作はシリーズファンであっても無理にプレイする必要はないと思う。もちろん、映画などを見てバットマンの基本登場人物を知っているくらいの前提知識は必要不可欠だ。バットマンの世界を自分なりに深堀したいという方は本作を活用してもいいだろう。

上記の2つのポイントは、本作の購入を決めるうえでどちらも大変重要な要素だと思うが、もうひとつこれがあればなおよしというポイントがある。それは、協力プレイできる友達や知り合いなどがいる人だ。

本作の戦闘の単調さなどは、そもそもひとりでプレイしていることによる部分が大きく、協力プレイを活用すれば、沢山湧いてくる雑魚敵に囲まれることによるストレスや、やたら体力値だけが高く硬い敵との長時間のバトルによる負担も軽減される。海外で本作が評価されているのも、バットマンという作品の認知度が非常に高く、友達を誘って一緒に楽しめる環境の人が多いことにあるかもしれない。日本国内だと、そういった人は比較的少数なのかもしれないが、本作を購入する際はぜひこの点を頭にとどめていてほしい。

ぐう実況(ゲーム紹介系YouTuber)

ぐう実況(ゲーム紹介系YouTuber)

YouTubeを中心に活動するゲーマー。PSやPCのソフトを中心にゲーム紹介をする機会が多く、同分野を専門に活動しています。プライベートでは任天堂などの作品も頻繁に遊びます。

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