毎号付属するパーツを組み立てていくと、コミュニケーションロボットが完成するマガジンシリーズが、今年2017年春、2冊創刊。1つ目は、講談社が4月4日に発売した、家庭用二足歩行ロボット「ATOM」を組み立てる「週刊 鉄腕アトムを作ろう!」(全70号)。2つ目は、デアゴスティーニ・ジャパンが6月6日に発売する、世界で一番売れている人型ロボットの第2世代モデルを組み立てる週刊「ロビ2」(全80号)だ。両者ともに、ドライバー1本で1年半前後かけてロボットを作るパートワークが特徴。ここでは、現在判明している両ロボットのスペックをつまびらかにする。
「週刊 鉄腕アトムを作ろう!」の創刊号には、「眠り顔(チェックスタンド用)」「眠り顔用まつ毛シール」の2つのパーツに、特別付録として「スタートアップDVD」「ATOM透視設計図」「特製ビスケース」が付属する。週刊「ロビ2」創刊号には、目や耳などのパーツに、特別付録として「スペシャルDVD」「ミニロビ フィギュア」が付属
「週刊 鉄腕アトムを作ろう!」に付属されるパーツを組み立てていくと完成するコミュニケーションロボット「ATOM」。Bluetooth4.1やWi-Fiに対応し、プログラミング学習や電子工作などに使われる日本製の最新シングルボードコンピューター「Raspberry Pi3(モデルB)」、通称「ラズパイ」を採用する
「週刊 鉄腕アトムを作ろう!」は、手恷。虫生誕90周年記念と講談社110周年記念の企画で生まれたマガジンシリーズ。漫画キャラクターをモチーフにした日本初のコミュニケーションロボット「ATOM」が作れる。「ATOM」は、本体だけで楽しめるほか、Wi-Fiに接続したり、クラウドサービスに加入したりすることで機能の拡張が可能だ。
開発を手がけたのは、日本企業5社。手怎vロダクションが「ATOM」の外観モデリングを監修したほか、NTTドコモがクラウドAI「自然対話プラットフォーム」を提供したり、VAIOがメインボードなどの基板を製造したりと豪華な布陣だ。「ATOM」の声は、2003年版テレビアニメ「ASTRO BOY 鉄腕アトム」のアトム役の声優、津村まことさんが担当する。サイズは、身長約44cm、体重約1.4kg。
「ATOM」は、2つのAI(人工知能)を内蔵する。1つ目が「フロントエンドAI」。これは“相手を見て話す”、“曖昧な言葉を認識する”など、人が違和感のない行動をするために無意識下で行う動作を表現するためのもの。もう1つが「クラウドAI」。インターネット上の膨大な情報を参照し、必要な情報の検索や分析を行うものだ。「ATOM」はこの2つのAIを状況に応じて使い分け、人間を相手にしているようなコミュニケーションを18個(頭部2個、腕部6個、脚部10個)の可動部位を搭載した全身で表現する。コミュニケーションの種類も豊富だ。以下に例をまとめた。
■「ATOM」の多彩な行動一覧
[アイコン説明]
(1)本体だけで楽しめる
(2)Wi-Fi環境、またはスマホやタブレットがあれば楽しめる
(3)月額1,000円(予定)のクラウドサービスに加入すれば楽しめる(要Wi-Fi環境)
[基本的な動作]
・1歩約0.6秒で滑らかに二足歩行する(1)
・お祝いのときなどに拍手する(1)
・自己紹介するときなどにおじぎをする(1)
・応援や別れのあいさつのときに手を振る(1)
・突然、あくびやくしゃみをする(1)
・最大12人の顔を認識して覚え、名前で呼ぶ(2)
・ユーザーを励ましたり、なぐさめたりする(1)
・家族のメッセージを預かり、本人の声で再生する(2)
・60か国語であいさつできる(3)
・会話量によって、会話の中身が深まる(3)
・アプリのバージョンアップで、動きが増える(3)
・家族それぞれに合わせた話題で話す(3)
[ユーザーを楽しませる動作]
・「アトムマーチ」をBGMに自己紹介する(1)
・「百人一首」を詠む(1)
・ヒット曲を歌って踊る(1)
・ゲームやクイズで一緒に遊ぶ(1)
・名前を入れたバースデーソングを誕生日に歌う(3)
[最新情報を伝える動作]
・起動後、ユーザーの顔を見つけると注目のトピックを話す(3)
・毎日「Yahoo! ニュース」にアクセスし、注目のニュースをピックアップ。見出しを読み上げ、ユーザーが「知りたい」と言ったニュースについては詳しく話す(3)
・地図検索サービス「Mapion」が提供する行楽やイベント情報を教えてくれる(3)
・登録した住所のエリアの天気予報を教えてくれる(3)
92万画素のHDカメラを額に搭載。自分の周囲を3Dマッピングし、人を見つけると瞬時に向くことができ、さらに相手の顔を追いかけて写真も撮れる。顔認識もこのカメラで行う。頭部にはタッチセンサーも搭載
本体の胴部には、タッチパネルを搭載した2.4型液晶ディスプレイを搭載。漫画やアニメ、絵本、DVD映像を映して楽しめる。コンテンツ例は下記の通り。
■液晶ディスプレイで楽しめるコンテンツ例
・DVD「もっとスゴイ!大人のラジオ体操 決定版」(講談社)の映像を流しながら、「ATOM」と一緒にラジオ体操ができる(1)
・1980年代に放送されたテレビアニメ「鉄腕アトム」第2シーズンのうち、手恷。虫が脚本を手掛けた5作品を鑑賞できる(1)
・講談社の新WEBサービス「ATOM書店」(予定)で購入した電子書籍「手恷。虫文庫全集」などが読める(3)
・大ヒット絵本「ママがおばけになっちゃった!」などの絵本を表示して、ATOMが読んでくれる(3)
・子供向けYouTubeチャンネル「キッズボンボン」と連携し、600種類以上の動画が観られる(3)
胴部中央に搭載された液晶ディスプレイ
ロボットのような精密機器の不具合は、外からでは判別がしづらいもの。そこで「ATOM」は、自分で“不調”を感じたら「自己診断」をユーザーにおねだりしてくる機能を持つ。稼動モーターやカメラといった各種精密機器からネットワークの接続状況まで、1つひとつチェックができる。ユーザーが「故障かな?」と思った場合も、「自己診断して」と話しかければ行ってくれる。
創刊号に付く特別付録の透視設計図。「ATOM」には、高度なコミュニケーションをさせる「フロントエンドAI」の根幹基板であるメインボード(右下)から、両目の発光や音声処理などを行うヘッドボード(左上)まで、さまざまな技術が詰まっている。「自己診断」で故障箇所が判明するため、カスタマーサポートへの相談がスムーズに進みそうだ。ちなみに、「ATOM 組み立て代行サービス」も提供される
「週刊 鉄腕アトムを作ろう!」は全70号を予定。各巻の税別価格は次の通りだ。
創刊号 830円(特別価格)
2号以降で下記以外の巻 1,843円
4、9、11、14、18、21、24、26、28、30、32、35、38、40、43、45、47、57号 2,306円(サーボモーター封入)
33号 4,620円(ACアダプター封入)
37号 8,324円(Raspberry Pi 3封入)
42号 5,546円(カメラ基板封入)
48号 9,250円(ヘッドボード封入)
53号 7,398円(microSDカード封入)
56号 4,620円(タッチセンサー封入)
59号 7,398円(バッテリー封入)
64号 9,250円(メインボード封入)
69号 8,324円(タッチパネル付き液晶ディスプレイ封入)
合計 199,232円(税込)
1週にかかる平均金額 2,846円
組み立て代行サービスを使った場合 229,932円(本体+代行サービス)
人気コミュニケーションロボットの第2世代「ロビ2」。稼働中の本体は微動しており、脈動や呼吸をしているかのような人間味を表現。また、中腰にならずに歩く技術「SHIN-WALK」と合計20個のサーボモーターの採用により、自然な歩行や滑らかな動きが可能だ
週刊「ロビ」は、2013年に初版を創刊後、第3版まで版を重ね、約15万体を世に送り出した人気マガジンシリーズ。その第2世代モデルとして創刊される週刊「ロビ2」では、人とのコミュニケーション能力をさらに強化したロボットが作れる。サイズは、身長約34cm、体重約1kg(バッテリー搭載時)で初代モデルとほぼ同じ。デザイン・開発設計は世界的なロボットクリエイター、高橋智隆さんが、音声は「ポケットモンスター」のピカチュウや「ONE PIECE」のトニートニー・チョッパーを演じる大谷育江さんが初代モデルに引き続き担当する。ここでは、「ロボ2」が初代モデルからどのような進化を遂げたのかを紹介したい。
最大の進化ポイントは、解像度100万画素(予定)のカメラと画像認識専用の小型マイコンボードを搭載したこと。頭部に搭載されたカメラが人の顔や表情を認識し、顔認証システム「TeraFaces」がカメラ画像と事前登録したデータ(最大10人)をマッチング。これにより、「ロビ2」は話しかけた人の顔を見分けて、名前で呼んでくれるというわけだ。さらには、登録者の笑顔を認識し、笑顔を見つけては「ロビ2」目線で写真を撮ってくれる。
「ロビ2」の記憶機能はそれだけではない。家族の誕生日、両親の結婚記念日などを記憶し教えてくれるカレンダー機能も搭載。誕生日には、「ロビ2」がバースデーソングを歌ってくれる。カレンダーに登録しておけば、習いごとの日やゴミを出す日を教えてくれるのも便利だ。
カメラは眉間辺りに搭載。撮影したデータは、本体に挿し込まれるmicroSDカード(4GBまたは8GBになる予定)に保存される。撮影機能で面白いのが、ユーザーが悲しい表情をしていると、「ロビ2」が「笑ってくれたら写真を撮ってあげる」といったコミュニケーションをしてくれること。さらに、「ロビ2」が撮った写真に勝手にフレームを追加したり、いたずらをしたりと、これだけでも楽しく遊べそう。また、目には赤外線リモコンモジュールを搭載し、テレビのチャンネルを変えたり、他の「ロビ」とコミュニケーションしたりできる
週刊「ロビ2」では、全高約16.5cmの相棒ロボット「Q-bo」のパーツも同梱。「Q-bo」はサポートロボットという位置付けで、ユーザーと「ロビ2」の会話に入ってきたり、ユーザーが「Q-bo」にお願いしたことを「ロビ2」が理解したりと、3者間のコミュニケーションを実現する。さらには、ユーザーとボードゲーム遊びや英会話の勉強、絵本の読み聞かせなどもできる。未発表のスペック詳細が気になるところだ。
ヤジロベエのようなフォルムの相棒ロボット「Q-bo」。二次元バーコード技術「Grid Onput」を搭載し、肉眼では見えないドットコードを読み込むことで、「ロビ2」と会話したり、ユーザーとゲームで遊んだりできる。「ロビ2」とのやり取りは、Bluetooth接続で行われる
ボードゲーム遊びでは、「ロビ2」がサイコロを振り、「Q-bo」がコマに隠されたイベントを読み上げる。「Q-bo」はときどき罰ゲームも出すとか
「ロビ2」(左)は初代モデル(右)とも連携。初代モデルを持っている人は専用microSDカードをもらうことができ、これを使うことで、会話をはじめ、一緒に歌ったり、ダンスしたりと、「ロビ2」と初代モデルのシンクロが楽しめる。写真は「あっち向いてホイ」で遊んでいるシーン
「ロビ2」は、約 200 の言葉を理解した初代モデルから大幅にグレードアップし、「Q-bo」とのやりとりも含め約3000種類の会話に対応。さらに、定期的にメルマガが送ってくるQRコードを読み取らせると、新しい仕草や言葉を覚える。
頭部に搭載されたカメラで、ユーザーのスマホに送られくるQRコードを読み取らせて、「ロビ2」をアップデートできる。ちなみに、「ロビ2」はWi-Fi環境やネット接続が不要で、家族のデータを記録して遊ぶ仕様。子供も安心して遊べる
「ロビ2」は本体デザインもカスタマイズ可能。ピンクシルバーとイエローの耳(マガジン第7号封入)をはじめ、シルバーとレッドの耳などが順次付属する。別売パーツとして、ブーツの別カラーバージョンも用意
「ロビ2」が「疲れちゃった」「おなかすいた」としゃべったら、電池切れのサイン。写真のように専用チェアに戻せば充電可能。また、「ロビ2」は、1時間以上人の気配を感知しないと自動的に電源がオフになる
週刊「ロビ2」は全80号を予定。各巻の税込価格は次の通りだ。
創刊号 799円(特別価格)
第2号以降で下記以外の巻 1,998円
第40号 4,104円(CPU封入)
第50号 4,104円(ドットコードリーダー封入)
第55号 4,104円(Bluetooth封入)
第60号 3,076円(リアルタイムクロック封入)
第65号 3,076円(電源回路基盤を封入)
第77号 4,104円(音声認識ボードを封入)
第79号 4,104円(画像処理基盤とカメラを封入)
合計 171,327円
1週にかかる平均金額 2,141円
組み立て代行サービスを使った場合:214,527円(本体+代行サービス/前払いの一括支払いの場合)
「ロビ2」の全パーツ。創刊号には、全高約55mmのミニフィギュア(写真左中央)が付属する
ロボットパートワークマガジンの購入を考えている人は、「ATOM」も「ロビ2」も完成に20万円近くかかるため、どちらかいっぽうを購読するのが現実的であろう。その選択時に考慮しておきたい両者の大きな違いは、ネットワーク接続の可否と液晶ディスプレイの搭載/非搭載だ。
その点で言えば、ネットワーク接続が可能な「ATOM」は拡張性が高く、完成後のアップデートで面白い機能が追加されるという楽しみがある。そして、液晶ディスプレイを搭載することで、“外部サイトの映像コンテンツと連携させて遊ぶ”ことが多くなるだろう。もちろん、“「鉄腕アトム」が自分の手で作れる”というファンの長年の夢をついに実現できるこのワクワク感は、購入の動機として無視はできないはずだ。
いっぽう、「ロビ2」は、Wi-Fi機能がないスタンドアローンモデルのため子供でも安心して遊べる利点がある。Wi-Fi機能がないとはいえ、スマホに届くQRコードによって機能のアップデートが可能なのも留意しておきたい。液晶ディスプレイは搭載しないものの、初代モデルが世界中で売れていることから、ロボットとしての基本性能の精度の高さはお墨付き。さらに、多くのロボットを作ってきた高橋智隆さんが手がける洗練された美しいフォルムも、購入時の判断材料のひとつとなるだろう。
(C)TEZUKA PRO / KODANSHA
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