新製品レポート
楽器とオーディオの融合をめざした1台

肝は響板! カワイがBluetoothスピーカーにもなる消音ピアノ「AURES」を開発

河合楽器製作所(以下、カワイ)から、消音機能を備えたアップライトピアノの新モデル「AURES」(オーレス)シリーズが発表された。従来のカワイのピアノとは異なったアプローチが特徴だ。というのも、基本はアコースティックピアノでありながらスマホとBluetooth接続することができ、さらにスマホ内の音楽を鳴らす“オーディオスピーカー”としても楽しめるようになっているのである。「ピアノを高品位なBluetoothスピーカーにして、弾くだけではなくオーディオとしても楽しもう」という提案だ。

AURESシリーズのラインアップと、メーカー希望小売価格は以下の通り。いずれも、2018年10月5日の発売を予定している。

▼「AURES」シリーズラインアップ
・「K-700 AURES」1,290,000円(税別)
・「K-500 AURES」1,150,000円(税別)
・「K-400 AURES」1,040,000円(税別)
・「K-300 AURES」970,000円(税別)
・「K-200 AURES」870,000円(税別)

独自センサーと「SK-EX音源」で、消音時も高品位な演奏を

くわしい方はご存じだと思うが、まずは“消音ピアノ”というものについて簡単に説明しよう。消音ピアノ(=サイレントピアノ)とは、内部に消音機構が取り付けられたアコースティックピアノのこと。カテゴリーとしてはアコースティック楽器に入るが、電子ピアノと同じように電子音源やセンサーなどが搭載されている。

通常は普通のアコースティックピアノとして演奏できるが、消音モードをオンにすると内部の消音機構が働いて、ピアノの生音が出なくなる。代わりに、センサーが動いて内蔵の電子音源による演奏音を出力する。電子ピアノのように、鍵盤のタッチにあわせて電子音を鳴らすようになり、それをヘッドホンでモニタリングできるようになるのだ。つまり簡単に言うと、アコースティックピアノと電子ピアノの使い勝手を両立するハイブリッド型と思えばよい。

カワイの消音ピアノは、鍵盤センサーに独自の「IHSS非接触型光センサーシステム」(Integrated Hammer Sensing System)を搭載するのがポイント。弦を叩くハンマー部分の動きを読み取って音を出力する仕組みが特徴で、より忠実な音の再現が行える。もちろん今回発表されたAURESにも、この「IHSS非接触型光センサーシステム」が採用されている。

写真は「K-500 AURES」。鍵盤センサーには独自の「IHSS非接触型光センサーシステム」を採用し、消音モード時の再現クオリティを高めている

消音モード時のコントロールを行うインターフェイス部には、ヘッドホン端子のほかにLINEアウトやMIDIアウトも備えている

また、同社のフルコンサートピアノである「SK-EX」の音をサンプリングした「SK-EXレンダリング音源」を内蔵しているのも特徴だ。「IHSS非接触型光センサーシステム」と「SK-EXレンダリング音源」により、消音時でも高品位な演奏が行えるようになっている。

そのほかにも、Bluetooth機能に対応し、カラー液晶タッチパネルを搭載するなど、同社の電子ピアノと共通する最新の便利機能を備えているのが特徴。Bluetooth機能は、「Bluetooth MIDI」と「Bluetooth Audio」をサポートする。くわしくは後述するが、スマートフォンとBluetooth接続して、スマホ内の音楽をAURES本体のスピーカーで再生することもできる。

鍵盤部の左には、視認性の高い800×480ドットのカラー液晶タッチパネルを搭載。高級モデル「NOVUS NV10」や、電子ピアノの上位機種「CA98」に採用されるものと同じで、直感的なタッチ操作で音色や機能の切り替えが行える

カワイ独自の「響板スピーカー」で、音楽再生を楽しめる消音ピアノに

一般的に、消音ピアノで消音モード時の演奏を聴くときは、ヘッドホンを接続してモニタリングするスタイルになる(または、ヘッドホン出力端子から外部スピーカーに音声出力する)。しかしAURESには、カワイ独自の「響板スピーカー」と呼ばれる構造が採用されていて、ヘッドホンを使用しなくても、消音時の電子音源によるサウンドを普通に鳴らすことができるようになっている。

この響板スピーカーが、AURESの肝。これは、ピアノ背面の響板に加振器を配置して振動させることで、響板自体をスピーカーにして出力音を鳴らすという仕組み。つまり、ピアノ本体がスピーカーの役割を果たすのだ。これにより、電子ピアノと同じように、ヘッドホンを使わずに音量を調整しながら演奏・練習が行える。

ピアノの響板を、スピーカーシステムとして応用した「響板スピーカー」が大きな特徴。内部に加振器ユニットを装備する(緑マルの部分)。後述するが、モデルによってユニットの配置位置が異なっているそうだ

ペダルの中央を踏み込むと、生音が出ず電子音だけを響板スピーカーで鳴らすモードになる。ヘッドホンを使用するほどではないが、音量を絞って練習したいようなときに便利

そしてAURESは、この響板スピーカーの特性を生かして、ピアノを弾かないときはスマホの音楽を再生する“大型Bluetoothスピーカー”としても楽しめるように工夫されているのが特徴。

そもそも響板スピーカー自体は、すでにカワイの電子ピアノ上位機種で採用されている技術だ。しかし今回のAURESでは、音楽再生用にチューニングされているのがポイント。老舗オーディオブランドのオンキヨーが手がける加振器「Vibtone」をAURES用にチューニングしたものを、中低域用と高域用にそれぞれ2基ずつ、合計4基配置している。通常の生音で演奏した際のサウンドに影響が出ないよう、モデルにあわせてユニットやその配置位置などが最適化されている。

カワイの電子ピアノ上位機種「CA98」にもオンキヨー製の加振器が搭載されているが、今回AURESには音楽再生専用にチューニングしたものが搭載された

電子音源に生ピアノ音を重ねてアンサンブル演奏も

ちなみにAURESは、電子音源を再生しながら同時に生音で演奏することもできる。内蔵する電子音源や、スマホからBluetooth入力した音源にあわせて、アンサンブル演奏や練習を楽しむといったことが可能だ。

以下の動画は、ピアニストの圓谷綾乃さんによるアンサンブル演奏の様子。電子音源と生音を重ねることで体験できる、新感覚の演奏がおわかりいただけると思う。

まとめ

スペックだけを見れば、響板がスピーカーになっている消音ピアノや、Bluetooth音楽再生に対応する電子ピアノはこれまでにもすでにあった。ただAURESはそこから一歩踏み込んで、消音ピアノ(=アコースティックピアノ)でありながら、高品位なBluetooth音楽再生を楽しめるように“こだわって”チューニングされているのがポイントだ。

カワイによれば、「AURES」という名称は、「Audio」(オーディオ)と「Resonance」(共鳴)を組み合わせた造語。「楽器とオーディオの融合」のテーマを現す名称となっている。かねてより、オーディオ的進化を遂げていたカワイ製ピアノの最新スタイルとして、注目したい。

杉浦 みな子(編集部)

杉浦 みな子(編集部)

オーディオ&ビジュアル専門サイトの記者/編集を経て価格.comマガジンへ。私生活はJ-POP好きで朝ドラウォッチャー、愛読書は月刊ムーで時計はセイコー5……と、なかなか趣味が一貫しないミーハーです。

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