今回は2016年に発売されたガンプラ、「MG 1/100 高機動型ザク“サイコ・ザク” Ver.Ka(GUNDAM THUNDERBOLT版)」を組み立てます。2年前のガンプラを今さら? なんて思われるかもしれませんが、最新のガンプラにはないインパクトがある逸品なのです。驚きのスタイルとこだわりをぜひお楽しみください。
白いパッケージでおなじみのVer.Ka(バージョンカトキ)シリーズから、サイコ・ザクです。パッケージから、もうすごいことがわかりますよね
サイコ・ザクは、独自の視点で一年戦争を描く作品「機動戦士ガンダム サンダーボルト」に登場するジオン軍のモビルスーツです。ジオンの主力モビルスーツであるザクを高機動型、独自の操作方法に改良し、各オプションの追加などで完成した機体。ザクとしては最大級の大きさになっております。
本キットはその姿を再現し、さらにVer.Ka仕様(後述します)としてハイディテール化されたモデルになっています。ではまずは完成品からご覧ください。
俺の知っているザクじゃない?! と思わせる圧倒的な存在感
なんというか「ザクの背中にすんごいものがついている!」という感じですよね。大型のバックパックに2基のロケットブースターと、さらに大型ロケットブースター1基を装備し、持てるだけの武装を詰め込んだ決戦兵器となっています。ではまず機体解説を。
正式名称は「リユース・P(サイコ)・デバイス装備高機動型ザク」。高機動型ザクII型をベースに“リユース・サイコ・デバイス(RPD)”と呼ばれる、パイロットの脳が発する電気信号を、モビルスーツの駆動系に直接伝達させることで、パイロットの手足のように扱うことができる技術が搭載されています。しかしその実態は、操縦に四肢が必要なく、義肢による操作を前提に作られたという狂気のモビルスーツでもありました。パイロットとなる、ジオン軍のリビング・デッド師団(手足を欠損した傷痍<しょうい>軍人で編成された部隊)所属のダリル・ローレンツ少尉は、過去の戦闘において、両足、片腕をなくしていましたが、このサイコ・ザク登場のために残っていた片腕をも犠牲にします。
劇中では、ODA、配信などで公開されているアニメ「機動戦士ガンダム サンダーボルト」にて、物語後半にサイコ・ザクが登場し、巨大なブースターをひっさげ、敵であるフルアーマーガンダムとの決戦に挑み撃破させています(実際は両機大破)。
本キットではアニメで活躍したサイコ・ザクを、その規格外の装備に至るまで再現しています。大型のブースターはもちろん、多彩なウエポンやギミック。そしてVer.Kaならではのこだわりのハイディテールなど。マスターグレードモデルとしても最大級のスケールを堪能できますよ。
圧倒的な存在感をガンプラでも再現しています
大型のマスターグレードモデルなのでパッケージも大きいですが、驚くべきはそのランナー数。実にその数、36枚! 「PG 1/60 ガンダムエクシア」が40枚だったのですが、それに匹敵する量になっています。
ただ、ザク本体の内部フレームのベースには「MG 1/100 MS-06J ザクII Ver.2.0」のものが使われていることもあり、余剰パーツも出てきます。とはいえ外装や色合いは完全新規となっており、深紅とオレンジの外装と、ゴールドのブースターパーツが鮮やかな色合いを演出しています。
ランナー36枚! もう多すぎて整理するのが大変
赤にオレンジにゴールドと多彩なカラー。ポイントの白いパーツも塗装済みです
注目の大型ブースターは、中身が空洞のモナカ方式。隣は1/144サイズのガンプラです
舞台となるサンダーボルト宙域では、スペースデブリ対策として機体の関節部や動力パイプにシーリング処理(関節カバー)が施されているのが特徴。本キットでも再現されており、ビニール素材のパーツで本格的なシワを表現できるようになっています。
シーリング処理を再現するため、ビニール素材のパーツが太、中、細の3セット付属
パーツにかぶせてシワをつけていくことで
動力パイプや関節部分などのシーリング処理を再現しています
また、サンダーボルト版MSのもう1つの特徴である多数のバーニアは、パーツの分割で細かく色分けされています。
塗装なしでもここまでの再現度
脚部分のアーマーは着脱可能。外した際に見えるパーツもあります
ザク単体としてもとてもカッコいいガンプラになっています。この赤い色がシャア専用の赤とは異なり、深く黒っぽい色合いなのがとても映えるんですよね。ゴールドのバーニアパーツはかなり細かいので、扱いに注意が必要です。
組み立て完成です。まずは正面から
斜めと、うしろまで見ていきましょう。脚部分の安定感が際立ちますね
過剰ともいえる武装もてんこ盛りで再現されています。大型のビーム・バズーカにジャイアント・バズが3本、ザク・マシンガンが2本、シュツルム・ファウストが3本、ヒート・ホークが2本とこれでもかと付属。
各武器は手に持たせることができるのですが、ここに不満が。武器などを固定するいわゆるダボ穴が手のパーツに開いておらず、ザク単体では武器の保持が難しいのですよ。特に大型のビーム・バズーカは重いので、しっかり保持することができませんでした。
まるで押収された武器状態になってしまう、多彩な武装
手のひらには武器を保持する穴などがないので、大型の武器を持たせるのにちょっと苦労します
たとえばRGサザビーは、手のひらに突起、ライフル側にスリットがあるので、これを合わせることで武器をしっかり保持できます
ビーム・バズーカは単体で構えて持たせるには保持力が足りず、立てかけるようになってしまいます
ジャイアント・バズの保持は問題なし
ヒート・ホークは、左右どちらでも持たせられます
ではいよいよ、ザク本体とロケットブースターパーツを合体させていきます。まずは背中のバックパックを付属のスタンドに取り付けます。このバックパックを単体でザクに装備しようとすると、大きくて体がうしろに反りかえってしまうほど。
大型のバックパックです。ザクの背中に取り付けるのですが、このままだとうしろに倒れてしまいます
付属のスタンドにバックパックを固定し、ザク本体に取り付けていきます
ちょっとザクがぷらーんとしてしまう感じになりますが、これで固定できます
それでは、ロケットブースターパーツを取り付けていきます。2基の中型ロケットブースターには、下段にザク・マシンガンやシュツルム・ファウストを取り付け、上段にジャイアント・バズ3本を装備します。その間に大型のロケットブースターを取り付け、上下で挟むように固定する仕組み。最初は難しかったのですが、コツをつかむとしっかり固定できるようになります。ただスタンドが1本での固定なので、結構ぶらぶらと揺れることもありました。
ロケットブースターパーツなど、盛りだくさんの内容を装備します
大型のロケットブースターの大きさは全長28cm。500mlのペットボトルより大きいです
下段のロケットブースターにザク・マシンガンなどを取り付けます
バックパックスタンドに差し込みます。しっかりと固定されます
ここに大型ロケットブースターを接続。下段だけだと、やや不安定です
上段のロケットブースターにジャイアント・バズ3本を装備して
大型ロケットブースターを挟むように固定。一度固定するとしっかり保持してくれます
これで完成です。このインパクト! 撮影ブースなんかには収まりません!
バックパック上部のマニピュレーターも展開でき、これで各種武装を把持することも可能
一見、ムチャクチャとも思えるロケットブースターパーツですが、スタンドと固定パーツによってしっかりと保持され、途中で抜け落ちるようなことはありませんでした。そしてこのインパクトある姿が最終決戦を思わせる圧倒的な存在感となります。
iMac 21型と比較。置き場所に悩むスタイルです
上から。ザクの深紅とロケットブースターパーツのブラウンがいい色合いです
ロケットブースター視点で。圧倒的存在感です
今年前半に紹介した「MG 1/100 PLAN303E ディープストライカー」も大型ガンプラでしたが、この「サイコ・ザク」もそれに匹敵する大きさ。比較してみましたよ。さすがに59cmのメガ粒子砲をそなえる「ディープストライカー」には及びませんでしたが、この2体を飾っておける余裕のあるガンプラ置き場を確保したいです!
全長はほぼ同じ! 専用の置き場が必須なガンプラたちです
ほかのMGやHGと比べればこの違い!
とにかく組み立てがいがあるガンプラでした。ディテールの細かさや美しさ、キットの造形や仕組みなど、作りながら感心して楽しむことができましたよ。年に一度はこんなガンプラを作ってみたいと思える、ボリューム・満足感ともに高いキットです。
ザク単体の完成度も高く、オプションと併せて楽しめるガンプラです
さて、先ほどから何回が出てきた「Ver.Ka」について解説です。2002年から展開している、ガンプラのマスターグレードシリーズの1つで、メカニックデザイナーであるカトキ・ハジメ氏の徹底監修によるキットとなっています。特徴をいくつか挙げると……
・本来のデザインを再考証したカトキデザイン
カトキ・ハジメ氏が作品内の歴史や系統を重視し「本来こうなるべきではないか?」という主観に基づいて解釈し、既存デザインをリファインしたものを元に立体化されています。そのため、発売されているガンプラにも劇中にはなかった新解釈のデザインが取り入れられています。
たとえば「νガンダム」では、劇中になかったサイコフレームの露出展開など独自のデザインがされています
・全身に施されるオリジナルマーキング
設計データから監修するほど細部までこだわるのが「Ver.Ka」ですが、さらにハイディテール化するために、カトキ氏オリジナルのマーキングが全身に入るのも特徴の1つ。多数付属する水転写式のデカール(主にコーションデカールと呼ばれるもの)やマーキングシールを貼ることでディテールがさらに増していきます。
「サイコ・ザク」にもこのような大量の水転写式のデカールが付属しています
このマーキングの多さも特徴
・劇中の変形なども完全再現
ガンプラの再現では難しいといわれている劇中でのモビルスーツの変形なども、しっかり再現し、なおかつ、合体、分離してもそのプロポーションを保持しているところも魅力です。
複雑な「MG 1/100 ダブルゼータガンダム Ver.Ka」の脚部分の変形や、「MG 1/100 V2ガンダム Ver.Ka」の2機合体も完全再現しつつ、カッコいいシルエットを保っています
白い背景に素立ちのCGイラスト、というパッケージも「MG Ver.Ka」シリーズの特徴
現在、一般販売されている「MG Ver.Ka」の一覧はこちらです。
このラインアップの中で唯一のザクが、今回ご紹介した「サイコ・ザク」。デザイン考証から徹底的にこだわられたフォルムや高密度なディテール、そして圧倒的な存在感が魅力的で、ぜひ自分へのごほうびとして年末年始のまとまった時間でじっくり組み立てを楽しんでいただきたいガンプラでした。
組み立ての楽しさはもちろん、飾り映えのするガンプラですよ
「月刊PCエンジン」誌で編集ライターデビュー。「64DREAM」誌デスクを経て前職はXbox 広報のゲーム漬け人生。猫とガンプラとaqoursが存在理由のホビー担当。