2020年10月のタバコ税増税にともなう値上げは、加熱式タバコも例外ではない。アイコスの「マールボロ・ヒートスティック」は、520円→550円(一部フレーバーは560円)と、四捨五入で600円となるレベルに突入する。そこで注目したいのが、アイコス専用ヒートスティックの廉価版ブランド「HEETS(ヒーツ)」である。もちろん、ヒーツも値上げはするが、470円→500円と何とかワンコインの範疇に収まる。そこで、少しでも安く吸いたいアイコスユーザーのために、ヒーツ現行8種類を改めて味わって、切り替えの可能性を探ってみた。
※製品写真のパッケージ、デザインは、現状と異なる場合があります。
「マールボロ」より50円安い「ヒーツ」。パッケージはマットな質感のマッチ箱テイストで、シンプルデザインだ
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「ヒーツ」は、現在8種類(2020年9月現在)。3種類がレギュラータイプで、メンソールが5種類(うちフレーバーメンソール2種)だ。吸っていて感じる「マールボロ・ヒートスティック」との一番の違いは、加熱式タバコのために開発されたというだけあり、「ヒーツ」のほうがいわゆる「アイコス臭」が抑えられていること。
味的には、雑味が少なくマイルドでシンプル。喫味も軽めに感じるものが多い。また、マールボロはフレーバーも濃厚な印象があるが、ヒーツはあくまで主役がタバコで、フレーバーは脇役扱いであることが多い。
そこで改めて、「マールボロ・ヒートスティック」との互換性を含めて、いま一度「ヒーツ」全種類の味わいを確かめてみよう。
左が「ヒーツ」で右が「マールボロ」。フィルターに描かれたロゴ以外、スティックの見た目に違いは見当たらない
「ヒーツ」の中では、最高喫味の王道レギュラー味。加熱前のスティックを嗅げば、良質なタバコならではの樹木の香りがする。
アイコス臭は見事に軽減されている。吸うとロースト感が広がり、フルーティーな甘みが後に残るのが特徴だ。紙巻きタバコからのスイッチ組にも適したシンプルなおいしさである。
吸っているうちに次第に酸味が強くなっていき、ロースト感とコクが強まり独特のクセが出てくるが、重厚感では「ヒーツ」の中で最強で、この価格でこれだけのタバコ感を感じさせてくれるのなら、文句はない。
互換性を感じる「マールボロ・ヒートスティック」:「レギュラー」の味わいに最も近いが、いくぶん軽い。
ヒーツ・ディープ・ブロンズ
黄色いパッケージはシトラスを連想させるものの、れっきとしたレギュラータイプで、酸味がしっかり立ったマイルドな吸い心地のタバコ味だ。加熱前のスティックを嗅ぐと、ほのかなシトラス風味を感じる。
加熱後もブレンドの妙でアイコス臭を丸め込んで、クセは少ない。そして吐いた蒸気がよりタバコ的だ。レギュラーでマイルドな酸味をはっきり感じたい人におすすめ。いわゆるタール値高めの洋モク(海外タバコ)が好きな人ならグッとくるのではないだろうか。
互換性を感じる「マールボロ・ヒートスティック」:「バランスド レギュラー」
ヒーツ・バランスド・イエロー
アイコス臭が中和されつつ、酸味も甘みも抑えられているのが「ヒーツ・クリア・シルバー」だ。これもレギュラータイプだが、ほのかにメンソールのような爽やかさがある。もっともレギュラーの紙巻きタバコを再現している味わいと言ってもいい。タール値4〜5mg程度のいくぶん軽いマイルドなタバコ味だ。
互換性を感じる「マールボロ・ヒートスティック」:「スムース レギュラー」
ヒーツ・クリア・シルバー
登場当初は"メンソールが弱い"と表現されがちだった「ヒーツ」。その巻き返しを図るべく後に投入されたのが、「ヒーツ・フロスト・グリーン」だ。しっかり強めのペパーミントな清涼感、刺激的な辛みがのど奥を直撃し、目が覚めるタイプである。
草原のようなフレッシュなメンソールが見事にアイコス臭を包み込み、気にならない。ニオイの少なさはすぐれていると思う。
ほぼクセのない純粋メンソールタバコで、タバコ感もズシッ。飽きの来にくいタイプだと思う。メンソールの紙巻きタバコユーザーでも吸いやすいのではないか。
互換性を感じる「マールボロ・ヒートスティック」:「メンソール」
ヒーツ・フロスト・グリーン
直訳すると、「冷たい翡翠(ヒスイ)」。どんな味なのか想像がつかないが、気のせいか加熱前のスティックを嗅ぐと、高級感のある香りがする。
実際に吸ってみると、辛みを抑えた爽快なメンソールでありながら、どことなく神秘的な印象を受けた。メンソール自体は爽やかに広がるタイプの清涼感で、謎の香料(ハーブ)がそこに彩りを加えている気がする。大人なアロマ感としか表現しようのない芳香だ。
これもクセのないシンプルな軽やかメンソールで、「ヒーツ・フロスト・グリーン」では強すぎると感じる人にいいだろう。
互換性を感じる「マールボロ・ヒートスティック」:「ミント」に似たキャラクターを感じたが、よりハーバルだ。
ヒーツ・クール・ジェイド
発売当初から存在するメンソールタイプが「ヒーツ・フレッシュ・エメラルド」だ。タバコ味主体のメンソールとして、非常に完成度が高いのだが、登場時は刺激が弱いと酷評されてしまった過去がある。
メンソールはペパーミントタイプで、ノド奥がカッとなるタイプなのだけれど、あくまで脇役なのが特徴だ。しっかりしたタバコ味があり、それを際立てるように清涼感がよい仕事をする。
確かに目玉が飛び出るほどの強烈ミントメンソール味に慣れた人には物足りないかもしれないが、昭和のメンソールタバコのレベルは、こんな感じだった。
互換性を感じる「マールボロ・ヒートスティック」:同様のものが存在しない。あえて言うなら、「ミント」をさらに刺激少なめに調整した感じ。
ヒーツ・フレッシュ・エメラルド
加熱式タバコのみならず、VAPE用リキッドでも人気の高いベリーメンソール味の「ヒーツ・フレッシュ・パープル」。筆者もぶどう果皮の紫色を感じるベリーメンソールは、タバコ味にワインのボディ感のような深みを与えるので、相性がよいと感じている。
この「ヒーツ・フレッシュ・パープル」は、パープル感は抑えめだ。吸っている時よりも蒸気を吐くタイミングでふんわりと喫味を豊かにしてくれていて、シンプルにおいしい。
「マールボロ ヒートスティック・パープル・メンソール」というこのジャンルの金字塔製品もあるが、
「ヒーツ・フレッシュ・パープル」はそのアロマ感を弱くした感じだ。さながら「パープル・メンソール・ライト」といった印象である。
ただチェーンで吸っていくとわかるのは、「ヒーツ・フレッシュ・パープル」のシンプルなおいしさ。蠱惑(こわく)的で濃厚な味わいが少ない分、続けて吸ってもくどくならない。
互換性を感じる「マールボロ・ヒートスティック」:「パープル・メンソール」
ヒーツ・フレッシュ・パープル
シトラスとは、オレンジやライムなどの柑橘系のこと。ただ、この「ヒーツ シトラスグリーン」のシトラス感は控えめで、メンソールに上書きされてしまって、加熱前のスティックの段階でも感じ取るのは難しいレベルだ。
実際に吸ってみると、メンソールの清涼感が喉奥で広がって爽快なのだが、シトラス感はあまり感じない。意識をすればメンソールの爽快さに酸味がわずかに加わっているとわからないでもないが、それはアイコス特有のニオイを低減する効果はあるものの、味としてしっかり感じるかというと微妙だ。
フレーバーメンソールとしては香りの弱いタイプだが、クセがない分、チェーンスモーキングしやすいというメリットはある。シトラスがほのかに香って、キレがよいように感じるからだ。
互換性を感じる「マールボロ・ヒートスティック」:「イエロー・メンソール」の香りを控えたような味わい。
ヒーツ・シトラス・グリーン
「ヒーツ」と「マールボロ」ヒートスティックとの価格差は50円、1日1箱吸う人の場合は、1か月(30日)で1,500円の違いとなる。これは結構大きいのではないだろうか。
価格は「マールボロ・ヒートスティック」シリーズが520円(値上げ後550円)に対して、470円(値上げ後500円)となる。
したがって、もし「マールボロ・ヒートスティック」ユーザーが10月値上げタイミングで「ヒーツ」に切り替えると、本来550円になるべき520円のタバコ代が、むしろ500円に減ることになる。最強の値上げ対策ではないだろうか。
もちろん味に一切の妥協はできないという人なら仕方ない。しかしタバコは嗜好品。第一印象だけで決めるのはもったいない。味に慣れるために、せめてひと箱は吸い続けてみるのがおすすめだ。その間に、「ヒーツ」ならではのおいしさを感じる瞬間を待つのだ。
「マールボロ・ヒートスティック」と「ヒーツ」にはもちろん差があるが、それはおいしさの差ではなく、キャラクターの差というほうが正確だ。タバココスト削減のためにも、先入観を捨てて、いま一度じっくり味わってみることをおすすめしたい。
※本記事は喫煙を推奨するものではありません。ご利用にあたっては、健康リスクなどをご考慮のうえ、注意・マナーを守ってご使用ください。
元「月刊歌謡曲(ゲッカヨ)」編集長。今はめおと編集ユニット「ゲッカヨ編集室」として活動。家電や雑貨など使って楽しい商品のレビューに命がけ!