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漫画コンシェルジュ・小林琢磨が選ぶ

この漫画、実はあの人が描いたんです! 誰もが知ってる人気作家の過去作10選

才能ある漫画家は多くとも、「売れっ子」と呼ばれる人気作家はほんのひと握り。その代表作ともなれば、誰もが1度は手に取ったことがあるのではないでしょうか。では、そんな人気作家は過去にどんな作品を描いていたのでしょう? そしてそこには、代表作の原点とも言えるエッセンスが隠されているのでしょうか? というわけで今回は、誰もが知っている人気作家の注目すべき過去作をご紹介。「売れっ子」たちの原点を探ります。

1.バオー来訪者/荒木飛呂彦 代表作:「ジョジョの奇妙な冒険」
これぞジョジョの原点。荒木先生の知られざる名作

まず紹介したいのは、「ジョジョの奇妙な冒険」の荒木飛呂彦先生の過去作、「バオー来訪者」です。“ジョジョ”に関してはもはや説明不要ですよね。1986年から週刊少年ジャンプで連載が開始され、今でも続いている大ヒット漫画です。

この「バオー来訪者」は、“ジョジョ”の前に荒木先生が描いていた作品で、最強の生物兵器「バオー」に改造された青年と予知能力を持つ少女の物語です。漫画好きの間ではかなり評価が高く「“ジョジョ”の基礎となる漫画」とか、「ホラーバイオレンスアクションというジャンルを築いた漫画」などと言われています。それに、“ジョジョ”は「ズギュウウウウン」といった擬音の使い方が独特ですが、実はあの擬音が出てきたのは「バオー来訪者」が初めて。絵のタッチやセリフの言い回しなど、ほかにも“ジョジョ”の原点となる要素が散りばめられた作品なので、“ジョジョ”は読んだことあるけど「バオー来訪者」は知らなかった! という人にはぜひ読んでいただきたいです。

(C)H.Araki 2000/Shueisha

(C)H.Araki 2000/Shueisha

あらすじ
秘密機関“ドレス”が創り出した最強の生物兵器・バオー。橋沢育朗に寄生し、超能力少女・スミレと共にドレスから脱走したバオーに、暗殺者たちが次々と襲いかかる。その時、育朗の中に眠る無敵の生命・バオーが覚醒する!! 荒木飛呂彦が描く伝説のSFバイオレンス傑作が、今ここに文庫版で復活する…!(集英社作品ページより)/文庫本は全1巻。

2.てんで性悪キューピッド/冨樫義博 代表作:「HUNTER×HUNTER」
ピュアな中学生男子と小悪魔ヒロインによる、ちょっぴりエロくて甘酸っぱい物語

「幽遊白書」や「HUNTER×HUNTER」など、数々の大ヒット作品を世に送り出した人気作家、冨樫義博先生をご存じの方は多いとこでしょう。その冨樫先生の原点とも言える作品が、週刊少年ジャンプで連載されていた「てんで性悪キューピッド」です。

現実の女性にまったく興味のない中学生男子と、彼をスケベにするためにやってきた女の子の悪魔が繰り広げるドタバタラブコメディで、その世界観は後の冨樫先生の有名作品とは大きく異なります。しかしところどころに頭脳戦の描写があって、そこに“冨樫先生らしさ”を見て取れる。ラブコメという冨樫先生らしくないジャンルを描いた漫画でも、ネームのうまさ、話の展開のうまさ、構成力のうまさはやはり1級品で、冨樫先生の天才ぶりを再認識できる作品です。

(C)Y.Togashi 2002/Shueisha

(C)Y.Togashi 2002/Shueisha

あらすじ
鯉昇竜次は関東大極系鯉昇組の跡取り息子だが、妖精に憧れる純情少年。極悪な家庭に反発し、家出を繰り返していたが、その17回目の夜、ハダカの悪魔と出会う。翌日、なぜか竜次のスケベ養成の家庭教師として、Hな悪魔・まりあと一緒に暮らすことになってしまうが!?(集英社作品ページより)/文庫本は全2巻。

3.メイキャッパー/板垣恵介 代表作:「グラップラー刃牙」
筋骨隆々の男が繰り広げる“メイクテク”に目が離せない!

作家さんの名前を聞いただけですぐに代表作が頭に浮かぶ、そんな有名作家さんは多いですが、板垣恵介先生と「刃牙シリーズ」はまさにそれですよね。「刃牙シリーズ」をはじめ、格闘漫画のイメージが強い板垣先生ですが、意外にも処女作は格闘漫画ではなく、メイクアップアーティストを題材にした「メイキャッパー」なんです。

「悪魔の手(デビル・ハンド)」や「女神(ヴィーナス)の息子」の異名を持つ、伝説のメイクアップアーティストである主人公が神がかり的なメイクテクニックを駆使して、さまざまな人間の人生を変えていく物語ですが、そこはやはり板垣先生。主人公は筋骨隆々で、「刃牙シリーズ」に負けず劣らずのバイオレンスなメイクが炸裂します(笑)。 「メイキャッパー」を読むとしみじみ思いますよ。やはり板垣先生は格闘漫画を描くために生まれてきた“漢”なのだと。

(C)板垣恵介(秋田書店)

(C)板垣恵介(秋田書店)

あらすじ
誰にも潜む“美”と“愛”を掘り起こす男・美朱咬生登場。鬼才・板垣恵介が描く噂のデビュー作!(秋田書店作品ページより)/単行本は全3巻。

4.ib -インスタントバレット-/赤坂アカ 代表作:「かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜」
“中二心”がくすぐられる王道の恋愛漫画

単行本の累計発行部数が500万部を達成(2019年3月時点)、さらにこの1月からはアニメ放送が開始されるなど、今もっとも勢いのあるラブコメのひとつと言える、「かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜」。その作者、赤坂アカ先生の過去作の中で注目したいのが、「ib -インスタントバレット-」です。

本作は、世の中に対して不満を持った20人の子どもたちが特殊能力を武器に、世界を破壊したり、敵対して戦ったり、助け合ったりする物語。そこにファンタジー要素や恋愛要素も混ざり合ってくるため、読むと“中二心”がかなりくすぐられます。絵のタッチは“かぐや様”に近いですが、やはり過去作と言うことで、線の粗さは多少感じられるかもしれません。「え、そっち?」といったどんでん返しが多いところも本作の見どころで、いい意味で常に期待を裏切られ続けます。残念ながら打ち切りになってしまったのですが、もっと評価されるべき作品だと思います。ちなみに、最終巻の5巻のカバー裏には、“いつか続きを描く”と、続編を示唆するような赤坂先生のコメントが記されており、“かぐや様”の連載が終了したら続編が描かれるのでは、と噂になっているんです。そういった意味でも、ぜひ読んでみていただきたい作品ですね。

(C)AKA AKASAKA/KADOKAWA・電撃コミックスNEXT

(C)AKA AKASAKA/KADOKAWA・電撃コミックスNEXT

あらすじ
これは戦いだ。――世界を壊すための。この世界は敵だらけだ。そんな世界で生きる僕らは「悪意」による魔法-ib-を手に入れる。そして僕らは世界を滅ぼすことにした。――これは、まもなく壊れる世界の追憶。 (KADOKAWA作品ページより)/単行本は全5巻。

5.魔人探偵脳噛ネウロ/松井優征 代表作:「暗殺教室」
キャラクターのクセが強い! シュールで笑えるはちゃめちゃ推理漫画

アニメ放送や実写化もされた超人気漫画「暗殺教室」。黄色い奇妙な形をした「殺せんせー」が学校で生徒たちに暗殺を教えるという斬新な作品ですが、この「暗殺教室」の作者である松井優征先生の処女作が「魔人探偵脳噛ネウロ」です。

タイトルに“探偵”とあるのでミステリーなのかと思いきや、繰り広げられる推理は魔界の道具を使って強引に解決するという、とんでもないものばかり。ファンタジー色の強いストーリーで、ギャグっぽい描写をいたって真面目に描いているのが見どころです。「暗殺教室」でもそうだったように、松井先生の描くキャラクターはいずれもクセが強く、とても魅力的。だから一部で熱狂的な人気があり、作中に登場する“ドーピングコンソメスープ”なんかは今でもネット上で話題になっているほどです。松井先生の作品を手に取って、あなたも強烈な“松井ワールド”にハマってみませんか?

(C)松井優征/集英社

(C)松井優征/集英社

あらすじ
女子高生・桂木弥子の父親が、何者かに殺された。失意の弥子の前に突然現れたのは、“謎”を食べて生きる魔界の住人ネウロ。魔界の謎を食べ尽くし、今度は人間界の謎を食べるため、弥子を無理矢理探偵に仕立て上げ、自らは弥子の助手と称して、様々な事件の発生現場に乗り込み、難事件の謎を解決していく…。 (集英社作品ページより)/単行本は全23巻。

6.サイコメトラーEIJI /朝基まさし 代表作:「マイホームヒーロー」
超能力で事件を解決。ドラマ化もされた90年代の名作

個人的に、現在連載されている漫画の中でダントツにおもしろい作品だと思うのが「マイホームヒーロー」です。作画を担当されている朝基まさし先生は、「シバトラ」や「クニミツの政」など数々の大ヒット作品を生み出していますが、その原点と言えるのが「サイコメトラーEIJI」ではないでしょうか。

モノや人に触れると、触れたモノに残った過去の記憶の断片を読み取るサイコメトリー能力を持った少年が、女性刑事と協力して怪事件を解決していくという物語です。1997年と1999年にドラマ化された有名な作品で、当時中学生だった僕は毎週テレビの前に釘付けになっていましたね。あー、懐かしい(笑) 。朝基先生の作品といえばどれも長期連載のものばかり。多くの世代に読まれて、どの作品も人気が出ているというのは朝基先生のすごいところですよね。連載中の「マイホームヒーロー」を読んでいる人で、「サイコメトラーEIJI」を知らないという人は多いと思いますが、それはもったいない。「マイホームヒーロー」好きであれば間違いなく好きになれる作品だと思いますよ。

(C)安童夕馬/朝基まさし/講談社

(C)安童夕馬/朝基まさし/講談社

あらすじ
夜ごと起こる残忍な婦女暴行殺人――。殺人鬼メビウスの正体を暴くため、物や人の記憶を読みとるサイコメトリー能力をもつ少年、映児と美人刑事、志摩が立ちあがった!!(講談社作品ページより)/単行本は全25巻。

7.岳/石塚真一 代表作:「BLUE GIANT」
人はなぜ山へ登るのか。その答えが記された登山漫画の傑作

今世紀最高の漫画をあげるとしたら、間違いなく候補のひとつにあがるのがジャズ漫画の「BLUE GIANT」です。ジャズという漫画界の中ではニッチな題材を扱い、大ヒットを収めたのが石塚真一先生ですが、処女作である「岳」もニッチな題材を扱っています。

その題材はズバリ、“登山”。「岳」は山岳救助隊を描いた1話完結型の作品で、こちらも言わずと知れたヒット作品です。ともすれば、ニッチな題材を扱うとイロモノ漫画として扱われがちですが、石塚先生は題材をかなりていねいに調べていて、そこが作品の魅力のひとつになっています。「岳」を読んでいると、石塚先生の登山への愛をひしひしと感じますし、その愛や情熱があったからこそ、業界の人が後押ししてくれて人気が出たのでしょう。山の魅力を存分に感じさせてくれる、登山好きならずとも楽しめる作品です。

(C)石塚真一/小学館

(C)石塚真一/小学館

あらすじ
秋の北穂高岳。登山中の中年男性・黒岩が、雪に足をとられて崖から転落、腕を骨折して動けなくなってしまった。山麓の警察署では下山時刻が遅れていることから、山岳遭難防止対策協会のボランティア・三歩に救助を要請することに。見かけは頼りなさそうな三歩だが、ヒマラヤや南米の山を歩いてきた経験豊富な救助員で…(小学館作品ページより)/単行本は全8巻。

8.ルサンチマン/花沢健吾 代表作:「アイアムアヒーロー」
仮想現実に愛と救いを求める、冴えない中年オヤジの奮闘記

鳥山明先生や尾田栄一郎先生に続く、新しい世代を象徴する作家さんのひとりである花沢健吾先生。映画化もされ話題を呼んだ「アイアムアヒーロー」が代表作としてあげられますが、僕はひそかに処女作の「ルサンチマン」が最高傑作ではないかと思っています。

主人公の冴えない中年オヤジが、今で言うVR版のギャルゲー(美少女ゲーム)を購入して仮想現実にのめり込んでいくという物語で、タイトル通り、人間のルサンチマン(恨みや妬み)を見事に描き切っています。これを言ったら怒られるかもしれませんが、花沢先生がルサンチマンの塊みたいな人で、ほかの作品でも先生のルサンチマンが反映されることが多く、本作はそのルサンチマンの結集といってもいい作品です。情熱や怒りと同じように、ルサンチマンの感情は人間の原動力になる。そう感じさせてくれる、読んでいて勇気をもらえる作品でもあるんですよ。2004年にビックコミックスピリッツで連載開始された漫画ですが、作中で描かれている世界観は2019年の現代社会にかなり近い。ルサンチマンという概念に注目したり、VRというかなり前衛的な題材を扱ったり、連載当時は時代の先をいく作品だと言われていました。VRやAIが発達してきた今だからこそ、改めて読んでみたい作品ですね。

(C)花沢健吾/小学館

(C)花沢健吾/小学館

あらすじ
2015年。印刷工場に勤める坂本拓郎は、今までずっとパッとしない人生を送ってきた。そんなある日、旧友の越後からギャルゲー(美少女ゲーム)を勧められるが、「現実の女が大事」と言って一度は踏みとどまる。だが、その後も彼が女に相手にされることは全くなく、30歳の誕生日、ついに大金をはたいてギャルゲー道具一式を購入する。(小学館作品ページより)/単行本は全4巻。

9.ナニワトモアレ/南勝久 代表作:「ザ・ファブル」
レースより日常に注目した、走り屋たちのヒューマンドラマ

週刊ヤングマガジンで連載中の人気作品「ザ・ファブル」。かなりおもしろくて僕も大好きな作品なのですが、南勝久先生と言えば、処女作の「ナニワトモアレ」も非常に魅力的な作品です。

大阪を舞台にしたコテコテの走り屋たちの物語ですが、注目すべきはレース以外の描写です。南先生は本作で、走り屋たちの日常をすごくていねいに描いているんです。走り屋たちが抱えるレースへの情熱や苦悩、人間関係の描写など、何気ない日常がとてもリアルに描写されていて、読んでいると自分が物語の中にいるような感覚になってくる。絵のタッチや日常の切り取り方のうまさは「ザ・ファブル」に通じるところがあり、この頃から“南勝久節”は全開だったのか! と思い知りました。第2部となる「なにわ友あれ」と合わせると59冊あるので、質、量ともに読み応えのある作品です。

(C)南勝久/講談社

(C)南勝久/講談社

あらすじ
ドアホ大阪走り屋漫画!! グルグル大阪、バチバチ環状! そらもう、股間のピストンうずきっぱなしじゃ〜ッ!! 三度のメシよりナンパが好きや。モテまくって、ハメまくって浪花の青春ヤリタオシ。ごっついローンも屁やないど。買(こ)うたらんかい、新車のシルビア。腕(テク)はないけど、スケベ根性負けません。オトコ18歳、環状デビューじゃい!!(講談社作品ページより)/単行本は全28巻。

10.ロケットでつきぬけろ!/キユ(松井勝法) 代表作:「ソムリエール」
色んな意味で“つきぬけた”伝説のレース漫画

「神の雫」「ソムリエ」「新ソムリエ 瞬のワイン」と並び、4大ソムリエ漫画のひとつと称される「ソムリエール」。その作画を担当した松井勝法先生は昔、キユというペンネームで活動されていて、そのキユ名義で世に出した処女作が「ロケットでつきぬけろ!」です。

17歳の少年がF1レーサーを目指す物語ですが、本作は内容よりもその連載の終わり方に注目が集まりました。週刊少年ジャンプで当時最短記録となる10週で打ち切りとなり、まさに“つきぬけて”いたんです。「ロケットでつきぬけろ!」が打ち切りになって以降、漫画好きの間では打ち切りを“つきぬける”と呼ぶようになったくらい、強烈なインパクトがあったんですよね。週刊少年ジャンプの巻末にポエムのようなコメントを毎回掲載していて、最終話の巻末に残したコメントが、「痛みを知らない子供が嫌い。心をなくした大人が嫌い。優しい漫画が好き。バイバイ」。「伝説の打ち切り漫画」としてだけでなく、もちろん内容も読み応えがありますので、ぜひ手に取って“つきぬける”疾走感を味わってみてください。

(C)キユ/ナンバーナイン

(C)キユ/ナンバーナイン

あらすじ
伝説の打ち切り漫画家・松井勝法の連載デビュー作がついに伝説の電子書籍化!! かつてジャンプ誌面を閃光のように駆け抜けた伝説の10週間がここに甦る!! 少年漫画史に確かに刻んだ伝説の爪痕を再びなぞれ!! KIYU never die!! 伝説のレース漫画伝説復活!! (ナンバーナイン作品紹介ページより)/単行本は全1巻。

取材・記事:雪か企画

小林琢磨

小林琢磨

(株)ナンバーナイン代表取締役社長。大切な事は全て漫画から教わりました! 情熱こそ全てであり最優先。魂が震える作品が好きです。マンガサロン「トリガー」のオーナーと(株)人狼の代表も兼任。サーチフィールド創業者。アイコンはうめ先生制作。

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